交通事故で顔に傷が残った場合【事例あり】後遺障害等級認定のポイントと慰謝料・賠償金の相場

交通事故による顔の傷

交通事故で顔に傷を負い、治療しても完治せず傷が残ってしまった場合、後遺障害の認定を受けられるケースがあります。

実際の被害に合った後遺障害等級認定を獲得するには、どういうケースで認定を受けられるか知っておくことが重要です。

また、交通事故で負った顔の傷については、一般に慰謝料や賠償金が支払われますが、逸失利益が認められにくいという注意点もあります。

そこで今回は、交通事故で顔に傷が残った場合の後遺障害認定や慰謝料などについて解説します。

交通事故で顔の怪我・傷が残った場合に請求できるお金

交通事故で顔に怪我をした場合や、傷が残ってしまった場合、請求できるお金にはいくつかの種類があります。

まず、交通事故での顔の怪我・傷に対して、加害者に支払いを求めることができる請求項目をひとつずつ確認していきましょう。

  • 治療費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 逸失利益

治療費

治療費とは、交通事故によって負った傷を治療するためにかかった費用のことです。

たとえば、交通事故によって額に切り傷を負ってしまった場合、病院で治療をするためにかかった費用は、この治療費として請求することができます。

休業損害

休業損害とは、交通事故の負傷が原因で仕事を休まなければならなくなったことで、得られなくなった給料や収入を損害とするものです。

たとえば、交通事故で顔に重症を負ってしまい、傷の治療のための手術~入院で一週間仕事を休まなければならなくなった場合、休んだ期間に得られたはずの収入などは、休業損害として請求することができます。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故が原因で入院・通院が必要になったことに対して支払われる慰謝料です。

傷を治療するために医療機関にかからなければならなくなったことは、被害者にとっては精神的な負担や苦痛につながるので、それらに対して慰謝料が支払われます。

たとえば、交通事故で頬に傷を負ってしまい、傷を治療するために何度も病院に行かなければならなくなった場合、その病院通いが続く苦痛に対して入通院慰謝料が支払われます。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故などの負傷によって後遺障害が生じた場合に支払われる慰謝料です。

どのような障害が後遺障害に該当するかは、後遺障害等級表に規定されています。
1級から14級までの等級があり、等級の数字が少ないほど後遺障害の程度が重く、支払われる後遺障害慰謝料の金額も高くなります。

顔の傷の場合、外貌醜状として傷の残存の状態によって後遺障害12級・9級・7級を認定される可能性があります。
顔の傷で認められる後遺障害について詳しくは後ほど解説します。

逸失利益

逸失利益とは、交通事故などが原因で働けなくなった場合に、働けば将来得られたはずの収入を計算したものです。

たとえば、会社員として営業をしていた人が交通事故で半身不随になって働けなくなった場合に、働けば得られたはずの収入が逸失利益にあたります。

詳しくは後述しますが、顔の傷は逸失利益が認められにくいという特徴があります。

顔の傷で認められる後遺障害等級

交通事故によって顔に傷を負ってしまった場合、外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)として、後遺障害の等級が認められる可能性があります。

外貌醜状とは、顔・頭部・頸部(首)などの一定の部位に傷跡が残ってしまう状態のことです。

顔・頭部・頸部などを外貌といいますが、外貌は日常生活において基本的に露出しています。

外貌に傷跡が残ってしまうと、日常生活において精神的な苦痛につながるだけでなく、傷によっては仕事をするうえで支障をきたす場合もあります。

これらの苦痛や支障を慰撫するために、顔に傷を負ったケースのうち一定の要件を満たすものは、外貌醜状として後遺障害が認められる場合があるのです。

そこで、後遺障害等級のうち、顔の傷によって等級が認められる可能性があるものについて解説します。

後遺障害7級12号

後遺障害7級12号に該当するのは、「外貌に著しい醜状を残すもの」です。

具体的な基準は以下の通りです。

  • 頭部の手のひら大(指の部分は含まない)以上の瘢痕(外傷や火傷などによる傷跡)、または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  • 顔面に鶏の卵大以上の瘢痕、または10円玉大以上の組織陥没
  • 頚部に手のひら大以上の瘢痕


  

後遺障害9級16号

後遺障害9級16号に該当するのは、「外貌に相当程度の醜状を残すもの」です。

具体的には、顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕(線状の傷跡)がある場合に該当します。

後遺障害12級14号

後遺障害12級14号に該当するのは、「外貌に醜状を残すもの」です。

具体的な基準は以下の通りです。

  • 頭部に残った鶏の卵大以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏の卵大以上の欠損
  • 顔面部に残った10円玉以上の瘢痕、または長さ3センチメートル以上の線状痕
  • 頸部に残った鶏の卵大以上の瘢痕

顔以外の部位の傷に後遺障害は認められる?

