後遺障害の等級認定にかかる期間は?認定が遅い場合の対処法
- 監修記事
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佐藤 學(元裁判官、元公証人、元法科大学院教授)
交通事故で怪我を負ってしまい、治療を受けたけれど完治せず後遺症が残ってしまった後は、この怪我について、後遺障害等級認定を受けることになります。申請から後遺障害等級認定までにかかる期間はだいたい1か月から2か月程度と言われています。納得ができない場合は異議申立てもできますので、不安があるときには弁護士に相談し、対応を依頼しましょう。
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後遺障害等級認定を受けるようなケガの場合、弁護士に相談することで確実に適切な補償を受けることができます。
相談のみでも歓迎しておりますので、「交通事故に強い弁護士を探す」よりお気軽にご相談ください。
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後遺障害等級認定までの期間はどのくらい?
個々の怪我の状態などによって期間が異なる
後遺障害等級認定の申請から実際に認定がなされ通知を受けるまで、どのくらいの期間がかかるのでしょうか。これは、怪我による後遺症の程度や認定が難しい場合などは時間がかかると言われていますので、個々の怪我の状態などによって異なる、というしかありません。
通常は1か月から2か月程度
もっとも、後遺障害等級認定を行う団体である損害保険料率算出機構(以下「損保料率機構」といいます)が公表している資料によりますと、1か月程度が大多数を占め、その次には2か月程度が多くなっています。そのため、基本的には2か月程度かかる、とみて結果通知を待つ方がいいでしょう。
なぜ時間がかかる?
後遺障害等級認定がなされるまで2か月と聞いて、なぜ、こんなにも時間がかかるのだろう、と思った方もいるかもしれません。
第三者機関である損保料率機構の下部機構・自賠責損害調査事務所が認定
後遺障害等級認定の結果が出るまで時間かかる原因のひとつとして、後遺障害等級認定は第三者機関である損保料率機構の下部機構である自賠責損害調査事務所(以下「調査事務所」といいます)がきちんと調査を行ったうえで、結果を出していることが挙げられます。後遺障害等級認定は、怪我の程度によって14等級に細かく分けられたうえでどの等級に該当するのか検討していきます。もちろん残念ながら該当しない、という結果が出される場合もあります。
認定が困難な怪我も多い
そして、交通事故で大怪我を負った場合、単純に腕だけ、足だけといった一部分の怪我では済まない場合が多くみられます。特に後遺症が残るような怪我の場合は、複数の箇所で後遺症が発生している場合が多いのです。そうなると、認定にも、単純にこの等級に該当するという判断はできず、「併合」認定を適用します。この併合認定もかなり難しいと言われています。
公正で中立に認定がされている
損保料率機構は、後遺障害等級認定に際して、公正かつ中立的な立場で実施していることを表明しています。このため、調査事務所から診断書を書いた医師に医療照会をしたうえで、認定をすることもあるのです。
この医療照会に医師が多忙を理由になかなか対応できないために、認定が遅くなる場合もあると言われています。調査事務所の処理が遅いわけではない場合もあるのです。
また、後遺障害の等級認定が難しい事案など、調査事務所では判断が困難な事案については、調査事務所の上部機関である地区本部や本部で審査を行うようになっています。
こうしたことから、認定までにかなり時間を要する場合もあるのです。実際に難しい後遺障害とされる「高次脳機能障害」については、認定までに6か月以上かかるのが一般的だと言われています。
後遺障害等級認定までの流れは?
