セックスレスで離婚はできる?慰謝料請求や切り出し方についても解説
セックスレスは、場合や状況により、法的な離婚請求ができる原因になることもならないこともあります。セックスレスに加えて不貞がある場合などは別ですが、単独のセックスレスの事実はデリケートな問題で証明が難しいので、裁判しようと思ってもうまくすすめられないこともあります。セックスレスが原因で離婚したいとき、有利に進めるためには正しい知識が必要です。困ったときには弁護士に相談しましょう。
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そもそもセックスレスとは?
夫婦がセックスレスになっていると、片方または双方が離婚を望むケースがあります。この場合の「セックスレス」とは、そもそもどういった状態なのでしょうか?セックスレスとは、夫婦間に性交渉がない状態です。民法において「夫婦は性交渉しなければならない」と書かれているわけではありませんが、性交渉は夫婦の重要な結合要素であると考えられています。
ただ、実際にはいろいろな理由で性交渉がないカップルがいます。このとき、夫婦双方が性交渉に対する欲求がない場合や高齢になって自然に性交渉がなくなった場合などには、あまり問題は起こりません。
問題になるのは、夫婦のどちらかが性交渉を望むけれども、相手がそれを受け入れないケースです。このような場合、性交渉を求める側は相手に対して、セックスレスを理由として離婚請求をすることがあります。
セックスレスは、性的不一致の一種
また、離婚原因になる場合には、広い意味での性的不一致もあります。性的不一致という場合には、セックスレスだけではなく、相手が変わった性的な嗜好を持っていてついて行けないケースや、お互いの性交渉の好み、方法などが合わないなどの問題も含みます。
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セックスレスを理由に離婚できる?
それでは、セックスレスを原因として離婚をすることができるのでしょうか?セックスレスが法律上の離婚原因になるのかが問題となります。民法上、離婚原因は、以下の通り定められています。それは、①不貞、②悪意の遺棄、③3年以上の生死不明、④回復しがたい精神病、⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由です(民法770条1項各号)。
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そして、セックスレスや性的な不一致は、上記の①~④には該当しないので、⑤のその他婚姻を継続し難い重大な事由になるかどうかが問題です。婚姻を継続し難い重大な事由とは、その問題があるため夫婦関係が破綻してしまうような重大事である必要があります。
セックスレスについては、その原因や具体的な夫婦の事情、お互いの性交渉へのこだわりなどによって、個別に判断する必要があります。つまり、セックスレスで離婚できるかどうかは、一概に言えずケースバイケースの判断が必要だということです。
また、セックスレスが直接離婚理由にならない場合でも、これが原因で夫婦が不仲になって夫婦関係が破綻し例えば長期間別居をしているような場合であれば、それが原因で婚姻を継続し難い重大な事由が認められて離婚できることもあります。
セックスレスで離婚できるケース
それでは、具体的にセックスレスが原因で離婚できるケースにはどのようなものがあるのかを見てみましょう。
セックスに支障がないのに拒絶するケース
たとえば、夫婦が両方とも20代などで年齢も若く、夫婦双方とも健康で性交渉をすることにまったく支障がない場合です。夫はサラリーマンで妻はパートの主婦、夜ご飯は7時頃に一緒に食べていて、寝る時間も朝起きる時間もだいたい同じだとします。
このとき、夫が妻に性交渉を求めても、妻が特に理由を説明することもなく一方的に拒絶を続ける場合などには、夫は不審に思いますし、不満も感じます。
こうした状況が長く続くと、夫婦関係も徐々に悪化してくるでしょう。お互いが夫婦関係を継続する意思が無くなることもありますし、喧嘩が絶えなくなってしまうこともあるかもしれません。そうなったら、セックスレスが原因で離婚することも認められやすくなります。
不貞がある場合には離婚が認められる
また、性交渉の拒絶によってセックスレスになる場合、拒絶する側が不倫しているパターンも多いです。そうした場合には、セックスレス以前に不貞が原因で離婚できます。たとえば先の例で言うと、妻が突然性交渉を拒絶し始めたのは、不倫していたからだったというような場合です。その場合には、夫は妻に対し、不貞やセックスレスを原因として離婚請求ができます。
セックスレスで離婚できないケース