交通事故によって顔以外の部位に傷を負った場合に、認められる可能性がある後遺障害を解説します。

14級4号(上肢の露出面)

「上肢(腕や手)の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」は、後遺障害14級4号に該当します。

14級5号(下肢の露出面)

「下肢(脚や足)の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの」は、後遺障害14級5号に該当します。

胸部・腹部の傷

胸部や腹部に傷を負った場合に、後遺障害12級相当に該当する可能性がある症状として、以下のものがあります。

後遺障害12級相当
  • 胸部・腹部の全面積の2分の1程度以上の瘢痕

また、後遺障害14級相当に該当する可能性がある症状として、以下のものがあります。

後遺障害14級相当
  • 胸部・腹部の全面積の4分の1程度以上の瘢痕

背部(背中)・臀部(お尻)の傷

背部や臀部に傷を負った場合に、後遺障害12級相当に該当する可能性がある症状として、以下のものがあります。

後遺障害12級相当
  • 背部・臀部の全面積の2分の1程度以上の瘢痕

また、後遺障害14級相当に該当する可能性がある症状として、以下のものがあります。

後遺障害14級相当
  • 背部・臀部のの全面積の4分の1程度以上の瘢痕

顔面神経麻痺(12級相当)

顔面神経麻痺とは、顔面の筋肉を動かす神経に麻痺が生じる症状のことです。

顔面の神経が麻痺することで、目の周りが痙攣したり、口が閉じにくくなったりなどの症状になります。

顔面神経麻痺によって口の歪みが生じた場合は、「外貌に醜状を残すもの」に該当するとして障害等級12級に認定される可能性があります。

欠損障害(事故によるまぶた・耳・鼻などの欠損)

欠損障害とは、負傷によってまぶたや耳などを欠損した場合に障害等級が認定されることです。

障害等級に該当する主な欠損として、以下のものがあります。

  • 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの(障害等級9級)
  • 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの(障害等級9級)
  • 片目のまぶたに著しい欠損を残すもの(障害等級11級)
  • 耳の耳殻の大部分を欠損したもの(障害等級12級)
  • 両眼のまぶたの一部に欠損を残すもの(障害等級13級)

傷跡が複数ある場合はまとめて上位の等級に認定される可能性も

傷跡が複数ある場合、傷跡の重なり具合・長さ・面積などの事情を考慮して、まとめて上位の等級に認定される可能性があります。

また、ひとつひとつの傷跡だけでは後遺障害に該当しない場合でも、複数の傷跡をまとめて後遺障害に認定される可能性もあるのです。

交通事故で顔に傷が残った場合の慰謝料・賠償金の相場

交通事故の慰謝料は、事故の態様によってある程度の相場があります。
また、交通事故の慰謝料は、弁護士に相談することで金額が上がりやすくなるのも特徴です。

そこで、交通事故で顔に傷が残った場合の慰謝料の相場や、弁護士に相談すると慰謝料の増額が期待できる仕組みについて解説します。

慰謝料の金額は基準で変わる

交通事故の慰謝料には3種類の基準があり、同じ交通事故でもどの基準が適用されるかによって、慰謝料の金額が変わってきます。

交通事故の慰謝料の基準は、

  • 自賠責基準
  • 任意保険基準
  • 弁護士基準

の3種類です。

自賠責基準

自賠責基準とは、自動車の強制加入保険である自賠責保険における、慰謝料の算定基準です。

自賠責保険は交通事故の被害者の最低限の保障を目的とするものなので、3種類の基準の中では、自賠責基準は慰謝料の金額が最も低くなります。

任意保険基準

任意保険基準とは、自動車の任意保険の保険会社が慰謝料を算定する際に用いる基準です。

任意保険の慰謝料をどの金額に設定するかは厳密には保険会社次第ですが、ある程度の基準は決まっており、保険会社によって大きな違いはありません。

任意保険基準による慰謝料の金額は、自賠責基準と弁護士基準の中間となっています。

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準とは、交通事故の示談交渉の際に弁護士が用いる基準です。裁判で慰謝料を算定する際に用いる基準でもあり、裁判基準と呼ばれることもあります。

弁護士基準の特徴は、3種類の基準の中で慰謝料の金額が最も高くなることです。

これら3つの基準に基づく顔の傷(外貌醜状)による後遺障害慰謝料の相場は、以下の通りです。

顔の傷(外貌醜状)による後遺障害慰謝料の相場
後遺障害等級 弁護士基準 任意保険基準(推定) 自賠責基準
7級12号 外貌に著しい醜状を残すもの 1000万円 500万円 419万円
9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの 690万円 300万円 249万円
12級14号 外貌に醜状を残すもの 290万円 100万円 94万円

弁護士基準なら慰謝料1,000万円が認められるケースも

3種類の基準のうち、慰謝料が最も高額になるのは弁護士基準です。

弁護士基準による場合、1,000万円以上の慰謝料が認められることもあります。(後遺障害7級12号の弁護士基準)

