任意整理における和解交渉のポイント~和解契約に盛り込むべき内容とは
任意整理手続きでは、債務者が借金の減額や返済方法について債権者と直接協議します。このとき、双方が歩み寄って妥協できる点を見つけることが大切です。交渉が成立したら和解契約書を作成しますが、後日再び争いが起きないように、契約書には交渉で決めたことを確認の意味を込めて詳細に記載しておくことが非常に重要です。
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任意整理手続きの流れ
任意整理の目的は、多重債務に苦しむ債務者の借金を整理・圧縮し、債務者の生活再建を図ることです。そのために、債務者が生活を維持出来る範囲での返済条件を債権者に提示して、和解交渉を行います。
任意整理手続きってどんなことをするの?
任意整理では、取引履歴を元に利息制限法で引き直し計算を行い、利息のカットや借金額の減額について債権者と協議します。債務者にとって少しでも有利な条件を引き出して和解交渉を終わらせるには、やはり弁護士や司法書士などの協力を仰ぐほうがよいでしょう。
利息の引き直し計算をして正確な借金額を割り出す
現在の上限金利は、借金額によって15〜20%と定められています。旧来の出資法により、29.2%の高金利で貸付が許されていた時代に借金をしていた経験のある人は、過払い金が発生している可能性が非常に高いです。そのため、原稿の利息制限法に基づき利息の引き直し計算をして、現在の上限金利を超過して支払っていた利息については元本と相殺します。そうして本来返すべき借金額を確定させます。
和解に向けた交渉を開始
正確な借金額を算出したら、債務者の経済状況を見ながら、無理なく借金を返済できるような計画を立てます。計画案ができたら債務者側から債権者に提示し、和解に向けた交渉を開始します。交渉に応じてくれている債権者にも考慮、できる限り債務者・債権者双方の希望に沿う形で決着できるように努力しましょう。
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和解交渉の具体的な中身とは?
では、債務者は債権者と具体的にどのような交渉を行うのでしょうか。主な論点は「借金をいくら減額してもらえるか」「借金の返済方法をどうするか」の2点です。債務者にとって無理のある条件で決着してしまうと、その後の生活再建に支障が出てしまうため、慎重に交渉を進めることが重要になります。
借金がどれだけ減額できるか
借金が膨らんで返済できなくなってしまった債務者にとって、返済すべき額が1円でも安くなればありがたいものです。過払い金を元本から差し引いて、将来分の利息や遅延損害金をカットするだけでも減額効果はありますが、そこからさらに減額交渉をするやり方もあります。債権者の希望も尊重しつつ、できる限り借金額を低く抑えてもらえるよう債権者と協議します。
借金の返済方法はどうするか
任意整理では、借金の返済方法が一括返済と分割返済の2通りあります。大半の債務者は生活が苦しいため、原則3年、特別な事情のあるときには5年の年月をかけて分割返済する方法を選択します。
しかし、親兄弟・親戚の経済的支援を受けられる場合は、一括返済を希望するケースもあります。債権者にしてみると、貸付金が一度に返ってくるほうがありがたいので、一括返済を選ぶと負債額を1〜3割程度減額してくれることがあります。
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任意整理に強い弁護士や司法書士に交渉を依頼しよう
任意整理で債権者と和解するには、上記の他にいろいろ手段がありますが、法律をよく知らない人が自力で交渉するには少々無理があります。債権者の合意も得ながら協議を良い方向に進めるには、任意整理の経験が豊富な弁護士や司法書士の力を借りることが必要不可欠です。債権者との交渉は、任意整理に強い専門家に託すのがベストと言えるでしょう。
和解契約書にはどんな内容を記載すればよい?
和解契約は、債務者・債権者の双方が合意できなければ締結することはできません。和解契約とは、「お互いに歩み寄り、譲歩して合意内容を形成する契約」であると定義づけられています。そのため、任意整理の和解契約でも、債務者は自分の権利ばかり主張するのではなく、債権者にある程度譲歩することも必要です。無事に和解ができたら、今度は和解契約書を作成しましょう。
和解交渉が成立したら和解契約書を締結する
後々返済条件等の争いが起きないようにするためには、和解契約書を作成する必要があります。万一裁判になったときにも、この和解契約書は有力な証拠となるでしょう。任意整理で和解契約書に記載すべき基本的な条項は以下のとおりです。
債務総額の確認
まず、過払い金などを差し引いた上で、最終的に負債総額がいくらになるのかを契約書で再確認の意味で記しておきます。和解契約書上、負債額のことは「和解金」と書くほうがよいでしょう。なぜなら、「借入金」などと書いてしまうと、後になって負債額以外の利息や損害遅延金はどうなるのかについて、争いが起きる可能性があるからです。
支払い方法
和解交渉の中で、一括返済にするのか分割返済にするのかについては確認済みのはずです。そのため、具体的にいつから何回払いで何円支払っていくか、毎月の返済日は何日にするのかについて書面上で確認しておきます。端数についても処理の仕方について記載しておくほうがよいでしょう。
期限の利益喪失
和解契約書にこの条項がある場合、ある一定期間返済を怠れば、「期限の利益」を失い和解契約は失効します。そして残債務の一括返済を求められ、一括で支払わなければならなくなります。
これは債権者にとって有利な条件と言えますが、実際の契約書上の文言では、「債権者が請求しない限り債務者は期限の利益を失うことはない」とされ、債務者にも一定の配慮がなされています。
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遅延損害金
期限の利益喪失条項を記載すれば、実際に期限の利益を喪失したときには損害遅延金が発生することがあります。当事者同士の話し合いの内容にもよりますが、通常の遅延損害金は年利10%の割合になることが多いです。
債権債務の清算
債権債務の清算とは、双方で取り交わす和解契約書に記載された債権債務以外は何も発生しないことを確認するものです。これは後日、債務者には別の借金があったり他に支払うものが残っている等、債権者が主張してくるのを回避するために記載されます。
その他に入れるべき条項とは
任意整理での和解契約書に記載すべき事項については、法律上の規定は何もありません。債権者・債務者双方の話し合いの状況により、上記の他に記載する条項もあるでしょう。たとえば、保証人や担保付きの債務がある場合、保証人や担保を外してもらう旨の和解条項を入れることもあります。また、複数の債務がある場合、ひとつの債務について和解成立すれば他の債務については一切請求しない等の「放棄条項」を入れることも可能です。
良い交渉結果を得るには、弁護士・司法書士など債務整理のプロに依頼しよう
債権者との交渉結果によっては、債務者の今後の生活が左右されます。そのため、いかに協議を債務者にとってより良い方向に持っていけるかは、債権者との交渉力にかかっているといっても過言ではありません。法律をよく知らない素人では有利な条件を引き出すのは難しいので、弁護士や司法書士などの経験豊富なプロに交渉や手続きをお任せするのがベストでしょう。
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