示談書の公正証書化について~裁判と強制執行~【交通事故の示談交渉で失敗しない】

公正証書化

示談書に記載した合意内容が守られなかった場合、裁判を起こして支払い請求などを行う必要がある。万が一の場合に備え、示談書には支払いが滞った場合の条件など、さまざまなケースを想定した条件を記す必要がある。もちろん、加害者の合意を得ることが条件。

示談書に記載した合意内容が守られない場合、裁判あるいは強制執行が必要

交通事故の示談は、加害者と被害者間の口頭でも可能とされていますが、事故内容によれば損害賠償金や慰謝料の金額は多額になり、後遺障害認定の問題もありますので、安易に口頭で示談に応じるのは絶対に避けなければなりません。

また、加害者が任意保険に加入していて、多額の示談金を支払うのが保険会社であれば一括支払いも可能ですが、任意保険の補償額を超え加害者本人が支払うことになると、加害者によほどの資力がない限り支払いは分割払いになる事が考えられます。

また交通事故の加害者となれば、不測の事態が起こり示談金の支払いが難しくなる可能性もあります。さまざまな事態を想定した示談書を作成し、万一の場合に備える必要があります。

示談書を作成し、示談金の金額や支払い方法を明確にしておく

示談金の金額の大小にかかわらず、合意した金額や支払い方法については、きちんと示談書にまとめておくべきです。まず、示談書には、合意した損害賠償金や慰謝料の金額、支払い方法、支払期日などが記載され、双方が合意して署名捺印を行うのが一般的です。

示談書には法的拘束力がないことを理解しておくこと

一方で、基本的に示談書には法的拘束力はありません。示談書は、交通事故の加害者と被害者が、双方ともに合意した内容を記した私文書です。

私文書での契約は、私人の立場にある当事者だけで作成されたもので、トラブルの元にもなるものだということを理解しておきましょう。文書作成時に第三者の立ち合いは必要ないため、私文書は簡単に作成可能であり、偽造も容易になされてしまうと見なされます。たとえ第三者がいたとしても、立会人の立場で偽証も可能なので、公的な証明書の作成が求められるところです。

まずは、示談書を公正証書化しておくことが肝要

万が一、加害者が定められた期日に示談金を支払わないなど、示談内容を履行できない事態が発生した場合、示談書が私文書のままで加害者から強制的に示談金を回収しようとすると、提訴して民事裁判を起こす必要があります。

そのため、示談書を作成した後には、公正証書化しておくことが必要となります。

示談書の公正証書化には、加害者の立ち合いも必要

しかし、示談はお互いの合意のもとでなされるものであるため、いくら加害者が信用できないと思っても、ただ公正証書化を一方的に求めるのは得策ではありません。交通事故後に加害者と被害者が合意して作成した証書(示談書)には、双方の記名捺印が行われています。

この記名が本人によるものであるかどうかを、当事者双方が公証人の面前で証書に署名または押印をする方法(目撃認証、面前認証)、当事者が公証人の面前で証書の署名または押印を自認する方法(自認認証)、または代理人が公証人の面前で証書の署名または押印が本人のものであると自認する(代理自認、代理認証)で確認します。

この認証のために加害者と被害者が一緒に公証役場に行くことが必要となりますが、一般人である被害者が、加害者にこのような手続きを要求することは難しいでしょう。お互いに代理人を立てて公正証書化を進めることも可能ですが、被害者にとっては弁護士などの助けを借りることになります。この費用を節約したいがために示談が紛糾してしまっては、元も子もありません。

公正証書化における記載内容の審査

依頼者から持ち込まれた証書に対し、公証人はその文書に記載されている内容が、違法、無効ではないかどうかの審査を行います。この際、あくまでも法律的に正しいかどうかが審査されるだけであり、記載内容の正当性や妥当性、正確性を証明するものではないということに注意が必要です。

公正証書化されたものだからといって、双方の主張が正しいということではなく、違法性はないということが審査されるのみです。

しかしながら、双方がしっかりと誠意を持って交渉し、お互いが合意のうえで作成した示談書を公正証書化しておけば、加害者も損害賠償金や慰謝料の支払いに尽力するでしょうし、延滞などのリスクも小さくなるはずです。

示談書の公正証書化は万全か?

一方、思わぬ事態が起こり加害者からの示談金支払いが困難になることも予想されます。私文書である示談書をもって民事訴訟を行い示談金の回収などの強制執行をするには、時間も裁判費用も必要です。そのため、加害者と被害者間の示談が成立した時点で、示談書が法的拘束力をもつ公正証書化しておくことが推奨されます。

強制執行はどのようにして行われるのか

公正証書化の手続きをしておけば、万が一加害者が賠償金の支払いを怠った、または予期しない状況が発生して支払いが滞った場合、民事裁判を起こさなくても強制執行ができるようになります。

加害者が示談書に記載されている支払期日に支払いを履行しなかった場合に、公正証書化された示談書を裁判所へ持ち込めば、加害者の銀行口座などを差し押さえたりする強制執行が可能となるのです。しかし一方で、強制執行を行うにあたっては、示談書の作成にあたり注意が必要です。

示談書を公正証書化すれば、それで簡単に強制執行が可能であるかのように言われる場合もありますが、示談書をもとに強制執行を行おうとする場合、あらかじめ示談書に記載しなければならない項目があります。

強制執行認諾約款を必ず示談書に盛り込んでおくこと!

強制執行認諾約款、あるいは執行承諾文言と言われる項目を必ず示談書には盛り込んでおきましょう。強制執行認諾約款とは、示談書に書かれた項目の中に、加害者が「もし支払いが滞った場合、強制執行されても文句は言いません」と強制執行に同意することを明文化したものになります。

この強制執行認諾約款項目がないと、仮に示談書を公正証書化しておいたとしても、裁判を起こすこと無しで強制執行はできないのです。要するに、示談書を作る際に、加害者による示談金支払いが滞った場合、強制執行を行うことに同意してもらう必要があるわけです。

示談交渉の時点で支払いを途中で投げ出す気で合意する人はいないでしょうから、強制執行認諾約款の追記に納得しないことはないと思われます。しかし前述の通り加害者と被害者との示談交渉は難しく、慎重に話し合いを続けるという姿勢が必要です。

公正証書化された示談書で強制執行可能なのは金銭的な支払いだけ

強制執行は、被害者が加害者の財産などを特定し、裁判所に申し立てることで行われます。期日通りに定められた金額の支払いが行われなかったというだけで、加害者の財産などが差し押さえられるわけはないことに留意してください。

また公正証書化された示談書に書かれていた項目で、強制執行できるのは、金銭的な支払いだけです。強制執行で差し押さえが可能なのは、銀行口座または給与などの現金に限られ、加害者の持っている建物などの不動産の差し押さえまではできませんので注意しましょう。

加えて、差し押さえるべき資産を被害者の方から指定する必要があるので、一般的にはかなり難しい手続きだと言えます。示談書は双方の合意があれば簡単に作れるもので、公正証書化すれば法的拘束力も持ちますが、記載する項目には一般的には馴染みのない言葉や項目を加えることが必要となります。

示談は交通事故の加害者と被害者の双方が合意する必要がありますので、示談交渉にあたっても、事前に項目追加への承諾が必要となり、的確で明確な説明ができる専門家である弁護士の力を借りた方が良いでしょう。

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