子供の親権は何歳まで?成人した子どもの戸籍はどうなる?
離婚後の子供の親権は、子供が成人する18歳まで有効となります。
離婚時に子どもが既に成人(18歳以上)している場合、親権を考える必要はありません。ただ「親権」と「戸籍」や苗字の問題は、それぞれ分けて考える必要があります。
このほか、子どもが未成年であっても結婚をした場合には「成人」と見なされ、親の親権から離れ、親権者を決定する必要は無くなります。本記事では離婚時、子どもの親権は何歳までか、離婚後の戸籍や苗字の問題について詳しく解説していきます。
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離婚後の子供の親権は何歳まで有効?
親権は未成年の子供に適応されます。つまり、子供の親権は、子供が18歳になるまで有効です。
日本では明治時代以来140年もの間、成人(成年年齢)は20歳と定められていましたが、2022年4月の民法改正により18歳へと引き下げられました。
この成年年齢引き下げが反映され、現在は18歳以下の成人していない子供にのみ、父母の親権が及ぶことになります。
なお、子供が複数人いる場合、親権者がそれぞれの子供により異なる場合もあり得ます。
離婚後に成人した子どもの親権はどうなる?
子どもが成人している場合は親権者を決める必要がない
両親の離婚後、子供が未成年の場合には、子供一人につき一人の親権者を決める必要があります。
ただし、子供が18歳以上の場合、「親権者」を決定する必要はありません。子供が18歳になり成人へと達した時点で、その子に対する両親の親権は消滅するためです。
子どもの親権|未成年・成人の違い
子どもの年齢が18歳未満 | 親権を決定する必要がある |
---|---|
子どもの年齢が18歳以上 | 親権の決定は必要なし |
離婚届には、親権者の定めを記入する項目があります。子どもの年齢が18歳未満の場合、離婚届に親権者の指定がない場合は、離婚届は受理されません。一方、子どもの年齢が18歳を超えていれば、親権者の欄を空白にしても(離婚届は)受理されます。
苗字と氏とは
苗字は「家族の名」のことで、山田太郎さんの場合は「山田」を苗字と言いますが、法律上は氏(し)と呼ばれ、一般には姓(せい)と呼ぶ場合があります。
親権者を決めかねたり、子どもの氏を変えることで子どもの生活に支障をきたすことを心配したりする場合、「子が成人をするまで、離婚をしない」と決める夫婦も多いです。
実際、熟年離婚の割合は少なくありません。令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、令和4年度の離婚総数(179,096件)全体の約21.8%(38,990件)、5分の1強が同居期間20年以上の夫婦となりました。
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今後、現在国会での議論が進んでいく共同親権が導入された場合は、その取扱いも変わっていきますが、現状では離婚時に父親か母親、どちらが子どもの親権者か、定める決まりです。
親権者を決めづらいからといって、子が巣立つタイミングまで離婚を待ち続けるのは、既に夫婦関係が破綻している夫婦にとっては、精神的に負担が大きいものです。離婚問題を早期解決したい方は、一人で問題を抱えずに、信頼できる離婚弁護士に相談してみましょう。
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子の結婚に親権は影響しない
民法上、男女ともに18歳になれば父母の同意がなくとも当人同士の合意があれば婚姻が認められています。
18歳で子供は成人に達するため、子の結婚に対して親権が影響することはありません。
かつては子どもが結婚をした場合、未成年でも成人と見なされていた
なお、子の婚姻に対して親権が一切影響しなくなったのは2022年4月の民法改正以降のことです。
それ以前は、親権者である親の同意を前提に、男性は18歳、女性は16歳から結婚が認められていました。
当時の成年年齢20歳に照らせば男女ともに未成年にあたる年齢ですが、未成年の子どもでも結婚をした場合には、婚姻をもって「成人」と見なされていました。
離婚後に成人した子どもの戸籍や苗字(姓)はどうなる?
