DVを理由に離婚できる?離婚するための方法やかかる期間について解説
DVは、日本でも離婚原因の上位に上がっていますが、DV被害者は自分の力だけで離婚をすすめるのが難しいです。自分で離婚の話をすると、酷い暴力を振るわれるおそれがあるからです。DVに遭ったら慰謝料請求もできますが、そのためには証拠も揃える必要がありますし、身に危険が及ばないように適切にすすめるには弁護士に対応を依頼することが必要です。
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DVは離婚原因の上位になっている
DVは、家庭内暴力のことです。多くは夫から妻に向かって振るわれるものを言います。酷いケースでは、夫が妻に向かってほとんど毎日のように殴る蹴る等の暴力を振るうこともありますし、1回の暴力も2~3時間以上つづくこともあります。妻が全身アザだらけになったり流血したりすることは普通ですし、骨折したりすることもあります。
このように壮絶なDV被害ですが、DVがあると、離婚理由になります。そして、DVは、日本でも離婚原因の上位になっています。2013年に行われた調査によると、妻側の離婚申立の理由の中で、DVは4位の24.7%となっています。夫側の離婚請求の理由の中では、8位の8.1%です。妻側の離婚申立理由で最も多かったのは性格の不一致で44.4%、2番目が生活費を渡さないこと(経済的DV)で27.5%、第3位はモラハラ(精神的DV)の24.9%なので、妻側の離婚申立理由のうち、広い意味での「DV」は非常に多いことがわかります。
DVは、決して他人事ではないので、どのような夫婦もこの問題をしっかりと考えていく必要があります。
DVで離婚をする際の問題点
妻のみに危険が及ぶ
DV被害が起こるとき、他の離婚原因には見られない問題点がいくつかあります。まずは、妻の身体に危険が及ぶことです。実際に妻に暴力が振るわれるので、妻が大けがをすることがありますし、ときには命に関わることもあります。酷いDVが殺人事件や過失致死事件につながることもあります。
DVを放っておくと子どもにも悪影響
また、子どもに対する影響も心配です。日常的に父親が母親を殴っているのを見て育った子どもは、父親を憎みながらも自分も将来DV夫になってしまう割合が高いと言われています。女の子の場合には、父親を憎みながらもなぜか自分でもDV夫を選んでしまう傾向があるとも言われます。
離婚が進まないのはDV被害者がDV加害者に依存している場合がある
さらに、DV被害者は、加害者に依存する傾向があります。酷いDVを受けていたら、普通はそれが嫌になって家を出るのではないかと思うかもしれませんが、実際にはそうではありません。
DVの加害者は暴力を振るった後、それまでの行動が嘘のようにしおらしくなることが多いです。泣きながら土下座して、「もう二度としない、許してほしい」「お前が以内と俺は生きていけない」「出て行くなら自殺する」等と言って懇願するので、妻もついつい情にほだされて家に残ってしまいます。実際に、自分が家を出て行ったらこの人は自殺してしまう、と思い込んでいる妻も多いです。
DV夫は飲酒によって暴力を振るうタイプも多く、飲酒したとき以外はよい人、おとなしい人であることも多いので、問題がより複雑になっています。ところが、家に残っていると、またふとしたきっかけで暴力が振るわれます。
このように、DV事案では、妻自身が夫に依存していたり夫から離れられなくなっていたりすることがよくあるので、妻はDVを誰にも相談しないことが多いです。そうなると、問題が誰にも知られず、被害が長期化したり深刻化したりしやすいです。
離婚調停・裁判でDVが認められる要件
DVが原因で離婚する場合、調停や裁判で離婚することも多いですが、DVは離婚原因になるのでしょうか?民法上、離婚原因は以下の通りと決められています。具体的には、不貞と悪意の遺棄、3年以上の生死不明、回復しがたい精神病、その他婚姻を継続し難い重大な事由です。DVは最初の4つに該当しないことが明らかなので、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題です。
婚姻を継続し難い重大な事由とは、夫婦関係が破綻してしまうような事情のことです。そこで、DVの程度や頻度によって、離婚原因になるかならないかが変わってきます。以下では、DVで離婚が認められる場合と認められない場合の例を見てみましょう。
DVで離婚が認められる例
DVで離婚が認められるためには、DVの程度が酷く、頻繁である必要があります。たとえば、殴るときに平手ではなく拳で殴っていたり、殴る場所も顔やお腹、背中などの危険な場所であったり髪の毛を抜けるくらいに引っ張ったりすると、酷いDVと言いやすいです。
妻が怪我をしたかどうかも重要です。全身に酷いアザが残ったり流血を伴う怪我をしたり、肋骨などを骨折したりすると、離婚理由になりやすいです。また、どのくらいの頻度で暴力が行われるかも重要です。たとえば、1週間に2~3回以上あると非常に頻度が多いと言えますし、1ヶ月に2~3回程度であっても、その都度酷い暴力があったら頻繁と言えるでしょう。1回の暴力が続く時間も問題になります。たとえば、1回の暴力が2~3時間以上続くような場合には、やはり離婚が認められやすくなります。
DVで離婚が認められない例
次に、DVで離婚が認められない例を見てみましょう。それは、DVの程度が軽いケースです。たとえば、夫が妻に対して暴力を振るうとは言っても、平手で1回殴るだけ、という場合には、離婚原因にならないでしょう。
また、暴力が振るわれる頻度も問題です。半年に1回や1年に1回、それ以上の期間の場合にはDVで離婚が認められる可能性は低くなります。ただし、1回の暴力の程度が酷い場合にはその場合でも離婚できる場合はあるので、自分がDV被害に遭っているのではないかと思う場合には、弁護士に相談してアドバイスをもらう方が良いです。
DVの証拠をそろえる方法とは
DVを原因として離婚したい場合には、その証拠を揃えなければなりません。DVの証拠にはどのようなものがあるのでしょうか?