後遺障害等級認定の手続きは、申請方法によって異なる
後遺障害等級認定は、調査事務所が行うとお伝えしましたが、一体後遺障害等級認定はどのような流れで行われているのでしょうか。簡単に流れをみていきましょう。
- 必要書類を揃える
- 保険会社に必要書類を提出する(申請)
- 保険会社から調査事務所へ調査が依頼される
- 調査事務所で調査が実施され、認定結果が出される
- 結果が通知される
- (被害者請求の場合)後遺障害等級認定の該当する等級に合わせて保険金が支払われる
簡単な流れは上記になりますが、この手続きの流れは、事前認定と被害者請求で異なる部分があります。次に違いをふまえた手続きをみていきますが、詳細な違いについては、以下の記事を参考にしてください。
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必要書類を揃える
後遺障害等級認定の申請手続きをするにあたっては、後遺障害診断書など所定の書類を提出する必要があります。これらの書類は被害者請求の場合は被害者がすべて自分で揃えなくてはなりませんが、事前認定の場合は被害者が後遺障害診断書を取得することで済むという違いがあります。
事前認定の場合
加害者の任意保険会社は、被害者から送付してもらった医師作成の後遺障害診断書以外の必要書類を収集します。
被害者請求の場合
被害者は、加害者の自賠責保険会社から案内のあったリストに従い、担当医師に作成してもらった後遺障害診断書を含む、すべての必要書類を収集します。
手続きがよくわからないけれど被害者請求したいという場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
申請手続きから調査事務所の調査へ
事前認定とは、加害者の任意保険会社が、自賠責保険金分も含め損害賠償金を被害者に一括払いをした後に、自賠責保険会社に自賠責保険金分を求償するこことなりますが、一括払いをした後で自賠責保険から支払いを受けられないと困るので(任意保険は自賠責保険の上積み保険なので、自賠責保険金額がわからないと任意保険会社はいくら支払ったら良いかわからないので)、その回収を円滑に行うため、一括払いをする前にあらかじめ、自賠責保険で支払いを受けられるかの後遺障害等級認定の申請手続きをすることをいいます。
要するに、事前認定とは、加害者の任意保険会社が、被害者の代わりに、後遺障害等級認定の申請手続きを行うことをいいます。
被害者請求とは、被害者が直接加害者の自賠責保険会社に後遺障害等級認定の申請手続を行うことをいいます。
事前認定の場合
事前認定の場合、任意保険会社はすべての必要書類を調査事務所に送付して申請手続きを行うとともに、調査依頼をします。
調査事務所は、任意保険会社からの調査依頼を受け、後遺障害等級認定の手続きに入ります。
被害者請求の場合
被害者請求の場合、被害者は、すべての必要書類を自賠責保険会社に提出して申請手続きを行い、自賠責保険会社は、必要書類に不備がないか確認のうえ、提出された必要書類を調査事務所に送付するとともに、調査依頼をします。
調査事務所は、自賠責保険会社からの調査依頼を受け、後遺障害等級認定の手続きに入ります。
後遺障害等級認定の審査・認定から支払いまで
調査事務所は、送付された必要書類に基づいて、事故発生状況、支払いの的確性(自賠責保険の対象となる事故かどうか、また、傷害と事故との因果関係があるかどうかなど)及び発生した損害の額などについて審査を行います。必要書類の内容だけでは事故に関する事実確認ができないものについては、事故当事者に対する事故状況の照会、事故現場等での事故状況・周辺状況の把握、医療機関に対する被害者の治療状況の確認など必要な調査を行います。また、上述したように、調査事務所の上部機関である地区本部や本部が審査を行う場合があります。
調査事務所は、審査をふまえて、後遺障害等級認定(非該当ということも当然あります)を行います。
この結果をもとに被害者請求の場合は自賠責保険会社が自賠責保険金を被害者に支払いますが、事前認定の場合は一括払い制度を採用しているため、任意保険会社との示談交渉が成立した場合には、任意保険会社が、自賠責保険により支払われる金額を含め損害賠償金を被害者に一括払いします。
事前認定の場合
事前認定の場合は、調査事務所から任意保険会社にその結果が通知され、その通知を受けて、任意保険会社が被害者に通知することになっています。この結果を受けて、上記のように、示談交渉が成立した場合には、一括払いされます。
被害者請求の場合
被害者請求の場合は、調査事務所から自賠責保険会社にその結果が通知され、その通知を受けて、自賠責保険会社が被害者に通知することになっています。自賠責保険会社は、この結果に基づき支払い額を決定し、自賠責保険金を被害者に支払います。その後の示談交渉は、自賠責保険金の支払いを受けた部分を除いて行われていくことになるのです。
なお、どのくらいの金額を受け取ることができるか、自分の怪我はどのくらいの等級になるのか知りたい場合は、下記の記事をご参照ください。
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後遺障害等級認定までの時間がかかっていると思ったときの対処法は?
