離婚後のお金(生活費や退職金)はどうなる?年金貯金借金や慰謝料請求についても徹底解説!
夫婦が離婚をするときには、お金の問題が重要です。離婚にまつわるお金には、離婚前のお金と離婚の際のお金、離婚後のお金の3つに分けるとわかりやすいです。
離婚前のお金としては、離婚前の別居期間における生活費が主に問題となります。
離婚の際のお金とは、離婚するときに相手から支払いを受けられるお金や支払をしなければならないお金のことです。離婚の手続きを弁護士に依頼したら、弁護士費用もかかります。
離婚後のお金としては、離婚後の生活費をどのように用意するかということや、養育費、年金などがあります。では以下で、順番に見てみましょう。
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離婚後のお金(生活費・退職金・貯金・借金)はどうなる?
まずは離婚後のお金について考えてみましょう。これは、離婚後どのようなお金を得ることができるのか、どのようなお金が必要になるのかという最も重要な部分について解説しています。
離婚後の生活費について
離婚した後は、自分一人で生きていかないといけません。婚姻中なら相手から婚姻費用をもらうことができますが、離婚後は夫婦関係が解消されるので、相手からの支払いを受けることができなくなります。
離婚前に婚姻費用の調停をして婚姻費用の取り決めをしていても、離婚した月からは支払いが止まります。そこで、離婚したら、その月から完全に自分一人で生活費を用意しなければならないのです。安易に離婚をすると、離婚後の生活にたちまち困ってしまうおそれもあるので、注意が必要です。
離婚をするときには、離婚前からパートや正社員などの仕事を探したり、あるいは生活保護を受けたりなど、離婚後の生活方法を確立しておくことが大切です。
離婚後の養育費について
離婚すると、夫婦間の扶助義務がなくなるので、自分の分の婚姻費用を受けとることができなくなりますが、子どもがいる場合には、子どもの養育費を請求することができます。養育費を請求できるのは、未成年の子どもがいる夫婦で、自分が子どもの親権者となっている場合です。子どもが20歳になる月まで請求することが可能です。
養育費の支払い方法は原則として毎月払いとなるので、離婚後子どもが成人するまで支払いを受け続けることになります。離婚時に一括払いすることは認められません。一括払いするなら、それは養育費ではなく解決金などとして取り扱われます。
また、支払いを受けた養育費は、子どものために使うべきですが、誰かが見張っているわけではないので、実際に何に使っていてもわかりません。子どものために積立をしている親もいますし、生活費に使っている親もいます。
養育費はどうやって決めるのか?
養育費の金額はどのようにして決めるのかを見てみましょう。養育費も婚姻費用と同様、夫婦の収入状況と子どもの数によって決まります。支払う側の年収が高くなれば養育費の金額は上がりますし、支払いを受ける側の収入が高くなれば養育費の金額は下がります。また、子どもの年齢が高くなると養育費の金額が上がります。
子どもの数が多いほど養育費の金額が高額になりますが、子どもが2人になったら2倍、という単純な計算ではなく、より緩やかな上がり方になります。たとえば、夫が年収600万円、妻が収入0円の場合、養育費の金額は、月額6~8万円となりますが、子どもが2人なら月額8万円~10万円となります。
養育費の大まかな金額を知りたい場合には、下記の養育費シュミレーションをご活用ください。
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養育費の請求方法
まずは当事者同士で話し合って決める
養育費を請求したい場合には、どのような方法をとれば良いのでしょうか?この場合にも、まずは離婚時に養育費の話し合いをして、当事者同士で決めることが一般的です。
調停や訴訟になることもある
ただ、養育費の場合には、養育費の金額に合意ができないだけで離婚調停をしたり裁判をしたりすることは多くはありません。養育費について合意ができないなら、先に離婚を成立させておいて、離婚後に養育費の調停を利用することが多いです。養育費以外の問題でも合意ができないなら、離婚調停や訴訟をして、その中で養育費を決めます。
離婚後も養育費の請求が出来る