交通事故の被害者になった場合、加害者の保険会社が慰謝料などを提示してきますが、その金額は任意保険基準に基づくものです。
任意保険の保険会社はあくまで営利目的で保険を取り扱っているので、被害者に支払う金額はできるだけ抑えようとするのが一般的です。
被害者が自力で交渉をしたとしても、弁護士基準を獲得できる可能性は高くありません。

弁護士基準での慰謝料の提示が得られるのは、基本的には弁護士を立てて交渉した場合に限られるのです。

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顔の傷に対する慰謝料の請求事例

顔の傷に対する慰謝料の請求事例について解説します。

年少者の白斑について醜状障害の認定を受け、一部逸失利益を獲得した事例

交通事故によって顔に白斑が残った年少者について、障害認定を受けたうえで、逸失利益の一部を獲得した事例があります。

  • 学生(小学2年生)
  • 後遺障害等級:12級14号
  • 示談金額:524万円

事故の概要

年少者(小学2年生の男子)が横断歩道ではない道路を横断している最中に、道路を走行してきた原動機付自転車と衝突した事故です。

事故の結果、被害者の頬には擦過創(すり傷)ができましたが、その後に傷が白斑となって残ってしまいました。

白斑が残存したことが気になった年少者の親は、後遺障害の申請や示談交渉をどうすべきか悩んだ結果、弁護士事務所に相談することにしました。

結果

白斑が時間の経過とともにある程度薄くなっていたこともあって、治療を担当した主治医は当初、後遺障害診断書の作成に積極的ではありませんでした。

しかし、弁護士が医師との面談を実施し、被害者の頬に残った白斑の大きさなどについて詳細な説明を行いました。

上記のように、後遺障害診断書が充実した内容になるために弁護士が粘り強く活動した結果、白斑について後遺障害第12級第14号が認定されました。

認定後の保険会社との交渉においては、年少者の男子の醜状障害について逸失利益が認められるかが争点になりました。

弁護士による交渉の結果、逸失利益がある程度生じることを前提とした賠償金額の獲得に成功しています。

本事例の担当弁護士:ベリーベスト法律事務所

顔の傷の後遺障害等級認定の場合、逸失利益は認められづらい

顔の傷によって後遺障害等級の認定を受けようとする場合、一般に逸失利益が認められにくいことに注意しましょう。

争点は「労働能力への影響」

逸失利益が認められるかは、交通事故で負った傷が労働能力にどのくらい影響するかが重要な要素になります。

しかし、顔の傷については、それによって労働能力が減少したことを主張するのは一般に困難です。

たとえば、手作業で仕事をしている職人が顔に傷を負ったとしても、労働能力を喪失したと主張するのは難しいところでしょう。

このように、顔の傷によって労働能力の喪失を証明するのは簡単ではないため、結果として逸失利益が認められにくくなるのです。

顔の傷で逸失利益を主張するには

顔の傷は労働能力の喪失が認められにくいので、逸失利益を主張するには様々な工夫をすることが重要です。

そこで、顔の傷で逸失利益を主張するための様々なコツをご紹介します。

  • 職業・職務への影響を伝える
  • 被害者の性別・年齢を軸とした主張
  • 逸失利益の代わりに慰謝料増額を主張する

職業・職務への影響を伝える

顔の傷で逸失利益を主張する場合、職業・職務に影響が生じていることを伝えることが重要です。

顔の傷の逸失利益は一般に認められにくいものの、営業や接客など相手と接する機会の多い職業については、顔の傷によって労働能力の喪失を主張できる可能性があります。

被害者の性別・年齢を軸とした主張

交通事故で負った顔の傷で逸失利益を主張する場合、被害者の性別・年齢を軸とした主張をする方法があります。

あくまで一般的な傾向ですが、性別によってや、年齢が若いほど顔の傷が生活に与える影響は大きくなると考えられるので、逸失利益が認められやすくなります。

逸失利益の代わりに慰謝料増額を主張する

逸失利益を請求するのが難しい場合は、逸失利益の代わりに慰謝料増額を主張する方法もあります。

逸失利益は労働能力の喪失が基準になるので、顔に傷を負っても労働能力を喪失していないとして、逸失利益が認められない可能性があります。

一方、慰謝料は労働能力を喪失したかどうかに関係なく、精神的な負担や苦痛などに対して支払われるので、顔の傷によって慰謝料を増額できる可能性があるのです。

まとめ

顔の傷が外貌醜状に該当する場合、後遺障害の申請をして認定されれば、後遺障害慰謝料などを受けることができます。

後遺障害は等級が高いほど得られる金額が高くなりますが、顔の傷は判断が難しい部分もあるので、適切な認定を受けるには交通事故の経験が豊富な弁護士に相談するのが有効です。

また、交通事故の慰謝料には3種類の基準がありますが、弁護士に相談して交渉を依頼すれば、最も金額が高い弁護士基準で慰謝料を獲得できるメリットがあります。

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