不倫の示談交渉~浮気相手への対応方法と正しい示談書の書き方
浮気や不倫をされた場合、賢く慰謝料を請求する上では示談交渉が重要です。
示談交渉では、不倫や浮気などのトラブルについて、示談で今後の夫婦関係(婚姻関係の継続か離婚か)や慰謝料のことを話し合い、問題について解決をしていきます。
本記事では不倫や浮気トラブルにおける、示談交渉の方法、和解や慰謝料請求を念頭においた示談書の作成方法について紹介します。
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不倫や浮気における示談交渉
示談とは、「裁判によらず、民事上の争い事を当事者同士の話し合い等で解決すること」、つまり裁判所の決定を得ずに、当事者同士の交渉を通じて紛争を解決する方法のことです。
ニュースなどで示談が成立したため、訴訟を取り下げたケースや、交通事故で示談が成立した等の話題を聞くことがあります。
こうしたケースは事件・事故の被害者・加害者間の紛争の「示談」ですが、夫婦間のトラブルについても示談交渉で問題解決を図る場合があります。
不倫や浮気の示談交渉は誰と行う?
示談交渉とは紛争を抱えた当事者同士が話し合うものです。
不倫や浮気といったトラブルの場合、この当事者にあたるのは
- 被害者(浮気された妻または夫)
- 有責配偶者(浮気した妻または夫)
- 有責配偶者の浮気相手
の3者であるのが通常です。
慰謝料は自分に精神的苦痛を与えた者に対する請求であり、一種の損害補償にあたります。
そのため、被害者からの慰謝料請求はまず有責配偶者に求めるのが一般的です。
また、有責配偶者とは別で、浮気相手に対して慰謝料請求を行うことも可能です。
これは、不倫や浮気が「不貞行為」という立派な違法行為にあたるためです。
浮気をした配偶者とその浮気相手の二人は「共同不法行為」に問われ、両者に対して損害賠償金の支払いの義務が生じます。
つまり、慰謝料の請求先は(1)配偶者(2)浮気相手(3)両者の3通りがあります。
※ただし、浮気相手に慰謝料を請求できるのは、浮気相手自身が不貞行為にあたるという事実を認識していた場合、あるいは既婚者と知らなくても容易に気づける状況だった場合など、一定の条件を満たす場合に限ります。
示談交渉の相手は配偶者・浮気相手・その両方の3パターン
こうした慰謝料の請求先に順じ、示談交渉も、
- 有責配偶者
- 浮気相手
- その両方
と行うケースがありえます。
もちろん、請求先は被害者自身で決めることができますが、方針を決定する時は過度に感情的にならず、冷静な判断を行うことが重要です。
不倫トラブルにおける示談交渉の方法
不倫や浮気などのトラブルの示談交渉を進める際は、大別して3つの方法があります。
- 当事者同士で直接話し合う
- 内容証明郵便など書面を通じた交渉
- 弁護士に交渉を依頼する
当事者同士で直接話し合う
被害者と配偶者または浮気相手で直接、問題解決のための話し合いを行うパターンです。
通常は被害者から浮気した側にメールや電話で連絡を取り、示談交渉の日取りを設定し、実際に会って話し合う流れが一般的です。
当事者同士での話し合いのため、問題の争点から解決までをストレートに判断した交渉が行えることから、比較的短期間で、早めの問題解決が可能な方法と言えます。
一方で、
- 浮気相手と直接話し合うこと自体の精神的な負担が大きい
- 慰謝料などの条件で妥結できない、浮気等の事実に対して主張が異なる場合、交渉が難航するおそれがある
などのデメリットも存在します。
内容証明郵便など書面を通じた交渉
配偶者の浮気相手と対面で会うこと自体の負担が重く難しい場合、内容証明郵便など書面で交渉を行う方法があります。
被害者側から浮気相手側へ不倫慰謝料請求書を送り、その内容をもとに書面の往復で交渉していきます。
※最初は書面で与件を伝えた後、その内容をベースに対面交渉を行うケースもよくあります。
最大のメリットは、やはり浮気相手との対面での話し合いを回避できる点ですが、明文化した書面でのやり取りでは口頭での交渉よりも問題点・条件を正確に伝え、要望を明確にした交渉が行えることも利点です。
一方で、書面作成・発送の手間がかかり、回答の受け取りにもリードタイムが発生し、対面と比べ解決に時間がかかる点がデメリットです。
また、内容証明郵便を利用する費用がかかるため、書面での交渉で何回も送る事になった場合は、その分、費用もかさみます。