少し様子をみてみる
後遺障害等級認定の申請手続きをしているにもかかわらず、なかなか結果の通知が来ないとき、なにか対処法はあるのでしょうか。後遺障害等級認定の結果が出るまでは、早くても1か月かかると言われており、2か月かかる場合も、さらにかかる場合もあります。そのため、申請手続きをしてからどのくらい経ったのか、様子をみるようにするのも、ひとつの手段です。
保険会社に問い合わせてみる
後遺障害等級認定は、加害者の任意保険会社が代わりに申請手続きをする、いわゆる事前認定により行っている場合も多くみられます。任意保険会社は毎日大量の事務処理をしているため、後遺障害等級認定の申請手続き自体も、ご自身が必要書類を任意保険会社に提出した日よりもはるかに遅く行っている場合もあるのです。
こうしたことから、任意保険会社に進捗状況を問い合わせてみるのもひとつの対応策になります。
もっとも、任意保険会社が認定をしているのではありません。そのため、任意保険会社に結果が出るまで時間がかかっているとクレームを言ったとしても、何も状況は変わりません。それどころか、印象が悪くなり、示談成立の妨げになるおそれもありますので、注意しましょう。
弁護士に相談してみる
弁護士は数多くの後遺障害等級認定の申請手続きを行っている場合が多いため、経験により、どのくらいの期間がかかるのか予測することもできます。また、示談についてなど、後遺障害等級認定以外の相談をすることもできますし、初回相談を無料としている事務所も多くありますので、気になるときは弁護士に相談してみるのもひとつの対応策になるでしょう。
万が一、後遺障害等級認定について、その認定結果(非該当を含みます)が納得できない場合は、異議申立てを行うかどうかも検討することになるでしょう。こうしたときにも、あらかじめ相談したことのある弁護士がひとりいると安心して相談できるのではないでしょうか。
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後遺障害等級認定まで待てないときはどうする?
金銭的に余裕がない場合でも焦って示談を成立させない
後遺障害等級認定の結果が出るまでに、示談を成立させてしまうと解決金額が低くなる傾向があります。そのため、たとえ金銭的に余裕がなくても、示談を成立させることは避けましょう。
他方、人によっては、治療費などを支払う必要があるなどといった都合があるために、金銭の支払いを受けたい場合などがあります。このようなときどうすればいいのでしょうか。
弁護士に相談して後遺障害以外についての示談を成立させる
後遺障害等級認定以外の部分について、弁護士に相談して示談を成立させるという方法があります。弁護士に依頼すれば、基準が最も高い弁護士基準で示談が成立する可能性を高められますし、あくまでも後遺障害以外についての示談成立という限定をつけることができます。
また、後遺障害等級認定が出てから、改めて後遺障害部分について示談交渉することができるというメリットもあります。金銭的な余裕がないために、焦って低い金額で示談を成立させるのを、防止することができるのです。
時効の完成猶予・更新の手続きをとっておく
加害者側に損害が請求できる期間は、法律で決まっており、その期間を過ぎると時効により請求できなくなってしまいます。
改正民法で変わる交通事故の時効
ところで、2020(令和2)年4月1日から改正民法が施行され、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点と時効期間について、改正民法では、①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時(主観的起算点)から3年、②不法行為の時(客観的起算点)から20年の2つの消滅時効期間が規定されました(民法724条)。また、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効に関しては、短期消滅時効を5年とする規定が設けられました(民法724条の2)。
これらの規定については、債権一般の時効期間に関する改正とは異なる経過規定が設けられ(附則35条)、交通事故が施行日前に発生し、損害賠償請求権が生じた場合であっても、施行日において、3年の時効期間が完成していなかったときや、20年の期間が経過していなかったときは、改正民法の規定が適用されることとなりますので、注意が必要です。
なお、自賠法3条に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間については、民法の規定が適用されるものと解されていますので(自賠法4条)、改正民法の施行後は同じ規定が適用されることとなります。
そして、その他に、今般の民法改正に伴う「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」といいます)により、自賠法における時効期間を定める規定の改正がされています。