離婚時に養育費の金額を決めなかった場合には、離婚後に養育費についての話合いをすることができます。当事者同士で話し合っても合意ができない場合には、家庭裁判所で養育費の調停を申し立てて、その手続き内で養育費を決めてもらうことができます。調停では合意出来ない場合、養育費の調停は不成立になって、当然に審判に移行して、審判官がケースに応じた妥当な養育費の金額を決定してくれます。
養育費の請求が出来る期間
養育費の請求は、子どもが成人するまで行うことができます。ただ、調停をする場合、調停申立時からの養育費の金額の支払いが認められることになるので、早めに申立をした方が、多くの金額の支払いを受けることができます。また、一度決定した養育費の金額が不相当になった場合には、養育費増額調停や養育費減額調停をすることによって、金額を決め直すことができます。養育費増額調停や減額調停も、当事者が合意できなければ審判に移行して、審判官が妥当な金額を決定してくれます。
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離婚後の年金分割について
夫婦が離婚する場合のお金の問題としては、年金分割も重要です。年金分割とは、婚姻中に支払った保険料に対応する年金を夫婦が分け合う制度です。年金分割の対象になるのは、厚生年金と共済年金のみであり、基礎年金部分(国民年金)は対象になりません。
また、分割の対象になるのは、婚姻中に支払った保険料に対応する部分のみです。年金が半額ずつに分けられる制度ではないので、注意が必要です。婚姻年数が短い夫婦の場合などでは、年金分割をしても、ほとんど分割を受けられないこともあります。
熟年離婚などのケースでは、年金分割制度に期待して妻が離婚を請求することなどがありますが、年金分割によって妻が得られる年金額は、期待しているほど大きくならないことが多いです。長年婚姻していても、月額2、3万円程度しか増えないこともあります。しかも、相手が自営業者の場合には、年金分割は利用できません。
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合意分割と3号分割について
また、年金分割には合意分割と3号分割の2種類があります。合意分割は、平成20年3月31日以前の年金の分割であり、これについては相手の同意が必要になります。これに対し、平成20年4月1日以降の年金については、相手の合意が不要な3号分割となります。
平成20年5月以降に離婚する夫婦であっても、平成20年3月31日以前の年金の分割をする際には、相手の合意が必要になります。
年金分割を行う方法
年金分割を行うためには、合意分割か3号分割かによって手続きが異なります。
平成20年4月以降の年金の分割しか問題にならないなら、相手の合意がなくても、単独で年金分割の申請ができます。
これに対し、平成20年3月以前の年金の分割が必要なら、相手の合意が必要です。その場合には、離婚後相手と一緒に年金事務所に行って、年金分割の手続きをする必要があります。
年金分割調停を利用する事ができる
相手が年金分割に合意しない場合には、家庭裁判所において「年金分割調停」を行うことができます。年金分割調停で相手が合意しない場合には、調停は不成立になって、審判官が年金の分割割合を決めてくれます。裁判所が年金分割の割合を決めるときには、必ず0.5(2分の1)ずつとなります。そこで、年金分割の調停を申し立てられたとき、合意しないと言って争ってもあまり意味はありません。
年金分割ができる期間
なお、年金分割ができる期間は、離婚後2年間です。2年以内に手続きをしないと、どれだけ長期の婚姻期間があった夫婦でも、どれだけ高額な年金がある夫婦でも、一切分割を受けることができなくなります。また、年金分割調停も2年以内でないと受け付けてもらえません。しかも、相手が死亡すると、年金分割請求をできる期間が死亡後1ヶ月以内に短縮されてしまうので、注意が必要です。
年金分割を受けたい場合には、早めに年金分割調停を申し立てて、決定をしてもらっておくことが大切です。そして、調停や審判で決定が出たら、早めに年金事務所に行って分割に必要な手続きを済ませておきましょう。
離婚後の退職金の取扱方法はどうなる?
財産分与でよく問題になるのが、退職金です。退職金は高額なので、夫婦のどちらに摂っても非常に大きな関心事になるのです。妻側からすると、「絶対に退職金を支払ってほしい。うちには退職金しかお金がない」ということがよくありますし、夫側からすると、「長年汗水垂らして働いて、ようやく得られた大事な退職金。
絶対に妻には渡したくない」と考えます。退職金は、夫婦共有財産として財産分与の対象になるのでしょうか?