診断書
まずは、診断書が重要です。DVが原因で怪我をしても、治ってしまったら何の証拠も残りません。そこで、きちんと病院を受診して医師に診断書を書いてもらいましょう。このとき、お金がもったいないと思って病院に行かずに我慢する人がいますが、そうなると証拠が残らず後で困ることになるので、必ず病院には行くべきです。また、病院に行ったとき、恥ずかしいのでDVのことを言わず「転んだ」とか「階段から落ちた」と説明する人がいます。しかし、そうなるとやはり後から不利になってしまうので、正直に「夫に殴られた(蹴られた)」と医師に説明することが大切です。
写真
次に、身体にできた傷を写真にとることが大切です。アザや傷ができたりした場合、その部分を写真に撮りましょう。自分ではうまく撮れない場合には、友人や家族などに撮影してもらうと良いです。
日記
さらに、日記をつけることも役立ちます。DVが行われたら、暴力の内容をなるべく順序立てて詳しく具体的に書き残しましょう。このように具体的にDVの記録を残しておくと、後に警察に保護してもらうときや、裁判所でDVの保護命令を申し立てるとき等にも役立ちます。また、日記をつけるなら毎日つけておくことが役立ちます。DVが行われた日だけの日記だと、後になって相手から「後から勝手に書いたでたらめだ」と言われてしまうおそれがあるからです。
DVの離婚慰謝料相場は100~300万
DVで離婚する場合には、相手に対して慰謝料請求ができます。慰謝料は、違法な行為に基づいて相手に精神的損害を与えた場合に発生する損害賠償金のことですが、自分の責任で離婚原因を作ってしまったときには離婚慰謝料が発生します。度を超えたDVも有責行為なので、DV事案では慰謝料が発生するのです。
DVを原因として慰謝料請求をする場合、その金額は100万円~300万円くらいになります。DVの程度やDVが継続していた年数、夫婦の婚姻年数などによって大きく金額が違ってきます。
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ただ、DVの加害者はカッとしやすい人が多いので、慰謝料請求をされたら興奮してまた暴れ出すおそれもあるので、慰謝料請求するときには慎重に対処する必要があります。
DVが原因で離婚する方法
DV被害があるので離婚したい場合には、どのような方法で離婚するのが良いのでしょうか?
DVが原因の場合、協議離婚は難しい
この場合、相手と直接離婚の話合いをする方法は、おすすめできません。日本では、離婚する夫婦の9割以上が協議離婚であり、話合いによって離婚する夫婦が非常に多いです。ところが、DV夫に対して離婚したいと言うと、夫が興奮して暴れ出してかえって被害が悪化することがあります。そうなったら、慰謝料を請求するどころの話ではありません。そこで、DVの場合、当事者同士の話し合いで離婚することは考えない方が良いです。
調停離婚を利用しよう
まずは別居を!