次に、セックスレスが原因では離婚できないケースを見てみましょう。これについては、いろいろと考えられます。
自然に性交渉がなくなったケース
まず、夫婦が自然にセックスをしなくなったケースです。たとえば高齢になった夫婦は性交渉をしない方が多いです。
お互いに性交渉を望まないケース
また、夫婦が若く元気だとしても、お互いの生活時間帯が合わず、仕事が忙しくて疲れ切っているのでセックスする元気がない、という場合もあります。たとえば、20代や30代の夫婦であっても、どちらかが夜勤でどちらかが昼勤で、なかなか一緒に過ごす時間が取れず、お互いが仕事で疲れ切っているので家でゆっくり眠りたいというようなケースでは、性交渉がないからと言って即時に離婚できるとは限りません。
ただ、このような場合、夫婦のすれ違いが大きくなって溝ができてしまったら、それによって夫婦関係が悪化し、破綻してしまって離婚に至る可能性はあります。
病気のケース
また、セックスレスで離婚できないパターンとして、どちらかが病気のケースがあります。
たとえば、夫婦のどちらかが身体の病気にかかっていて性交渉をすると心臓などに負担がかかるケースもありますし、体力が弱っているので性交渉ができないこともあります。
また、夫が勃起不全などになっていて性交渉ができない場合があります。勃起不全と離婚についてはかなり難しい問題もあり、勃起不全が離婚原因になるというインターネットのサイトなども多いです。しかし、夫の治療意思やその他の状況も考慮されますので、症状があったからといってもちろん即時に離婚できるということではありません。夫婦でよく話しあい、お互いが納得した上で離婚にすすめていくのが正しい方法です。
セックスレスで離婚を望む人はどのくらいいるのか?
それでは、セックスレスが原因で離婚を望む人は、どのくらいいるのでしょうか?2013年に行われた調査によると、男性側が望む離婚理由の中で、性的不一致は5位の13.0%となっています。女性の場合には、8位の8.1%です。
この結果を見ると、男女ともに1割程度の人は、性的不調和を感じて離婚したいと望むことがあることがわかります。また、セックスレスに不満を抱きやすいのは、女性よりも男性であることも読み取れます。セックスレスの問題に悩む人は、それなりに多いのです。
セックスレスの離婚の問題点
夫婦間のプライベートで話が外に出ない
セックスレスについては、他の離婚理由にはない特有の問題があります。それは、これが完全に夫婦間の問題であり、閉じられたプライベートなものである点です。性交渉を拒絶されたかどうかと言うことは、夫婦にしかわからないものです。そのようなことを、誰かが確かめに行くことはできません。
また、セックスレスについての悩み自体が非常にプライベートです。通常、このようなことは人に相談しにくいものですし、親や友人にも打ち明けていないことが多いでしょう。そうすると、自分の中だけで問題を抱え込んで、どんどん苦しくなってしまいます。
証明が難しい
さらに、セックスレスは証明が非常に難しいです。自分が相手に性交渉を拒絶されたと感じていても、相手はそんなつもりはなかったというかもしれません。結局、夫婦それぞれの言い分しか証拠がないことも多く、実際の所どのような状況であったかを裁判の場で確認することができません。このようなことがあるので、セックスレスを理由として離婚請求するのは難しいのです。
セックスレスの離婚に必要な証拠
セックスレスを証明するためには、どのようなものが証拠になるのでしょうか?先ほどもご説明した通り、セックスレスは非常に証明が難しいです。証明資料としては、お互いの生活状況を記したメモや表、日記、今までの交渉経過を示す資料(メールや手紙など)などが役立ちます。
生活状況を示した表
まずは、夫婦お互いの生活状況を表にしてみることをおすすめします。詳細なものは不要なので、お互いが朝起きる時間と家に帰る時間、就寝時間程度で良いです。
これらを継続的につけていることで、相手が本来性交渉できる状態であるのに応じていないことが明らかになります。
日記
日記もセックスレスの証拠になります。自分から性交渉を求めた日には、その状況と相手からの回答、対応などを具体的に書き込みましょう。日記をつけるときには、毎日つけることをおすすめです。問題が起こったときだけにつけていると、後になって相手から「後に作り出したでっちあげだ」と言われるおそれがあります。
今までの交渉経過を示す資料
セックスレスについて、夫婦で話合いやメール、手紙でのやり取りをした場合には、その記録をとっておきましょう。たとえば、こちらが相手をメールで性交渉を誘ったときに、相手がメールの返信で断ってきたら、そのメールをとっておくなどのことです。このようなものが積み重なると、相手が性交渉を拒絶し続けていることを証明できます。
セックスレスが原因の離婚で慰謝料は請求できる?