退職金は、財産分与になるときとならないときがあります。以下で詳しく説明します。
退職金を既に受けとっているケース
退職金は、すでに受けとっているケースと、まだ受けとっていないケースがあります。まず、すでに受けとっているケースでは、考え方が簡単です。この場合には、受取済の退職金が預貯金や投資信託、不動産などの形に変わっているからです。そこで、それぞれの個別の資産として評価すれば足ります。たとえば3000万円の退職金を受けとっていて、預貯金として置いているケースでは、夫婦がそれぞれ1500万円ずつ受けとることになります。
退職金をまだ受けとっていないケース
退職金をまだ受けとっていない場合には、問題が複雑になります。この場合、将来退職金の支給が確実に行われるかどうかが問題となります。たとえば、退職金の支給時期がかなり先のケースだと、それまでに会社を辞めてしまう可能性もありますし、会社が倒産して退職金を受け取れなくなる可能性もあり、退職金画支給されるかどうかがわかりません。
また、しっかりした会社でなければ、突然退職金を支給しないと言い出す可能性もあります。そこで、退職金を財産分与の対象に含めるには、退職金が支払われる蓋然性があることが必要です。そのためには、
- 退職金支給時期が近いこと
- 退職金支給の蓋然性が高いこと
の2つの要件が最低限必要となります。
退職金の支給時期が近い、とは、退職が離婚後10年以内であることが目安となります。退職金支給の蓋然性が高い、とは、たとえば公務員や上場企業の従業員で、退職金規程がしっかり整備されている場合などを言います。このような条件がそろっていたら、退職前でも退職金を財産分与として請求出来る可能性があります。
退職金の財産分与対象部分
退職金を財産分与として請求する場合には、退職金のうち、どの部分が財産分与の対象になるかを計算する必要があります。というのも、結婚前から働いていた場合には、退職金には結婚前に働いて得た分の評価も入っているからです。
財産分与の対象になるのは、婚姻後に働いた部分だけに限定されるべきです。そこで、退職金を財産分与の対象にする場合、退職金の財産分与割合は退職金を部分的に計算しなければなりません。
具体的には、退職金の金額について、勤続年数で割り算をして婚姻年数をかけ算します。計算式は、以下の通りです。
財産分与対象となる退職金=受取(予定)退職金÷勤続年数×婚姻年数
このように、退職金は按分計算されるので、婚姻年数が短い夫婦の場合には、相手の多色金が多額であっても、さほど大きな金額の支払いを期待できないおそれがあります。
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自分で独身時代に貯金したお金はどうなる?
結婚前から自分が持っていたお金を婚姻時もずっと守っている人がいます。このような場合、独身時代の預貯金は、財産分与の対象になりません。
財産分与の対象になるのは夫婦共有財産だけなので、共有財産ではない独身時代のお金は対象から外れるのです。独身時代からのお金を婚姻中もおいていた場合には、そのお金を離婚後の生活費やその他の有用の資に充てることができます。
離婚後に相手の親の遺産はどうなる?
夫婦には財産がなくても、相手の親が資産家で、相手が多額の遺産相続をすることがあります。また、相手の親から贈与を受けることもあるでしょう。このように、相手の実家からの遺産や贈与金は、財産分与の対象になるのでしょうか?
答えはNOです。財産分与の対象になるのは夫婦共有財産だけですが、相手の親の遺産や贈与金は、相手の特有財産となるからです。このようなお金の形成については、自分が何の貢献もしていないのですから、当然です。そこで、いかに相手が金持ちであっても、それが相手の実家からの資産であれば、離婚によって財産分与を受けることはできません。
この点、遺産相続であれば、もともと相手の実家からのお金であっても受けとることができます。たとえば、相手が実家から高額な遺産を受け継いでいるときに、離婚をせずに我慢して婚姻生活を継続していれば、相手が死亡したときには、もともとの相手の実家からの遺産を自分がもらえることになります。
そうなると、早めに離婚をしたことで、損をしてしまうおそれもあります。特に高齢の夫婦が離婚をする場合には、このような遺産相続と離婚の違いについても検討しておくことが大切です。
離婚後に借金はどうなる?