両親が離婚した場合でも、子どもの戸籍は、もともといた離婚前の戸籍に残ります。
親が離婚したとしても、手続きをしなければ、子どもの戸籍が、離婚後の親権者の戸籍に移動することはありません。すなわち、子どもは、夫婦が婚姻の際、夫の苗字を名乗り夫が戸籍の筆頭者として届け出ていた場合は夫の戸籍に、妻の苗字(氏)を名乗り妻が戸籍の筆頭者と届け出ていた場合には、子どもは妻の戸籍に残ることになります。
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親の姓と子どもの戸籍の関係
離婚前(夫婦の婚姻時) | 離婚後 |
---|---|
両親の婚姻時、妻が夫の苗字を名乗った | 子どもの戸籍は、父親の側に残る |
両親の婚姻時、夫が妻の苗字を名乗った | 子どもの戸籍は、母親の側に残る |
海外の場合「夫婦別姓」は、珍しいことではありません。しかし日本の場合、夫婦同姓が基本であり、婚姻後の夫婦は同じ苗字(氏)を名乗ることになるのです。
ただし、婚姻後の苗字(氏)は妻のものでも夫のものでも自由に選択できます。例えば、山田太郎さんが田中花子さんと結婚した場合、婚姻後の苗字は田中太郎としても法律上問題はありません。
しかし「妻の苗字」を名乗る夫婦の割合は少ないです。内閣府男女共同参画局によると、令和4年に婚姻届を提出した夫婦のうち、妻の苗字を選択した夫婦は全体のわずか4.3%だけでした。
このため、離婚後の子どもの苗字は、夫の苗字(氏)・戸籍のまま残るというパターンが大多数と言えます。
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離婚後の子どもの苗字(氏)を決定する方法
このように離婚後の子どもの苗字(氏)は離婚前の苗字と同じとなりますが、子どもが苗字を変えることは可能です。
この手続きは「子の氏の変更許可申立」と言い、家庭裁判所に書類を申請すれば、子どもの苗字は夫から妻の苗字(または妻の苗字から夫の苗字)に変更できます。
ただし「子の氏の変更許可申立手続き」には、以下の書類と手続きが必要となり、一定の時間と手間が掛かります。
子の氏の変更許可申立手続きに必要な書類
- 子の氏の変更許可申立書
- 申立人(子ども)の戸籍謄本
- 父・母の戸籍謄本(父母離婚の場合は、離婚の記載がある戸籍謄本)
- 収入印紙(子どもひとりにつき800円)
- 連絡用の郵便切手(申し立てをする家庭裁判所に問い合わせのこと)
下の画像は、裁判所が配布している「子の氏の変更許可」申立書の見本です。
「子の氏の変更許可」申立書の見本
申立書の書き方ですが、子どもが15歳未満と15歳以上で書き方が変わります。下に裁判所が作成した「書き方の見本」を載せておくので、それぞれの書類を比較してみてください。
子の氏の変更許可(子どもが15歳未満の場合)
子の氏の変更許可(子どもが15歳以上の場合)
家庭裁判所に「子の氏の変更」が認められた後、市区町村役場に届け出を行い、子どもの氏(苗字)が変更となります。また「子どもの戸籍」については、届出人の住所地の役場に入籍の届けを行う必要があります。
詳しい手続きの方法は、裁判所のページを参考にしてください。
参考リンク:子の氏の変更許可(裁判所)
また「子の氏の変更許可」手続きについては、離婚問題を専門に扱う離婚弁護士に相談するのが一番です。弁護士に任せておけば、複雑な親権や戸籍・氏の変更方法について、分かりやすく解説を行い、法的手続きを進めてくれるので安心です。
子の氏の変更許可に掛かる時間
申立人本人が家庭裁判所に出向いて手続きをした場合、即日処理審判を利用することで「申し立てから一日」で戸籍の書き換え手続きが完結します。
即日処理審判とは
申し立てた当日に、子の氏の変更許可を終了する取り扱いのこと。「離婚した後の父親又は母親の氏への変更と父親又は母親死亡後の母親又は父親の復氏に伴う氏の変更で,事由が生じてから1年以内で,申立をする子供が30歳未満で婚姻していない場合」に限り、家庭裁判所における「即日処理審判」が認められています。
なお、子どもが15歳未満の場合は、親権者が家庭裁判所に出向き「子の氏の変更申請」を行う流れとなります(※ 各家庭裁判所は月曜日から金曜日の毎日9時〜16時まで受付を行っています)。
郵送の場合は、即日処理審判とはならず、2週間程度の期間が必要となります。
親の離婚で氏を変更した子どもは、成人後、元の姓に戻すことも可能
親の離婚後「氏の変更をした子ども」については、成人から1年間の間(18歳~19歳になるまで)「今のままの姓で良いのか」前の姓に戻すかどうか選択する余地が与えられます。
これは、民法791条4項に定められた「復氏」の制度に基づくものです。
民法第791条
4.前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から1年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
子の氏の変更許可手続きは弁護士に相談を
このほか、子の氏の変更許可がスムーズに受理されるよう、必要な書類の作成は弁護士に相談した上で進めておくと安心です。子どもの氏の変更許可について分からないことがあれば、離婚弁護士に相談をしてみてください。
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15歳以上なら親権は子どもの意思が尊重される
子どもが未成年であっても概ね「15歳以上の子ども」については、裁判所は親権者の決定にあたり、子ども本人の意思も確認します。
