名義貸しとは~返済義務は誰が負うか・違法性とリスクを解説

名義貸しとは?返済義務は誰が負うか・違法性とリスクを解説
名義貸しは、家族や友人、恋人に頼まれて引き受けてしまいがちですが、契約上の責任を負うのは名義を貸した本人です。相手がお金や物を使った場合でも、返済しなければその負担は名義人に残り、信用情報にも影響します。

一方、自分の知らない間に勝手に名義を使われた名義冒用は扱いが異なり、原則として返済義務を負いません。この記事では、名義貸しで問われる罪と罰則、断り方やすでに貸してしまった場合の対処法までを解説します。

名義貸しとは

名義貸しとは、自分の名義を他人に使わせ、その人が使うお金や物のために、ローン・クレジットカード・携帯電話などの契約や借入を自分名義で結ぶことをいいます。

契約上の当事者はあくまで名義を貸した本人であるため、返済や料金の支払い義務、滞納したときの督促や信用情報への影響は、すべて名義人に及びます。

実際にお金を使うのは頼んできた相手でも、貸金業者やカード会社・携帯会社から見た「契約者」は名義を貸した本人です。「名前を貸しただけ」という認識でいると、相手が返済しなくなった瞬間に、自分が抱えた借金として請求を受けることになります。

名義貸しの典型的なパターン

名義貸しは、お金や継続的な支払いが発生する契約のほぼすべてで起こり得ます。

代表的なのは、

  • 消費者金融やカードローンでの借入
  • クレジットカードの作成
  • 携帯電話・スマホの契約
  • 自動車ローン
  • 銀行口座の開設や譲渡

などです。

いずれも「契約者=名義人」「実際の利用者=別の人」という形になり、支払い責任と利用実態がずれる点が共通します。

「名義を貸す」と「名義を借りる」立場の違い

名義貸しで借金・物品購入・契約などを行った場合、その返済や条件履行について法律上の責任を負うのは、名義を貸した側(契約名義人)です。名義を貸す側は、契約書にサインし審査を受ける「契約当事者」になります。
一方、名義を借りる側は実際にお金や物を使う人ですが、契約上は表に出ません。

そのため返済が滞ったときに業者が請求するのは契約者である名義人です。名義貸しで行った取引の責任は名義を貸した側に集中します。

名義貸しがトラブルになりやすい理由

名義貸しがトラブルになりやすいのは、お金や物を使うのは相手なのに、契約上の責任はすべて名義人に集中し、しかも名義人には相手の行動をコントロールする手段がないからです。

相手がきちんと返済している間は、問題が表面化しません。しかし、相手が支払いを止めたり連絡が取れなくなったりした瞬間に、業者が請求するのは契約者である名義人です。代わりに払えばそのまま自分の借金になり、払わなければ信用情報に滞納の記録(いわゆるブラックリスト)が残り、住宅ローンやクレジットカードの審査に長期間通りにくくなります。

トラブルは支払いの滞納だけにとどまりません。貸した名義が口座や携帯電話の場合は詐欺などの犯罪に悪用され、名義人自身が刑事責任を問われることがあります。自動車や不動産の名義であれば、その車や物件で起きた事故や事件について、名義上の所有者・責任者として損害賠償を求められることもあります。それぞれの詳しい内容は、このあとの章で順に解説します。

名義貸しの返済義務は誰が負うのか

自分の意思で名義を貸した場合、借金の返済義務を負うのは、お金を実際に使った相手ではなく、契約者である名義人です。「名義を貸しただけ」「使ったのは相手だから」と説明しても、債権者がその主張を受け入れることはありません。

一方で、自分の知らない間に勝手に名義を使われた「名義冒用」のケースは扱いが異なり、原則として返済義務を負いません。まずは自分のケースがどちらにあたるかを切り分けることが大切です。

原則は契約名義人(名義を貸した本人)が返済義務を負う

借金の返済義務を負うのは、申し込み時の契約者として記載された名義人です。

名義貸しで借りたお金などについて、貸金業者やカード会社は、契約上の名義人と契約を結んだものとして扱います。そのため、実際にお金を借りて使ったのが別の人でも、請求は名義人に向かいます。

名義人に対して相手が「必ず返す」と約束していても、そうした当事者どうしの約束は債権者には関係ありません。実際に使った相手が返済を続けているうちは問題が表面化しませんが、その相手が支払いを止めれば、利息を含めた全額が契約者である名義人に請求されます。

また、名義を貸してできた借金は、相手が自己破産しても消えず、名義人の借金として残ります。

立て替えた分は相手に請求できるが回収は難しい

名義人が肩代わりして返済した分は、実際にお金を使った相手に対し、あとから返すよう請求する権利(求償権)があります。

ただし、名義貸しを頼んでくる相手は、すでに自分の名義では借りられない状態にあることが多く、求償権を行使したとしても回収できないことが少なくありません。
相手との連絡が途絶えれば、請求のしようもなく、立て替えた分はそのまま名義人の負担として残ります。