借金は財産分与の対象にならない
夫婦の財産分与でよく問題になるのが、夫婦に借金があるケースです。相手にサラ金やカードローンなどの借入がある場合、自分も半分支払をしなければならないのか、ということです。
この点、借金については財産分与の対象になりません。借金は、個人個人のものなので、夫婦が離婚したからと言って突然支払い義務者が変わると、債権者にとって大きな不利益があるからです。そこで、離婚をしても、債権者は相変わらずもとの債務者にのみ、全額の請求をします。
保証人になっていたら責任が発生する
ただ、夫婦の場合、相手の借金の保証人になっていることが多いです。この場合には、相手が支払をしないと、債権者は保証人である自分に支払い請求をしてきます。住宅ローンを組んでいて、夫が主債務者、妻が連帯保証人になっている場合などには、夫が支払をしなくなると、債権者が妻に支払い請求をしてきて、妻も自己破産しなければならないケースなどもあります。
離婚する際には保証人を外してもらおう
これは、夫婦だからと言うことではなく保証人になったことが理由ですが、夫婦で保証をしている場合には、離婚後の借金返済方法について、特に注意する必要があります。自分が相手の保証人になっている場合には、離婚時になるべく保証人を外してもらう手続きをしておく方が安心です。
保証人を外すためには、債権者と話し合って、別の担保を入れる必要があります。別担保としては、別の資力のある保証人を入れるか、土地建物などの担保を入れることが一般的です。そのようなことが可能かどうか、相手ともよく話し合って検討しましょう。
離婚後に住宅ローンはどうなる?
まずはプラスかマイナスかを計算する
は夫婦が離婚するとき、住宅ローンが問題になることも多いです。住宅ローン付きの家を購入すると、離婚時にそれをどのように精算すべきかが問題になるのです。この場合、まずは家の評価額が、プラスになるのかマイナスになるのかを計算します。
プラスになる場合
家の評価額は、現在の家の実勢価格(市場価格)から残ローンの金額を引いて計算します。たとえば、実勢額が3000万円、残ローンが1000万円の家なら、2000万円が財産分与の対象額となります。この場合には、夫婦それぞれの取得分が1000万円ずつとなります。
分け方としては、夫婦のどちらかが家に住み続けて家を取得するなら、家を取得する人が代償金として相手に1000万円を支払います。どちらも家に住まない場合には、家を売却して得られた2000万円の現金を1000万円ずつに分けます。
マイナス(オーバーローン)になる場合
次に、オーバーローンのケースがあります。たとえば、家の実勢価格が3000万円でも残ローンが4000万円なら、家の評価額はマイナス1000万円になるので、家は財産分与の対象になりません。この場合には、家にどちらかが住み続けるのか、または処分するのかを決めないといけません。
どちらかが住み続けるなら、誰がローンを支払うのかが問題となりますが、通常は家に住む方がローンを支払います。住宅ローンの名義人が住み続けるならそのまま住宅ローンを支払えば良いだけですが、住宅ローンの名義人でない方が住み続けるなら、住宅ローンの借り換えなどの手続きが必要になります。
借り換えができない場合には、住宅ローンの名義人はそのままにして、家に住む方が事実上住宅ローンを支払っていくしかありません。または、財産分与代わりに、住宅ローンの名義人が完済まで住宅ローンの支払いを続ける約束をすることもあります。
さらに、任意売却をしてできるだけ残ローンを減らし、残債を支払っていく方法もあります。
このように住宅ローン付きの家がある場合、財産分与は非常に複雑になることが多いです。自分達で処理方法がわからない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
財産分与の請求方法について
次に、財産分与の請求方法を見てみましょう。財産分与を取り決めるときにも、まずは離婚時に夫婦が話し合うことが基本です。合意ができたらその内容で財産分与の支払いを受け(支払い)ましょう。
話合いによって合意ができない場合には、家庭裁判所で離婚調停を行います。このとき、慰謝料などの他の離婚条件とともに、財産分与の話合いもできます。
調停をしても合意ができない場合や相手が財産隠しをしていると疑われて納得できない場合などには、離婚訴訟を起こして財産分与を決定してもらう必要があります。離婚訴訟では、財産に関する資料の提出と、必要な財産分与の計算をして、自分の主張を裁判所に認めてもらわないといけません。
最終的に裁判官が財産分与の方法を決定するので、その内容にしたがって財産分与を行うことができます。
離婚時に財産分与をしなかった場合
離婚時に財産分与についての取り決めをしなかった場合には、離婚後に財産分与を請求することができます。この場合、まずは相手に対して任意で財産分与の支払いを求めると良いでしょう。
メールや電話、手紙などの方法で、財産分与してほしい意思を伝えます。このことで、話合いによって財産分与を受けることができたら、それが最も簡便です。
ただ、相手が話合いに応じなかったり財産の開示に応じなかったりすることも多いです。この場合には、家庭裁判所で財産分与調停を行う必要があります。財産分与調停では、調停委員が間に入って、財産分与の方法についての話し合いをすすめることができます。
調停でもお互いが合意出来ない場合には、財産分与調停は不成立となります。財産分与調停の場合には、当然に審判に移行して、審判官が財産分与の方法を決めてくれます。
離婚後に財産分与請求をすることができるのは、離婚後2年間と決まっています。それを過ぎると、どれだけ高額な財産がある場合でも請求ができなくなってしまうので、離婚時に財産分与の取り決めをしなかった場合には、早めに財産分与請求をすることが大切です。
離婚前に発生するお金はどうなる?
