面会交流をしない方が良いケースとは?拒否できる事情と注意点を解説

離婚によって離れて暮らすことになった親が子どもと面会交流をすることは、原則として認められています。しかし、場合によっては子どもにとって重荷になってしまうこともあります。子どもを引き取った親は、状況を的確に見極め、最良の判断を下さなければなりません。
面会交流の位置づけ
面会交流とは、子どもと離れて暮らす親(非監護親)が、面会や手紙、プレゼントの受け渡しといった方法で子どもと交流することです。2026年4月に施行された改正民法により、法律上の名称は「親子交流」に改められました。本記事では、一般に定着している面会交流の表記を用います。
面会交流は、離れて暮らす親のための権利という以上に、子どもが両方の親との関係を保ちながら成長するための仕組みです。改正民法766条1項も、面会交流を含む子どもの監護について定めるときは、子どもの利益を最も優先して考慮しなければならないと規定しています。親が子に会いたいケースだけでなく、子が親に会いたいと思う場合にも問題になります。
面会交流の全体像については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
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面会交流が子どもの負担になるリスクもある
次のような事情がある場合には、子どもを会わせることでかえって子どもを傷つける可能性があります。相手は「子どもに会わせてほしい」と言ってくるかもしれませんが、面会を制限・中止することも含めた慎重な判断が必要です。
- 子どもが本心から「会いたくない」と言っている
- 子どもに暴力をふるうおそれがある
- 飲酒や薬物の問題があり、面会中の子どもの安全を確保できない
- ギャンブルを行う場所や居酒屋などに、子どもを連れて行く可能性がある
- 子どもを連れ去る危険性がある
- 子どもと暮らす親の悪口を吹き込み、子どもの心理を操作するおそれがある
- 子どもに常識を超えた多額のお小遣いやプレゼントをする
- 子どもを介して同居親の様子を探る、金銭を要求するといった行為がある
拒否の正当な理由にならない事情もある
一方で、次のような事情は、面会交流を拒否する正当な理由とは認められません。
- 相手が養育費を払わない
- 自分が再婚し、子どもが再婚相手を慕っている
- 相手の不倫が離婚原因だった
- 離婚のときの約束を相手が守っていない
いずれも親同士の問題であり、子どもの利益を損なう事情とは評価されないためです。養育費の不払いについては、面会交流を交渉材料にするのではなく、法定養育費や先取特権を使った回収手続きで対応することになります。これらの理由で面会を拒み続けると、かえって監護親側が不利になります。
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面会交流を拒否する際の注意点
取り決めがあるのに拒否すると慰謝料や間接強制のリスクがある
上記のような事情があったとしても、面会交流を拒否する際には慎重な対応が必要です。
すでに離婚時や調停・審判で面会交流の取り決めがされている場合、これをむやみに拒否すると、相手から慰謝料を請求されることがあります。家庭裁判所から間接強制として、不履行1回につき一定額の支払いを命じられることもあります。過去の裁判例では、1回あたり数万円程度の支払いが命じられた例があります。これを何度か繰り返すと、家計を大きく圧迫する金額になりかねません。
ただし、間接強制が認められるのは、面会交流の日時や頻度、各回の時間、子どもの引渡し方法などが具体的に定められている場合に限られます(最高裁判所平成25年3月28日決定)。
拒否するなら裁判所の手続きで判断を求める
面会交流を拒否する必要がある場合は、自己判断で会わせないという対応を続けるのではなく、面会交流の制限や中止を求める調停・審判を家庭裁判所に申し立て、子どもにとって面会が負担であることを裁判所に判断してもらうことが先決です。当サイトで離婚問題に強い弁護士を検索し、まずは相談してみることをおすすめします。
改正民法817条の12は、父母が子どもの利益のために互いに協力する責務を負うことを定めています。正当な理由を示さないまま面会を拒み続ける対応は、この責務に反するものとして、将来の親権者指定や変更の判断で不利に働く可能性があります。
なお、子どもの意思は家庭裁判所調査官の調査などを通じて確認されます。同居親が子どもに面会の苦痛を訴えるよう促すことは、同居親の影響と受け取られて逆効果になるため避けるべきです。感情論だけの主張をしないよう、注意しましょう。