知らない間に名義を使われていた場合は原則責任なし(名義冒用)

自分の意思とは関係なく、他人に勝手に名義を使われて契約された場合(名義冒用)は、原則として返済義務を負いません。

無断で他人の名前を使って結んだ契約は、その名前を使われた本人が後からその契約を認めない限り、本人には効力が及ばないと民法113条に定められているためです。

たとえば、親が同居する子どもの本人確認書類を持ち出して子ども名義で借りた場合、原則として返済義務を負うのは親であり、子どもではありません。

自分の身に覚えがなくても返済義務が生じる可能性も

ただし、これには例外もあります。本人確認書類や印鑑・キャッシュカードの管理に落ち度があり、貸主が「契約する権限があった」と信じてもやむを得ない事情があった場合には、表見代理(民法110条)として契約の効果が本人に及び、返済義務を負うことがあります。一方、貸主が名義冒用を知ったうえで契約していた場合は、本人に効力は及びません。

身に覚えのない自分名義の請求を受けたときは、放置せず、まず冒用された事実を貸主に伝えてください。それでも請求が続く場合は裁判で判断されることもあります。不安を感じた場合はお早めに弁護士への相談をおすすめします。

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区分 自分の意思で貸した(名義貸し) 知らない間に使われた(名義冒用)
返済義務 原則、名義人が負う 原則、負わない
根拠 自分が契約当事者として申し込んでいる 無断の契約は本人に効力が及ばない(民法113条)
例外 義務を免れる例外は基本的にない 書類・印鑑の管理に落ち度があると表見代理で義務を負うことがある(民法110条)
とるべき対応 返済が苦しければ債務整理を検討 冒用を貸主に伝える/請求が続けば弁護士へ

なお、保証人や連帯保証人として返済を求められている場合は、名義貸しとは法的な立場が異なります。詳しくは次の記事で解説しています。

名義貸しで問われる可能性のある罪と罰則

名義貸しという行為そのものを直接罰する法律はありません。しかし、契約の内容や相手の目的によっては、詐欺罪・私文書偽造罪、口座・携帯電話に関する特別法に触れ、刑事罰を科されることがあります。

「名義を貸しただけ」のつもりでも犯罪に問われる場合があるため、安易に引き受けてはいけません。

私文書偽造罪・詐欺罪に問われるケース

名義貸しで特に問題になりやすいのが、詐欺罪と私文書偽造罪です。

実際に使うのが別の人であることや返済の見込みがないことを隠して貸主を信用させ、お金を借りれば、詐欺罪(刑法246条・10年以下の拘禁刑)にあたることがあります。

また、本人の承諾なく他人の名前で契約書を作成した場合は、有印私文書偽造罪(刑法159条1項・3月以上5年以下の拘禁刑)にあたる可能性があります。偽造した契約書を貸主に提出すれば、偽造私文書等行使罪(刑法161条)も加わります。

名義を貸した側も、事情を知って協力していれば、共犯として同じ罪に問われることがあります。

契約の種類で加わる法律(口座・携帯電話)

口座や携帯電話の名義貸しでは、上記に加えて特別な法律が関わります。

通帳・キャッシュカードやネットバンキングのID・パスワードを他人に渡すと、有償・無償を問わず犯罪収益移転防止法に違反し、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、もしくはその両方が科されることがあります。

携帯電話では、契約した端末を携帯会社に無断で他人に渡すと携帯電話不正利用防止法に触れます。業として有償で譲渡した場合は、2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)の対象です。

最初から他人に渡す目的で携帯を契約すれば、携帯会社をだましたとして詐欺罪が成立することもあります。
これらの口座や携帯は特殊詐欺や闇金の道具に使われることが多く、知らないうちに重い犯罪へ加担する危険があります。

罰則の重さ・量刑の目安

名義貸しに関わる罪は、内容によって重さが大きく変わります。

最も重いのは詐欺罪で、10年以下の拘禁刑です。

私文書偽造罪は3月以上5年以下の拘禁刑、犯罪収益移転防止法違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、携帯電話不正利用防止法違反は2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(業として有償で譲渡した場合)が定められています。

実際の量刑は、金額や回数、犯罪への関与の度合いによって変わり、複数の罪が同時に成立すれば処罰はより重くなります。

名義を借りて使った相手も罪に問われるか

名義を借りて実際に使った側も、当然に罪に問われます。
他人名義で契約してお金や端末をだまし取れば詐欺罪、他人の名前で契約書を作成すれば私文書偽造罪にあたり得ます。

さらに、その口座や携帯電話を特殊詐欺などに使えば、より重い犯罪の主体になります。

名義を貸した側だけでなく、借りた側にも重い責任が生じる行為だと理解しておく必要があります。

家族・恋人・知人に名義貸しを頼まれたときの注意点

名義を頼んでくる相手が家族や恋人、親しい友人であっても、返済義務を負うのは契約者である名義人です。「身内だから」「断れない関係だから」という事情は、貸主には関係がありません。