離婚前の別居中にかかるお金/生活費は婚姻費用に
夫婦が離婚するときでも同居中は生活費の問題が起こりにくいです。この場合には、それまで通り夫婦の家系が同一になったままの方法で家計管理できるからです。
しかし、別居すると状況が変わります。夫婦の家計が別々になるので、生活費の管理方法が変更されるからです。専業主婦の家庭など、一方に収入がない場合に特に大きな問題となります。
専業主婦の場合、別居して相手から生活費の送金がないと、生活ができなくなってしまいます。このような場合、妻は夫に対し、婚姻費用というお金を請求することができます。婚姻費用とは、離婚前の生活費のことです。
夫婦は婚姻している限り、相互に扶助義務を負っています。そこで、相手より自分の方が収入が高ければ、相手に婚姻費用を支払わないといけません。離婚前に相手と別居するとき「生活費をどうすれば良いのだろう?」と心配になることが多いですが、最低限法律で認められた婚姻費用の分は、相手に請求することができます。
婚姻費用はどうやって決めるのか?
それでは、離婚前の生活費である婚姻費用は、どのようにして決定されるのでしょうか?
婚姻費用の金額については、家庭裁判所で定められた相場があります。
夫婦の年収によって決まるもので、支払う側の収入が高ければ婚姻費用の金額が上がりますし、支払いを受ける側の収入が高ければ婚姻費用の金額は下がります。また、支払いを受ける側が子どもを育てていたら、その分生活費が多くかかるので、婚姻費用の金額は上がります。
婚姻費用の支払い方法は、毎月払いが普通
たとえば、夫婦のみの家庭で、夫が年収400万円(給与)、妻が年収100万円(給与)の場合には、婚姻費用の金額はだいたい月4~6万円の範囲内なので、その中でケースに応じて婚姻費用を決定します。
ただ、婚姻費用の金額は、算定表通りにしなければならないということはなく、お互いが了承していたら、異なる金額にすることもできます。先ほどの例でも、夫が納得すれば毎月8万円にしてもかまいませんし、妻が納得したら毎月3万円にしてもかまいません。
婚姻費用の請求方法
夫婦が別居するときには、相手が何も言わなくても婚姻費用を支払ってくれるとは限りません。生活費の請求をしたいときには、どのようにすれば良いのでしょうか?
この場合、まずは相手に任意での婚姻費用の支払いを求めます。メールや電話などの普段の連絡方法でかまいません。これによって相手が支払いに応じてくれたら、解決します。
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任意で支払ってもらえないなら婚姻費用調停をする
任意での支払い請求に応じてくれない場合には、婚姻費用分担調停という手続きを利用します。婚姻費用分担調停は、家庭裁判所で行う調停の1種で、調停委員に間に入ってもらって婚姻費用についての話合いをする手続きです。
婚姻費用調停の申立方法
婚姻費用分担調停を申し立てるときには、相手の居住地を管轄する家庭裁判所において、「婚姻費用分担調停申立書」を提出します。これについては、家庭裁判所に書式があるのでもらうことができますし、裁判所のホームページからもダウンロードできます。戸籍謄本が必要になるので、収集して提出すると、申立の手続きができます。
調停では、調停委員が間に入ってくれるので、相手と直接顔を合わせて話しあう必要はありません。調停で合意ができたら、調停調書が作成されて、その内容にしたがって婚姻費用の支払いを受けることができます。調停でも合意ができない場合には、婚姻費用分担調停は、当然に審判手続きに移行します。
婚姻費用審判とは
審判とは、審判官(裁判官)が、強制的に婚姻費用の金額を決定して支払い命令を出す手続きです。通常の裁判と似ています。審判になったら、夫婦のそれぞれの収入資料を見て、審判官が妥当な婚姻費用の金額を決めてくれます。相手が支払わない場合には、強制執行(給料の差押えなど)が可能になります。
婚姻費用で受け取るお金だけで生活出来るのか?
