会社破産(法人破産)とは?倒産後の借金・流れ・手続き・費用を徹底解説
会社の経営状況が悪化した場合、早急に弁護士に相談して債務整理を進めることが重要です。法人破産(会社破産)をすることで負債が消失し、経営で頭を悩ます日々から解放され再スタートを切れます。
今回はそんな法人破産の流れやメリット、費用などを紹介しています。
目次[非表示]
- 法人(会社)破産とは?
- 法人破産の効果
- 法人(会社)破産と代表者の関係
- 法人(会社)破産のメリット
- 法人(会社)破産のデメリット
- 法人破産と「民事再生」「特別清算」「会社更生」の違い
- 法人・会社の破産手続きの流れ
- 法人・会社の破産にかかる費用
- 法人破産するお金、費用がない!破産手続きは可能?
- 法人(会社)の破産で債務は免責される?
- 法人(会社)が破産すると、税金はどうなる?
- 法人破産したとき、従業員への影響は?
- 法人が破産した場合、登記手続きは必要?
- 法人破産が認められるための要件
- 法人破産の申立方法~必要書類の内容・書式を解説
- 法人破産ができないケース
- 法人破産を成功させるための注意点
- 代表者が個人破産するタイミングについて
- 法人(会社)破産 法テラス利用時の注意点
- 法人破産で弁護士に依頼するメリット
- 法人・会社の破産を検討するなら弁護士へ早めに相談を!
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法人(会社)破産とは?
そもそも「法人破産(会社破産)」とは何なのでしょうか?
これは読んで字のごとく「法人」や「会社」が「破産」することです。以下で「法人」「会社」と「破産」の意味をご説明します。
法人とは
法人とは、人であることによって当然に権利義務の主体となることが認められる自然人と異なり、「法律によって権利義務の主体となることが認められているもの」のことです。
たとえば一般に「会社」と呼ばれる株式会社や有限会社、合同会社などの営利法人や、財団法人、社団法人、NPO法人、医療法人、弁護士法人、司法書士法人など、各種の「法人」があります。
「法人」には「会社」が含まれますが、会社=法人ではなく、会社ではない法人(一般社団法人など)も存在します。法人は会社より広い概念です。
破産とは
破産とは、負債と資産を清算する手続きです。債務超過や支払不能となってこのままでは負債を支払えない状態になったときに、そのときの手持ち資産によって負債を可能な限り支払い、清算を行います。これが「破産」です。
個人の場合には破産の後に「免責」が行われるので「破産したら借金が免除される」と思われていることがありますが、免除されるのは「免責」の効果であって破産の効果ではありません。会社の場合には「破産」するだけで「免責」されないので「破産によって債務が免除される」ことはありません。
ただし、法人が破産すると、法人そのものが消滅するため、事実上、債務が免除されることとなります。
以上のように、法人の1種である「会社(株式会社や合同会社、合資会社など)」が負債と資産を清算することを「会社破産」、会社を含めたより広い法人格である「法人」が負債と資産を清算することを「法人破産」と言います。
法人破産の効果
法人が破産するとどのような効果があるのか、みてみましょう。
会社は消滅する
まず、法人が破産するとその法人は「消滅」します。つまりこの世から消えてなくなるということです。この点は、個人の破産と大きく異なるところです。
個人の破産の場合、破産しても自然人としての個人が抹消されることはなく、再スタートできます。一方、法人破産の場合、「法人の再スタート」ということはあり得ず、破産した時点で終了です。
ただし代表者個人はもちろんその後も生き続けますので再スタート可能です。会社だけがなくなってしまいます。
代表者個人への影響
会社と代表者個人は異なる人格であり、会社の債務がそのまま代表者の債務となるわけではないので、会社が破産しても代表者が必ず破産しなければいけないわけではありません。
ただし、経営破綻に瀕しているような会社の場合、会社の代表者が会社の債務の連帯保証人になっていることが多く、その場合、代表者が個人の財産で会社の債務を返済できればよいのですが、返済が不可能なときは、代表者個人も破産せざるを得なくなります。
従業員への影響
会社が破産すると、従業員への影響は甚大です。会社の破産によって会社はこの世から消滅しますので、その後従業員を雇い続けることは不可能です。
そのため、従業員は職を失うことになってしまいます。また未払いの賃金や退職金が発生するケースも多々あります。
会社の財産への影響
破産する会社にも一定の資産があるものです。会社が破産すると、会社の財産はどうなるのでしょうか?
