特定調停後の「繰り上げ返済」は得策か?住宅ローンとどう違う?

繰り上げ返済

特定調停後に繰上げ返済を行うと、 完済までの期間が短縮できます。返済中のストレスから早く解放されるというメリットがあります。しかし、特定調停では将来利息があらかじめカットされているため、住宅ローンの繰上げ返済と違って借金減額の効果はありません。返済中に臨時収入があっても、不測の事態に備え貯蓄するほうが得策です。

特定調停と繰上げ返済

特定調停は債務整理手続きの一種で、債務者が裁判所に申し立てて行います。利息制限法に基づく引き直し計算や、将来利息のカットなどで借金総額を圧縮できます。返済期間は原則3年で、残債額が多いなど特別な事情があれば最長5年まで認められます。

繰上げ返済

一般的に借金・ローンの返済は、「毎月20日に、3万円ずつ振り込む」といったように返済の頻度と金額が決まっています。返済の遅れや返済額が足りないケースは、厳しい言い方をすればもってのほかですが、逆に多く支払って借金返済のペースを上げることも考えられます。これが「繰上げ返済」です。

繰上げ返済とは

繰上げ返済とは、借金やローンの返済中に、毎月の支払額より多い金額を前倒しで支払う返済方法です。債務者に収入アップや何らかの臨時収入があるなど、債権者と返済方法を取り決め時点よりも経済状況が好転した場合に、債務者が任意で行うものです。

繰上げ返済を行うケースとは

繰上げ返済を行えるのは、債務者の収入が増えるか、支出が減った場合です。前者は、転職して給料が上がった、またはボーナスがもらえるようになった、親が亡くなり遺産を相続した、といったケースです。一方後者は、他の債権者への借金を完済した、子どもが独立した、などが考えられます。

繰上げ返済のメリット

借金やローンの繰上げ返済のメリットのひとつは、完済までの期間が短縮できることです。借金返済中は、債権者への支払いを最優先にした生活となるため、以前よりも生活費や娯楽費を抑えるなど節約を強いられがちです。繰上げ返済で予定より早く完済できれば、毎月の家計の支出から借金の返済がなくなり、生活が楽になったり精神的にゆとりが持てるようになるでしょう。

特定調停と繰上げ返済

特定調停は、調停調書や決定所など「裁判所が出す決定」という形で返済計画が決められます。では、特定調停で債務を整理した場合、この決定に定められていない繰上げ返済はできるのでしょうか?

法律上、繰上げ返済は可能

結論から言うと、特定調停でも繰上げ返済は可能です。法律上、特定調停後の繰上げ返済は何の問題もありません。繰上げ返済を行いたい場合は、相手方である債権者に事前連絡が必要です。繰上げ返済を行いたい旨を相談して承諾を得ましょう。何も連絡せず、いつもの返済日に多めに振り込むだけでは、後々、債務者と債権者で返済状況の認識が食い違ってしまう恐れがあります。

一部、受け付けない債権者も

ただ、返済計画を承認した債権者側にとっては、繰り上げ返済を受け入れると債権管理が煩雑になり新たな事務処理の負担が生じます。一部の債権者は繰り上げ返済を承認していないので、注意が必要です。

特定調停の繰上げ返済は得策か?

では、特定調停後に繰上げ返済を行うことは「得策」と言えるのでしょうか?

住宅ローンの繰上げ返済との違い

繰上げ返済という言葉は、一般的に「住宅ローン」でよく知られています。住宅ローンと特定調停では、繰上げ返済で得られる効果が異なります。両者の違いを確認せずに特定調停の繰上げ返済を行うと、期待はずれの結果に終わるかもしれません。

住宅ローンの繰上げ返済

住宅ローンの繰上げ返済は、返済総額を減らす方法として広く活用されています。ボーナスなどで繰上げ返済を行った後、毎月の返済額は据え置くが完済までの期間が短くなるパターンや、逆に返済期間は変更せず毎月の返済額を減らすパターンがあります。いずれも繰上げ返済によって元金の返済が早く進む分、利息も減少し、返済総額が少なくなるという仕組みです。

特定調停後の繰上げ返済

しかし特定調停では、原則として将来利息がカットされるため、調停成立または調停に代わる決定で債務総額は確定しています。したがって、繰上げ返済を行っても債務総額を減らすという効果はありません。債務者は繰上げ返済で金銭的なメリットは得られないのです。

特定調後の繰上げ返済をするべきか

このように、特定調停の繰上げ返済は住宅ローンの場合と異なり借金減額の効果はありません。この違いを踏まえると、特定調停後の繰上げ返済は得策ではなく、積極的にするべきでないと言えるでしょう。

将来利息のカットがメリット

将来利息がカットされることは、特定調停のメリットです。繰上げ返済を利用して1年で完済しようが3年間かかって返済を終えようが、債権者に支払う総額は同じなのです。

繰上げ返済は得策ではない

もし繰上げ返済を優先して手元の資金が減っている時に事故・病気で入院するなど不測の事態が発生すれば、家計が苦しくなるかもしれません。特定調停後の繰上げ返済がリスクとなる可能性もあるのです。

お金の管理能力を身に着けることが必要

繰上げ返済をすれば、残りの返済額は減るので一見楽になるかのように思えます。しかし、債務整理をすることになったのは、本人にお金の管理能力が欠けていたことも忘れてはならないポイントです。

本人のお金の使い方の癖を考える

お金に余裕ができたからと言って、安易に繰上げ返済をしてしまうと、いざ何らかの事情でまとまったお金が必要になったときに困ってしまうかもしれません。また、お金があれば散財してしまうなどの癖があれば、それを正さない限りまた同じことを繰り返す危険性があります。

増えた収入は貯蓄へ

特定調停後は、不測の事態に備えて少しずつでも貯蓄を形成することが重要です。もし、まとまった額が必要になったとき、もし手元のお金がなければ、また借金をしてしまう可能性も考えられます。もし収入アップや臨時収入で家計に余裕ができても、繰上げ返済より貯蓄に回すほうが得策でしょう。

お金の管理のトレーニング

「手元にお金があると使いたくなるので、繰上げ返済したい」という方も、やはり繰上げ返済をせずに自分で管理するトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。特定調停後の返済を終えて借金問題が解決しても、散財する癖が治っていなければ、再び借金問題に悩まされるかもしれません。貯蓄の基本は「先取り」です。多めの収入が入ったら、すぐに貯金専用の銀行口座に入金して生活費ときっちり分けておくなど、確実に貯まる習慣作りが大切です。

特定調停後の繰上げ返済は、制度上問題はありませんが、借金減額の効果はありません。返済期間中に家計にゆとりができた場合は、繰上げ返済よりも貯蓄が得策です。プロの正しい知識に基づいて債務整理を行いたい方は、弁護士や司法書士の無料相談をぜひ活用してみてください。

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