アンケート調査でわかった離婚慰謝料や養育費の実態!請求してきちんと支払われるケースは6割…

離婚慰謝料のイメージ

離婚時に揉めがちなのが、慰謝料と養育費請求の問題です。

慰謝料とは、相手が不倫・DVなどの有責配偶者である場合に、相手から与えられた精神的苦痛に対する損害賠償金として請求するお金です。
養育費は、まだ経済的に自立していない子どもがいる場合、親権者が配偶者に請求する子育て費用のことです。

いずれも、離婚時に当事者で合意をして(または裁判により)支払う金額を決めておかないと、一定期間経過後、時効により請求する権利が消滅してしまうおそれがあります。

では、実際に離婚した女性たちは、養育費や慰謝料をきちんと受け取ることができているのでしょうか?
今回は離婚弁護士相談広場編集部が実施した「離婚経験に関するアンケート」の調査結果を元に、離婚女性の実態を見ていきましょう。

離婚経験に関するアンケート

実施:離婚弁護士相談広場 編集部
回答方法:Webアンケート調査
調査日時:2020年09月11日 ~ 2020年09月14日
調査対象:夫が原因で別れた20代~50代までの離婚経験女性
回答者数:離婚経験のある女性 142人/149人

なお、本調査の総合的な結果は、下記のレポート記事にてご紹介しています。
本記事とあわせてご参照ください。

6割近くの女性が慰謝料・養育費を「請求していない」

今回のアンケート調査では、「夫が原因で別れた20代~50代までの離婚経験女性」142名からの回答を得ました。

調査によると、回答者の女性のうち、慰謝料・養育費を「請求していない」と答えた人が全体の約6割。「請求した」と答えた人は、約4割にとどまりました。

離婚慰謝料・養育費を請求した女性の割合

同調査によると、離婚原因は多い順に「性格の不一致(意見の相違・愛情が冷めた・一緒にいたくない)」(53.52%)、「経済的理由(借金・浪費・働かない・生活費を渡さない等)」(30.99%)、「夫の不貞行為(浮気・不倫など)」(24.65%)でした。

このことから、慰謝料・養育費を請求しない人が多い背景には

  • 「請求しても相手にお金がないのでムダ」
  • 「話し合いをするのも苦痛・怖い」
  • 「精神的に疲れて請求する気力がない」

などの理由があるのかもしれません。

弁護士に相談したからといって慰謝料・養育費を請求する訳ではない?

離婚検討中の相談相手による慰謝料・養育費請求への影響
Q3 離婚検討中の相談相手 Q10 夫への慰謝料・養育費請求の有無
N 請求した 請求していない
N 142 59 83
100.0% 41.5% 58.5%
自分の家族
(親・兄弟姉妹など)
78 41 37
100.0% 52.6% 47.4%
夫の家族
(親・兄弟姉妹など)
16 5 11
100.0% 31.3% 68.8%
友人・知人
(離婚経験なし)
36 19 17
100.0% 52.8% 47.2%
友人・知人
(離婚経験あり)
16 8 8
100.0% 50.0% 50.0%
弁護士 16 8 8
100.0% 50.0% 50.0%
弁護士以外の専門家
(離婚カウンセラーなど)
8 6 2
100.0% 75.0% 25.0%
その他 2 0 2
100.0% 0.0% 100.0%
誰にも相談しなかった 33 9 24
100.0% 27.3% 72.7%

離婚を検討中、家族・友人などの信頼できる第三者に相談する人は多いものです。人生を揺るがす重大な判断ですから、客観的な意見を参考にしながら慎重に考えたいと思うのは当然のこと。

では、離婚時の相談相手によって、慰謝料・養育費を請求するかどうか変わることはあるのでしょうか?

弁護士に相談した人の半数は慰謝料・養育費を請求していない

調査によると、相談相手による目立った差異は確認できませんでした。

注目すべきは、弁護士に相談した人でも半数が慰謝料・養育費を請求していないことです。
誤解されることが多いですが、弁護士に相談したからと言って、必ず請求手続きを依頼しなければならない訳ではありません。
弁護士は、配偶者の経済状況など総合的に考慮しつつ、自身の過去の実務経験に基づき、柔軟なアドバイスを与えてくれます。

誰にも相談しなかった人は、貰えるはずの慰謝料・養育費を逃していた可能性も

また、「誰にも相談しなかった」女性の7割以上が「請求していない」と回答していることにも、注意が必要です。
誰にも相談しないと、客観的な意見や正しい情報が得られず、貰えるはずの慰謝料・養育費についても最初から「どうせ無理だろう」と諦めてしまうおそれがあります。

離婚後の女性の主な悩みは経済的な不安なので、離婚時に貰えるお金を諦めてしまうのは、大きな損失です。
何らかの事情で家族・友人に相談しづらい場合は、守秘義務があり離婚の知識が豊富な弁護士やカウンセラーに相談してみるのがオススメです。

20~30代は半数以上が慰謝料・養育費を請求している!40~50代は諦めている?

