離婚後に親が子どもの幸せのために守るべき約束とは?

離婚後の親の義務と権利

養育費を最後まで支払う

親の義務として、養育費は必ず支払わなくてはなりません

離婚をする際、夫婦の間では“養育費の支払い”に関する取り決めがなされます。養育費の支払いは、たとえ子どもと一緒に暮らさなくても親として当然の義務であり、約束の期日まで滞りなく支払わなくてはなりません。

お互いの話し合いの後に「離婚協議書」を作成した場合は、多少の文章的な誤差はあるものの、つぎのような文面が記載されているでしょう。

離婚協議書

夫○○○○(昭和○年○月○日生、以下「甲」という)と、妻○○○○(昭和○年○月○日生、以下「乙」という)は、離婚協議をした結果、次条下記の通り契約を締結合意した。

※前文省略

第〇条(養育費)
甲(または乙)は乙(または甲)に対し、丙の養育費として令和○年○月○日から丙が満20歳に達する日の属する月まで、毎月○万円ずつ、毎月末日に支払う。

前項の養育費の支払いは、次の丙名義の口座に振り込む。

○○銀行○○支店
口座番号 第○○○○○○○○号
口座名義人 氏名 ○○○○

成年年齢は2022年4月から18歳に引き下げられていますが、養育費の支払終期は当事者の合意で定めるものであり、20歳までとする取り決めも有効です。「成人まで」といった書き方は解釈が分かれるため、具体的な年齢や年月で定めておくことが大切です。

人によっては、公証役場に行ってさらにこの離婚協議書を「公正証書」として残している場合もあります。それによって離婚協議書は強制執行の可能な文書となり、養育費の支払いを確保しやすくなります。

ところが、実はそう書面通りにはいかないのが、日本の現状なのです。離婚後に子どもと別れた父親は、離れて暮らすことで子どもに対する愛情が薄くなり、養育費の遅滞や不払いをし始めます。早い人では数ヶ月後になると、指定日に指定口座に振り込まれないなど、兆候が表れ始めます。

このとき、給与の差押えといった法的な措置を取ることができます。かつては相手の勤務先や口座がわからず手続きに進めないケースが多くありましたが、2020年4月施行の改正民事執行法により、裁判所を通じて金融機関に預貯金口座を、市町村や年金機構に勤務先を照会できる「第三者からの情報取得手続」が整備され、預貯金の差押えも可能になっています。

さらに2026年4月施行の改正民法により、養育費の債権には先取特権が付与されました。公正証書などの債務名義がなくても、養育費の取り決めをした文書に基づいて差押えを申し立てられます。取り決めがない場合でも、一定額の法定養育費を請求できる制度が導入されています。

養育費に関して書面を交わしていないケースもある

日本では裁判離婚は数少なく、協議離婚をする夫婦がほとんどなので、ときには「養育費に関しては口約束だけで書面に何も残していない」という人もいます。厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査では、母子世帯のうち現在も養育費を受けていると答えた割合は3割に届いていません。書面での約束がないとなると、支払われない可能性はさらに高くなります。

しかし、たとえどのような状況で約束をしたとしても、養育費の支払いは親としての義務です。もしも支払われなくなった場合は、速やかに弁護士に相談するか、下記のような支援施設に相談しましょう。

養育費に関する相談窓口 こども家庭庁の委託により、養育費の取り決めや不払いに悩む人の相談を受け付ける窓口が設けられています。面談だけでなく、電話やメールによる相談も可能です。
「母子家庭等就業・自立支援センター」 各自治体に相談員が配置されており、養育費のほか、ひとり親家庭のさまざまな相談に応じています。最寄りの相談センターに連絡をして、まずは相談することから始めてみましょう。

子どもの健やかな成長を願う

親権のあるなしに関わらず、子どもを見守る気持ちが大切

離婚をすると、親権者が子どもを扶養することになるので、子どもと離れて暮らす親の中には「自分はもう子どものことを気にしなくていいんだ」と思ってしまう場合があります。しかし、そうではありません。

離婚後の親権者は、父母の双方とすることも一方のみとすることも選べます。どちらを選んだとしても、二人の子どもであることにはまったく変わりありません。子どもの健やかな成長を願い、支えていくことは、法律の枠を越えた親としての約束といえます。近くで支える親も、遠くで見守る親も、子どもがより良い人生を歩めるよう最善の努力をすることが大切です。

離れていても、ときには面会交流をして子どもの成長を確認しましょう

離婚によって子どもと離れ離れになると、子どもを引き取った親は「離婚相手に子どもを会せたくない」と思う人が多く、離れて暮らす親は子どもと疎遠になりがちです。

しかし、面会交流(改正民法により、法律上の名称は「親子交流」に改められました)は、子どもが離れて暮らす親との関係を保ちながら成長するための仕組みです。DVや虐待のおそれがある場合を除き、ときには会って健やかな成長を確認する機会を持ちましょう。そのことで親は子どもに対する愛情を再確認し、養育費支払いへの意欲にもつながるのです。

離婚後も父母が共に子どもの養育に関わる仕組み

改正民法で日本の制度も大きく変わった

かつての日本では、離婚後の親権は父母の一方だけが持つことになっており、養育費の取り決めをしないまま離婚するケースも多く見られました。その結果、ひとり親家庭の困窮や、離れて暮らす親が子どもと会えないという問題が生じてきました。

2026年4月に施行された改正民法は、この状況を変えるものです。父母は親権や婚姻関係の有無にかかわらず子どもを養育する責務を負うことが明確にされ、離婚後も父母双方が親権者となる共同親権を選べるようになりました。あわせて、取り決めがなくても請求できる法定養育費、養育費債権への先取特権、親子交流に関する規定の整備が行われています。

離婚をしても元夫婦が一緒に子育てをする、欧米の事例

欧米の多くの国々では、たとえ離婚をしても元夫婦が共同で子育てに関わることが一般的です。制度が整えられていることに加えて、離婚後も双方の親が子どもの養育に関わるという考え方が社会に根づいている点が大きいといえます。

アメリカ人の夫と離婚後、ごく自然に子育てをするAさんの事例

日本からアメリカに渡って現地の男性と結婚し、子どもが3歳のときに離婚をしたAさんは、離婚後に子どもを引き取って育てています。夫はAさん宅から車で20分ほどの所に住み、毎週末は迎えに来て、子どもと一緒に遊びに出かけます。

また、Aさんが仕事で残業をするときは、子どもの送り迎えを父親が引き受けてくれることもあります。元夫婦の電話でのやり取りは頻繁に行われ、子どもの誕生日にはレストランに行って3人で食事もします。養育費も順調に支払われ、Aさん自身も結婚・出産に関わらず仕事を続けていたため、生活に困窮することはありませんでした。

Aさんにとっては、「夫婦が一緒に暮らさなくなった」という事実を除けば、後はほとんど変わらない暮らしが続いています。また、子ども自身も親の離婚に関係なく両親が愛してくれているので、スクスクと順調に育っています。

制度を活かすのは父母の意識

Aさん元夫婦のような形は、日本でも制度の面では実現できる環境が整いつつあります。共同親権を選ぶことも、養育費や親子交流を具体的に取り決めておくことも可能になりました。

もっとも、制度があっても、それを活かすのは父母の姿勢です。改正民法は、父母が子どもの利益のために互いに人格を尊重し協力しなければならないと定めています。離婚後も子どもの養育に共に関わるという意識を持てるかどうかが、子どもの生活を左右します。

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