破産とは、資産と負債を清算する手続きですから、破産すると資産はすべて失われます。特に会社破産の場合には会社が消滅するので、個人のように「自由財産(破産しても本人の手元に残る財産)」を認める必要性がありません。
法人の財産は「すべて」換金されて債権者に配当され、きれいさっぱりなくなります。
法人や会社が破産すると代表者にどのような影響があるのか、もう少し詳しくみておきましょう。
法人(会社)破産と代表者の関係
法人や会社が破産すると代表者にどのような影響があるのか、もう少し詳しくみておきましょう。
代表者の個人の破産が必要となるケース
先ほど述べたように、今の日本では、中小企業の代表者の多くが、金融機関からの借入金債務などの会社の負債を連帯保証しています(個人保証)。
個人保証している場合には、会社が借入金を支払わなくなったとき、代表者が代わって全額を支払う義務が発生するので、代表者個人も一緒に破産せざるを得なくなってしまいます。
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また会社経営が苦しくなったとき、代表者が個人的にカードローンを利用したり自宅を抵当に入れた不動産担保ローンを利用して、会社の運転資金を用意するケースがあります。
その場合にも、個人ローンを返済できなくなって代表者が破産せざるを得なくなるケースが多いです。
代表者が個人破産する効果
自然人である代表者が破産する場合には、法人である会社の破産とは効果が違ってきます。
会社の破産の場合、会社そのものが消滅することになり、財産を残しておく必要がありませんので、すべての財産は債権者への配当の原資となります。
これに対して、代表者の破産の場合、所有する財産の多くは手放さなければいけないものの、破産後も自然人としての代表者個人の生活もあるので、一定の範囲の現金、預貯金等の財産を残すことは法律上認められています(自由財産)。
また、代表者個人の債務は、基本的には免責されます。ただし、個人の住民税や所得税、固定資産税などの滞納があれば、それらは破産した後にも残ります。さらに個人が破産した場合には、いわゆる「ブラックリスト」状態になります。
つまり、個人信用情報に事故情報や異動情報、破産情報が登録されてローンやクレジットの審査に一切通らない状態となり、不便な状態が5~10年間程度続く不利益を受けます。
以上のように、会社が破産すると、会社そのものだけでなく、代表者や従業員にも大きな影響を及ぼすので、注意が必要です。
法人(会社)破産のメリット
他方で、法人破産には以下のようなメリットがあります。
苦しい経営から解放される
1つは代表者が苦しい経営から解放されることです。会社経営の状態が悪化してくると、経営者は非常に精神的に追い込まれます。
負債を支払えるのか、きちんと融資を受けられるのか、どこから資金調達すれば良いのか、従業員に給料を払えるのか、などと考えて夜も眠れないことがあるでしょう。
また、負債の支払いが滞ると、債権者が取り立てにやってくるケースもあります。
しかし破産してしまえばこのような悩みからはすべて解放されますし、安心して眠れるようになるでしょう。
家族も安心できる
代表者が会社経営について悩んでいると、家族にも影響が及ぶものです。妻が一緒になって心配することもあるでしょうし、今後経営状況がより悪化したら家族にも苦労をかけることになってしまいます。
会社をスッキリ破産させて別の仕事を始めれば、生活も安定して家族も安心できますし、会社経営のことで心配をかけることもなくなります。
取り立てが止まる
会社が負債を支払えなくなると、債権者からの厳しい取り立てを受けるケースが多々あります。会社の債権者は個人のような貸金業者ではなく、買掛金を持った取引先やリース債権者なども多くなるので、取引先の企業が直接取り立てにやってきます。
ときには会社の事務所に乗り込んでこられたり、倉庫にやってきて商品を引き上げられたりするケースもみられます。
破産手続きを弁護士に依頼すると、こうした無茶な取り立てを止められるのでメリットが大きいです。
0から再スタートできる
会社が破産すると会社は消滅してしまいますが、代表者は会社のしがらみから解放されて、0から再スタートすることが可能です。
会社が破産しても代表者の権利に制限が加わることはないので、どこかに勤めることで、新たな生活をするための収入も得られます。
「やり直しができる」というのは破産の一番のメリットと言えるでしょう。
法人(会社)破産のデメリット
一方、法人破産には以下のようなデメリットもあります。
有形無形の資産が失われる
法人が破産すると、法人の所有していた「財産」はすべて失われます。法人名義の不動産や預貯金などの資産もなくなりますし、ブランドや信用などの形のない財産もなくなってしまいます。
法人を設立してから経営者が積み上げてきた一切合切が破産によって一挙になくなるダメージは大きいものです。
会社がなくなってしまう
法人が破産すると、その法人は消滅します。創業者にとって、自分が設立して育てた会社がこの世からなくなることは、子供がいなくなるのと同じように辛く感じるものです。
また親から引き継いだ会社などであっても、自分の代で破産させてしまったとなると、大きな責任感と落胆、自信喪失につながってしまうでしょう。
代表者は信用を失う
会社が破産すると、債権者にとって債権を回収できなくなるという結果になるので、会社の代表者は信用を失うことになります。
また、「以前に会社を経営していて破産させた人だ」という噂が広まると、さまざまな意味で居心地が悪く感じることもあるでしょう。
個人保証していたら代表者の財産もなくなる
会社が破産をしても、代表者が破産をしなければ代表者の財産には影響がありません。しかしすでに述べたとおり、現実には代表者が個人保証していることが多いので、法人と代表者がセットで破産する事例が多々あります。
そのような場合には代表者の個人的な財産は一部を除き失われるので、その後の自分や家族との生活に大きな支障が及んでしまいます。
法人破産を選択するときには、こうしたデメリットも理解した上で行うことが大切です。
法人破産と「民事再生」「特別清算」「会社更生」の違い
法人の経営状態が悪化してきたとき、破産以外にもいくつかの「倒産」方法があります。代表的な方法が、民事再生と特別清算、そして会社更生です。以下で、それぞれがどういった制度なのか、破産との違いをご説明します。