具体的には、自賠法16条1項の規定による被害者の保険会社に対する損害賠償額の支払請求権及び自賠法17条1項の規定による被害者の保険会社に対する仮渡金の支払請求権の消滅時効期間については、損害賠償請求権と同じ5年ではなく、被害者等が損害及び保有者を知った時から3年とされています(整備法による改正後の自賠法19条)。
また、自賠法16条4項又は17条4項(23条の3第1項において準用する場合を含みます)の規定による保険会社又は組合の政府の保障事業に対する補償請求権及び自賠法72条1項の規定による無保険車による事故等の被害者の保障請求権の消滅時効期間については、これらを行使することができる時から3年とされています(整備法による改正後の自賠法75条)。
保険法における時効期間を定める規定についても、整備法により改正がされていますが、保険給付を請求する権利等の消滅時効期間は、これらを行使することができる時から3年とされています(整備法による改正後の保険法95条1項)。
交通事故発生日から物損事故は3年、人身事故は5年に
後遺障害等級認定に時間がかかっている場合で、時効が気になるときは、下記のような時効の完成猶予・更新の手続きを取っておくといいでしょう。
なお、時効はどのくらいの期間になるのかについては、以下の表を参考にしてください。
時効の起算点 | 期間 | |
物損事故 | 交通事故発生日 | 3年 |
人身事故 | 交通事故発生日 | 5年 |
死亡事故 | 死亡日 | 5年 |
後遺障害 | 症状固定日 | 5年 |
時効については、起算点(初日不算入により、その翌日から起算します)などわかりにくい部分が多く、そのため、手続きや法律を知らないと難しい場合も多々あるのです。
改正民法で時効の「停止」と「中断」は「完成猶予」と「更新」に
ところで、改正民法は、時効の「停止」と「中断」を、それぞれ「完成猶予」と「更新」に変更しています。権利行使の意思を明らかにしたと評価できる事実が生じた場合を「完成猶予」事由に、権利の存在について確証が得られたと評価できる事実が生じた場合を「更新」事由にするという方針がとられています。
裁判上の請求や民事調停等の申立ては、これらの手続きが終了するまで時効の完成は猶予されます(民法147条1項)。また、確定判決等によって権利が確定することなく終了した場合は、終了後6か月を経過するまで時効の完成は猶予されます(民法147条1項かっこ書)。
催告は、催告から6か月を経過するまで時効の完成は猶予されます(民法150条1項)。
更新事由として、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定(民法147条2項)があった場合、確定された権利の時効期間は一律10年です(民法169条1項)。
承認は、従来と同様、更新事由とされています(民法152条)。
なお、改正民法では、新たに、「協議を行う旨の書面」による時効の完成猶予の規定が設けられました(民法151条)。
この規定は、書面又は電磁的記録によって権利についての協議を行う旨の合意がされた場合に、合意の時点から最長1年間時効の完成が猶予されるというものですが、時効の完成が猶予されている間に再度合意をすることも可能であり、通算で最長5年間時効が完成しないようにすることができるものとされています。この場合の書面又は電磁的記録には、当事者双方の意思が現れていることが必要ですが、様式の制限は特に設けられていませんし、必ずしも1通の書面である必要はないものと解されています。
もっとも、催告によって時効の完成が猶予されている間に協議を行う旨の合意がされた場合には、時効の完成猶予の効力を生じないとされていますので(民法151条3項)、協議を行う旨の合意は、時効が本来完成すべき時が到来する前にする必要があります。また、協議を行う旨の合意によって時効の完成が猶予されている間に催告がされた場合にも、時効の完成猶予の効力を生じないとされていますので(同項)、協議を行う旨の合意後に、当事者間の交渉を経ても紛争解決に至らなかったときは、当該合意によって時効の完成が猶予されている間に訴訟の提起等の措置をとる必要があります。
こうしたことから、時効が気になる場合は、弁護士に相談して対応してもらうことをおすすめします。
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後遺障害等級認定の結果が出るまでは意外に時間がかかる
後遺障害等級認定にかかる期間は、通常1か月から2か月程度とされていますが、怪我の状態により認定までの期間は異なっています。特に後遺障害等級認定をするための調査などは第三者機関が実施しているため、想定以上に時間がかかると認識した方が焦らずに済むでしょう。
なかなか等級認定の結果が来ないことについて気になる場合は、弁護士に相談することがおすすめです。認定までの期間の目安や今後の対応策などのアドバイスを受けることができます。
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