和解離婚と認諾離婚の違いとは?新しい離婚の形!
離婚の話が裁判という形に進むと、多かれ少なかれ当事者同士が傷つけあうことになり、話が泥沼化していきます。それに歯止めをかけてくれるのが、平成16年からスタートした「和解離婚」と「認諾離婚」です。では、それぞれどういう離婚の形なのかを、ご説明しましょう。
和解勧告を受けて当事者が歩み寄る和解離婚
離婚訴訟中に、裁判官が和解を勧告
「和解離婚」と「認諾離婚」は、平成16年に新たに定められた、新しい離婚裁判の解決方法です。そしてこの2つの中でも特に数多くの夫婦が行っているのが「和解離婚」です。和解離婚とは、離婚訴訟中に当事者同士が歩み寄り、和解によって離婚裁判を終了させる方法です。和解離婚の形をとることで、夫婦がお互いに深く傷つき合うことなく、離婚裁判を早期解決へと導くことができます。
裁判というと、原告と被告がお互いを敵とみなして戦い、判決を勝ち取るというイメージがあります。しかし離婚裁判の多くは、決してそういう形では進んでいきません。訴訟中に裁判官は、できる限り判決による決定ではなく、和解に向けて話し合いを進める方向で舵をとろうとします。そして適切と判断した時点で、「和解勧告」を行うのです。
裁判官が和解勧告を行うと、原告と被告の両方に話し合いの場が持たれ、和解の意思があるか否かを確認します。そして、もしも和解が成立すれば、和解調書に両者が和解を認めた旨を記入して離婚が成立します。この和解調書は、判決と同じ効力を持ちます。和解離婚の申立人は、確定日を含めて10日以内に、離婚届と和解調書を各市町村に提出する必要があります。
もちろん、裁判官から和解勧告を受けたからといって、必ずそれに応じる必要はありません。和解勧告に納得できずに、そのまま審議を進めていく人もいます。ここでは、訴訟を進める中で自分の気持ちに変化があり、和解勧告によって離婚を成立させたAさんの事例を紹介しましょう。
控訴審で和解離婚へと至ったAさんの場合
Aさんは夫に家を追い出されるようにして別居を迫られ、離婚の請求を受けていました。Aさんには離婚の意思はなく、結婚生活を継続していきたかったため、夫に対して円満調停・婚姻費用分担調停を申し立てました。その結果、婚姻費用の調停が成立したことで、Aさんは生活費を確保することができました。しかし残念ながら円満調停は成立せず、夫からは離婚訴訟を提起されました。
夫が離婚を求める理由は、性格の不一致や親族とのトラブルでした。Aさんと夫は法廷でお互いの主張を戦わせ、結果はAさんの勝訴となりました。ところが、ここで夫はAさんに対して、控訴を申し立てたのです。Aさんはそのことを辛く受け止めながらも、第一審で勝訴し、自分の主張が認められたことで、ある意味心の整理がついたように思いました。
そして控訴審に進んだ時点で、裁判官から和解勧告があったのです。Aさんは裁判官と話し合いの機会をもち、結婚生活を続けたいと強く望んでいた自分の気持ちがいかに変化したかを、素直に伝えました。「離婚を望んでいる夫との未来を考えるよりも、これからの自分の人生がもっと豊かになる方法を考えよう」と決心したAさんは、高額の和解金を夫が支払うという条件で、和解離婚へと進んだのです。
裁判で一番大切なことは勝つことではなく、“幸せな道に進むこと”
離婚裁判が始まり、お互いが相手を蹴落とすような熾烈な戦いを繰り広げると、“裁判に勝つことだけがすべて”と思ってしまいがちです。そのために有利となるような証拠は、どんな手を使ってでも入手したいと思うでしょう。実際、そうして裁判に裁判を重ね、お互いが次第にボロボロになっていくケースも少なくありません。
しかし、離婚裁判で大切なことは勝つことではなく、お互いがお互いにとって“一番幸せな道に進むこと”です。すでに破綻している夫婦の関係が、裁判によって元の関係へと戻るのであれば、離婚を拒否することも意味があるでしょう。しかし、多くの離婚裁判は、そうした結果を生むことはありません。
Aさんが頑なに離婚をこばんでいたのも、あまりにも冷酷に自分を捨てようとした夫に対する、恨み辛みがあったからです。そして、裁判によって自分の主張が認められたことで、夫を恨む気持ちも和らぎ、和解という選択肢が生まれてきたのです。
そうした裁判の当事者の迷いや葛藤を裁判官がくみ取り、二人にとってベストの方向へと導くよう促すのが、和解勧告なのです。控訴を繰り返して泥沼の戦いを繰り広げるよりも、和解離婚をすることでより良い道へと進んだ夫婦は少なくありません。
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原告の請求を被告が認諾する認諾離婚
被告が原告の請求を認めることで、離婚訴訟が終わる
「認諾離婚」とは、離婚訴訟を起こしている間に、被告が原告の訴訟の言い分を全面的に受け入れることで訴訟が終わる解決方法です。裁判所が認諾証書に、原告の離婚請求を被告が認諾した旨を記載し、訴訟は終了。離婚は成立し、認諾証書は判決と同じ効力を持ちます。
認諾離婚が成立した場合は、確定日を含む10日以内に、離婚届と快諾調書の謄本を各自治体に提出する必要があります。この認諾離婚を行うケースは、和解離婚に比べてけっして多くはありません。
最初は争う姿勢を見せた妻が、裁判当日に認諾をしたBさんの場合
精神病の妻を持つBさんは、ある日妻と大喧嘩になり、警察を呼ぶほどの騒ぎになってしまいました。2人の間に子どもはなく、これといった財産もありませんでした。「妻とはもう何年も、精神的なつながりはまったくなく、一緒にいることが非常に苦痛に感じる。これ以上結婚生活を続けるのは難しい」と判断したBさんは、離婚と慰藉料(精神的な苦痛に対する損害賠償金)の支払いを求める請求をしました。それに対して妻は、Bさんと全面的に争う姿勢を見せました。
しかし裁判の当日、妻から離婚請求についてのみ認諾の答弁書の提出があり、無事離婚は成立しました。
離婚を目的とする場合に限られる認諾離婚
認諾離婚は、原告の請求が離婚だけを目的にとする場合に限られています。そのほかに親権や養育費・財産分与の申し立て伴う場合には、使えません。もしもBさん夫婦の間に子どもがいた場合や、慰謝料などがからんでいた場合は、この認諾離婚の制度は使えませんでした。
しかし、多くの離婚裁判は、養育料や慰謝料・親権問題などがからむ場合が少なくありません。その場合は、先に紹介した和解離婚へと進むケースが多いでしょう。離婚裁判が長期化すると、話がどんどんエスカレートして泥沼化するだけでなく、裁判費用なども際限なくかさんでいきます。最初は真摯に真実を追求するつもりで始めた裁判でも、日が経つにつれて心のしこりが徐々に肥大化し、報復や意地の張り合いへと変わっていってしまうケースもあります。
そのような事態を少しでも回避するため、こうした新しい離婚方法を利用することによって、より円満な離婚へと舵を切ることができるでしょう。
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