養育費が見直しされた3つの事例を紹介!再婚や失業などの事情が必須
離婚協議書で金額から支払期間まで、きっちりと定めたはずの養育費。それがある日突然、「減額請求」という四文字で、ガラガラと崩れてしまうことがあります。非常にショッキングな現実!でも、そういうことがあり得るということは、今後のために知っておいた方が良いでしょう。
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一般的に養育費が減額される条件
- 支払う人間が再婚したことで扶養家族が増加
- 支払う側の収入が大幅に減少
- 受け取る側の収入が増えた
- 受け取る側が再婚して収入が増えた
基本的には上記の4つのいずれかに当てはまる場合、養育費は減額されます。
当記事ではこの前提を元に、実際に養育費の減額請求で見直しが行われた3つの判例を紹介していきます。
なお、条件については以下の記事でも紹介していますので、合わせてご覧下さい。
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減額請求で養育費が見直しされた3つの事例を紹介!
【減額パターン1】離婚相手の収入が激減してしまったケース
離婚した元夫の会社が経営不振になり、養育費が減額になったAさん
Aさんは自営業の夫と調停離婚をし、小学校に通う3人の子どもを引き取って養育していました。離婚調停の際に、養育費を毎月夫から妻へ支払うようにと定められ、実際にきちんと支払われていました。
養育費と児童扶養手当、そしてAさんの収入を足して、何とかギリギリの生活ができる状態でした。それでもAさんは、元夫から養育費が支払われることに感謝しつつ、気丈にふるまいながら子どもたち3人を育てていたのです。
ところが数年後のある日、Aさんが口座を確認すると、いつもなら入金されているはずの養育費が入っていませんでした。こんなことは今までに一度もなく、大きな不安を感じたAさんでした。
予想外の減額に戸惑い、今後の家計方針を見直す
その後も養育費の滞納は続き、やがて元夫から“養育費減額”の申立てが起こされました。そこで明らかになったのは、元夫の自営する仕事が業績不振に陥り、年収が激減してしまったということです。元夫は離婚後に再婚もしており、新しい家庭で子どもも生まれ、住宅ローンも組んでいました。「養育費を払うために今までがんばってきたが、ついに住宅ローンの支払いも滞る事態になった」とのことでした。
家庭裁判所では、子どもの父親・母親双方の収入を確認した後、生活保護基準を用いて養育費を算出。「父親の収入が調停成立当初と激変し、かつ再婚後の家庭の生活費も考慮すると、養育費の減額はやむを得ない」として、Aさんに支払われる養育費を減額することを決定しました。
思いがけず養育費が減額になってしまったAさん。元夫の事情を考えれば仕方のないこととはいえ、これから子どもが成長してますますお金がかかることを考えると、思い悩まずにはいられません。「養育費というのは、絶対に決まった額をもらえるわけではないのだ」と自覚し、あらためて今後の家計方針について、考え直すAさんでした。
たとえ調停で決定した養育費でも、減額される可能性はある
たとえ裁判所を通して、離婚調停で決定した養育費でも、このように元夫の大幅な減給によって減額されてしまうこともあります。Aさんの場合は元夫が自営業でしたが、どんな仕事に就いていたとしても、その可能性は付きまといます。いつどうなるのかということは、養育費の支払いが終わる最後の最後までわかりません。
調停調書の内容は、法律の現場が認めたことなのでめったなことでは覆りませんが、収入の大幅な減少などやむを得ない事情があれば変更されるケースもあります。
子どもを引き取って育てるシングルマザーにとって、このことは非常に怖い現実です。しかし、「もしも離婚していなかったとしてしも、夫の収入が減った場合には、どのみち生活が大変になっていただろう」と考えれば、納得できる部分もあるかもしれません。
【減額パターン2】離婚相手が失業してしまったケース
元夫が勤めていた会社をクビになり、養育費が減額になったBさん
Bさんは夫の浮気が原因で離婚をし、2人の子どもを引き取って育てていました。ところが元夫は勤めていた会社をクビになってしまい、無収入になってしまったのです。「養育費を払えなくなった」という元夫からの連絡にBさんは戸惑い、弁護士に相談しました。
