任意整理では「委任状」と「受任通知書」が絶大な力を発揮する
任意整理を弁護士などの専門家に依頼する際には委任契約を結びますが、弁護士などはこのとき作成する委任状を手に任意整理手続きを行います。また、委任契約と締結すると同時に弁護士などが受任通知を債権者に送付します。受任通知を発送するとメリット・デメリットがそれぞれ発生するので、事前にそれらを理解しておくことが大切です。
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委任状の役割って何?
「委任」とは、代理人に自分に代わって法的権限を付与することを言います。債務整理の手続きを弁護士や司法書士などの専門家に依頼する際には、委任契約がまず必要になりますが、その際に作成するのが委任状と言われる書面です。
委任状ってどんなもの?
委任状は、法律が関わる場面だけでなく、日常のさまざまな場面で利用されています。たとえば、何かの会合があるときに、出席できない人があらかじめ委任状を出しておくことで、決議を議長などに委任することが可能です。では、債務整理の場面では、委任状はどのように使われるのでしょうか。
委任状とは、自分の代わりに誰かに行為をしてもらうことを記した文書
「委任状」とは、ある一定の事項をある人に委任したことを記載した文書です。委任状をもって、代理人は本人に代わって一定の事項を行うために代理権を与えられていることを証明します。任意整理では、弁護士や司法書士と委任契約を結んで債務者に代わって手続きや債権者との交渉を行いますが、そのときに必要になるのが委任状です。弁護士などは債務者から正式に依頼を受けると委任状を作成し、それを携えて手続きを行います。
委任状に書くべきこと
「委任状」の書き方に法的なルールはありません。ただ、委任内容を明確にする必要があるため、基本的には、以下の4項目を明示することが望まれます。
- 日付
- 委任者
- 委任事項(代理権の範囲)
- 受任者(任意整理を受任した弁護士等)
また、委任事項(代理権の範囲)については、委任者と代理権を与えた受任者との間で紛争が生じやすい事項なので、特に明確に記載することが必要です。
任意代理と法定代理
法律上、「代理」は2つのパターンに分かれています。その2パターンとは、「任意代理」と「法定代理」です。どちらも本人に代わって代理権を行使する者であることは共通していますが、以下のような違いがあります。
2つの代理
任意代理とは
任意代理は、本人と代理人が代理権を授与する委任契約を締結することで成立する代理のことを言います。任意代理はまず誰かと委任契約を締結していることが前提です。通常、委任契約書には代理権が授与されることと、代理人の権限に関する具体的な範囲のことが記載されています。
法定代理とは
法定代理とは、本人の意思とは関係なく法律によって代理人に代理権が付与されて成立する代理のことです。法定代理人がいる場合は、本人に代わり本人の意思決定権限を有している法定代理人が相手方と交渉します。法定代理は任意代理とは異なり、代理権の範囲などが法律ではっきりと規定されているため、任意代理に比べてトラブルは少ないでしょう。
弁護士などへの委任は任意代理
任意整理に限らず、債務整理の依頼を受けた弁護士などの専門家が行うのは「任意代理」としての行為です。債務者本人の意思で弁護士などの専門家と契約を締結し、代理権の範囲を定めて専門家に法律行為を行ってもらうことになるので、法定代理ではなく任意代理となります。
受任通知には絶大な効果がある
そもそも受任通知ってどういうもの?
受任通知とは?
受任通知とは、債務者が任意整理をはじめとする債務整理手続きを弁護士などの専門家に依頼した旨を債権者に通知する文書のことを言います。この通知は、債務者本人が作成してするのではなく、本人から債務整理手続きについて依頼を受けた専門家が作成して債権者に郵送するものです。
受任通知の内容とは?
債権者に送る受任通知には、以下の内容を記載し、債務整理を弁護士などが受任したことを通知します。
- 債務者の住所・氏名・生年月日
- 受任した弁護士などの住所・氏名・連絡先
- 債務整理手続きの方針
- 取引履歴開示に関する請求
また、上記に加え、受任通知が債務の承認に当たらないこと、過払い金があれば請求すること、取り立ての停止を求めることについても記載しておきましょう。
受任通知を出してもらう前に絶対必要なこと
銀行を任意整理の対象とする場合は、銀行に受任通知が届くと口座が凍結され、現金が引き出せなくなってしまいます。そのため、弁護士などに受任通知を発送してもらう際には、前もって預金口座から預金をすべて引き出しておくことが必要です。
受任通知を送るメリットとは?
受任通知を送ると、債務者がずっと苦しんできた取り立てや多額の借金返済から解放されます。そのため、債務者にとって大きなメリットがあると言えるでしょう。
受任通知後の取り立ては無効
弁護士などから債権者に受任通知が発送されると、債権者が債務者に対して直接接触して借金返済を求めることができなくなります。そのため、受任通知が相手方に届くとしつこい取り立てや督促の電話がぱったりなくなり、債務者にとっては多大なストレスから解放されることにつながります。
手続きが終わるまでは月々の支払いもストップ
受任通知が発送された後は、任意整理手続きが終了するまでの相当期間、債務者は借金の返済を中断することができます。債務者は、弁護士のところに駆け込むまで毎月かなりのお金を借金返済につぎ込んでいるものです。このお金を支払う必要がなくなれば、債務者は生活再建のための貯金も少しずつできるようになります。
受任通知を送るデメリットとは?
受任通知を送ることはいいことづくしのように見えます。しかし、弁護士に依頼をしたことは借金の返済ができなくなったことを意味しますが、そこから以下のようなデメリットが生じます。
「ブラックリスト」に載ってしまう
弁護士が受任通知を発送すると、通知が届いた時点で金融機関から信用情報機関に「事故情報」として伝わることになり、いわゆる「ブラックリスト」に載ります。そうなると、情報が抹消されるまでの間は、債務者は新たな借り入れやクレジットカードの申し込みができません。この間は現金で生活するように心がけましょう。
保証人に借金返済を請求されてしまう
弁護士などが受任通知を発送すると、債務者に借金返済が請求されなくなる代わりに保証人に請求がいってしまい、保証人に迷惑をかけてしまうおそれがあります。このような場合には、保証人と事前に話し合っておくことが重要です。保証人に請求がいくと保証人が代わりに弁済せざるを得ず、最悪の場合保証人も債務整理をすることになるからです。
弁護士への相談が任意整理成功へのカギ
任意整理は裁判所を介さない債務整理手続きのため、弁護士などの専門家が任意整理成功へのカギとなります。任意整理の際には、債権者との交渉経験が豊富な専門家に手続きを委ねることがおすすめです。
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