何度も交通事故を起こす人はADHD・脳疾患・心臓疾患などの病気が原因の可能性も
交通事故を起こす原因は、悪天候による視界不良だったり、運転手の疲労の蓄積による判断ミスだったりしますが、運転状況の悪さやドライバーのミスが多いと推定されます。ところが近年、交通事故を引き起こす原因として、病気も注目されています。
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運転免許は適性検査に合格しないと交付されない
運転免許は、学科試験や技能試験(卒業検定)に合格しても、視力・聴力・色彩識別能力・運動能力などの適性検査に合格しなければ交付されません。
例えば視力は、次のような基準が設けられています。
一種免許(大型自動車・けん引免許は除く)・大型特殊・自動二輪・普通仮免許
- 両眼で0.7以上
- 片眼で0.3以上
- 片眼が0.3未満の場合は他眼の視力が0.7以上で視野が左右150度以上
これらの視力は眼鏡、コンタクトレンズでの矯正も可とされています。
運動能力については、補助手段を用いることも可
この視力に加え、赤色・青色・黄色の識別ができる色彩識別能力や、日常の会話ができる聴力、安全な運転に必要な認知、ハンドルその他の装置を随意に操作できるなど、運転に支障を及ぼす身体障がいがないことなどの運動能力が、適性検査で試されます。
但し、運動能力に関する障がいがある場合は、補助手段を講ずることによって支障がなくなれば合格とされます。
この適性検査の基準に達しなかった場合、運転免許の更新も不可となります。
運転免許の交付が行われない身体の障害や病気について
免許取得の際に、身体の障がいや病気による症状があるため、安全な運転に支障がある場合は、道路交通法および道路交通法施行令によって、一定の要件が定められています。
但し、運転免許交付の拒否や取り消しについては定まった基準はなく、それぞれのケースについて個別に都道府県公安委員会が判断することになります。
また運転免許を交付された後でこれらの要件に該当することになった場合も、運転免許取り消しや一時資格停止とされます。この個別の適性相談は、運転を続けることに不安を持っている人が、運転適性相談窓口を訪れることで行われます。
交通事故を起こさないために、自分の命を守るために、少しでも不安があれば必ず相談してください。
運転免許の拒否等を受けることとなる一定の病気等について
1. 運転免許を拒否又は保留される場合
(1)介護保険法第5条の2に規定する認知症
(2)アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒
(3)幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの
政令では、統合失調症(自動車等の安全な運転に必要な認知等に係る能力を欠くこととなるおそれのある症状を呈しないものを除きます)が定められています。
(4)発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの
政令では、次のものが定められています。
てんかん | 発作が再発するおそれがないもの、発作が再発しても意識障害及び運動障害がもたらされないもの並びに発作が睡眠中に限り再発するものを除きます。 |
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再発性の失神 | 脳全体の虚血により一過性の意識障害をもたらす病気であって、発作が再発するおそれがあるものをいいます。 |
無自覚性の低血糖症 | 人為的に血糖を調節することができるものを除きます。 |
(5)(3)及び(4)のほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
政令では、次のものが定められています。
- ア そううつ病(自動車等の安全な運転に必要な認知等に係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈しないものを除きます)
- イ 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害
- ウ そううつ病及び睡眠障害のほか、自動車等の安全な運転に必要な認知等に係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気
2. 運転免許の取消し又は効力の停止を受ける場合
(1)上記1.(1)から(5)までに掲げるもの
(2)目が見えないことその他自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として政令で定めるもの
政令では、次のものが定めされています。
- ア 体幹の機能に障害があって腰をかけていることができないもの
- イ 四肢の全部を失ったもの又は四肢の用を全廃したもの
- ウ その他、自動車等の安全な運転に必要な認知又は捜査のいずれかに係る能力を欠くこととなるもの(運転免許に条件を付することにより、その能力が快復することが明らかであるものを除きます)
運転免許取得・更新時に持病についての申告が義務化
意識障害を伴うてんかんや、睡眠障害の運転手による事故が相次いだことを受け、道路交通法が改正され、2014年6月から施行されました。この改正により、運転免許の新規取得や更新を行う際に、病気等に関する質問票に回答することが義務付けられました。
また虚偽の回答をすると「1年以下の懲役、または30万円以下の罰金」が科せられる罰則も設けられました。
この質問票で回答する質問は次の通りで、はい、いいえを選ぶだけで病名などは書きません。
- 過去5年以内において、病気(病気の治療に伴う症状も含みます)を原因として、又は原因は明らかでないが、意識を失ったことがある。
- 過去5年以内において、病気を原因として、身体の全部又は一部が、一時的に思い通りに動かせなくなったことがある。
- 過去5年以内において、十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中、活動をしている最中に眠り込んでしまった回数が週3回以上となったことがある。
- 過去1年以内において、次のいずれかに該当したことがある。
- 飲酒を繰り返し、絶えず体にアルコールが入っている状態を3日以上続けたことが3回以上ある。
- 病気治療のため、医師から飲酒をやめるよう助言を受けているにもかかわらず、飲酒をしたことが3回以上ある。
- 病気を理由として、医師から運転免許の取得又は運転を控えるよう助言を受けている。
医師の判断で免許取得可否が判断される
上記の質問票の提出により、すぐに免許更新が拒否されたり取り消しされたりすることはありませんが、医師の診断をもとに判断されることになります。
これらの質問で対象となる病気
- 総合失調症
- てんかん
- 再発性の失神
- 無自覚性の低血糖
- そううつ病
- 重度の眠気症状を呈する睡眠障害
- 認知症
- その他自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くことになるおそれのある症状を呈する病気
- アルコールや薬物等の中毒
運転免許資格では防げない、病気を原因とする交通事故
ここまで挙げてきた症状や疾患については、もしかしたら運転免許を交付しないことによって交通事故が防げるかもしれません。しかし、これらの要件にあてはまらない、運転に支障を及ぼす疾患があり、重大事故の原因となっている病気があります。
脳疾患・心臓疾患による事故
脳・心臓疾患は運転手の健康状態を急速かつ急激に悪化させるため、運転中の発症は特に重大事故につながるケースが多いようです。
運転中の発症は、運転手の意識や注意力、集中力を奪い、身体運動能力を失わせることが多く、運転不能となりブレーキ操作も行われないまま甚大な被害をもたらす事故になってしまいます。くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞などの脳疾患、虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)、心不全、不整脈などの心臓疾患は、持病だと意識していなくても発症することがあります。
これらの疾患については、日ごろから発症しないように健康的な生活を心がけましょう、と言うしかありません。
成人期ADHDが交通事故を引き起こす?
ADHD(注意欠陥多動性障害、Attention Deficit Hyperactivity Disorder)は、多動性(じっとしていられない・落ち着きがない)、不注意(集中力がない・気が散りやすい)、衝動性(順番を待てない・考える前に実行してしまう)などの要素がみられる障がいです。
子どもの時には誰もが見られる要素ですが、これらの症状が正常な機能と学習に影響を及ぼしている場合に、ADHDと診断されます。
近年では、成人期になってもADHDと診断される人も多く、自動車の事故率が高いという調査結果や、交通法規違反での出頭命令が多く目立っているようです。
交通事故の原因として上げられる脇見運転や動静不注視などを引き起こすとされていますが、ADHDはまだ認知度が低く、治療法も確立されていません。
ADHDの症状は「そういう性格だ」と片付けられてしまうこともあり、受診することも少ないのですが、自分または家族・友人がこのような、運転に不向きな性格であると思われる場合、念のため医師の相談を受ける方が良いでしょう。
交通事故を防ぎ、命を守るためです。
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