内容証明郵便の利用費は1回で約2,000円前後かかるのが通常です。(送付書類 5枚程度の場合)
弁護士に交渉を依頼する
弁護士が代理人となって、浮気相手と交渉するパターンです。
弁護士に示談交渉を委任することになるため、被害者は浮気相手と直接対応する必要はなくなります。
また、浮気相手が示談に応じず交渉が決裂した場合も、浮気相手を相手取った慰謝料請求訴訟を含めた手続きをすべて弁護士に任せることが可能です。
一般的な不倫慰謝料の相場もふまえ、状況に応じた適正な慰謝料を請求できる点、離婚後の生活設計など示談交渉以外を含めたアドバイスがもらえる点もふくめ、非常に有効な方法である一方、デメリットとなるのはやはり費用の部分です。
実際に請求できる金額が少額に留まる場合、浮気相手に支払えるだけの資力がない場合などは費用倒れとなるおそれもあります。
弁護士の無料相談などを活用し、金額の見積もりを出してもらった上で、損が出ないことを確認した上で依頼するなど、慎重な検討も必要です。
示談交渉がまとまったら、示談書を作成する
話し合いがまとまり、示談が成立したときには「示談書」を作成します。
示談書には当事者双方の権利と義務の関係や問題が解決したことが示され、これらより事後のトラブルを防止できます。
また示談は裁判が始まった後から作成されることもあり、この場合は弁護材料としても使用されます。
不倫トラブルにおける示談書の役割
夫婦間において「不倫や浮気の事実」が発覚すると、被害者となる配偶者は精神的苦痛を受け、離婚をせず夫婦生活を続けていくのには、深刻な影響が伴います。
実際、和解を行っても、婚姻関係の継続は難しい場合が多いのが実際です。
不倫や浮気で一度傷ついた「夫婦関係を修復する」には、その原因となる不倫問題を解決・精算するのは当然のことです。
示談書には不倫事実の認定状況、慰謝料の金額を盛り込む
示談書には当事者間で合意した内容を書きます。具体的には不倫事実の認定、謝罪、慰謝料の金額やその支払い方法などです。
示談書の内容をもって、不倫を理由とした「慰謝料の請求」が合法であることの確認にもなるので、重要な書類です。
高額の場合は分割返済の方法も明記する
また、高額な慰謝料の場合は「分割返済の方法」も記します。
これも後日支払い義務を一方的に放棄するなど、トラブルを防ぐためにも必要なことです。
示談書の作成は、当事者のみではなく中立的立場の第三者、できれば専門家に制作を依頼するのが賢明です。
不倫や浮気の解決、慰謝料請求の話し合いに示談書が必要なわけ
示談書は、不貞行為をした者がその事実を認め謝罪・賠償し被害者との権利と義務を明確にすることでトラブルを防げます。
双方が感情的になりやすい問題だけに、示談を口頭で交わすのは避けるべきです。
示談が成立すれば不倫問題は収束したことになり、以後はこの件に関しては争えなくなります。
つまり、示談の成立は「今後の暮らしに大きく影響」するので、書面として示談書を作成することが何より重要です。
まず書面を作ることは、言った・言わない、払え・払わない等の感情からくる事態を避ける上でも有効です。
示談と慰謝料支払いのタイミング
不倫問題における示談書では、必ずと言っていいほど「慰謝料の支払い」が伴います。
慰謝料の支払いが行われるタイミングは、示談の成立後に行うケースが大半です。
もちろん、不倫問題とあわせてそれ以外の物損・人身などの損害賠償トラブルが発生していた場合、金額が少額にとどまる場合など、正式な示談成立の前に支払うこともありえます。
しかし、示談成立の前、すなわち不倫問題の解決前の支払いということになるので、以後交渉の中で金額の増額や支払い方法の変更が発生した場合、支払う側に「不利」が発生する可能性が高まります。
慰謝料は示談成立と同時の支払い実行が理想的
通常、慰謝料は示談書を締結したその場で支払いを行うケースや、示談書に記載した期日・方法で支払うケースが多いです。
被害者側としては、支払い期日に支払われないリスクを避けるため、できれば「その場で支払う」のが理想と言えます。
その場での支払いは、現金での支払いはもちろん、金額によってはスマートフォンを使ってオンラインバンキングによる銀行振り込みも行えます。
特に慰謝料金額が高額で分割支払いの場合は、支払いの記録が残る銀行振り込みで支払うケースが通常となるでしょう。
示談交渉で慰謝料の分割払いを求められた場合
慰謝料は一種の損害賠償金なので一括払いが原則です。
しかし、現実は慰謝料が高額な場合や、支払う側の経済状況を配慮し「分割払い」になることもありす。