子どもが15歳を過ぎれば、自分の人生は「自分にも決定権がある」と考えるものです。このため、幼子のように両親だけの意見で親権を決めるのは難しく「子どもがどちらの親に親権を持ってもらいたいのか」それぞれの意見を聞き、親子間で決める必要があります。
なお、子どもの姓を変える場合、子の年齢によって手続きの方法は異なります。子どもが15歳未満の場合には親権者など「法定代理人」が子どもの代わりに「子の氏の変更手続き」を行います。
一方、子どもが15歳以上になると、子ども自身が申立人として「子の氏の変更」を申し立てることができます。
このほか、弁護士に申し立ての代理をお願いすることも可能です。後々、親権問題で揉めないためにも離婚問題を専門に扱う「離婚弁護士」に相談するのがベストでしょう。
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親権者が死亡した場合の子どもの親権
親権を持つ親が死亡した場合、法律では「未成年後見人」を選ぶ必要があります。民法839条では「未成年者の親権について、遺言で未成年後見人が指定できる」としています。
民法第839条
第一項 未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りでない。
第二項 親権を行う父母の一方が管理権を有しないときは、他の一方は、前項の規定により未成年後見人の指定をすることができる。
また、遺言などにより「未成年後見人の指定が無い」場合には、親族や利害関係人の請求により未成年後見人を選定します。
民法第840条 第三項
未成年後見人を選任するには、未成年被後見人の年齢、心身の状態並びに生活及び財産の状況、未成年後見人となる者の職業及び経歴並びに未成年被後見人との利害関係の有無(未成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と未成年被後見人との利害関係の有無)、未成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
なお未成年後見人として、もう一人の親(=生存している親)の親権を復活させることが可能です。
民法第819条 第六項
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。
上の「民法819条6項」にあるとおり、裁判所に適切かどうか認められた場合には、親権者変更手続きを行い「親権」を復活させる手続きが行えます。
なお、子どもの親権者変更については、時間も手間も掛かることであり、素人では太刀打ちできない部分が多くなります。法的な部分については弁護士に相談の上、手続きを進めると良いでしょう。
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補足:親が再婚した場合、子どもの親権と戸籍はどうなる?
離婚後、親が再婚をした場合の「子どもの親権と戸籍」ですが、子どもの戸籍と再婚後の母親の戸籍が別々になります。
つまり一つの家庭に、二つの戸籍が同居するかたちとなるのです。
離婚後、親が再婚をした場合の「子どもの戸籍」
- 再婚をした夫と妻だけの戸籍
- 妻が除籍された状態で子どもが残っている戸籍
このように、戸籍と親権は「別のもの」として考えてください。離婚後、子どもの戸籍は離婚前と同じですが、親権は実父母のどちらかを一人「親権者」として届け出を行います。
そして「親が再婚をした場合の戸籍」ですが、子どもと再婚相手の男性が普通養子縁組をする方法や子どもと再婚相手の男性が特別養子縁組を行う方法のほか、法的親子関係を形成しない「養子縁組無し」とする方法が選択できます。
親の再婚に伴う子どもと親(再婚した男性)の関係
普通養子縁組 | 法的な親子関係が結べるが、戸籍の続柄には養子(女の子の場合は養女)として記載される。 |
---|---|
特別養子縁組 | 子どもが6歳未満(一緒に住んでいた場合は8歳未満)の場合、戸籍に「養子や養女」などの記載がなく、法的にも「本当の親子関係に近い」家族が形成される。 |
養子縁組なし | 子の戸籍は離婚前と同じ、同居をする男性(継父)と子どもの戸籍は別のものとなり法的親子関係は形成されない。 |
なお養子縁組を行った場合、子どもの苗字(氏)は養親の苗字を名乗ることになります。
親の再婚に伴う子どもの苗字
親子の関係 | 再婚後の子どもの苗字 |
---|---|
普通養子縁組 | 子どもの苗字は養父母の苗字を名乗る |
特別養子縁組 | 子どもの苗字は養父母の苗字を名乗る |
養子縁組なし | 離婚前・親の再婚前の苗字と同じ |
子どもの普通養子縁組や特別養子縁組の仕組みについては、下の記事にて詳しく解説しています。
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離婚後の子どもの親権や戸籍、苗字変更まとめ
原則、離婚後の子の戸籍は「離婚前と同じ」ですが、子どもが成人した場合には、離婚届における「親権者の欄」を空白にしても受理されます。
離婚をしても、戸籍と親権者、苗字の問題はそれぞれ分けて考える必要があります。なお親が再婚した場合には「親権の問題をどうするのか」再び、養子縁組の手段や方法について考え直す必要があります。
このほか未成年者の親権者が死亡した場合は、後見人を決める必要があります。また家庭裁判所への手続きによって、非親権者を親権者にすることも可能です。
離婚や再婚に伴う親権問題、未成年の子の親権や苗字の変更問題については、離婚問題のエキスパートである「離婚弁護士」に相談してください。今回取り上げた親権の問題だけでなく、子の養育費や離婚に伴う慰謝料についても弁護士が問題を解決してくれます。
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