民法で定められた離婚の種類は4種類ある

離婚届民法では、離婚の種類を「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類に分けています。通常は夫婦が話し合って協議離婚をしますが、それができなければ調停離婚へと進み、それでも無理な場合はさらに審判離婚、裁判離婚へと進んでいきます。

夫婦の話し合いで決まる「協議離婚」

協議離婚を認めている国は数少ない

夫婦が直接話し合って財産分与や慰謝料・養育費・親権といった具体的なことを決め、お互いの合意のうえで成り立つ離婚を「協議離婚」と呼びます。日本では離婚する夫婦の90%が、協議離婚によって離婚を成立させています。

協議離婚の場合は、当事者同士の署名・捺印、それに証人2人のサインがある「離婚届」を提出することによって、簡単に離婚が成立します。ところが一歩海外に目を向けてみると、協議離婚を行っている国はごくわずか。裁判を行わないと離婚できない国が多いのに、驚かされます。特にイタリアなどは、1970年に離婚制度が導入されるまで、離婚は認められていませんでした。今でも別居してから3年以上経たないと、正式に離婚することはできないそうです。そして、3年後に家庭裁判所に赴き、裁判官の前で離婚する意思がないことを宣誓し、はじめて離婚が認められるのだそうです。

離婚の話し合いには十分な注意が必要

このように日本は協議離婚を行う数少ない国のひとつなのですが、協議離婚は手続き自体は簡単でも、話をまとめるとなるとかなり難しいものがあります。双方が「これだけは絶対に譲れない」と主張をし合って話し合いが難航したり、どちらかが法律やお金のことにうといために、泣き寝入りのような形で話が進んでしまう場合もあります。

また、協議離婚は弁護士などの第三者を間に入れて話し合う夫婦もいますが、当人同士だけで話し合って慰謝料や養育費などの細かい内容を決めている夫婦も大勢います。しかし、法律の専門家ではないので、どうしても内容に不備や漏れなどが出てしまうケースが少なくないのです。離婚した後で「あの事を話し忘れていた」と思って慌てることもあるので、やはり多少お金はかかっても、弁護士を間に入れて離婚協議を行うのが賢明な方法でしょう。

調停によって離婚が成立する「調停離婚」

離婚調停は、準備期間を含めると半年ほどかかる

夫婦の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の仲介によって離婚が成立する「調停離婚」へと進みます。相手が行方不明や心神喪失状態など、特別な場合を除いては、この調停をとばして裁判へ進むことはできません。

調停は、夫婦のどちらか一方が申立人となって、家庭裁判所に調停を申し立てることからスタートします。申立書を提出すると、裁判所から第一回調停の連絡があり、そこで双方の日程を調整。その後、自分と相手の両方に「調停期日呼出状」が届きます。

離婚調停は第一回調停から第三回調停まで3回にわたって行われ、1回の調停が終わると約1ヶ月~1ヶ月半後に次の調停が行われます。離婚調停の期間はおよそ4~5ヶ月。準備期間を含めると、半年ほどは見ておいた方が良いでしょう。

調停の期間中には、さまざまなことが起こり得る

はじめて調停を経験する人は、「いったいどんなことになるのだろう」と、不安を抱くこともあるでしょう。調停が行われる場所が“家庭裁判所”という名称になっているので、テレビドラマに出てくるような、あの裁判シーンを思い浮かべる人もいるかもしれません。

ところが実際の調停は、裁判とはまったく異なったやり方で進んでいきます。ひと言でいえば、離婚の話し合いの延長に、調停委員が入ってくるようなイメージです。調停当日は双方に別々の待合室が用意され、調停室にも交互に呼ばれるので、お互いが顔を合わせることもありません。相手がもし暴力を振るってくる危険性があれば、事前に調停委員にその旨を伝えておいた方が良いでしょう。

長い調停期間中には、さまざまなトラブルも起こり得ます。たとえば相手が調停当日に無断で欠席したり、脅迫などの嫌がらせをしてきたり、慰謝料を取られたくなくて財産隠しをしてしまう場合もあります。でも、今後の自分の生活を確保するためにも、ここでひるむわけにはいきません。全力で調停成立に向けて歩を進めましょう!

調停調書が作成されたら、10日以内に離婚手続きを

離婚調停の内容に双方が合意し、裁判所が妥当と認めると、調停は成立します。そして「調停調書」が作成され、申立人は離婚届と調停調書謄本を持って、10日以内に市区町村役場で離婚の手続きをします。

残念ながら双方が合意できず、調停での解決ができなかった場合は、調停不成立となります。これに不服があれば、裁判離婚へと進みますが、特別な場合のみ審判離婚へと進む場合があります。

特別な場合のみ成立する「審判離婚」

裁判官が職権をもって離婚を言い渡す

離婚調停や離婚裁判のことは聞いたことがあっても、「審判離婚は聞いたことがない」という人も多いのではないでしょうか?実際ほとんどの人は、審判離婚を経験することがありません。ごく稀なケースとして、調停が不成立後に行われる離婚方法です。

審判離婚とは、家庭裁判所が特別に審判を下す離婚方法です。たとえば離婚に合意しているのに心変わりをして出頭を拒否した、慰謝料など一部のみに食い違いがある、病気などの理由で出頭できないなどの特別な事情がある場合、裁判官が職権をもって離婚を言い渡すことがあるのです。

異議申し立てをすれば、審判離婚は無効になる

この場合、裁判官は強制的に離婚を成立させることができますが、審判後2週間は異議申し立てができ、異議申し立てがされれば審判は無効になってしまいます。そのため、双方が離婚を認めていながら出廷できなかった場合や、「相手とは意地でも合意したくはないが、裁判所が決定するのであれば仕方ない」と思えるような場合に有効な離婚方法と言えるでしょう。

お互いの主張をぶつけ合う「裁判離婚」

2回にわたる口頭弁論があり、判決へと至る

協議・調停・審判で決着がつかなかった場合、それを不服として「裁判離婚」に進む人もいます。離婚裁判は、まず家庭裁判所に「訴え提起」をし、2回にわたる口頭弁論があり、判決へと至ります。判決に納得がいかない場合は、控訴の申し立てもできます。

離婚裁判の段階に入ると、相手が「本当に夫婦として一緒に暮らしていた人なの?」と思うほど、豹変してしまうこともあるでしょう。お互いが原告・被告となって主張をぶつけ合うので、相当気持ちをしっかり持って裁判に臨まなければなりません。夫婦としての情や甘えはすべて捨てて、今後の自分の生活を確保するためにも、裁判に全力を尽くしましょう!

和解勧告を受けて、和解離婚に至る夫婦も多い

民事裁判の場合は、当事者同士のやり取りだけでなく、裁判官から和解を勧告してくるケースも少なくありません。裁判所が和解を勧告すると、一般的には和解の協議となり、当事者が合意すれば判決をしなくても離婚が成立します。

和解勧告を受けるタイミングはさまざまで、第一回口頭弁論で和解を勧告される場合もあれば、判決の手前で勧告されることもあります。もちろん、一度も勧告がなく判決に進むケースもあります。和解が成立すれば、裁判官が「和解調書」を作成し、離婚へと至ります。

このように、離婚には段階に応じてさまざまな方法があります。一番円満に解決できるのは協議離婚ですが、それでは解決できない問題を抱えている場合もあるでしょう。自分の資金面・時間面での調整をうまく図りながら、後になって「これで良かった」と心から思える形で、離婚へと進みたいものです。

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