離婚前の別居中、婚姻費用の支払いが受けられるとしても、それだけで生活出来るのか、という問題があります。
実際、婚姻費用だけで生活するのは難しいことが多い
婚姻費用の算定表では、支払いをする側も生活していかなければならないことが前提になるので、相手の収入が低い場合には、婚姻費用の金額がかなり低くなったり、場合によっては0になったりすることもあります。相手が無職の場合や生活保護の場合には、婚姻費用を請求できません。
相手がサラリーマンの場合でも、支払いを受けられるのが6万円なら、その範囲で生活するのは困難でしょう。
離婚前の別居は生活費にかかるお金の工面を
そこで、離婚前に別居をするなら、基本的な生活費をどのように工面すべきか、自分で考える必要があります。たとえばパートをしたり生活保護を受けたりすることが考えられます。実家のある人は実家に戻るのも1つの方法です。婚姻費用の請求は可能ですが、期待しすぎると危険なので、それはあくまで補完的なものだと考える方が良いです。
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離婚する際に発生するお金や慰謝料について紹介
次に、離婚するときに問題になるお金について、見てみましょう。
離婚慰謝料ではどのくらいお金が請求できる?
夫婦が離婚するときによく取り上げられるのが、慰謝料です。離婚するなら慰謝料を請求できるものだと考えている人も多いです。また、妻は夫に慰謝料請求できると考えられていることもあります。これらの理解は正しいのでしょうか?以下で説明します。
離婚慰謝料はどのようなケースで発生する?
それでは、離婚慰謝料はどのようなケースで発生するのでしょうか?
この問題は、離婚慰謝料がどのような性質のものかという問題と関わります。離婚慰謝料は、離婚原因を作ったことにより、相手に精神的苦痛を与えたことについての損害賠償金です。そこで、離婚慰謝料が発生するためには、夫婦のどちらかに責任があることが必要です。このことを「有責性」と言います。
つまり、離婚するときに、どちらか一方に悪いところがあったら慰謝料が発生するけれどもそうでない場合には慰謝料が発生しないということです。たとえば、単なる性格の不一致で離婚する場合などには、たいてい慰謝料は発生しません。
離婚慰謝料が発生するのは、不倫やDV、悪意の遺棄(悪意をもって相手を見捨てること。生活費不払いなど)の問題行為があったケースです。このように、離婚するときには必ずしも慰謝料請求できるものではないことを、まずは理解しておく必要があります。
また、妻が常に夫に慰謝料請求ができるというのも誤りです。夫側に有責性がなければ慰謝料請求はできませんし、妻に有責性があったら妻が慰謝料請求されることもあります。
離婚慰謝料の相場は?
