過払い金返還請求権の消滅時効|急いだ方がいいってほんと?
過払い金返還請求権は、支払いごとではなく完済日から10年で消滅時効が成立します。しかし、訴訟提起や支払い督促の申立てなど裁判上の請求を行えば、時効の進行を中断して振り出しに戻すことができます。時効の成立が迫っている時には、債務者に催告をして時効の進行を一時的に停止させ、半年以内に裁判上の請求を行います。
過払い金返還請求権とは
貸金業者が違法に高い金利で貸し付けていた借金の利息を計算し直して、債務者が払いすぎた利息を返すよう請求できる権利のことを「過払い金返還請求権」といいます。
過払い金はなぜ発生したのか
2008年以前、多くの消費者金融やクレジットカード会社が、利息制限法に定められた金利よりも高金利で貸し付けを行っていました。その原因には、出資法というもう一つの法律が関わっています。
上限金利のダブルスタンダードが原因
利息制限法では上限金利が20%だった一方で、出資法では上限金利が29.2%というダブルスタンダードになっていました。さらに出資法には違反者に罰則がありましたが、利息制限法には罰則がなかったため、多くの貸金業者が20%~29.2%のグレーゾーン金利で営業していたのです。
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最高裁判決により過払い金返還請求が認められた
最高裁判所が利息制限法の上限金利を超える金利の違法性を認めると、多くの貸金業者が2007年に利息を改定しました。さらに、それまでに債務者が支払った過払い金をすべて返還請求できる「過払い金返還請求権」が認められました。
過払い金返還請求権の根拠となる法律
過払い金返還請求権は、法律に基づいた権利です。請求された貸金業者は返還の義務を負い、さらにその権利には債権と同じように時効があると規定されています。
過払い金は貸金業者が不当に得た利益
過払い金返還請求権は、民法に定められた「不当利得返還請求権」に基づいています。つまり、利息制限法による上限を超えた分の利息は、貸金業者が「不当に得た利益」なので返還しなければならないということです。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。(民法703条)
過払い金返還請求権は債権になる
過払い金返還請求権は法律上、債権として扱われます。そのため、消滅時効も民法に定められた「債権等の消滅時効」に基づき10年になるのです。
債権は、10年間行使しないときは、消滅する。(民法167条)
過払い金返還請求権は10年で消滅する
2016年現在、過払い金返還請求をするなら多くのケースで時効が問題になってくるでしょう。損をしないためにも、時効の考え方について説明します。
過払い金返還請求を急いだほうがいい理由
「過払い金請求はお早めに」など、盛んにCMなどで呼びかけているのをみたことがあるかもしれません。急いだほうがいいと言われる理由は、多くの過払い金請求権がまさに時効を迎えつつあるためです。
過払い金返還請求権は放置すると消滅する
過払い金返還請求権が行使できなくなる消滅時効は、法律で10年と定められています。過払い金返還請求権は、持っているだけでは意味がありません。請求するという行動を起こさなければ、1円も取り戻すことができないばかりか、権利さえ失ってしまいます。逆に言えば、行動することで消滅を免れることができます。
すでに消滅時効が成立している人も
すでに説明したように、2007年にはほとんどの貸金業者が違法金利を改正しました。つまり過払い金の多くが2008年以前に支払われた利息なので、2016年現在、多くの過払い金返還請求権が消滅時効にかかりつつあると考えられます。
消滅時効はいつから起算するか
過払い金返還請求権で問題になるのが、消滅時効10年の起算日はいつなのかということです。消費者金融などでは、1つの基本契約で借りたり返済したりを繰り返す人が多いため、「返済してから10年」なのか「取引終了から10年」なのか、裁判でも争われてきました。
消滅時効は取引終了時から起算
厳密には返済のたびに過払い金が発生していたのですから、業者側は「返済してから10年」と主張していました。しかし、2009年1月に最高裁判所が「取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である」とする判決を下しました。これにより、継続的に借り入れと返済を繰り返す一般的な取引形態の場合、取引終了までは過払い金返還請求権の消滅時効が進行しないことが認められました。
最終取引が10年以内なら、すべての過払い金を返還請求できる
最後の返済日から10年以上経過していなければ、契約中に発生したすべての過払い金の返還請求ができます。たとえ契約日が10年以上前だったり、すでに借金を完済していても過払い金返還請求権は行使できます。
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消滅時効の進行をリセットさせるには
過払い金返還請求権の消滅時効が迫っていても、権利を行使することで時効の進行を「中断」したり「停止」させることができます。中断がリセット、停止がストップと考えればわかりやすいかもしれません。どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
過払い金返還請求権の消滅時効を中断する方法
法律で使われる「中断」とは、時効が消滅するまでのカウントダウンを振り出しに戻すことです。つまり消滅時効を中断すれば、実質的には時効期間を10年延長することができます。では、具体的にどんな手続きをすればよいのでしょうか。
裁判上の請求をする
過払い金返還請求権の消滅時効を中断するには、裁判上の請求を行うことが必要です。裁判所を介するため手間やコストがかかりますが、それだけ貸金業者への強制力もあります。進行中の時効をゼロにリセットする唯一の手段であり、過払い金をしっかり取り戻すためには必要な手続きです。
裁判上の請求方法は主に3つある
一言に裁判上の請求と言っても、方法はひとつではありません。主に行われている3つの方法について紹介します。
民事訴訟を提起する | 裁判所に過払い金請求の訴訟を提起します。 |
支払い督促を申し立てる | 裁判所から債務者(ここでは貸金業者)に督促状を出すよう、申し立てをします。 |
民事調停を申し立てる | 裁判で争わずに、双方の話し合いにより解決を図ります。 |
過払い金返還請求権の消滅時効を停止する方法
法律で使われる「停止」とは、時効の進行を一時的に止めることで、停止期間が終われば再び残りの時効期間がカウントダウンされます。停止するための具体的な方法について見ていきましょう。
債務者に催告をする
過払い金返還請求権の消滅時効を停止するには、「催告」を行います。催告は、債務者に対して「過払い金の返還を請求する」という旨の書面を内容証明郵便で郵送するだけです。裁判上の請求を行う時間がない場合に、一時的に消滅時効の進行をストップさせる手段として有効です。
停止から6ヵ月以内に裁判上の請求をする
催告で消滅時効の進行を停止できる期間は6ヵ月だけです。催告をしたら、6か月以内に裁判上の請求を行いましょう。そうすれば、過払い金返還請求権の消滅時効が成立するのを回避できます。
このように、過払い金返還請求権は取引終了から10年で消滅時効が成立します。権利を行使することで時効の進行を止められますので、早めに請求することをおすすめします。裁判上の請求には法的な知識が必要ですので、まずは弁護士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。
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