民事再生とは
民事再生の基本
民事再生とは、債務者の抱えている債務を圧縮して、圧縮された負債を完済することにより、債務者が再生するための手続きです。
民事再生は、個人でも法人でも利用できます。民事再生をすると、債権者の同意を得ることにより、負債を大きく圧縮できます。
そして、その負債を完済すれば、会社をつぶさずに維持することも可能です。また民事再生の場合、これまでの会社経営陣が残留し、自ら再生手続きを進めていくことも認められます。
破産との違い
破産との違いは、民事再生の場合、会社が消滅しないで存続できることです。破産すると会社が消滅しますが、民事再生では圧縮された債務を計画通りに返済できれば、会社をつぶす必要がありません。
また民事再生の場合、債務は「圧縮」されるだけで、返済を免れるわけではありません。破産すると債務は免責、もしくは消滅するので、この点も異なります。
民事再生の場合には、債務者(会社経営者)自身が主体となって手続を進められる点も異なります。破産の場合、経営陣は完全に会社から離れて破産管財人が換価と配当の手続きを進めることとなります。
民事再生する場合、破産手続きを取った場合に換価、配当される財産価値未満には圧縮できないので、圧縮されれば支払える程度に会社の収益力があることが必要ですし、債権者の同意も必要なので、希望しても認められないことがあります。
その場合にはたとえ民事再生を申し立てたとしても、再生手続きが廃止されて破産手続きに移行するので注意しましょう。
民事再生を選択すべきケース
- 会社を残したいケース
- 圧縮されれば支払いができそうな場合
- 人に任せず自分の手で会社の債務整理を進めたいケース
特別清算とは
特別清算の基本
破産と似た制度に「特別清算」があります。特別清算は、債務超過の疑いがあって通常の清算手続きを進められない株式会社が、裁判所の関与のもとに清算を進める方法です。
特別清算を利用できるのは、株式会社のみです。
破産との違い
特別清算と破産の大きな違いは、破産の場合には裁判所が選任する破産管財人が進めるのに対し、特別清算の場合には「特別清算人」が進めるところです。破産管財人は、会社と利害関係のない弁護士が選任されます。これに対し特別清算人には、会社の元代表者がそのまま就任するケースが多数です。
そこで自主的に清算したい場合には特別清算の方が向いています。
次に特別清算を利用すると、手続を進めるに際し「債権者の同意」を得る必要がある場面が多々あり、協定を締結する必要もあります。これに対し破産の場合、債権者の同意は不要で破産管財人が裁判所と協議しながらどんどん手続を進めて会社を消滅させます。
特別清算を利用すべきケース
- 支払い不能や債務超過の程度が比較的小さい
- 自分の手で会社の清算手続きを進めたい
特別清算を選択したケースでも、債権者との協議がうまくいかないケースや事案が複雑で管財人の関与が必要なケースでは、特別清算手続きが廃止されて破産手続きに移行されることがあります。
会社更生とは
会社更生の基本
会社更生とは、比較的大規模な会社が再生するための手続きです。裁判所が選任した会社更生人が中心となり、負債を圧縮しつつ会社のスポンサーなどを探して会社の再生を目指します。
合併などの事業再編を利用するケースもあります。
破産との違い
会社更生と破産の違いは、会社更生の場合には会社を存続させられるけれど、破産の場合には会社が消滅することです。
また会社更生を利用するのは多数の関係人の利害調整が必要となる比較的大きな株式会社です。破産のように、個人や小さな会社、株式会社以外の法人は利用しません。
会社更生を利用すべきケース
- 大会社(株式会社)の事業再生
- 会社を残したい
以上のように、会社の「倒産」手続きにもいろいろな種類があり、ケースに応じて最適な方法を選択できます。悩んだときには弁護士に相談してみましょう。
法人・会社の破産手続きの流れ
法人(会社)が破産するときにはどのような手続きの流れになるのか、流れを追って確認していきます。
準備
破産するときには、申立の準備作業が必要です。必要書類や資料がたくさんあるので集めないといけません。弁護士に手続を依頼するならば、弁護士を探して委任契約を締結し、着手金を支払う必要もあります。
ただ、破産手続きを弁護士に依頼する、申立書などの書類は弁護士が作成してくれますし、集めるべき書類についても指示を受けられます。また弁護士が受任通知を送った時点で債権者からの督促は来なくなるので、依頼者はかなり楽に準備を進められます。
申立て
必要書類等の準備が整ったら破産申立を行います。弁護士に依頼した場合には、申立手続は弁護士が行ってくれるので、法人代表者などの依頼者が裁判所に行く必要はありません。
破産審尋、破産手続き開始決定
申立をすると、一般的に破産手続きを開始するかどうか判断するために「破産審尋」が行われます。破産審尋とは、裁判官が破産者と面談して質問をする手続きです。このときには、法人の代表者も裁判所に行って裁判官と面談しなければなりません。
ただし、東京地方裁判所の本庁で申し立てた場合は、裁判官と申立代理人弁護士で協議を行う「即日面接」が行われるため、「破産審尋」が行われることはほとんどありません。
破産審尋の結果、破産の要件を満たしていると判断されると「破産手続き開始決定」がおります。なお申立後、申立代理人の弁護士と破産管財人予定の弁護士、裁判官の3者で面談をして、破産手続き開始決定される裁判所などもあり、各地の裁判所によって運用状況が異なります。詳しくは地域の弁護士に確認すると良いでしょう。
破産管財人の選任
破産手続き開始決定があると、「破産管財人」が選任されます。破産管財人とは、会社の財産や負債の状況を調べたり、財産を換価して配当したりする人です。会社破産の場合には「同時廃止」がなく「管財事件」しか存在しないので、破産手続き開始決定と同時に必ず破産管財人が選任されます。
管財人が選任されると、管財人に対して会社の財産や負債、帳簿などの資料をすべて引き渡します。その後は会社に届いた郵便物はすべて管財人の事務所に届くようになります。
財産の換価、調査
管財人が選任されると、管財人は会社の資産や負債の状況、代表者に不正行為がないかなどを調べ始めます。そのため管財人と代表者が何度か面談をすることになり、代表者は管財人からいろいろと話を聞かれます。もしも財産隠しや債権者隠しなどが明らかになれば、破産手続きに支障が発生するので注意が必要です。