離婚慰謝料の相場
それでは、離婚の際に請求できる慰謝料の相場はどのくらいになっているのでしょうか?離婚後の生活をまかなえるほどの金額の支払いを受けられるのかが問題です。
日本では、一般的に慰謝料の金額が低いです。名誉毀損の慰謝料なら、5万とか10万などということもあります。その中でも、離婚の慰謝料はまだ高い方だと言われています。
具体的には、50万円~300万円くらいが相場となっています。
不貞の場合に高額になりやすい
離婚慰謝料が最も高額になりやすいのが、不貞(不倫)の慰謝料です。この場合、婚姻年数が10年間を超えていたら、300万円程度の慰謝料が認められやすいです。それ以外の原因による離婚の場合には、慰謝料の金額が200万円以下になることが多いです。
もちろん個別の事案によって、これより高額な慰謝料が認められることもありますが、なかなか難しいのが現状です。数百万円のお金で離婚後の生活をまかなうことは通常不可能なので、日本では、離婚慰謝料によって離婚後の生活をしようと考えると危険があります。
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当事者の話合いなら自由に金額を決められる
これらの慰謝料の相場は、裁判所が慰謝料の金額を決定するときの基準ですので、当事者同士が話し合ってこれより高額な慰謝料の取り決めをすることは可能です。たとえば相手の収入が高い場合や資産がある場合には、1000万円以上の慰謝料を支払ってもらってもかまいませんし、分割払いによって高額な慰謝料支払をしてもらってもかまいません。
反対に、相手に支払い能力が無い場合、相場より低い慰謝料で我慢しなければならないケースもでてきます。相手に本当に資力が無ければ、たとえ裁判をしても満足な慰謝料を支払ってもらえないケースもあります。
このように、慰謝料の金額はケースによって大きく異なるので、なるべく高額な慰謝料の支払いを受けるためには、ケースごとの判断が重要です。自分で適切な請求方法や定め方がわからない場合には、弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
離婚慰謝料の請求方法
まずは任意で話し合う
次に、慰謝料の請求方法を説明します。相手に慰謝料を請求したい場合には、まずは離婚前に夫婦で話しあうのが基本です。協議離婚の取り決めをするときに、同時に慰謝料の金額や支払い方法を決定します。
離婚調停をする
話合いによっても相手から支払いを受けられない場合には、離婚調停を申し立てます。
離婚調停も、婚姻費用分担調停と同様家庭裁判所の調停手続きの1種です。申立の際には、調停申立書を作成して、家庭裁判所に提出します。離婚調停を申し立てると、家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらって、離婚することとその条件についての話合いができます。
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離婚訴訟をする
離婚調停でもお互いが合意出来ない場合、調停は不成立になって終わってしまいます。それでも慰謝料請求をしたいなら、離婚訴訟を起こす必要があります。これは通常の裁判手続きなので、当事者の主張内容と立証方法によって裁判官が離婚と慰謝料の認定をしてくれます。これによって、相手の有責性が認められたら、慰謝料の支払い命令を出してもらうことができて、慰謝料の支払いを受けることができます。
離婚後も慰謝料を請求できる
また、慰謝料は離婚後にも請求することができます。そのためには、地方裁判所で慰謝料請求訴訟を起こす必要があります。離婚訴訟は家庭裁判所でしたが、慰謝料請求訴訟は地方裁判所になるので、注意が必要です。慰謝料請求訴訟で相手の有責性が認められたら、裁判官が慰謝料の支払い命令を出してくれます。
なお、離婚後の慰謝料請求ができるのは、離婚後3年以内と限られています。離婚時に慰謝料の取り決めをしなかった場合には、早めに手続きを行う必要があります。
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離婚時に請求できるお金(財産分与)について紹介
離婚時に相手に請求できる(支払いをする)お金としては、財産分与も重要です。財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で積み立てた財産を、夫婦が分け合うことです。婚姻中、夫婦の家計は1つになりますし、多くの共有財産が生まれます。しかし離婚後は夫婦の財産を分けなければならないので、財産分与の手続きが必要になります。
離婚時に支払いを受けられる財産分与のお金を、離婚後の生活費に充てたいと考える人も多いですが、そのようなことは可能なのでしょうか?以下で見てみましょう。
財産分与はどのくらいもらえるのか?
まず、財産分与では、どのくらいお金がもらえるのかが重要です。もらえる金額によって、離婚後の生活設計も変わってくるでしょう。財産分与でもらえる金額は、ケースバイケースでかなり異なります。財産分与の対象になるのは夫婦共有財産なので、夫婦共有財産が多い場合には高額な財産分与がもらえる可能性が高くなりますし、共有財産が少ない夫婦なら、財産分与の金額は低くなります。
財産分与割合の問題もある
財産分与割合とは、夫婦の財産分与の取得割合のことです。これについては、原則的に夫婦それぞれが2分の1ずつとなります。裁判所で財産分与の判断をしてもらうときには、2分の1ずつに分割されます。ただ、当事者同士で話しあって決めるときには、この限りではありません。
妻の取り分を8割としてもかまいませんし、妻の今後の生活保障のために妻が全額もらってもかまいません。反対に、夫の取得割合を6、妻を4とすることなども可能です。
このように、財産分与でもらえる金額は一律ではなくケースによって変わること、同じケースでもどのような方法で財産分与をするかによって金額が変わることがポイントです。自分のケースでなるべく高額な財産分与を受けたい場合には、やはり専門家である弁護士に相談すると効果的です。
財産分与の対象は?