これは、慰謝料を受け取る側からすれば「大きなリスク」です。
一回の支払い額が高額で、分割期間が長ければ支払いの不履行のリスクは高まります。
慰謝料の未払いリスクには公正証書での示談書作成が有効
そのような事態に備え、公正証書で示談書を作成する方法があります。
公正証書で示談書を作成すれば「支払いが不履行」になった場合でも、訴訟を起こすことなく、相手の財産を差し押さえる手続きがとれます。
強制執行認諾の約款がついた公正証書の作成方法
公正証書で示談書を作成したい場合は、公証役場で強制執行認諾の約款がついた公正証書の作成をお願いしてください。
ただし、公正証書の効力による強制執行は相手の財産や給与を差し押さえるものです。
慰謝料の支払い自体を保証するものではなく、たとえば相手にそもそも慰謝料を支払う原資が十分でないときは回収不可能となります。
不倫トラブルにおける慰謝料請求では、現実的に回収できる金額・内容で定めることも重要です。
示談書の正しい書き方と書式
不倫問題の解決における示談書には、法律で定める所の「正式な形」はありません。
一般的な書式としては、不倫事実の確認・それに対する謝罪・慰謝料の支払いの意思の有無。このほか、金額や支払い方法や今後の夫婦関係、その他誓約事項などを記載します。
示談書の内容は簡潔にしておくと、トラブルが少ない
示談書は、個人でも作成可能ですが、今後のトラブルや不用意な感情移入を避けるためにも、専門家の立ち会い、あるいは作成を依頼する方が望ましいでしょう。
その際は(示談書の内容は)できるだけ簡潔にすることが重要です。
内容が複雑になれば、かえって争点を増やし、いたずらに解決に至る時間を延ばしてしまうからです。
示談書の作成方法についても、弁護士に相談の上手続きを進めていくようにしましょう。
示談書が完成。当事者双方が認めれば「不倫問題は収束」したことになります。
最後は、示談書二通にそれぞれ署名、押印し一通ずつを保管すれば手続きは終了です。
不倫示談書のサンプル
示談書は当事者と被害者、どちらが作成してもOK
示談書は、書き方や(誰が作成するのかも含め)正しい作成の仕方や、必要性についても「法律」では定められていません。
つまり、不倫行為した側と被害者側のどちらからでも「示談書」が作成できます。また、示談書作成費用も片側が負担しても、双方で折半してもかまいません。
示談書はその性質上、制作した側が主導権を持てるということがいえます。専門家立ち会いのもとに、あるいは依頼して作成すればなおさらです。
もちろん、相手側が作成した示談書の内容が「納得できないもの」であれば、示談を成立させなければいいのです。とは言え、今後トラブルを大きくしないためにも、示談書を制作した方がメリットは大きいといえるでしょう。
示談書はどちらが先に送っても問題なし
本記事の中盤で説明した通り、作成した示談書は当事者と被害者(浮気をされた側)のどちらから送付しても構いません。
もちろん、話し合いや協議の状況によっては、送付にふさわしいタイミングがあるでしょう。この場合も弁護士に一任し、有利な状況で示談書が送付できるよう、手続きを進めてもらってください。
公正証書で示談書を作る方法
慰謝料が示談後、すぐに支払われない(後日に支払い期限がきめられている)場合や、分割での支払いの場合は、公証役場で作成する公正証書を活用するのが最も安全な方法です。
これは、公正証書には相手方の給与や財産を差し押さえる「強制執行の効力」があるからです。また、相手側にも「支払いの意思」を与える事ができます。
なお、示談後速やかに慰謝料が支払われる場合や、一括支払いが確認できる場合には(特に)公正証書を作成するメリットは少なくなります。
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まとめ
浮気や不倫の示談書は、慰謝料請求に必要な書類
示談書は単なる「浮気を許す」ための合意文章ではなく、浮気や不倫の慰謝料を速やかに請求・お互いが納得した上で支払われるのに有効な手段です。
浮気をされた方、不倫でお悩みの方も「慰謝料請求をしたい」のであれば、示談の上、今後のことを決められると良いでしょう。
示談交渉については、不倫や浮気問題に強い弁護士に相談すれば、最も精神的負担が少なく、時間が掛からない方法を考えてくれるので安心です。
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