また管財人は、会社の財産をどんどん現金化していきます。不動産や動産は売却し、債権は回収して管財人の口座に入金して、債権者に配当するための資金を貯めていきます。税金などの優先する債権は随時支払をします。
債権者集会
管財人が換価の業務をしていく間、裁判所で何度か「債権者集会」が開かれます。ここでは管財人が、現在の調査や換価の状況などについて、出席した債権者に報告します。個人の債権者などがいる場合には、債権者集会が紛糾するケースもありますが、債権者が金融機関などの場合には騒ぎになることは通常ありません。
債権者集会は月1回程度開かれますが、当初は債権者の出席数が多くてもだんだん出席しなくなる事例が多数です。
配当
換価業務が終了すると、管財人は各債権者に対して配当を行います。破産債権者には種類があり、優先的に配当を受けられる債権者と一般の債権者、劣後する債権者があります。管財人は法的な順序に従って配当を終え、裁判所に報告します。
廃止、終結、法人の消滅
換価も配当も終了すると、破産手続きが終了します。そして法人が消滅し、裁判所書記官の職権によって破産手続き廃止や終了の登記が行われ、会社の登記も閉鎖されます。
法人・会社の破産にかかる費用
法人や会社が破産するときには、どのような費用がかかるものでしょうか?必要になるのは実費と弁護士費用ですので、それぞれご説明します。
実費
実費とは、裁判所に支払う印紙代など実際にかかる費用です。弁護士に依頼せず自分で破産を進める場合にも必要です。法人破産の実費は、以下の通りです。
- 申立印紙代 1000円
- 官報公告予納金 13000~15000円程度
- 破産管財人の予納金 20万円~
法人破産の予納金とは
法人破産で特に高額になりやすいのは「破産管財人の予納金」です。
これは、破産管財人に対する最低報酬を保証するためのお金で、管財事件では必ず必要です。小さな事件で弁護士に依頼した場合には20万円で済みますが、複雑な案件であったり本人申立て、司法書士申立てであったりすると、50万円以上かかることが通常です。
また大きな破産事件となると、100万円以上の予納金が必要になるケースもあります。
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法人(会社)破産の弁護士費用相場
法人が破産するときには、弁護士費用も高額になります。法人破産は個人破産と比べて必要書類や調査事項なども多く、手間暇がかかるためです。
破産の弁護士費用は「着手金(事件を依頼した当初にかかる費用)」です。事件の規模や複雑さにもよりますが、50万円~(プラス消費税)となることが多いでしょう。負債総額に応じて着手金の金額が上がる弁護士事務所もあります。
少額管財と一般管財について
法人破産の手続きには、マニュアル的な対応で比較的スピーディに解決できる「少額管財」と、個別的な対応が必要となる複雑な「一般管財」の2種類の手続きがあります。
少額管財であれば予納金は原則20万円(弁護士代理の場合)、弁護士費用も50万円程度となりますが、一般管財になると予納金も弁護士費用も高額になり、それぞれが100万円を超えるケースなどもあります。
実際には多くの事案(負債総額が少ない中小企業のケースなど)にて少額管財が選択されています。一般管財になるのは負債総額が大きく法律関係も複雑な大企業が破産するようなケースです。
少額管財か一般管財かは裁判所が決めるので、申し立てる経営者や会社が希望を述べられるものではありませんが、その地域の弁護士であればだいたいどちらになるか、判断がつくものです。依頼するときに予想を聞いておくと、費用の目処を立てやすくなります。
法人破産するお金、費用がない!破産手続きは可能?
会社の経営状況が悪化して破産したいとき、手元にお金が残っておらず破産にかかる費用を支払えない場合があります。そのようなケースでは、以下のような対応をしましょう。
弁護士に依頼する
まずは、会社破産を弁護士に依頼することをお勧めします。会社が破産するときには、必ず管財事件となりますが、多くの企業が利用する「少額管財」の場合、弁護士代理にすると予納金が安くなることが多いからです。
たとえば東京地裁では、司法書士代理や本人申立てなら予納金が50万円~、弁護士代理なら原則20万円です。自分一人で申し立てるのはそもそも現実的ではありませんし、司法書士に依頼するなら弁護士に依頼した方が全体の費用が安くなるでしょう。
費用の安い弁護士を探す
法人破産の手続きは非常に複雑で難しいので、専門家である弁護士に依頼する必要性が非常に高いです。ただ、弁護士費用は依頼する事務所によってさまざまです。50万円で受けてくれる事務所もあれば、80万円かかる事務所もあります。手元にお金がないのであれば、なるべく費用(着手金)の低い弁護士を探しましょう。
予納金、着手金を分割払いさせてもらう
法人破産にかかる主な費用は管財予納金と弁護士の着手金です。これらをすべて一括払いしようとすると、70~100万円近い費用が必要となってしまいます。そこで、できるだけこれらを分割払いさせてもらう方法をおすすめします。まずは着手金を分割払いさせてくれる弁護士を探して依頼しましょう。
管財予納金も、裁判所によっては分割払いを認めてくれる地域があるので、そういった運用が行われていないか弁護士に確認して、分割払いできるなら、利用させてもらいましょう。たとえば東京地裁では管財予納金を4回の分割払いにできる運用をしています。
代表者の個人破産は法テラスを利用する
会社が破産するとき、代表者本人も個人破産するケースが多いです。しかし会社と代表者2者分の破産をする場合、弁護士費用も2人分必要となり、非常に高額になる可能性があります。
このようなときには、代表者の個人破産について「法テラス」を利用することをお勧めします。
法テラスの民事法律扶助を利用すると、非常に低額な金額で弁護士に自己破産を依頼できますし、支払いは毎月5千円ずつなどの分割払いが認められるからです。会社破産では法テラスを利用できませんが、個人破産なら法テラスが適用されるので、1度依頼する弁護士に相談してみましょう。
代表者の個人破産と会社破産のセット割引きのある事務所を利用する
