交通事故の損害賠償請求権には時効がある!示談がまとまらない場合は時効の中断も
交通事故に限らず、民法で規定されている損害賠償請求権には時効が定められています。交通事故の場合は、ひき逃げのように加害者が判明していない状態の場合、時効は20年と十分な時間があるのですが、普通の交通事故だと通常事故を起こした翌日から数えて3年で時効が成立してしまいます。
交渉がこじれ、1年も2年も示談がまとまらないのであれば、交通事故の加害者と被害者の間での紛争解決は諦め、調停や裁判などの第三者が介入する法的手続きに入った方が良いのですが、時効を中断して期間を延長する方法もあることを知っておきましょう。
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時効のカウントはいつからスタートするのか
法律上、損害賠償請求権の時効カウントスタートは、自分が交通事故によって受けた被害と、その被害を与えた加害者を知った日、と定められています。これは、たいていの場合は交通事故に遭った日の事を指します。普通は交通事故に遭えば、自分の自動車の破損や後遺障害を除く怪我はすぐに分かりますし、事故の相手である加害者の氏名や住所も事故に遭ったときにわかるでしょう。
損害賠償の内容により時効のカウントスタートが違うことに注意
被害者に怪我がなく、車が壊れたなどの物損だけの場合、交通事故発生が時効開始となり、損害賠償請求権は交通事故の発生日から3年が時効です。
交通事故により被害者が怪我を負ってしまった場合で、後遺障害が認められない時は交通事故発生が時効開始となり、損害賠償請求権は交通事故発生日から3年となります。
交通事故により被害者が死亡してしまった場合、被害者が死亡した日から時効開始となります。事故後は被害者が重体であったとしても、その後に死亡が確認された場合は、死亡した日から時効が開始となります。
後遺障害が残った場合の時効は、症状固定の日からスタート
交通事故が原因となる後遺障害が認められた場合、損害賠償請求権の時効は、症状固定の日から時効が始まります。
症状固定とは、一般的な医療行為による症状の改善が見込めなくなった状態で、医師により後遺障害診断書が作成された時点を指し、この日付から3年が時効となります。
時効の起算日に注意
法律的には時効のカウントスタートは交通事故によって受けた被害と、その被害を与えた加害者を知った日と規定されていますが、事故の初日は不算入として計算されることに注意が必要です。
これは、事故日から時効がスタートした場合、その当日を参入してしまうと時効の1日目は24時間よりも短くなってしまいます。たった1日ですが、権利義務に関する影響は大きく、公平さを保つために初日が24時間でない場合は、翌日から起算するのです。
一方、午前0時に事故が起こった場合は、初日であっても参入して起算されます。
時効のカウントは、どのような場合に停止されるのか
時効の中断というと、一旦時効のカウントが止まり、後に再び残りの期間がスタートするようなイメージがありますが、損害賠償請求権の場合には、時効が中断されるとその時点から再び時効のカウントが最初から始まると定められています。時効が近づいてきた場合、一度時効の中断手続きを取れば、時効の期限はどんどん延びていくのです。
時効のカウントが中断されるケースは?
以下のようなケースで、時効は中断されます。
- 訴訟を起こした時
- 加害者に示談金の一部を仮払いしてもらった時
- 保険会社から仮渡金をもらった時
以上のような形で、加害者や保険会社に損害賠償の存在を認めさせることで、時効は中断となるのです。なお、訴訟を起こすことによって、裁判所を介して損害賠償を請求することになれば、時効は10年と長期間になります。
示談金の仮払いについては、例えばシャツ1枚といった少額の金額でも加害者が支払えば、債務を認めたことになりますので、時効の中断が有効となります。
示談成立前の仮渡金とは?
示談金は原則的に、示談成立後の全額払いが普通です。
しかし、交通事故によって負った怪我の治療が長期間に及んだり、治療費がかさんだりすると、示談が成立する前に被害者が生活に困ることがあると考えられます。その場合、加害者の任意保険に仮払金を請求したり、自賠責保険に仮渡金を請求したりすることができる制度があります。
自賠責保険の仮渡金の支払い基準と金額は決まっている
自賠責保険における仮渡金の上限は、次の通り法令にて定められています。
死亡事故の場合 | 290万円 |
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次の傷害を受けた場合 | 40万円 |
(脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合、上腕又は前腕骨折で合併症を有する場合、太腿又は下腿の骨折、内臓破裂で腹膜炎を起こした場合、14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合)
次の傷害を受けた場合 | 20万円 |
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(脊柱の骨折、上腕又は前腕の骨折、内臓破裂、入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合、14日以上の入院を必要とする場合)
11日以上の医師の治療を要する傷害を受けた場合 | 5万円 |
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仮渡金額については、医師の診断書から判断されます。
仮渡金にて支払われた金額は、示談金の本請求の金額から差し引かれ、最終的な確定金額が仮渡金より少なくなった場合は、差額を返還しなければならないことに注意が必要です。
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示談金の仮払金などを受け取る時には、必ず念書を取ること
損害賠償請求権の時効を中断させるために最も効果があるのは民事訴訟を起こすことですが、そこまで事を大きくしたくないのであれば、加害者や保険会社から示談金の一部を仮払いや内払い金の名目で支払ってもらうことが簡易な方法として挙げられます。
ただし、加害者から一部であれ示談金を受け取る時には、気を付けないといけないことがあります。
示談金の支払いが終了していないことを明確に
示談交渉を行う上で、非常に不誠実な人というのは実在するようです。一度現金を支払ったことで、加害者として補償は果たしたと主張し、まとまっていない示談がまとまったものとし、普通ならば被害者が受け取るべき示談金を債務として認めない人が存在すると言われています。
加害者がこのように主張すると、時効は中断しません。
時効の中断には、加害者と被害者の示談がまだ和解に至ってなくて、示談金の債務が残っている事を認めていることが条件です。
時効の中断を確実にするためには、加害者に念書を書いてもらうことが必要ですが…
示談交渉が紛糾することを避けるため、加害者から示談金の一部を払ってもらう場合には、今回の支払いは仮払いであり、今後も交渉を継続し賠償を行うことを明文化した念書を取ることが望ましいのですが、そのような相手に書面を作成させることは難しいでしょう。
加害者がまだ示談が交渉中であり、支払うべき債務が残っている事を認めた場合は、時効のカウントが中断され、支払いを受けた時点で時効はリスタートするのですが、弁護士など専門家の手を借りないと、納得させるのは困難だと言えます。
任意保険の時効中断は、加害者による手続きが必要
一方、保険会社はさすがに、示談金の一部を内金として支払ったからといって、示談金の支払いがすべて終わったと言いだすことはないはずです。自賠責保険の場合は時効中断承認申請書を提出すれば問題ありません。
一方、任意保険の時効中断手続きするのは、加害者本人です。加害者が報告や手続きを怠ると、保険会社は規定の期間で保険金の支払いを打ち切る可能性があります。
しかしこの場合でも、加害者の支払い義務がなくなるわけではありません。
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