ここでは、契約の種類ごとに起こりやすいトラブルを見ていきます。

消費者金融・カードローンの名義を貸したとき

消費者金融やカードローンの名義を貸すと、借りたお金を使うのが相手でも、返済義務は名義人に残ります。

相手が「すぐ返す」「迷惑はかけない」と言っても、滞納すれば利息を含めた全額が名義人に請求され、信用情報にも傷がつきます。

家族や友人に頼まれても、借入れの名義貸しには応じないことが大切です。すでに貸してしまった場合の対処は、後の章で説明します。

携帯電話・スマホの名義を貸したとき

携帯電話の名義貸しは、恋人や知人から「自分は契約できないから」と頼まれる形で起こりがちです。しかし、契約者である名義人には端末代金や通信料の支払い義務があり、相手が滞納すれば名義人に請求されます。

さらに前章のとおり、契約した携帯を携帯会社に無断で相手に渡す行為は携帯電話不正利用防止法に触れ、その携帯が特殊詐欺などに使われれば、名義人が捜査の対象になることもあります。

自動車ローン・車の名義を貸したとき

自動車ローンの名義貸しは、配偶者や親子の間で「ローンが通らないから名義だけ」という形で起こりがちです。

この場合も、ローンの返済義務を負うのは契約者である名義人です。相手が返済を止めれば名義人に請求が来て、信用情報にも影響します。

車の名義とローンの名義、実際に使う人が食い違うと、離婚や相続の際にトラブルになりやすい点にも注意が必要です。

名義貸しを頼まれたときの対処と返済に困ったときの解決法

名義貸しは、頼まれても断るのが最善です。すでに名義を貸して借金を背負ってしまった場合は、一人で抱え込まず、早めに弁護士に相談してください。
返済が難しいときは、債務整理で生活を立て直す方法があります。

頼まれても名義は貸さない(断り方)

名義貸しは、どんな相手でも断るのが基本です。

「迷惑はかけない」と言われても、返済義務を負うのは名義人であり、相手が払わなければ自分の借金になります。
断りにくいときは、「自分も審査やローンを控えていて名義は使えない」とはっきり伝えるのが有効です。

特に、謝礼を持ちかけてくる名義貸しは、闇金やソフト闇金などの違法業者が関わっている可能性が高く、応じると犯罪に巻き込まれる危険があります。

すでに名義を貸して借金を背負ったときの対処

すでに名義を貸してしまい返済を求められている場合は、まず借りた本人と連絡を取り、できるだけ早く返済してもらうのが基本です。

本人が返済すれば、名義人の負担は残りません。しかし、相手が支払わなかったり連絡が取れなかったりする場合は、立て替えても回収が難しく、滞納すれば名義人の信用情報に傷がつきます。

返済の見通しが立たないときは、早めに弁護士に相談してください。

知らない間に名義を使われていたときの対処(名義冒用)

自分の知らない間に名義を使われていた場合は、まず貸主に「身に覚えがなく、勝手に名義を使われたものだ」と伝えてください。

前章のとおり、無断で使われた契約は原則として本人に効力が及びません。ただし、書類や印鑑の管理に落ち度があると責任を負うこともあるため、請求を放置するのは危険です。

親が子の名義を無断で使ったケースなど、身内の冒用で対応に迷う場合や、貸主に冒用を伝えても請求が続く場合は、弁護士に相談して対応を決めるのが安全です。

返済が苦しいときは債務整理で解決できる

名義貸しで背負った借金でも、返済が苦しいときは債務整理で立て直せます。

債務整理には、利息や返済額を見直す任意整理、借金を大幅に減らす個人再生、返済義務を免除してもらう自己破産などがあります。

名義人自身の借金として処理されるため、相手の都合に関係なく手続きを進められます。どの方法が向くかは借金額や収入によって変わるため、まずは弁護士に相談して最適な方法を選びましょう。

債務整理の具体的な進め方や費用は、次の記事で詳しく解説しています。

まとめ

名義貸しとは、自分の名義を他人に使わせて契約や借入をすることです。自分の意思で名義を貸した場合、返済義務を負うのは実際に使った相手ではなく契約者である名義人で、「名義を貸しただけ」と言っても支払いを免れることはできません。

一方、知らない間に勝手に名義を使われた名義冒用は、原則として返済義務を負いませんが、書類や印鑑の管理に落ち度があれば責任を負うこともあります。

また、名義貸しは詐欺罪や私文書偽造罪、口座・携帯電話に関する特別法に触れ、刑事罰の対象になる場合があります。

家族や恋人、親しい友人に頼まれても、名義貸しは大きなリスクを伴うため引き受けないことが大切です。すでに名義を貸して返済に困っている場合は、一人で抱え込まず、早めに専門家に相談してください。

名義貸しの借金で困ったら弁護士に相談を

名義貸しによる借金や、身に覚えのない請求でお困りの場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。

返済義務の有無の判断から、債務整理による解決まで、状況に応じた最適な対応を提案してもらえます。

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