会社と代表者の両方が破産する場合、原則的には2人分の弁護士の着手金が必要ですが、事務所によっては弁護士費用を割り引いてもらえるところがあります。たとえば個人破産の着手金を半額にしてもらえる場合などもあるので、セット割引きのある事務所を探して依頼すると、費用を節約できます。
財産を現金化する
手元にお金がない場合でも、まだ会社や個人に現金化できる資産が残っているケースがあります。そのようなときには、財産を現金化して着手金や予納金に充てましょう。
破産直前の財産処分は手続き上問題となりますが、弁護士費用に支払うためであれば特段問題にはなりません。
たとえば不動産や車、その他の高額な動産を売却したり、生命保険や火災保険などを解約して解約返戻金を受けとったり、売掛金を回収したりして、お金を用意しましょう。
弁護士に相談してみる
手元にお金がないとき、決算書などを持参して弁護士に相談すると、お金を捻出できるケースがあります。弁護士が見ると、経営者ご本人では気づいていない換金可能な財産を見つけられるケースがあるためです。
そういった対応によってお金を用意できれば、「費用がないから破産できない」と思い込んでずるずると苦しい経営を続ける必要がなくなり、メリットが大きくなります。
早めに相談するのが基本
以上のように、破産するためのお金がないときの対処方法はいろいろありますが、基本的には早めに相談することが重要です。早い段階であれば換金可能な資産も多く、対応の幅が広がるからです。
会社に財産がなくなって経営状況がいよいよ悪くなり、追い込まれてしまうと「費用がないので弁護士にも相談できない」というにっちもさっちも行かない状態となってしまいます。今からでも遅くはないので、早めに弁護士に相談に行きましょう。
法人(会社)の破産で債務は免責される?
個人破産の場合、債務は「免責」の対象になります。免責とは支払い義務を免除することです。そこで個人が破産すると、基本的にすべての負債の支払い義務がなくなります。
法人破産の場合にも「免責」を受けられるのでしょうか?
実は法人の場合、「免責」はありません。ただ、法人の破産後も支払い義務が残るという意味ではありません。法人の場合、破産手続きが終結すると、法人自身が消滅します。消滅したら、負債の支払い義務を負った主体がなくなるのですから、債務自体も消滅します。
法人破産の場合に「免責」がないのは、法人が免責を受けられないからではなく、免責する意味がないからです。
個人破産の場合には、破産手続きが終結(廃止)されるとその後に裁判官によって免責の判断が行われますが、法人破産の場合には、破産手続きが終結(廃止)されるとその時点で法人も消滅し、すべての債務が当然になくなります。
法人(会社)が破産すると、税金はどうなる?
経営難となった法人は、多額の税金を滞納しているケースが多いです。法人が納めるべき税金は、法人税、法人事業税、法人の住民税、消費税、源泉徴収税など個人のものより種類も多く複雑です。
個人破産の場合には、税金は「非免責債権」であり、たとえ破産免責を受けても免れることのできない負債です。そうだとすると、法人の税金支払い義務も、破産後も残ってしまうのでしょうか?
実は法人破産の場合には、税金の支払義務も無くなります。やはり破産手続きの終結(廃止)によって法人自身が消滅し、税金を支払う主体がなくなるからです。法人を破産させたら、税務署や自治体によって滞納税にもとづく差押えを受けることなどもありません。どれだけ多額の滞納税金でも全部支払う必要がなくなります。
「法人を破産させたら代表者が代わりに税金を支払う義務が発生するのでは?」
そう心配される経営者の方もたくさんおられますが、法人と個人は別人格なので、法人の滞納税を経営者個人が支払う義務はありません。法人の滞納税によって個人資産を差し押さえられることもないので、安心して破産手続きをしましょう。
法人破産したとき、従業員への影響は?
破産したら、雇用を継続できない
法人が破産したとき、注意しなければならないのが「従業員への影響」です。会社が破産すると、当然従業員を雇い続けることはできないので、いずれの時点かで解雇するか退職してもらう必要があります。
実際、経営者の方は「従業員に迷惑をかけたくない」という思いから、ぎりぎりまで債務整理をせずに踏みとどまろうとされることも多々あります。しかし破産の時期が遅れれば遅れるほど、給料の遅配や退職金の不支給などが発生して従業員により大きな迷惑をかけることになるものです。
経営の建て直しが困難であれば、きちんと給料を払えている間に解雇して、会社を清算するのが従業員への思いやりです。
従業員を解雇するタイミング
従業員の解雇は早いほうが良いとは言っても、会社が事業を継続している以上、破産情報をなるべくぎりぎりまで外に漏らしたくないものです。破産することを知られてしまうと、取引先などが押しかけて取り付け騒ぎのようになってしまうおそれがあるためです。
従業員に「破産するから解雇します」と言うと、情報が外に漏れて騒ぎが起こってしまいます。
事業をぎりぎりまで継続するのであれば、経営不振などを理由に早期退職を募りつつ、残った従業員については事業を停止したときか弁護士に破産を委任したときに、まとめて解雇・退職させると良いでしょう。従業員を解雇するタイミングについても、弁護士に相談してアドバイスを求めてみましょう。
従業員になるべく迷惑をかけないための対処方法
従業員になるべく迷惑をかけないためには、解雇後の対応を誠実に行うことです。まずは解雇後すぐにハローワークに「雇用保険被保険者離職証明書」「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出して「離職票」を受け取り、従業員に交付します。
またそれぞれの従業員について、市町村に「異動届」を提出し、年金事務所には「被保険者資格喪失届」「適用事業所全喪届」などの書類を提出し、健康保険の切り替え手続きも行います。
未払賃金が発生した場合には「未払賃金立替制度」を利用することにより、独立行政法人労働者健康安全機構という機関から従業員に未払賃金を立て替え払いしてもらうことが可能です。
ただし、この制度を利用するためには、一定の条件があり、また、未払賃金の全額の立替を受けることができるわけではないので、詳細は弁護士に確認しておくとよいでしょう。
法人が破産した場合、登記手続きは必要?