次に、財産分与の対象になるのはどのような財産なのか、見てみましょう。
財産にはいろいろなものがあります。すべてが財産分与になることはなく、対象になるのは「夫婦共有財産」のみです。夫婦共有財産とは、夫婦が婚姻中に積み立てた財産です。たとえば、夫婦の給料から積み立てた預貯金や社内積立、生命保険などがあります。
子どものための学資保険や子ども名義の預貯金も、夫婦の給料が支払い原資になっていたら、共有財産となって財産分与の対象になります。夫の給料だけではなく、妻のパート代などの給料やそれ以外の収入も共有財産となり、分与の対象となります。
婚姻中に自宅を購入している場合や投資マンションなどの不動産を購入している場合、それらの資産も財産です。ゴルフ会員権、投資信託や株券、各種の出資金なども財産分与の対象です。
財産分与を行うときには、まずは夫婦にどのような資産があるかを調査して確定することが非常に重要です。相手が財産隠しをすると、適切な財産分与を受けられなくなって損をすることもあるので、注意が必要です。
離婚時によく支払われるお金「解決金」とは?
離婚時によく支払いが行われるお金の種類に「解決金」があります。特に協議離婚のケースで支払われることが多いです。解決金とは、一体どのようなお金なのでしょうか?
解決金は、「離婚問題を解決するためのお金」
法的に支払い義務があるものではありません。夫婦が離婚について話し合いをしているとき、いろいろな点で合意できないことがあります。たとえば、相手が不倫を認めないので話が進まないこともありますし、財産分与では妻の離婚後の生活ができないので妻が離婚を受け入れられないこともあります。
このような場合、本来支払い義務がなくても、一方の配偶者が相手にまとまったお金の支払いをするのです。たとえば、夫が不倫を疑われているケースでは、不倫を認めていないので「慰謝料」は支払いたくないけれども、離婚問題を解決するための「解決金」なら支払ってもよい、ということがあります。
法的に財産分与を計算したら300万円しかもらえないので妻の生活ができない場合でも、夫から1000万円の「解決金」を支払ってもらうことによって、離婚ができることもあります。
このように、夫婦が話し合って離婚する場合には、法的な権利義務にとらわれず、自由に解決金を定めて納得が行く方法で離婚することが可能です。弁護士に協議離婚や離婚調停を依頼すると、この解決金の支払いを交えて、上手に離婚をすすめてくれることが多いです。
離婚にかかる弁護士費用はお金の負担が大きい?
離婚の際に問題になるお金には、弁護士費用もあります。協議離婚や調停離婚、裁判離婚の手続きを弁護士に依頼すると、法律相談料、着手金、報酬金などの弁護士費用がかかります。
法律相談料は、だいたい30分5000円
事件を依頼するときにかかる着手金は、依頼する手続にもよります。協議離婚なら10万円~20万円程度で依頼できますが、調停になると20万円~30万円、訴訟になると30万円~50万円くらいかかります。
離婚問題が解決したときの報酬金としては、30万円~50万円くらいかかりますし、相手から慰謝料や財産分与、解決金などの支払いを受けられた場合には、その10%~15%くらいの金額が加算されます。
そこで、離婚問題を弁護士に依頼すると、協議離婚だけでも数十万円、調停や訴訟を依頼すると100万円以上の弁護士費用がかかるケースもでてきます。離婚をするときには、このような弁護士費用のことも頭に入れておく必要があります。
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離婚後の各種お金のポイントを押さえて困らないようにしよう!
今回は、離婚の際に押さえておきたい、重要なお金の問題について、解説しました。離婚するときには、離婚前の生活費、離婚の際に受けられる給付、離婚後に請求出来るお金が大切です。
お金のことを考えずに離婚をすると、離婚後の生活に困窮してしまうおそれもあるので、よく考えてから離婚をすすめる必要があります。支払いをする側にとっても、お金は非常に重要です。大切な退職金を相手に渡したくない場合などには、財産分与制度を正しく理解して対応する必要があります。
請求側がなるべく高額なお金の支払いを受けたり、支払いをする側がなるべく支払いを減らしたりするには、離婚問題に詳しい弁護士に依頼することが役立ちます。今回の記事を参考にして、お金の問題のポイントを押さえて離婚で困らないように賢く対処しましょう。
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