DV被害者が相手と離婚したいなら、まずは相手と別居した上で調停を利用すべきです。同居したままの状態だと、相手から暴力を振るわれるおそれが高いので、必ず先に別居をしましょう。そして、別居左記の住所は知られないようにする必要があります。住所を知られると、押しかけられて暴力を振るわれるおそれがあるからです。
そこで、引っ越しをしても住民票を移さないか、移すとしても「住民票や戸籍抄本の閲覧制限」の手続きをしておきましょう。閲覧制限をかけておけば、夫が住民票や戸籍抄本(新住所が載っています)を閲覧することができなくなります。閲覧制限は、住民登録をするときに役所で手続きすることができるので、住民票を異動するなら忘れず一緒に手続きしましょう。
離婚調停で話しあう
その上で、離婚調停によって話をすすめます。離婚調停では、制度として相手と顔を合わせずに話し合いをすすめることができることになっています。ただ、通常の事案の場合、調停委員が1つの部屋に待機していて夫婦それぞれが申立人と相手方の待合室に入っているので、廊下などですれ違ったり、相手がこちらの待合室に押しかけてきたりするおそれがあります。
そこで、DV事案の場合、事前に家庭裁判所に申告をして、特別の配慮をしてもらう必要があります。具体的には、夫婦それぞれが別々の部屋に待機して、調停委員に異動してもらうようにします。そうすると、相手はこちらがどこにいるかわからないので、相手に押しかけられることもなく安心です。
夫からのDV・暴力を離婚弁護士に相談するメリット
DV被害が大きくならないように、適切な対応をとることができる
DVが原因で離婚したい場合には、弁護士に依頼することを強くおすすめします。DV被害者は、相手に対して強い恐怖感を抱いていることが多く、自分では離婚の手続きを進めることができないことが非常に多いです。相手のことを考えただけでフラッシュバックして涙が出たり震えが止まらなくなったりする人もいます。実際に手続きを進める際も、相手が押しかけてきたり再度暴力を振るわれたりすることのないよう、慎重に対応しなければなりません。
このような適切な対応をとるためには、法律のプロである弁護士に代理人になってもらうのが一番です。弁護士に離婚相談をしたら、まずは今の被害状況から抜け出す手伝いをしてくれます。警察に相談をしてDVシェルターに入る方法、自分で賃貸物件を借りて家を出る方法、住民票を移さないか、移すとしても閲覧制限をつけて相手から身を守る方法などを教えてくれます。また、弁護士に代理人になってもらったら、弁護士が相手に通知書をおくってくれますが、このことによって相手も滅多なことはできなくなります。弁護士を相手に事件を起こしたら、警察沙汰になってしまうおそれもあるからです。
離婚弁護士に相談することで精神的に安定する
また、弁護士に相談をすると、精神的に安定します。DV被害者はそれまでに受けた辛い体験によって精神的に疲弊していることが非常に多いですが、法律のプロである弁護士が味方になってくれているという安心感のもとに相手と離れて生活をしていたら、徐々に本来の自分を取りもどして元気になることができます。
法的な手続きがスムーズに行える
また、調停などの離婚手続きも適切に進めることができます。調停の申立や裁判所徒のやり取りなどをすべて代行してくれるので、DV被害者は辛い状況にムチ打って自分で行動しなくて済みますし、DV事案であることを告げて、相手と絶対に会わないように配慮してもらう手続きなどもとってもらえるので安心です。
離婚弁護士が相手と話をすると、相手の態度が変わることもある
さらに、弁護士に対応を依頼すると相手と直接やり取りすることが一切無くなります。相手への連絡は全て弁護士がしますし、相手からの連絡は全て弁護士が受けることになるので、非常に負担が軽くなります。さらに、慰謝料請求もしやすいです。妻が直接夫に慰謝料請求をしたら応じるはずのない夫でも、弁護士が請求した場合には態度を変えることもあります。
このように、DV被害者が弁護士に相談すると、非常にメリットが大きいです。今、DVに遭っている場合には、大きな事件にならないうちに早めに弁護士に相談すべきです。
DV・暴力による離婚の弁護士費用の相場
DVが原因で弁護士に対応を依頼した場合の弁護士費用の相場を解説します。
離婚弁護士への法律相談料
まずは法律相談料がかかります。これは、どこの事務所でもだいたい30分5000円(+税)です。無料で相談を受けてくれる事務所もあります。
着手金
実際に協議離婚の交渉や調停を依頼すると、着手金がかかります。協議離婚の場合には、着手金はだいたい10万円~20万円です。調停になると、着手金は20万円~30万円くらいになります。
報酬金
離婚事件が解決したときには、報酬金が発生します。報酬金とは、事件が解決したことにもとづく費用で、事件の解決内容に応じて変わってきます。離婚事件の報酬金は、基本的には30万円~50万円くらいですが、相手から慰謝料を回収できた場合には、その金額の10%~15%くらいが報酬金として加算されます。
DV・暴力が原因の離婚協議、完了までにかかる期間はどのくらい?
DVを原因として離婚する場合にかかる期間は、協議離婚と調停離婚のケースで異なります。
協議離婚の場合には、だいたい1ヶ月~3ヶ月くらいです。それ以上かかるなら調停を利用する事が多いでしょう。調停になると、だいたい3ヶ月~6ヶ月くらいかかります。協議離婚から調停に移行して離婚する場合、全体として半年~9ヶ月くらいの期間がかかる事案が多いということです。はじめから調停をしたら、3ヶ月~半年もあれば離婚できます。
DV・暴力で悩むなら、まずは弁護士に相談を
以上のように、DV被害を受けていると、被害者の身に危険が及ぶので放っておくべきではありません。DV夫は、妻に対し「お前が出て行くなら俺は自殺する」とか「俺が死んでもいいのか」などと行って来ることもありますが、実際に妻が出て行っても自殺しません。
DV被害に遭っているなら、相手のことより自分のことを考えるべきです。そのためには、適切な方法で離婚手続きを進めるべきです。特に離婚事件の場合、慎重に対処しないと暴力が繰り返されて事件になってしまうおそれもあります。
この点、法律のプロである弁護士に依頼すると安心ですし、確実に離婚手続きを進めて慰謝料請求をすることなども可能です。今、DVに遭っている人や今後離婚姿態と考えている人は、まずは一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。
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