個人で特定調停をすると費用を安く抑えられる?デメリットは?
特定調停は費用が安く、相手方(債権者)1社なら印紙代500円、切手代420円で済みます。しかし、手続きが煩雑で申立人の負担が大きいことや、過払い金返還請求は別途行うことなどデメリットも多く、申立件数は激減しています。最近は着手金無料など費用を抑えた弁護士事務所もあるので、満足できる債務整理を行いたいなら弁護士依頼がおすすめです。
特定調停の内容と費用
借金返済で首が回らない時に、数十万円の弁護士費用の支払いを抱えることは、誰でも最初は気が引けます。そこで気になるのが費用が安く済む特定調停です。弁護士に依頼せず債務者本人だけで手続きができる特定調停とは、どんな債務整理手続きなのでしょうか。
特定調停とは
特定調停とは、債務者と債権者との間に裁判所が介入して解決案を提示する債務整理手続きです。
任意整理と同様に、利息制限法に基づく引き直し計算や、将来利息・遅延損害金のカットなどで借金総額を圧縮できます。
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弁護士なしで行える債務整理
特定調停は、債務整理の弁護士費用が払えない個人や法人のための制度です。特定調停では、調停委員会(裁判官1人と弁護士資格を持つ調停委員2人)が債務者・債券者双方の意見を調整します。
法律に詳しくない個人でも、調停委員会が間に入ることで合意までのサポートが得られます。
特定調停の手続き
特定調停を開始したい場合は、まず債務者が簡易裁判所に申し立てます。個人でも手続きしやすいよう、申立書などの雛形が裁判所のホームページや窓口に用意されていますし、わからないことがあれば、その場で質問ができます。調停の期日が決まると、債権者1社につき最低2回程度は出頭する必要があります。調停委員会は、利息制限法に基づく引き直し計算や、申立人・債権者側それぞれから聞き取った意見をもとに債務を減額し、返済計画を検討します。通常は3年で完済する計画を立て、合意すれば調停成立です。
調停調書は強制執行が可能な「債務名義」
調停成立を受けて裁判所が作成する調停調書は「債務名義」にあたります。これは任意整理の和解書と大きく違う点です。債務名義は裁判の判決と同等の強い効力があるため、もし調停成立後に返済が滞った場合は、債権者は強制執行による債権回収が可能です。その時、債務者は給料を差し押さえられても文句は言えません。そのため、調停では決められた額が本当に無理なく返済可能なのかどうかを、十分に考える必要があります。
特定調停の費用
債務整理を特定調停で行うメリットは、何と言っても他の債務整理手段に比べ、費用が格段に安いことです。では、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
費用は印紙代・切手代のみ
東京簡易裁判所で個人が特定調停を申し立てる場合は、まず申立手数料として債権者1社につき500円(収入印紙)です。そして、手続き費用として、裁判所から申立人への書類送付などに使う切手(予納郵便切手)が、債権者1社につき420円分です。切手は手続きの進行次第で追加提出が必要な場合もあります。裁判所によって費用が若干異なる場合もありますが、基本的に特定調停に多額の費用はかかりません。
弁護士に依頼した場合
特定調停は弁護士に依頼することも可能です。しかし、個人で行う場合と比べると当然費用がかさみます。弁護士に依頼した場合の相場は10〜30万円程度と言われています。弁護士に依頼すれば、面倒な手続きはしないで済むため楽ですが、費用がかからないという特定調停の大きなメリットが失われてしまいます。
特定調停は本当に「得策」?
特定調停は、債権者が1社であれば手続き費用が1000円程度で済んでしまい、手続きの費用を抑えるという意味では非常にメリットがある方法です。
しかし、全国の簡易裁判所における特定調停の件数は、2003年は53万件以上でしたが、2014年には3000件余りまで激減しています。
※自由国民社『【借金完全整理】自己破産マニュアル』(2016/石原豊昭)より
これだけ件数が減っているということは、特定調停にメリットがない、もしくはデメリットの方を強く感じている人が多い可能性があります。特定調停は本当に「得策」なのでしょうか?
特定調停のデメリット
個人で行う特定調停は、次のようなデメリットがあります。
手続きが煩雑
弁護士がいない特定調停では、書類の準備を申立人が全て自力で行う必要があります。分からないことは裁判所に聞いたり本やネットで調べるなど、煩雑さも覚悟しなければなりません。また、平日に仕事を休んで裁判所に出頭するなど、時間の負担もかかります。
調停委員が債務整理に詳しくない場合も
また、調停委員には弁護士資格を持つ人が選ばれますが、必ずしも債務整理に詳しい人物とは限りません。最悪のケースでは、引き直し計算が間違っているなど債務者に不利な影響が出る可能性もあります。また、調停委員は弁護士のように債務者の代理人となり、債務者の利益のために動いてくれるわけではありません。
過払い金の返還には別の手続きが必要
いわゆる「グレーゾーン金利」の期間から貸金業社と取引がある場合は、払いすぎた利息が「過払い金」として返還を受けられる可能性があります。任意整理手続きなどでは、過払い金があった場合は残債と相殺するなど、債務整理と同時に交渉が進められます。しかし特定調停の目的は借金返済について決めることです。このため、過払い金の返還を受けるには、別途、過払い金請求訴訟を提起する必要があるのです。
満足いく債務整理には弁護士に相談を
前章で述べた通り、特定調停は弁護士に依頼することもできます。しかし、弁護士に依頼するなら特定調停にこだわらず、任意整理や個人再生なども含め、債務整理の方法を改めて検討するほうが、終わった時に満足度が高い成果になるでしょう。
弁護士に依頼するメリット
債務整理を弁護士に依頼する一番のメリットは、債務者が法律に関する調べ物や書類準備などの負担が、自力の場合より軽くて済むことです。基本的な段取りや効率の良い進め方は弁護士がリードしてくれるので、債務者は仕事など日常生活に集中しやすいでしょう。また、債務整理が専門で交渉力が高い弁護士なら、借金減額の幅も大きくなります。
過払い金があれば費用負担が下がることも
債務整理を弁護士に依頼すれば数十万円の費用が発生しますが、相談・依頼する時点で資金がなくても大丈夫です。なぜなら、相談料・着手金無料や、費用の後払いや分割払いに応じるという弁護士事務所もあるからです。また、過払い金が発生している場合は、返還を受けて弁護士費用の一部や全部に充てることができるので、債務者本人の負担は軽くなります。
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債務整理は弁護士・司法書士に依頼
特定調停は、手続きの費用は安いものの、申立人の労力の負担や過払い金請求の問題などのデメリットもあり、利用者はここ10年で急激に減少しています。内容に満足できる債務整理手続きを行うなら、この分野に強い弁護士・司法書士に相談してみることをおすすめします。
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