過払い金の意味と返還請求|知らない間に払い過ぎている?
過払い金とは利息制限法の上限金利を超えて支払われた利息のことで、取引履歴を基に引き直し計算をすれば、過払い金の有無や金額を確認することができます。完済した借金でも取引終了から10年以内であれば、返還請求が可能です。返済中の借金では、ブラックリストに載ってしまう可能性もあるので返還請求には慎重な判断が必要です。
過払い金が発生するしくみ
過払い金は消費者金融などの貸金業者に対して払いすぎた利息なので、債務者は返還請求ができます。正当な権利としてお金を取り戻すためにも、なぜ過払い金が発生してしまったのか、そのしくみから理解しておきましょう。
利息制限法の上限金利を超えて支払った利息が過払い金
過払い金の定義は、法定金利の上限を超えて支払った利息です。つまり、実際に支払った利息を改めて法に則って「引き直し計算」を行い、算出された差額分が過払い金になります。
過払い金は利息制限法に基づいている
過払い金の根拠となる法律は利息制限法です。そのため、利息制限法に定められた上限金利に基づいて引き直し計算をします。
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。 (平成18年法 律第115号)
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
20パーセントを超えた利息はすべて無効
利息制限法に定められた上限金利を、わかりやすく書くと下記のようになります。つまり20パーセントを超えて支払った利息は、いかなる場合も「無効」なのです。
元本が10万円未満 | 20% |
元本が10万円~100万円未満 | 18% |
元本が100万円以上 | 15% |
貸金業者が利息制限法に違反した理由
これまでに多くの債務者が過払い金の返還を請求したため、貸金業者は資金面で大きなダメージを受けました。このようなリスクを冒して、なぜ大手の消費者金融まで利息制限法に反する取引をしたのでしょうか。違法性を認識していなかったのでしょうか。
出資法によるグレーゾーン金利があった
金利の上限を定めた法律には、利息制限法とは別に出資法という法律があります。以前まで出資法の上限金利が29.2%だったことで、利息制限法の20%との間にいわゆるグレーゾーン金利が存在していました。さらに出資法には違反者に罰則がある一方で、利息制限法には罰則がありませんでした。
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旧貸金業規制法のみなし弁済で合法と解釈していた
みなし弁済とは、決められた要件を満たせば利息制限法の定める上限金利を超えていても有効であるという規定です。この規定を盾に、貸金業者はグレーゾーン金利も合法と解釈していたのです。現在では、法改正によりこのような抜け道はなくなっています。
すでに完済した借金の過払い金請求
貸金業者が利息制限法に違反する高金利での貸し付けを堂々と続けていた理由はわかったと思います。それでは、過去の借金に過払い金があったかどうかの判断方法について説明します。
取引履歴で自分の過払い金がわかる
借金をしていたのが10年近く前であれば、金利など覚えている人は少ないでしょう。しかし取引履歴があれば、過払い金を正確に確認することができます。また、過払い金の有無だけなら、借金をしていた年代である程度予測できます。
2008年以前に返済した人は可能性大
利息制限法に反する金利が横行していたのは2008年頃までです。多くの貸金業者が2007年に適正金利に改正していますので、最初の借金をしたのがそれ以降であれば、おそらく過払い金は発生していないでしょう。逆に2008年以前に返済していた人は、過払い金が発生している可能性が高いと考えられます。
取引履歴を取り寄せて引き直し計算をする
過払い金を正確に確かめるには、まず貸金業者から取引履歴を取り寄せましょう。取引履歴を基に引き直し計算をすれば、自分に過払い金があるのかが分かり、ある場合はその金額を算出することができます。これらのことは債務者本人が行うこともできますが、すべて弁護士や司法書士に依頼することも可能です。
完済済みの借金は時効に注意
過払い金返還請求権には、10年の消滅時効がありますが、そこで問題になるのが消滅時効の起算日はいつなのかということです。
消滅時効は取引終了時から起算
消費者金融などでは、1つの基本契約で借りたり返済したりを繰り返すのが一般的です。そのため、債権者と債務者の間で「返済してから10年」なのか「取引終了から10年」なのか意見が分かれていました。しかし2009年の最高裁判所において「取引終了までは過払い金返還請求権の消滅時効が進行しない」と判決されました。
最終返済日が10年以内なら時効は成立していない
最高裁判決により、消滅時効は取引終了から10年間と認められました。つまり最後の返済日が10年以内であれば、取引中に発生したすべての過払い金が返還請求できます。一方、最後の返済日から10年以上経過してしまうと、過払い金返還請求ができません。返還請求を急いだほうがいいと言われる理由はここにあります。
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現在返済中の借金の過払い金請求
現在抱えている借金が10年近く借り入れと返済を繰り返している人は、過払い金が発生している可能性があります。この場合も取引履歴を入手すれば正確にわかりますが、返済中の借金の過払い金請求には注意が必要です。
返済中の借金の過払い金請求は任意整理になる
返済中の借金の過払い金請求は、「任意整理」になり債務整理を行ったことになります。返還後に借金が残るか否かで結果が大きく異なり、借金が残った場合はそれなりのデメリットがあります。
任意整理の一環として過払い金請求が行われる
任意整理とは、弁護士などの専門家が債権者と交渉しながら債務を整理することです。その過程で過払い金があれば、借金に充当して元本を減らすために過払い金請求も行います。つまり返済中の借金の過払い金請求とは「返済が苦しくなった債務を減額するための手段の1つ」と理解しておきましょう。
借金が残った場合はブラックリストに
過払い金を残債務に充当しても借金が残った場合は、任意整理の履歴が信用情報機関に5年程度登録されるデメリットを覚悟しなければなりません。つまり、返済中の借金の過払い金請求を行う場合は、完済できない場合のデメリットを考慮して慎重に検討する必要があります。
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過払い金で完済できればデメリットはない
長期間にわたり高金利での返済を続けていた人なら、過払い金を残債務に充当することで借金がゼロになるケースがあります。
残債務がゼロになればブラックリストから削除される
過払い金を残りの借金に充当して完済できれば、任意整理の記録すぐに信用情報機関からは削除されますので安心してください。クレジットカードの作成や住宅ローンの審査など、今後の信用取引にも悪影響はありません。
負債額以上の過払い金は返還請求も可能
残債務がゼロになったうえに、過払い金が借金の額を超えていた場合には過払い金を返還請求することも可能です。多額の過払い金が予測でき返還請求を行いたい場合は、任意整理を依頼する弁護士などにあらかじめ伝えておくとよいでしょう。
過払い金請求を検討するなら弁護士に相談を
過払い金請求の第一歩は、引き直し計算を正確に行い自分の過払い金がいくらあるのかを知ることです。とくに現在抱えている借金の過払い金請求では信用情報に関わるため、過払い金で完済できるか否かを事前に把握する必要があります。債務者本人では難しい部分もあるので、まずは弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
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