会社はすべて法務局にて「商業登記」されています。会社の登記簿を見たら、その会社が実際に存在することがわかりますし代表者や役員などの氏名も掲載されています。破産して会社が消滅すると、商業登記はどのようになるのでしょうか?
法人が破産して破産手続きが終結(廃止)されて終了すると、裁判所の書記官が職権で「破産手続き終結(廃止)」の登記を行います。その登記が行われると、会社の登記は「閉鎖」されます。申立人や経営者自身が登記申請する必要はありませんし、登記費用もかかりません。
法人破産が認められるための要件
法人が破産をするためには、一定の要件を満たす必要があります。具体的にどういった状態なら破産できるのか、みてみましょう。
支払不能
1つは「支払不能」の要件です。これは、法人に支払能力がなくなっていて、既に支払期限が到来している債務についても支払ができなくなっており、そういった状態が今後も続くことが予想される場合です。以下で1つ1つの要件を確認します。
支払能力がない
利益も上がっておらず今後の売上げの目処も立っておらず、換価して負債を支払えるだけの資産も所有していないなどの状況です。
既に負債の支払期限が到来している
多額の負債があっても、まだ期限まで猶予があるという状態では破産できません。
支払えない状態がずっと続くことが予想される
負債を支払えない状態が一時的であり、今後解消される可能性があるならば破産は認められません。
また、債務者が「支払停止」状態となった場合には、支払不能と推定されることになっています。支払停止とは、債務者が支払いをできなくなったことを明示または黙示に外部に示すことです。
債務超過
債務超過とは、負債が資産を上回っている状態です。株式会社などの多くの法人の場合には、負債が資産を上回って債務超過になると、破産手続き開始決定の要件を満たします。ただし合名会社や合資会社、個人破産の場合には、債務超過は破産手続き開始決定の要件になりません。
法人破産の申立方法~必要書類の内容・書式を解説
会社が破産申し立てをするには、たくさんの書類が必要です。破産申し立て用の書類には、「記入(作成)が必要な書類」と「集めるだけの書類」があります。
以下で、それぞれについてご説明します。
作成が必要な書類
- 破産手続開始申立書
- 債権者一覧表
- 債務者の一覧表
- 委任状
- 財産目録
- 報告書(代表者の陳述書)
- 破産申立についての取締役会議事録または取締役の同意書
上記のうち、①②③⑤については、弁護士が作成します。
④は依頼者などが、⑦については会社の取締役に署名押印してもらいます。
⑥については、弁護士が依頼者から話を聞いて作成し、間違いが無かったら依頼者が署名押印する方法で作成します。
もしも弁護士に依頼していなければ、すべて自分で作成しないといけないので負担が相当大きくなります。
集めるだけの書類
- 法人の全部事項証明書(発行後3か月以内)
- 貸借対照表・損益計算書(直近2期分)
- 清算貸借対照表(破産申立日現在のもの)
- 決算書、決算報告書、確定申告書(直近2期分)
- 従業員名簿、賃金台帳
- 不動産の全部事項証明書(発行後3か月以内)
- 賃貸借契約書
- 預貯金通帳または取引明細書(過去2年分)
通帳の場合、表紙部分と見開きの2ページ目(支店名等が書いてあるページ)が必要です。
- 車検証または登録事項証明書
- 売掛金や未収金の明細書
- 自動車の価格査定書
- ゴルフ会員権の証書
- ゴルフ会員権の価値がわかる資料
- 株式、投資信託などの明細書と価値がわかる資料
- 生命保険などの保険証券、証書
- 保険の解約返戻金証明書
- 訴訟や仮処分、強制執行などが行われている場合にはその書類
必要な書類はケースによっても異なります。また代表者個人が破産するときには、さらに多くの資料が必要となります。自分では何をどのように集めたら良いかわからないときには弁護士に相談すると、必要書類や収集方法を教えてもらえます。
法人破産の申立書式
法人破産の申立書式は、全国の裁判所によって微妙に異なりますが、別地域の申し立て書式を使っても受け付けてもらえることが多いです。また実際には申立を弁護士に依頼するでしょうから、自分で申立書式を使うことはほとんどないでしょう。
ただ必要書類のチェックなどのため、書式を確認しておくのも役に立ちます。
参考までに神奈川県弁護士会の書式を掲載しておくので、必要に応じてご参照ください。
会社の準自己破産とは
取締役1人でも破産申立ができる準自己破産
会社が破産申し立てをするとき「準自己破産」という方法を知っておくと役立つケースがあります。
準自己破産とは、会社の取締役や法人の理事などが会社破産を申し立てる方法です。
会社が破産する場合、原則的には取締役会を開いて賛成決議を得る必要があります。「破産するためには、取締役全員の賛成が必要」と定款で定められているケースも多いです。
しかし実際には、代表取締役が逃げてしまって連絡がとれない場合や、取締役間で意見が割れて破産の決議をできない場合などがあります。そうなると、本来は破産した方が良い事案でも会社が破産できずに時間がどんどん過ぎて、取引先や債権者、従業員などに迷惑が及びます。
そこで、特別に取締役1人でも会社破産の申立を認めるのが、準自己破産です。準自己破産であれば、取締役会の議事録や取締役の同意書などを裁判所に提出しなくても、破産手続きを開始してもらえます。ただし、ケースによっては予納金が通常より高額になる可能性もあります。
準自己破産しても取締役の資産や負債に影響はない