「自分の生活もまともにできない状態で、養育費まで払うことはできない」という元夫の言い分に対して、弁護士はこう答えました。「現在は解雇されたことによって一時的に無収入になっていますが、新しい仕事が見つかれば、また同じように養育費を支払うことができるでしょう。」
そこでBさんは、就職先が見つかるまでという条件付きで、養育費の減額を認めました。そして数ヶ月後、元夫は再就職先が決まり、元通りの金額で養育費が支払われるようになりました。
相手の状況を思いやることが大切。でも…
離婚相手から養育費の減額を要求されたとき、ただやみくもに約束違反を責めるのではなく、相手の状況を思いやる気持ちも必要です。Bさんのように、離婚相手が窮地に立たされたときに譲歩することで、今後の養育費の支払いを順調に進めることができるケースもあります。
もちろん、このようなケースばかりではありません。相手が養育費を支払いたくないがために、あの手この手で策を練ってくることも往々にしてあるからです。「生活に困っていて、本当に大変なんだ。何とか養育費を減額してくれ」と懇願されて認めてしまった後、相手が高級車をボンと買ってしまったなどということもあるのです。
その辺の真偽を見極められるのは、離婚相手のことをよく知る元パートナーしかいないでしょう。離婚相手の現状を思いやり、かつお人好しになり過ぎないことが、養育費減額に関するやり取りの際には非常に重要です。
【減額パターン3】再婚によって養育費が減額したケース
元夫が再婚して子どもが生まれたことで、養育費が減額になったCさん
Cさんは性格の不一致によって夫と協議離婚をした後、子どもを引き取って育てていました。元夫からの養育費は毎月支払われ、今まで滞ることはありませんでした。ところが、数年後に元夫は再婚。子どもが生まれたことで、養育費の減額調停を申し立てられたのです。
Cさんもこのことで弁護士に相談して対応しましたが、結果的にこれまでの合意内容は変更され、養育費の支払い額は減額されました。
夫と離婚後に再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組したDさん
夫と協議離婚をして5歳の子どもを引き取ったDさんは、数年後に再婚をし、再婚相手と子どもは養子縁組をしました。子どもは新しい父親にとてもよくなつき、家庭は円満でした。
そのことを知った元夫は、「自分にはもう、出番はない。今まで養育費を払ってきたが、新しい父親には十分収入がある。自分としても子どもの幸せを願う気持ちはあるが、大幅に減額してほしい」と連絡をしてきました。
Dさんは、元夫に対して、「今まで養育費を払ってくれたことに、心から感謝しています。子どもは新しい父親になついているけれど、あなたが本当の父親であることには変わりありません。」と伝えました。養育費は今後必要ないとDさんは伝えましたが、元夫の希望で少額ながら今も支払われ、子どもは年に数回本当の父親と遊びに出かけています。
Dさんのように、本当の父親と育ての父親がいるケースは、欧米ではめずらしくありません。このようなときに、本当の父親と子どもが会い続けることが良いのかどうかは、各家庭の事情によって違うでしょう。養育費の問題に関しても、対応はさまざまです。
減額調停の末、期間限定で養育費が減額されたEさん
Eさんは夫との不仲が原因で協議離婚に至り、子どもはEさんが養育することになりました。元夫は毎月Eさんに養育費を支払う約束をし、この内容は離婚協議書に記載され、公正証書として残されました。
ところが数年後に元夫が再婚して子どもが生まれ、減額を求める調停の申し立てがなされました。調停は審判へと進み、現在は元夫の妻が育児休業期間なので養育費減額を認めるものの、休業期間経過後は出生した子の養育費を負担できるようになるため、再度減額の申立てをするようにとの結果になりました。
公正証書があっても、絶対ではない
離婚の際に離婚協議書を作成し、それを公正証書と残した場合でも、絶対にその約束が覆されないということはありません。公正証書の内容は法律のプロが認めたものなので、おいそれと変えられるものではありませんが、調停調書と同じく状況によっては変更される場合もあり得ます。
年金がいつ減ってしまうか誰にもわからないように、養育費の支払いもけっして絶対的なものではないのです。養育費に関する日本の法律が変わらない限り、より安定した子どもとの生活を考えるなら、最終的には“養育費に頼らない生活”を目指すのが賢明な生き方ともいえるかもしれません。
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