自己破産しても残しておける5つの財産とは?

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弁護士法人札幌パシフィック法律事務所

佐々木 光嗣弁護士

自由財産

自己破産なんてしたら、まともに生活できないと考えている方も多いのではないでしょうか?しかし、自己破産には手続き上、処分しなくても良い「自由財産」が認められているのです。今回は、この自由財産が具体的にどういったものかを詳しくご説明します。

自己破産しても処分しなくても良い「自由財産」

自己破産=無一文ではない

自己破産と聞くと、「無一文でまともな生活などできない・・・」といった間違ったイメージを持っている方がたくさんいらっしゃいます。しかし、自己破産したからといって無一文になってしまうわけではありません。

自己破産には「自由財産」といって、たとえ自己破産した場合であっても、処分しなくても良いとされている財産が破産法によって規定されているのです。

この自由財産のおかげで、自己破産後もそれほど不自由のない生活を実現することが可能となっています。今回は、この自由財産について詳しくみていきましょう。

認められている自由財産は大きく5つ

  1. 99万円以下の現金
  2. 新得財産
  3. 差押禁止財産
  4. 自由財産拡張によって裁判所に保有が認められた財産
  5. 破産管財人が破産財団から放棄した財産

上記が自己破産しても処分しなくても良い財産とされています。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

99万円以下の現金

自己破産では、99万円以下の現金を自由財産の1つとして認めています。

保有している現金のすべてを手続きの中で破産者から接収してしまうと、直近の生活に困窮する危険が出てくるためです。自己破産はあくまでも多重債務者の更生を目的とした手続きであるため、目の前の生活に必要となる現金は手元に残しておくことができるのです。

高額な予納金に要注意

ただし、保有している現金が20万円を超える場合、自己破産の手続きはかかる費用が2万円程度ですむ「同時廃止事件」ではなく、「管財事件(多くは少額管財事件)」として処理され、20万円程度の予納金を納めなければ自己破産できない点に注意が必要です。

新得財産

自己破産では、破産手続きの開始決定後に得た財産(これを新得財産といいます)については、そのまま保有することを認めています。たとえば、破産手続開始申立後に得た給与収入まで債権者への配当(手続き上、自由財産以外の財産は現金化され債権者への配当に充てられる)に充てられてしまえば、それこそ上記のケースと同様、生活に困窮するおそれが出てきます。

こういった事態に陥らないよう、新得財産はそのまま保有が認められているのです。

破産手続開始決定で区切られる

なお、厳密にいえば、自己破産申立後に裁判所から出される「破産手続開始決定後」の時刻より後(裁判所の決定書には、破産手続きの開始時刻も記載されます)に得た財産が新得財産として取り扱われます。破産手続開始決定は自己破産申立後、1週間程度(裁判所や事情によって若干の違いはあり)で裁判所から出されますので、得る見込みのある財産を新得財産として処理してもらえるよう調整するのも重要です。

差押禁止財産

日本の法律には、いかなる場合でも差押えが禁止されている財産があり、この財産は自己破産手続き上も例外ではなく、手元に残すことが認められています。

差押禁止財産は数多くありますが、主なものとしては、生活必需品であるベッドやタンスといった家具類、洗濯機や冷蔵庫といった家電製品、事業のために必要となる財産(農家であれば農具のこと)などがあります。

自己破産しても生活必需品は守られる

差し押さえという言葉を見ると、黒服の男がやってきて赤い札を家具などに張っていくシーンを想像される方も多いかもしれませんが、そんな事態になることはありません。確かに、税金滞納や強制執行といった手続きの際に、公務員や執行官に自宅を訪ねられるといったケースはありますが、これらは自己破産とはまったく異なる手続きです。

自己破産しても、生活に必要となる財産まで没収されるおそれはないのでご安心ください。

自由財産拡張によって裁判所に保有が認められた財産

上記が主に自己破産の手続き上、自由財産として認められている財産ですが、実はこの範囲を拡張することも認められています。これを「自由財産拡張申立」といいます。
では、具体的にどういった財産が認められているのでしょうか?

自由財産拡張に統一基準はない

実は、自由財産拡張にどういった財産であれば認めるといった基準はありません。裁判所は申立てに応じて破産管財人に意見を聴き、必要があれば自由財産の拡張を認めます。

たとえば、解約返戻金のある保険でどうしても解約できない事情がある場合(高齢で再度の加入が困難など)や、生活のための必需品となる自動車などが自由財産の拡張として認められることがあります。ただし、必ず認められるわけではなく、あくまでも本当に必要かどうかを精査した後、裁判所が判断を下す点に注意が必要です。

自由財産拡張は破産申立てと同時が理想

その他にも、自由財産の拡張は早ければ早いほど良いことも覚えておきましょう。

自由財産の拡張が必要な破産事件は、同時廃止ではなく管財事件ですので、必ず破産管財人が選任されています。破産管財人が選任されたということは、すぐにでも財産の換価といった管財業務がスタートしてしまうということです。特に保険や預金通帳の解約といった手続きは1か月程度で終了することもあるため、自由財産の拡張を申し立てるのであれば自己破産申立と同時に行うのが最良と言えます。自己破産手続きを専門家に依頼する方は、申立前の段階から自由財産の拡張についてよく検討しておくことが通常です。

破産管財人が破産財団から放棄した財産

上記でも軽く出てきましたが、改めて「破産管財人」についてもご説明します。

破産管財人とは、破産手続きを処理するために裁判所から選任された弁護士のことです。
破産管財人は、破産者の財産調査と、保有財産を換価(適正な金額にて売却などし現金化すること)し、債権者に対して按分配当することを主な業務としています。

しかし、中には換価が難しい財産も存在します。

現実に換価が難しいケースは存在する

たとえば、残金が0円に近い預金通帳があれば、解約の手続きだけで銀行に赴く手間や費用が発生することになり、破産財団(自己破産の申立人が保有する財産のこと)の減少が著しいとなれば解約自体を放棄することはあります。

また、先祖代々の相続などによって土地の権利が細分化された結果、僅かしか持ち分がなく、共有名義などが理由で現実に売却が難しい不動産を放棄することもあります。

もちろん最終的な判断は裁判所が下しますが、破産管財人であっても処分が難しい財産も存在するということです。こういった財産は、裁判所が自由財産として認めてくれます。

とはいえ、やむを得ない場合に限るため過度な期待は厳禁です。

自己破産後の生活に心配はありません

上記のように、自由財産という制度によって、自己破産したとしても十分に生活していけるだけの財産を手元に残すことが可能です。場合によっては、自由財産の範囲を拡張することもできますし、自己破産後の生活についてはそれほど心配する必要はありません。

自由財産などの借金問題は専門家に相談を

とはいえ、自由財産の範囲を超えており、拡張も認められない財産というのは数多く存在しています。すべての保有財産を残したまま自己破産できることは少ないのです。

居住している自宅など、特に守りたい財産がある方は、自己破産以外の選択肢も視野に入れる必要があります。借金問題の解決策は自己破産だけではありません。そして、どの解決策が適切かについての判断には、どうしても専門知識が必要となってしまいます。

借金問題に悩まされているのであれば、まずは専門家に相談し、自己破産をはじめとする債務整理手続きを検討してみることから始めてみましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士法人札幌パシフィック法律事務所

札幌市中央区にある「札幌パシフィック法律事務所」の弁護士、佐々木光嗣です。私はこれまで、前職までの事務所を含めて5,000件以上の債務整理に関する相談実績があります。債務整理に特化した大手事務所での経験もあり、豊富なノウハウを生かして借金問題に悩む方に最適な債務整理の方法をアドバイスしていきます。

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