セックスレスが原因で離婚ができる場合、慰謝料を請求することはできるのでしょうか?離婚の際、夫婦のどちらかに有責性があれば、慰謝料請求をすることができます。そして、セックスレスが原因の場合、それが理由のない一方的な拒絶などのケースでは、慰謝料が発生することがあります。
たとえば、若い夫婦で、特に理由もないのに妻が夫からの性交渉を拒絶し続けたようなケースでは、離婚時に妻が夫に慰謝料を支払わないといけないこともあります。ただ、セックスレスで離婚するとしても、どのような場合でも慰謝料が発生するわけではありません。
性的な不一致が原因で不仲になることはあっても、どちらが悪いとは言えないこともあります。そのような場合には、元々の夫婦関係の不和の原因がセックスレスであっても、慰謝料が発生しません。
セックスレスの慰謝料相場は?
それでは、セックスレスが原因で慰謝料請求ができる場合、その金額はどのくらいになるのでしょうか?これについても、ケースバイケースですが、だいたい100万円までであると考えると良いです。事案によっては10万円などになる可能性もあります。
セックスレス単独では、あまり高額な慰謝料は期待できないと言うのが実情です。セックスレスは、証拠集めも大変な上、慰謝料もそう多額は期待できない離婚原因です。
セックスレスの慰謝料が高額になるケース
それでは、セックスレスの慰謝料が高額になることはないのでしょうか?たとえば、セックスレスの原因が不貞である場合には、不貞による慰謝料が認められるので高額な慰謝料が発生します。この場合には、300万円程度の慰謝料が認められる可能性が高いです。また、以下のようなケースでは、比較的セックスレスによる慰謝料が高額になります。
- 不貞相手と性交渉している
- セックスレスの期間が長い
- 性交渉の拒絶方法が冷たい
- 問題改善のための話合いなどの取り組みに協力していない
- 婚姻期間が長い
- 未成年の子どもがいる
- 支払う側の収入が高い
- 支払う側の社会的地位が高い
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セックスレスで離婚を考える場合、弁護士に相談を
以上のように、セックスレスで離婚をする場合にはいろいろな問題があります。そもそもセックスレスで離婚ができるのかという問題もあり、ケースバイケースの判断が必要です。セックスレスが原因で離婚できるとしても、その証明は非常に難しいですし、慰謝料請求などの問題もあります。たとえば、相手が不貞をしていたら、離婚が容易になりますし、慰謝料も一気に高額になります。
セックスレスが原因で離婚をするなら、調停や裁判にするよりもなるべく当事者同士で解決した方が良いでしょう。ただし、不貞をしているなど他の離婚原因も絡むケースや、もともとはセックスレスが原因でもその後いろいろな問題が起こって、夫婦関係が完全に破綻したというような複雑なケースでは調停や訴訟をした方が良いケースもあります。EDなどの問題も非常にプライベートで難しい判断が必要です。
セックスレスと離婚については、自分では適切な判断をすることは難しく、間違った判断をすると不利になってしまうおそれもあります。今、セックスレスに悩んでいて離婚を考えている場合には、今後不利にならないためにも、まずは一度離婚問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
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