交通事故による負傷が完治しない場合、損害賠償を請求できる?

診断

交通事故によって負った負傷が完治せず、将来においても回復が困難であると見込まれる場合、等級認定を得ることによって後遺障害として損害賠償を請求することができます。ただし、一般的に後遺症と呼ばれる負傷ではなく、きちんと認定を得ることが条件となります。

後遺障害とはどういうこと?

交通事故による負傷が起因し、完治が見込めない傷害のこと

交通事故に遭ってしまった場合、かすり傷からすぐに救急搬送される重傷まで、程度の差はあれ負傷を負っている場合がほとんどです。

交通事故で負う負傷として代表的なものは、打撲(皮膚や筋肉にダメージをうけ、内出血が起きたり腫れたりする)、捻挫(関節が捻じれることで腱が切れたり炎症を起こす)、脱臼(関節が衝撃によって外れてしまう)、骨折(骨が折れたり、潰れたりする)があります。

症状が明らかな場合、病院に行き診断書をもらう

上記のように、症状が明らかな負傷を負ってしまったら、事故を起こした直後に病院へ行って適切な診断と治療を受けましょう。

また後日、保険会社への保険金請求や事故を起こした相手との示談交渉がありますので、診断書が必ず必要となることも押さえておく必要があります。

交通事故で負傷を負ったと主張しても、診断書がなければ人身事故として扱われないということがあるのです。

診断書はどこでもらうのか?

交通事故による負傷においては、病院の外科や整形外科に診断と治療を受けるケースがほとんどですが、整骨院や接骨院で治療を受ける人もいます。しかし、医師以外の柔道整復師などが書いた診断書は、治療費の請求や示談交渉において信頼性がないものとして扱われてしまうことがあります。

きちんと病院に行き、医師が書いた診断書をもらうようにしてください。

診断書には費用がかかりますが、文書料として加害者に請求することが可能です。

後遺症と後遺障害の違いを把握する

交通事故に遭った場合に「後遺症が心配」という言葉をよく聞きます。

一般的にイメージする後遺症は、負傷を負った後、しばらくしてからさまざまな障害が現れることだと思われているのではないでしょうか。

交通事故における後遺症は、負傷する前は健康だったのに、負った負傷が完全に回復せず、身体の動きがおかしくなったり、痛みやしびれが出たり、といった神経障害が残る症状全体のことを指して言われています。

つまり、事故直後から自覚のある怪我でも、完治しなければそれは後遺症と認識されます。

後遺障害とは、労災や自賠責保険の請求などにおける用語

交通事故で損害賠償を受ける場合、後遺症と後遺障害という言葉が混在して使用されることがありますが、この2つの意味は微妙に違います。

一般的には、後遺症も後遺障害も同じ意味で使う人が多く見られます。

日常会話の範囲で交わされるのであれば、同じ意味で使ってもまったく問題はありません。

しかし、交通事故などで損害賠償の対象になるような場合ですと、後遺症と後遺障害は違った意味になってきます。

後遺症というのは前述の通り、負傷の症状が完治せず、何らかの症状が残ってしまうことです。

一方で後遺障害とは、労災や自賠責保険の請求などで用いられる保険の用語となります。

本ページでは、交通事故における損害賠償請求の対象となる障害の説明を行いますので、後遺障害という言葉を使っていきます。

後遺障害の定義は?

