審判離婚とはいったい何?実際になるのはレアケース
3回にわたる離婚調停が不成立に終わった場合、通常は調停不成立ということで終了してしまいますが、特別な場合にのみ「審判離婚」という形がとられることもあります。一般的にはあまり知られていない審判離婚ですが、いったいどんな離婚方法なのでしょうか?
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審判離婚に至るのは、こんなケース
審判離婚は、実際にはほとんど行われていない
家事審判法24条には、「家庭裁判所は当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のため、離婚、離縁、その他必要な審判をすることができる」と定められています。そのため、裁判官はたとえ調停不成立になっても、職権をもって離婚を言い渡すことができるのです。
この法律のもとに、家庭裁判所が特別に審判を下す離婚方法を「審判離婚」といいます。ただし、実際に審判離婚が行われることは、ほとんどありません。なぜなら、「当事者双方の申立てに反しない程度」という判断基準は非常に難しく、一歩間違えば当事者に大きな不満を残す可能性もあるからです。
審判離婚が行われるのは、このような場合
では、審判離婚という形で離婚に至るのはどのようなケースかというと、離婚調停によって話がまとまらず、裁判官が調停委員の意見を聞いたうえで「これは審判離婚に打倒」と判断した場合です。この場合は、裁判官が職権により強制的に離婚を成立させることができます。
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審判離婚の具体例
- 離婚に合意したにもかかわらず、夫婦の一方が心変わりをして出頭を拒否したとき
- 申し立てに対してほとんど合意しているが、一部のみ(財産分与・慰謝料の金額・親権者の指定など)に食い違いがあるとき
- 双方が審判離婚を望んでいるとき
- 実質的には離婚の合意があるが、病気などなんらかの事情で夫婦双方または一方が調停成立の際に出頭できないとき
- 子どもの親権などの理由で、早急に結論を出した方がよいと判断したとき
- 一方が作為的に調停を引き延ばそうとしているとき
- 離婚に合意できない理由が、相手への感情的なものである場合など、異議申立てをできる可能性がないとき
- 一方が外国人で、自国に戻る予定があるとき
審判離婚へと至ったAさんの場合
調停の途中で夫が行方不明に
離婚調停の途中で夫が行方不明になり、審判離婚へと至ったAさんの事例をご紹介しましょう。病気で入院中のAさんは、夫に対して親権者の指定と養育費を含めた離婚を求める調停を起こしていました。夫は離婚に合意しているものの、調停の途中から行方不明となり、弁護士が代理人として調停に出席するという状態でした。
すでに弁護士は、夫が行方不明になる前に離婚の了解を得ていたため、問題の焦点は親権者の指定と養育費のみに絞られました。そこで裁判官は、夫が将来的にも出頭することは不可能と判断。Aさんに親権者の指定をし、養育費に関する事項も審判により命じることとなりました。
このAさんのケースのように、離婚には合意できたものの養育費など細かい部分が決定できないために離婚できないケースには、審判離婚の存在価値は非常に高いと言えるでしょう。
審判離婚の流れ
①審判離婚の申立てをする
まずは「審判申立書」を裁判所に提出し、所定の金額を払って審判離婚の申立てをします。審判の申立ては、一般の調停事件ではできません。家事審判法に定める甲類(審判の申立てしかできない場合)や、乙類(調停でも審判の申立てでもよい場合)に該当した場合に、申立てが可能です。
②審判後2週間は、異議申し立てができる
家庭裁判所の判断によって離婚の審判が下されると、まずは審判確定後2週間以内が「異議申立て」の期間となります。この期間に異議申し立てがなければ、この時点で離婚が成立します。
ただし、審判によって自分に不利な決定がなされた場合は、この期間中に異議申立てをする場合もあります。その際は、審判が無効になると定められています。「そんなに簡単に無効になるとは」と思った人もいるでしょう。これが審判離婚の弱点でもあり、審判離婚の事例が少ない理由のひとつでもあります。
双方が離婚を認めていながら出廷できなかった場合や、「相手とは意地でも合意したくはないが、裁判所が決定するのであれば仕方ない」と思えるような場合には、審判離婚は有効になると言えるでしょう。
③審判確定
審判確定後2週間以内の異議申し立て期間が終わると、「審判確定」となり、離婚が成立します。
④必要書類の提出
その後は成立した日から10日以内に所轄の市町村役場に出向き、離婚届と裁判所が作成した審判確定証明書・審判所謄本を提出して、手続き完了となります。(提出先に本籍地がない場合は、戸籍謄本の添付が必要になる場合があります。)
審判離婚にかかる費用は、比較的安価
審判の申立てには2,000円が必要
東京地方裁判所の場合、審判離婚を行うには、まず審判申立書に添付する収入印紙代1,200円(ただし乙類と甲類の審判事件は800円)が必要です。申立ての際には、家庭裁判所に予納する80円の郵券(切手)が10枚必要です。合計すると2,000円以内なので、審判にかかる費用は比較的安価といえます。
離婚の審判の際には、これ以外に費用がかかることはほぼありません。ただし、財産分与で不動産や書画・骨董品・宝石などの鑑定が必要になる場合は、別途鑑定費用がかかります。家庭裁判所が依頼する鑑定費用は、比較的安価です。もし当事者がだいだいの価格を取り決めれば、鑑定も不要となります。
審判を弁護士に依頼する場合もある
弁護士に事件の代理人になってもらう場合には、弁護士に対して着手金と成功報酬を支払う必要があります。審判事件の報酬は、弁護士との話し合いによって決められますが、相談だけであれば30分5,000円程度が相場です。審判はあまり難しい手続きなどはないので、自分で行うこともできます。わからないことがあれば、家庭裁判所の相談窓口で相談することもできます。
外国人との離婚に、審判離婚が使われることがある
裁判所が審判することで、本国での離婚も認められる
夫婦のどちらか一方または双方が外国人の場合、日本で離婚する際に審判離婚を利用するケースもあります。日本人同士の場合は双方の合意によって協議離婚や調停離婚が成り立ちますが、外国人の場合はそれとは別に、本国での離婚手続きが必要だからです。たとえば日本人の夫とフランス人の妻が日本で調停離婚をした場合、フランス人の妻が本国に帰って数年後に再婚をしようと思っても、それはできません。本国では、婚姻している状態のままだからです。
その点、審判離婚は裁判所の下した離婚なので、本国法における「裁判所の関与したもの」の範疇に入り、本国での離婚も同時に認められることになります。
親権の争いから、審判離婚につながることもある
子どもの幸せを考慮し、裁判所が親権を審判する
親権の争いによって離婚調停が成立せず、裁判所の審判が下されるケースがあります。親権者の指定は、家事審判法における審判事項に該当するので、調停が不成立になると自動的に審判の手続きに進みます。もちろん希望しない場合は、取り下げも可能です。
親権の審判にあたっては、まず家庭裁判所の調査官が事実調査を行い、子どもをめぐる家庭環境を調べます。そして当事者に対する審理も行ったうえで、審判が下されます。「自分が育てる」「いや私が育てる」といった当事者同士の争いになった場合、親の思いを満足させるのではなく、あくまで子どもへの福祉を目的として裁判所が審判するのです。
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