なお、準自己破産をしても、申し立てをした取締役の負債や資産への影響はありません。当該取締役の資産が失われることもありませんし、取締役が法人の滞納税を支払う義務が発生する心配などもありません。また取締役自身に負債がある場合、会社の準自己破産では解決できないので、別途個人破産を申し立てる必要があります。
法人破産ができないケース
法人破産できないのはどういったケースなのか、みてみましょう。
費用がない
多いのは費用を用意できない場合です。法人破産するときには、弁護士に依頼することがほとんど必須です。しかし弁護士費用を用意できないという理由で破産手続きを始められない方がたくさんいます。
また法人が破産するときには、高額な予納金も必要です。
これらの費用が用意できない場合には、上記で説明したように、分割払いできる事務所を探したり財産を換価したり、まずは弁護士に相談したりして対応しましょう。
権利者が申し立てをしない
会社の破産申し立てできる人は、法律で決められています。それは、債権者と債務者本人です。会社の場合、債務者本人による申し立てが認められるには、取締役会決議が必要です。ただし準自己破産であれば取締役1人であってもできます。
これらの人が誰もいない場合や、誰も申し立てをしようとしない場合には、会社の破産ができません。たとえば夫が経営している会社を破産させたいと思っている妻がいるとしても、夫や債権者、他の役員が破産申し立てをしなければ会社の破産はできません。
支払不能、債務超過になっていない
破産手続きが開始されるためには、「支払不能」または「債務超過」の要件が必要です。これらのうちどちらの要件も満たしていない場合には、法人破産は認められません。
また合資会社、合名会社の場合、支払不能でない限り(たとえ債務超過であっても)破産できません。
不正な目的の申し立て
不正な目的で破産の申立をした場合にも、破産が認められない可能性があります。たとえばさまざまな金融機関や個人から多額の借金をしてお金を集めるだけ集めて放漫経営をした上で、会社の財産を隠して会社をつぶし、隠しておいた財産を得ようとするようなケースです。
このような不当な目的で破産した場合、財産隠しがバレると債権者に配当されますし、そもそも支払不能、債務超過になっていなかったことが判明したら破産が取り消される可能性もあります。また破産犯罪が成立して刑務所に送られるリスクもあるので決してやってはいけません。
法人破産を成功させるための注意点
法人破産を成功させるには、以下のような点に注意すると良いでしょう。
否認権について
破産管財人には「否認権」があります。否認権とは、破産者や経営者などが行った不正行為の効力を取り消す権利です。否認される行為は、会社の財産を不当に安く売ってしまうことや会社の財産を誰かに無償であげてしまうこと、特定の債権者にのみ支払うことなどです。
たとえば破産申し立て前に会社の不動産を隠すために名義を書き換えた場合などには、破産管財人が否認権を行使して売買や贈与の効果を失わせることができます。このようなことになると、取引相手にも迷惑をかけることになりますし、破産管財人から厳しく責任追及されたり犯罪が成立したりするので、決してしてはいけません。
破産犯罪について
破産時に不正をすると、犯罪が成立する可能性もあります。代表的な犯罪が「詐欺破産罪」です。債務者の財産を不当に減少させたり処分したり隠したりしたときに成立します。またあえて不利益な債務を負担して債権者全体に迷惑をかけた場合などにも詐欺破産罪となります。
詐欺破産罪が成立すると、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金刑、あるいはその両方が併科される可能性もあります。さらに法人自身にも1000万円以下の罰金が科されます。
他にも、破産管財人や裁判所による調査や検査を不当に拒絶したり破産管財人の業務を妨害したり重要な財産開示を拒絶したりすると、破産犯罪が成立します。
法人破産では「免責不許可事由」を気にする必要はありませんが、不正を働いたら刑罰を課されるリスクがあることには注意が必要です。
契約関係の処理について
法人が破産するときには、各種の契約関係の処理が必要であり、面倒なところでもあります。
たとえば事務所のテナントを借りていたら賃貸借契約の清算をする必要があります。すると返ってきた保証金がどうなったか裁判所から尋ねられるので、きちんと明細を保管しておきましょう。
電話やパソコン、複合機、車などのリース物件があれば、それらのリース契約解除をしておくべきですし、リース物件を返還する必要もあります。なお残ったリース債権も破産債権となります。
売掛金があったらできるだけ回収しておきましょう。回収できなかった売掛金債権は会社の資産となるので、財産目録に記載して裁判所に報告しなければなりません。回収できなかった分は破産管財人が回収をします。
光熱費やネットの通信契約なども解約しておきましょう。従業員との雇用契約も終了させておく必要があります。
代表者が個人破産するタイミングについて
代表者が会社の債務を個人保証していたり会社のために運転資金を借り入れたりして個人破産せざるをえない場合、「いつ破産すべきか」が問題となります。
会社と代表者の破産事件は別なので、必ずしも一緒に破産しなければならないわけではありません。会社と代表者が共に破産することもできますが、会社を先行させて後に代表者が破産する方法、先に代表者のみを破産させて後に法人破産する方法も可能です。
それぞれの方法がどのようなケースに向いているのか、紹介します。
会社と代表者が共に破産すべきケース