離婚した女性の年代別でも、慰謝料・養育費の請求状況を掘り下げていきましょう。

Q.10 別れた夫に慰謝料や養育費は請求しましたか?
  全体 請求した 請求していない
全体 142 59 83
全体に対する割合 100% 41.6% 58.5%
20代 11 8 3
20代全体に対する割合 100% 72.7% 27.3%
30代 23 14 9
30代全体に対する割合 100% 60.9% 39.1%
40代 39 14 25
40代全体に対する割合 100% 35.9% 64.1%
50代 69 23 46
50代全体に対する割合 100% 33.3% 66.7%

全体的に、若い世代の方が、慰謝料・養育費を請求していることがわかります。20代は70%以上、30代では60%以上が慰謝料を請求しており、請求していないのは少数派です。

一方、上の世代では結果が逆転し40代・50代はともに6割以上が慰謝料・養育費を請求していません。

請求しづらいからと慰謝料請求を諦めるのはハイリスクな行為

年代によって差が顕著な理由としては、

  • 若い世代は幼い子どもを抱えていることが多く、今後の子育て費用を得なければならないから
  • 若い世代はネットリテラシーが高く、養育費・慰謝料の正しい知識を得やすいから
  • 40~50代は長年連れ添った配偶者に対して諦めの気持ちを抱いているから
  • 40~50代は長年の結婚生活による精神的・肉体的な疲れを強く感じているから

などが考えられます。

世代による知識や認識の差はあるかもしれませんが、長年連れ添った配偶者に対する気遣いや請求そのものへの嫌気など、離婚手続き中の一時の気持ちで慰謝料・養育費を請求しないまま諦めるのは得策とは言えません。

今回の調査でも、離婚した女性が最も不安に感じるのは「離婚後の経済的な不安定」であることがわかっています。請求しづらさを感じたまま諦めるのは、離婚後の生活を考える上ではハイリスク以外の何者でもありません。

配偶者と直接のやりとりに不安や難しさを感じるなら、まずは弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

意外と多い?養育費・慰謝料「取り決め通りに支払われている」が6割

慰謝料や教育費が取り決め通りに支払われているか?

慰謝料・養育費を請求したからといって、必ず相手方が応じるとは限りません。
請求した養育費・慰謝料を、実際にしっかりと受け取ることができている女性は、どれぐらいいるのでしょうか?

慰謝料・養育費を請求したと回答した女性を対象に、「離婚時の取り決め通りに支払われていますか?」と質問したところ、約6割が「取り決め通りに支払われている」と回答。
「まったく支払ってもらえない」のは、約15%にとどまりました。

慰謝料・養育費支払いが難航しやすい子あり夫婦の離婚

子供あり・なしで見る慰謝料・養育費の支払い状況

さらに子供あり・子供なしで分けてみると、「子供あり」の場合は「取り決め通りに支払われている」が46%。「まったく支払ってもらえない」のは23%となりました。
一方で「子供なし」は、「取り決め通りに支払われている」が95%。ほとんどの人が、合意した通りの慰謝料を受け取ることができているようです。

支払い率の傾向だけ見ても、子供がいない場合、慰謝料は確実に請求しておくのが明らかに得策です。

子供がいない場合に比べ、子供がいる場合は慰謝料・養育費の支払い確保が難しくなる点は、ありえる可能性として理解しておきましょう。
取り決め通りの支払いを得づらいからこそ、子供がいる夫婦の離婚協議では、慰謝料・養育費についてしっかりとした交渉を行うことが非常に重要となります。

世代別・離婚慰謝料の支払い状況
回答数 取り決め通りに支払われている 支払われているが取り決め通りではない(金額・頻度など) まったく支払ってもらえない
全体平均 59 37 13 9
62.71% 22.03% 15.25%
20代 8 6 2 0
75% 25% 0%
30代 14 10 1 3
71.43% 7.14% 21.43%
40代 14 7 5 2
50% 35.71% 14.29%
50代 23 14 5 4
60.87% 21.74% 17.39%

慰謝料・養育費請求の支払いが浸透する20~30代

年代別に見てみると、20~30代は70%以上が取り決め通りに支払われていることが明らかになりました。40代の50%、50代の60%を大きく上回っており、年代別の差が顕著です。
慰謝料を請求した人の割合も高かった点をあわせて考えても、現在の20~30代は離婚に際しては慰謝料・養育費を請求するもの、支払うべきものという認識がある程度浸透しているように見えます。

慰謝料・養育費支払い割合の低い40代以上の離婚は注意して準備を

また、慰謝料と違って養育費は、子どもが独り立ちするまでの長期間にわたって定期的に支払われるものなので、支払う側の経済状況などの変化によって途中で滞ったりすることも少なくありません。
40代・50代に見られる割合の低さは、長期的に渡って発生する養育費の存在や、年齢とともに変化する元夫の経済状況などが影響している可能性も高いと言えるでしょう。

まとめ

養育費・慰謝料の請求手続きは、離婚を検討している女性にとって大きな精神的ストレスとなることが多いようです。
そのため、最初から請求することを諦めてしまう女性も多いですが、一度取り決めさえできれば、受け取れる可能性は低くないことが今回の調査で明らかになりました。

養育費の取り決めをする際に、弁護士に依頼して公正証書(執行認諾文言付き)を作成しておけば、支払いがストップした時に、相手の銀行預金口座や給与に強制執行をかけることができます。

2020年4月からは改正民事執行法が施行され、養育費不払いを防ぐための新制度が利用できるようになりました。今までよりもさらに養育費を回収しやすくなってきていますので、最初から諦めることなく、ぜひ弁護士に相談してみましょう。

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