後遺障害の損害賠償請求を行うためには、次の条件を満たす必要があります。

  • 交通事故によって負った負傷が、将来において完治しないと見込まれること
  • その負傷が交通事故よって引き起こされたという因果関係が証明されること
  • その負傷によって労働能力の低下を伴うものであること
  • その負傷の症状が、自賠責保険の等級認定に該当するもの

交通事故後、すぐに医師の診察を受けることの意味

繰り返しになりますが、交通事故に遭ってしまった場合、必ず病院に行き医師の診察を受けましょう。

事故当初は、病院に行って治療するほどの負傷ではないと考え、治療費も不要だと思っても、思わぬ負傷を負っている場合があるのです。

むち打ちに代表されるように、自覚症状がなくても長期の治療を必要とするような後遺障害も多く、自分で負傷の程度は決めつけずに、必ず医師の診断を受けることが大切です。

事故直後に診断を受けないと、交通事故による負傷なのか、もともとあった症状なのかを判断できなくなり、因果関係が認められず、長年に渡り後遺障害に苦しむことになっても、一切の損害賠償を受けられない可能性もあります。

いつの時点で、後遺障害と認められるのか?

交通事故により負傷を負った場合、どこまでが負傷の治療の損害賠償で、どこからが後遺障害の補償になるのでしょう?

その基準点は、症状固定です。症状固定とは、治療を続けてもこれ以上症状が回復せず、何らかの症状が将来においても残ってしまうと診断された時のことです。

この判断を行うのは、負傷の治療を担当している医師で、受傷後6カ月程度が目安だと言われています。

治療の停止や症状固定を催促する保険会社

交通事故に遭って負傷し、治療を続けている場合、治療費を負担している保険会社から症状固定を行うように催促があったり、一方的に治療費の支払いを打ち切ると連絡があったりします。

保険会社の立場からすれば、いつまで続くのか分からない治療費の支払いを続けるよりも、後遺障害と認定してもらって、支払額を確定させてしまいたいという思惑があるのでしょう。しかし、加害者の代理人である保険会社の話を鵜呑みにして損害賠償金額を決めてしまうと、将来において十分な補償を受けられない可能性があることも事実です。

この場合、後遺障害の損害賠償を受けるためには等級認定という手続きを経なければならず、専門家でもない限り自分がどの等級が正しいのか判断することは難しいでしょう。

後遺障害の等級認定や損害賠償金請求については、弁護士など、交通事故に詳しい専門家に相談することをお薦めします。

示談交渉を始めるのも、基本的には症状固定の時から

交通事故によって負傷を負ってしまった場合は、治療が終了してから開始するのが原則です。

被害者が加害者に請求する損害賠償金には、交通事故で負った負傷の入院費や治療費のほか、通院にかかった交通費なども含まれます。

負傷の治療が完了するまでは、被害者が受け取るべき損害賠償金が確定しないので、完治した時点で示談交渉を始めるのが良いでしょう。

後遺障害が残った場合の示談交渉は、症状固定から始める

早く損害賠償金を受け取りたいからといって、慌てて示談交渉を開始してしまうと、示談が成立した後に別の後遺障害と診断されてしまった場合に、その障害が損害賠償の対象外になってしまいます。

事故後の後遺障害が確定され、医師から症状固定を言い渡されるのは一般的に事故から6カ月ほど経過してからで、この時期が示談交渉を始めるタイミングと考えて良いでしょう。

一方で、いくら症状が安定せず症状固定を遅らせたいといっても、損害賠償請求権には3年の時効があることに留意しておきましょう。

早期に示談合意を行った場合が有利な場合も?

大きな事故であっても、加害者に重い刑罰を科したくないという被害者がいます。

刑務所に入っているよりも、しっかり働いて損害賠償金を支払ってもらう方が良いと判断する場合もあるでしょう。

また、いたずらに交渉を長引かせていると思われるよりも、早く示談合意を行いたいと思わせた方が、誠意のある損害賠償内容になることもあります。

こういう時には、作成する示談書に「この示談合意後に発生した治療費や、明らかになった後遺障害については、別途協議すること」と記載しておけば、早期の示談合意が不利になることが避けられます。

しかしながら、交通事故後の示談交渉のテクニックは一般の方が持っているものではありません。

後遺障害が残った、あるいは残りそうな時の示談交渉については、交通事故に詳しい弁護士の力を借りた方が良いでしょう。

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