- 会社が負債の支払いを滞納しており債権者から督促が来ていて、代表者の債権者からも請求が届いている場合、代表者が会社の負債を個人保証している債権者から会社と代表者の両名に対して請求が来ている場合
このように、双方が支払い請求を受けて困っているならば、両者共に破産申し立てすべきです。
会社の破産申立を先行すべきケース
- 会社の債権者からは督促が来ているけれども、代表者個人の債権者からはまだ督促が来ていない状態や、代表者が何とか返済していける可能性がある場合。また代表者には自宅などの守りたい資産がある
このような場合、代表者が資産を守るためには個人破産を避ける必要があります。また代表者が支払いを継続出来そうであれば、個人については任意整理や個人再生を検討する余地もあります。これらの手続きであれば、個人資産を失うことがありません。そこで会社のみ先に破産させて個人については様子を見るか任意整理・個人再生する方法が良いでしょう。
代表者個人の破産を先行すべきケース
- 代表者個人の債権者から督促がきていて、代表者にはめぼしい資産がないケース。会社はすでに従業員も解雇し賃貸物件の明け渡しも済みあらかたの処理が終わっていて、資産はまったくなく、債権者からの督促が来ていても実質的に不利益が及ばない状態になっている。さらに手元に弁護士費用や予納金に充てる費用がない状態。
このような場合、会社についてはあえて破産手続きをしなくても当面の不利益はありません。代表者だけを破産させるなら同時廃止で処理できる場合もあるので、管財予納金は不要ですし弁護士費用も安くなります。
以上のように、代表者が負債を負っていても必ずしも「会社と代表者が両方破産しなければならない」わけではなく、いろいろな選択肢があります。「より良い方法がないのか?」と考えたら弁護士に相談してみてください。
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法人(会社)破産 法テラス利用時の注意点
破産するときには「法テラス」を利用するとメリットが大きいです。なぜなら法テラスの民事法律扶助では、非常に安い金額で弁護士に依頼できる上(着手金と実費の両方で15~20万円程度)、その費用も月々5000円などの分割払いできるからです。
個人が破産するときには法テラスを利用される方がたくさんいますが、法人が破産するときにも法テラスを利用できるのでしょうか?
実は法テラスは、事業に関する相談や事件処理には対応していません。そこで法人破産に関して法テラスを利用して弁護士に依頼することはできません。法人破産するときには、弁護士の着手金も実費も高額な予納金も、申立人が自腹で用意するしかありません。
ただし代表者が個人破産する場合、代表者の破産については法テラスを利用できます。代表者と会社が両方破産する場合、会社の破産費用を何とか自分で用意して、代表者の分については法テラスを利用するとずいぶん費用的に助かります。
法人破産で弁護士に依頼するメリット
法人破産をするときには、「必ず」弁護士に依頼することをお勧めします。その理由は以下の通りです。
取り立てが止まる
法人が支払いを滞納すると、多くの債権者から激しく督促が来ます。取引先などが乗り込んできて商品を勝手に持ち去ったり事務所で騒がれたりして、個人のケースよりも大きなトラブルになる例も多々あります(個人の場合、カードローンなどの貸金業者が主な債権者なので、無茶な取り立てはしません)。
弁護士に依頼すると、受任通知を送った時点で債権者からの督促が止まりますし、止まらない場合には弁護士から警告して止めてもらうことも可能です。このことで、会社経営者が受けるプレッシャーが大きく軽減されます。
手続きがスムーズに進む
法人破産は個人破産以上に複雑で難しい手続きです。必要書類も多く、自社だけではどう対処したら良いのか、何から手をつけて良いのかわからないというのが実際のところでしょう。弁護士に依頼すると、適切に書類作成したり裁判所や破産管財人と対応してくれたりしますし、法人代表者に対しても状況に応じて指示やアドバイスをしてくれるので、手続きがスムーズに進みます。
労力がかからない
法人破産には多大な労力がかかりますが、弁護士に依頼すると大方のことはほとんどすべて弁護士がやってくれるので、依頼企業にはほとんど手間がかかりません。
今後のことも相談できる
会社を破産させた場合、代表者は今後どのように生活していくべきか悩むものです。どのくらい手元に財産を残せるのか心配なこともあるでしょうし、破産後に何らかの制限を受けることがないのかなども気になるはずです。弁護士に破産手続きを依頼したら、そういったこともすべて相談できますし、これまであった事例を聞いて参考にすることなどもできるでしょう。
精神的に楽になる
会社の経営状況が悪くなると、経営者は精神的に追い詰められるものです。1人で悩んでいると、どんどん状況が悪化してしまいます。思い切って弁護士に破産の相談をして会社の破産手続きを依頼し、すべてを預けてしまったら、後は気持ちも軽くなって精神的に楽になります。
法人・会社の破産を検討するなら弁護士へ早めに相談を!
法人(会社)が破産するときには、経営者や役員などの当事者だけでは成功させにくいものです。法律の専門家である弁護士の助けを借りて、できるだけスムーズに破産の手続きを終えてしまいましょう。
会社をつぶしたくない場合には、早期に相談すると民事再生などの方法をとれる可能性もあります。経営状況が悪くなったら、1人で思い悩むのではなくお早めに弁護士に相談してみて下さい。
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