期限の利益とは?喪失事由や対処法を分かりやすく解説
借入の契約時に期限の利益という単語を聞いたものの、一体なんだろうと思う方が大半だと思います。期限の利益は、簡単に言うと借金の当事者にとって「返済日が来るまでは借金の返済をしなくてもよい」メリットがある仕組みです。
しかし、期限の利益は誰にでも認められるわけではありません。そこで返当記事ではそんな期限の利益について詳しく解説するとともに、期限の利益の喪失事由と呼ばれるものや喪失通知が来た時の対処法について解説していきます。
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期限の利益とは?どんなメリットがある?
期限の利益とは、簡単に言うと期限が来るまで当事者が得る利益のことを指します。
たとえばお金を借りる場合、借入をした人間はあらかじめ決めた期限までは貸金業者に返済を迫られないで済むというメリットがあります。
これが期限の利益で、存在している間は貸金業者は定められた返済日が来るまで債務者に借金の返済を求めることができません。
そのため、債務者としては「急に返済を迫られたらどうしよう」といった不安を感じずに済みますし、安心して返済計画を立てられます。
分割返済もできる
まとまった金額を借りる場合には、「分割返済をする」という取り決めをするケースも少なくありません。
こうした取り決めができるのも、期限の利益があるからです。期限の利益がある限りは突然一括返済を求められることにはならないため、債務者は安心して分割返済を行うことができます。
期限の利益の喪失で起こるデメリット
期限の利益は、債務者にとってはメリットの大きいものです。しかし、無条件に期限の利益が認められるわけではありません。
契約違反をした場合、延滞を繰り返した場合などのように、債務者が何か問題を起こしたときには期限の利益を失ってしまうことがあります。
債務者が期限の利益を喪失した場合、貸金業者はすぐにでも借金の返済を債務者に請求できるようになります。それにより、債務者が被るデメリットははかりしれません。
一括返済を求められる
分割返済をしている場合は一括返済を求めることも可能になるため、一度に高額の返済を請求されるかもしれません。
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自宅に住めなくなる(住宅ローンの場合)
とりわけ借入金額の多い住宅ローンの場合、すぐに何千万円もの返済資金を作ることは現実的ではありません。
まとまった金額のお金を用意するために、せっかく手に入れた自宅を売却しなければならなくなる可能性もあります。
銀行口座が凍結される(銀行系のローンの場合)
銀行から借金をしている場合、期限の利益を喪失するとその銀行に持っている預金口座が凍結されてしまう可能性があります。
借金の返済が滞った場合、銀行としては債務者の預金口座から貸したお金を回収しようとするからです。
口座が凍結されると、預金はもちろん、入金もできなくなってしまいます。
特に、給与の振込口座が凍結された場合は、会社に借金トラブルが知られてしまうかもしれません。
期限の利益が喪失になる事由
債務者が期限の利益を喪失してしまう事由としては、次のようなものが挙げられます。
民法137条に該当した場合
民法では、期限の利益の喪失に関する規定が設けられています。
民法137条
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
これによれば、自己破産した場合、担保として提供した建物を火の不始末で全焼させてしまった場合などでは、債務者は期限の利益を主張することができません。
期限の利益喪失条項に該当したとき
民法の規定に挙げられた以外の理由で、期限の利益を喪失する場合もあります。その1つが、契約書の「期限の利益喪失条項」に該当した場合です。
期限の利益喪失条項の内容
期限の利益喪失条項とは、「一定の場合に期限の利益を失う」という内容の条項です。
一般的に期限の利益喪失条項では、「○回分割支払いが滞ったら、期限の利益を喪失する」といった内容が定められています。
実際にお金を借りるときには、契約書に期限の利益喪失条項が盛り込まれている場合がほとんどです。
期限の利益喪失条項の扱い
分割返済の支払いを延滞した場合、期限の利益喪失条項によって期限の利益を喪失する可能性があります。
期限の利益喪失に至るまでの延滞回数は、契約によってまちまちです。
たとえば、住宅ローンは6回の場合が多いといわれていますが、普通にお金をサラ金から借りた場合は3回、場合によっては1回の延滞でアウトということもありえます。
気になる人は一度、お金を借りたときの契約書をチェックしてみましょう。
契約違反をした場合
年収や職業を偽って契約をしたなど、貸したお金の回収に支障をきたすような契約違反行為があった場合も期限の利益を喪失する可能性があります。
再生手続等に入った場合
先ほども紹介したように、自己破産などの再生手続に入った場合も、債務者は期限の利益を失います。
期限の利益喪失通知が来た時の対処法
借金の返済日が来たにも関わらず、延滞を続けていると「期限の利益喪失通知」という書類が届くことになります。
期限の利益喪失通知は、「記載されている期日までに滞納分を支払わない場合には期限の利益を喪失する」という内容の通知です。
通知が来たからといっていきなり期限の利益を喪失するわけではありませんが、万が一放置してしまった場合には一括返済を求められても文句は言えません。
期限の利益喪失通知が来てしまった場合、手遅れになる前に対処法を考える必要があります。
期日までに滞納した借金を返済する
通知に記載された期日までに滞納した借金を返済すれば、期限の利益を喪失せずに済みます。
滞納した分を返済できそうな人は、すぐに返済しましょう。
債権者へ相談してみる
期日までに支払いが難しい場合は債権者に相談する、という方法もあります。
直接交渉するのが難しい場合はあらかじめ弁護士に相談し、交渉をサポートしてもらうのもおすすめです。交渉のプロを仲介することで、話し合いがまとまる可能性が高くなります。
債務整理をする
借金の金額が大きすぎる、毎月の返済額が多すぎるといった事情がある場合、返済を続けること自体が難しくなってしまう可能性があります。
そのような場合は、債務整理で一度借金を整理することも検討しましょう。
債務整理の種類
債務整理は、貸金業者との交渉あるいは裁判所を通した手続を通じて借金を減額する方法です。任意整理、個人再生、特定調停、自己破産の4つの方法があります。
そのうち、任意整理と特定調停は貸金業者との話し合いで借金を整理する方法、個人再生と自己破産は裁判所を通じて借金を整理する方法になります。
債務整理の特徴
債務整理のメリットは、成功すれば借金の総額や毎月の返済額を減額できる可能性があることです。遅れた返済を待ってもらうのではなく、借金による金銭的な負担そのものが軽くなる点に特徴があります。
自己破産以外の方法では自宅を手放さずに済むため、住宅ローンの返済で困っている人も活用可能です。
どのようなタイプの債務整理が向いているかは、本人の収入の状況や借金の金額によって変わってきます。専門家に相談し、最適な方法を提案してもらいましょう。
期限の利益喪失になりそう(なった)時は弁護士に相談
借金の返済が苦しくなり、期限の利益を喪失してしまいそうなときは、弁護士に相談するのもおすすめです。
特に毎月の返済額が収入に対して多くなりすぎてしまった場合、返し続けるのが難しくなります。
債務整理のように借金自体を減額できる方法もありますので、一度専門家にご相談ください。最近は無料相談を行っている法律事務所なども多いです。
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