膀胱直腸障害とは?交通事故との因果関係証明が難しい後遺障害

膀胱直腸障害

膀胱直腸障害とは、尿閉、残尿、失禁、排尿遅延などの症状を示す機能障害で、中枢神経や末梢神経が傷つき麻痺することなどが起因となり得るものです。症状が出るのが遅い場合や、より重篤な後遺障害、加齢との関係性などの要因で、発見が遅れることも問題となります。

見逃されることの多い膀胱直腸障害

交通事故の影響で、排尿や排便に障害が現れる

膀胱直腸障害とは、排尿や排便などに障害が現れるもので、原因は主に脊髄の損傷であることが多い後遺障害です。但し、交通事故後に症状がすぐ出ず、症状と事故との因果関係を証明しにくいケースが多いため、後遺障害として認定を受けることが難しいとされています。

因果関係の証明を含め、弁護士に相談すべき症状

交通事故に遭ってしまったら、医師にさまざまな症状について相談し、正しい診断を受け、損害賠償請求については弁護士などの専門家に相談することの大切さを証明する症状でもあります。

(注)本ページに記載している症状や治療法は、一般的な知識として覚えておいた方が良いというもので、症状によって自分で判断を行うことや、記載した治療をお薦めするものではありません。必ず医師の診断を受け、適切な診断と治療を受けてください。

膀胱直腸障害とは?

膀胱直腸障害とは、膀胱の機能障害と直腸の機能障害を合わせたものですが、これらは同時に起こることが多いため、このように一括りにして呼ばれています。

括約筋がコントロールできなくなる

排泄のメカニズムは、膀胱や直腸に排泄物(尿や便)がたまってくると、その信号が脊髄の中を走っている中枢神経を通して脳まで達し、脳はその信号を受け取ると、排尿や排便をするかどうかの判断をします。

尿道を閉めている尿道括約筋や、肛門を閉めている肛門括約筋は、健康であれば自分の意思でコントロールができ、排泄しようと思った時に、それらの括約筋を緩めるのです。

膀胱直腸障害とは、脊髄損傷などが原因となり、膀胱と直腸の排泄を促す信号が脳に伝わらなくなったり、括約筋が上手くコントロールできなくなったりする症状が出るものです。

具体的には、排尿の信号が届かず失禁してしまったり、排尿しても残尿管があったりして、健康だった頃と比べて正常な排泄ができなくなることです。

交通事故によって起こる膀胱直腸障害とは?

膀胱直腸障害は交通事故だけではなく、重度の腰椎椎間板ヘルニアなどでも発症しますが、交通事故の場合は事故の衝撃で脊髄を損傷することによって起こります。

脊髄を損傷することで尿意や便意を感じることができず失禁する他にも、頻尿や便秘などの症状があり、通常の生活や仕事が困難になるものです。

脊髄損傷により脊髄反射中枢の働きが阻害され、排尿や排便が思うように機能しなくなることが原因です。

脳脊髄神経の損傷、骨盤神経の損傷などによって障害が引き起こされ、脊髄損傷の場所によっても症状はさまざまになります。

膀胱直腸障害は見落とされることが多い!

交通事故の後遺障害として認められるべき膀胱直腸障害は、症状がすぐに出ないために見落とされるケースが多いのも特徴です。

膀胱直腸障害の原因は脊髄の損傷による場合が多く、排尿・排便を促す信号が届かなくなることです。

一方で、脊髄の損傷が深刻で、神経そのものが切れてしまっている場合は、事故直後から他の重篤な症状が現れるため、膀胱直腸障害のみが認識されることは少ないでしょう。

もともと膀胱直腸障害が現れるようなダメージを脊髄に負った場合、手足の痺れなど様々な症状が出ていることが多いのです。

症状の自覚が遅くなってしまうケースがある

しかし脊髄の損傷具合によっては、事故直後に自覚症状が出ていなくても、後に症状に気づくことが珍しくないのです。

例えば、脊髄内の出血が固まって血栓になり、それが神経を圧迫して信号が上手く伝わらなくなった場合には、期間を置いて症状が出ることもあります。

また、交通事故のストレスで排便や排尿に支障をきたしているだけではないかと我慢してしまうこともあります。

膀胱直腸障害が見つかるのは入院中?

膀胱直腸障害が見つかるのは、交通事故による負傷で入院している時が多いと言われています。

入院中に尿が出ないことに医師が気づき、障害が起こっていることが発見されることもありますが、一方で頻尿や便秘は、点滴を受け続けたため、あるいはしっかりと食事を摂っていないためと判断し、退院後も改善されずにようやく本人が障害を認識することが多いようです。

しかし加齢のための頻尿に悩んでいた人や、事故前から便秘気味であった人は、より発見が遅れることがあり、事故直後に診断を受けていない症状となるため、後遺障害認定が難しくなってしまうのです。

交通事故によって神経系統の損傷が疑われる場合は、自分の症状としっかり向き合い、綿密に検査を行う姿勢が大切になります。

膀胱直腸障害の等級認定は、弁護士への相談が不可欠

膀胱直腸障害の後遺障害認定は、申請する等級に幅があり、加えて症状を正しく捉えて申告するのが難しいことから、医師との相談をしっかりと行い、弁護士など専門家に相談することが推奨されます。

膀胱直腸障害の等級で問題になるのは?

膀胱直腸障害の後遺障害認定において考えられる最も重い等級は、介護が必要な第1級1号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの)になりますが、この場合は四肢麻痺や半身麻痺など、脊髄に深刻な損傷を負ったケースとなり、後遺障害は膀胱直腸障害だけではなくなるため、他の障害も合わせて認定を受けることになるでしょう。

神経系統の後遺障害に関する等級は、第2級1号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの)、第3級3号(神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの)もありますが、上記の理由と同じく、他の障害と合わせての認定を求めることになるでしょう。

膀胱直腸障害のみの症状で後遺障害認定を申請する際の等級は、以下の通り第5級から第14級までの幅広い等級に分かれるため、自分の症状がどの等級に該当するかの判断は簡単ではありません。

膀胱直腸障害で認定される可能性のある等級
第5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
第9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
第12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
第14級9号 局部に神経症状を残すもの

膀胱直腸障害はあくまでも神経系の後遺障害であり、臓器そのものが損傷した場合に起こる排泄障害については、胸腹部臓器の障害として認定を得ることになります。

膀胱直腸障害の後遺障害認定については、弁護士に相談を

膀胱直腸障害の症状について医師と相談して手続きを進めたにもかかわらず、等級の判断に不満や疑問がある時や、相当程度の時間を経過してから膀胱直腸障害の症状が出てきて、交通事故との因果関係を証明しにくい場合があります。

膀胱直腸障害は、交通事故の後遺障害のなかでも、たびたび裁判沙汰になってしまうほど、認定が難しいのです。

事故当時に診断をした医師が、診断書に書いていない症状については特に因果関係を証明するのが難しいため、揉め事の原因にもなってしまいます。

当事者だけでは解決が難しいため、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお薦めします。

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