子どもが父親を拒否し、面会交流が中断に至った事例
婚姻中に子どもとまったく関わらなかった父親
面会交流は、あくまでも「子の福祉を害しない」という前提のもとに行われます。どんなに親が会いたがっていたとしても、それが子どもにとって大きなストレスとなる場合には、制限せざるを得ません。
Aさんは、仕事人間で家庭をまったく顧みない夫との間に心の溝ができ、離婚をして4歳の子どもを連れて家を出ました。婚姻中、Aさんの夫は子どもが起きている時間にほとんど家に帰らず、休日も疲れて寝てばかりいました。
子どもが「パパ、遊びに連れて行って」と言っても、「うるさい、パパは疲れているんだ」と、まったく取り合わなかったのです。子どもと遊ぶことはほとんどなく、当然ながら子どもは父親になつきませんでした。
面会交流の途中で泣き出してしまう子ども
離婚後、Aさんの元夫は子どもとの面会交流を望んだのですが、子どもは「パパと会いたくない」の一点張りでした。何とか子どもを連れ出して父親と3人で会ったときも、子どもは「帰りたいよ」と言って泣き出してしまったのです。
父親は子どもの好きな品物をプレゼントするなど、何とかなだめようとしたのですが、子どもは品物を受け取ろうともしませんでした。子どもにとって父親は「母親と喧嘩をする人」「自分と遊んでくれない人」というイメージしかなく、離れて暮らして父親と会わなくなることは、むしろ子どもにとって喜ばしいことだったのです。
子どもと離れて暮らすことで、初めて子どもの愛おしさに気付いたAさんの元夫でしたが、時すでに遅しでした。元夫は弁護士に相談をし、その後に試行的な面会交流も行いましたが、子どもは帰った後に大泣きをするなど、精神的に不安定な状態に陥ってしまいました。
子どもが会おうという気持ちになれるまで、面会交流を中断
度重なる子どもの拒否反応に、元夫は「自分が今まで子どもと関わってこなかったのだから、こうなるのも仕方がない。子どもが成長して、自分と話をしてくれるようになるまで、会うのを諦めよう」と判断しました。
寂しくうなだれる元夫を見ながら、「私たちは相容れない夫婦だったけれど、元夫が子どもと会いたい気持ちはよくわかる。この子が大人の事情を理解できる年齢になったら、私から少しずつ話をして説得し、年に数回でも父親と会えるようにしてあげたい」と思うAさんでした。
DVの元夫(離婚相手)の面会交流が禁止された事例
激しい暴力を繰り返す夫と離婚、精神的な傷も深かったBさん
Bさんは激しい暴力を繰り返す夫と離婚後、8歳の子どもを引き取りました。その後、元夫は執拗に子どもとの面会交流を求めてきました。元夫が直接子どもに暴力をふるったことはありませんでしたが、母親に手を上げる父親を見て育った子どもは、父親と会うことを非常に怖がっていました。Bさん自身も、そのときのことを考えただけで過呼吸になり、今も通院を続けています。
元夫は、面会をしぶるBさんに苛立ち、調停の場で面会交流を求める申立てをしました。Bさんは「せっかく母と子の静かな生活ができるようになったのに、このままではまたあの恐怖が蘇ってしまう」と、泣く泣く弁護士に相談をしました。
面会交流の判断に影響する「DV防止法」
Bさんは弁護士と話し合い、面会交流を禁ずることを命ずる審判を、家庭裁判所に申し立てました。配偶者からの暴力については、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律、通称「DV防止法」があり、面会交流の判断にも影響します。同法は2024年4月に改正され、保護命令の対象に生命・身体への脅迫に加えて自由・名誉・財産への加害の告知が加えられたほか、接近禁止命令の期間が6か月から1年に延長されています。
Bさんの場合、離婚の原因が元夫の暴力であったこと、Bさんが強い精神的な影響を受けていること、元夫が対等な立場で話し合える状況ではないことなどから、裁判所は「面会交流を行うことは元妻に大きな心理的負担を与え、母子の生活安定を害し、子どもの福祉を害するおそれがある」として、元夫の面会交流を禁止する判断を下しました。
改正民法は、安全で安心な親子交流の実現を目的の一つに掲げています。暴力や虐待のおそれがある場合には、面会交流を制限・禁止する判断もあり得ます。元配偶者の執拗な態度に悩んでいる場合は、今後の生活を悲観せず、弁護士などの法律の専門家に相談して解決を図ることが大切です。
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