任意整理後も携帯・スマホは使える?機種変更やのりかえは可能?

スマホ

携帯電話利用料金の未払いがなければ、任意整理後も携帯・スマホの使用・機種変更・他社へののりかえは可能です。しかし任意整理では信用情報機関に5年間事故情報が登録されるので、その期間中は端末の購入で「分割払い」ができなくなります。分割払いはクレジットカードの買い物と同じ信用販売にあたり、信用情報をチェックされるからです。

任意整理した後も携帯・スマホは使える?

もはや生活に欠かすことができない携帯電話やスマートフォン。任意整理の後、使用できるかできないかは心配なところでしょう。

結論から言うと、任意整理した後も、携帯電話やスマートフォンを継続して使い続けることは可能です。

任意整理は、支払いの難しくなった借金の支払い方法や回数について債権者と直接交渉する手続きです。
任意整理であれば、あらかじめ携帯会社を任意整理の対象から外しておけば、携帯電話の契約に対する影響は出ません。
携帯会社への回線使用料の支払いさえ継続できれば、携帯電話・スマートフォンを使い続けることができます。

任意整理ならびに任意整理以外の債務整理方法についても、携帯電話・スマートフォンの利用にどういう影響が出るか、それぞれ見ていきましょう。

携帯・スマホに関わる2つの「ブラック」

まず、任意整理による携帯・スマホへの影響を説明する上で重要な、携帯・スマホに関わる2つの「ブラック」について知っておきましょう。

携帯ブラック

一つ目のブラックは、俗に言う「携帯ブラック」です。携帯電話会社が顧客の未払い情報を共有している仕組みのことで、携帯・スマホの利用に大きく関わってきます。

回線契約と端末の購入契約

まず携帯・スマホは契約の形式について理解しておきましょう。携帯・スマホの契約は、新しく持つ際もMNPを利用して他社にのりかえる際も、「回線契約」と「端末の購入契約」に分かれています。回線契約はdocomo・au・SoftBankといった携帯電話会社の通信回線を利用できる契約で、本体の購入契約は携帯・スマホの端末を買う契約です。

未払い情報は共有されている

携帯・スマホの利用者は利用分に応じた料金を毎月支払いますが、もしも未払いが発生した場合、その情報はTCA(電気通信事業者協会)という組織を通じて他の携帯電話会社にも共有されます。
これが俗に携帯ブラックと呼ばれているものです。

TCAはdocomo・au・SoftBankといった大手3社だけでなく、楽天イーモバイル・UQコミュニケーションズ・ニフティなど格安スマホの事業者も加盟しています。

携帯ブラックにも種類がある

携帯電話料金未払いの発生によってブラックになりますが、この携帯ブラックも2つの種類に分かれます。
一つは、携帯電話を電話料金の滞納、もう一つは端末自体の分割料金の滞納による強制解約です。

電話料金の滞納による強制解約は、TCAにてその情報が共有されます。
一方、携帯端末の分割料金の滞納による強制解約は、さらにCIC(指定個人信用情報機関)に情報掲載されてしまいます。

いずれの場合も、債務整理をしたしないにかかわらず、ブラックとして残り、5年間程度は抹消されません。

携帯ブラックになると、どうなる?

携帯ブラックになると、最悪の場合、回線契約が強制解約となり携帯・スマホが使用できなくなりますし、さらに他社であっても新規契約できません。

しかし「携帯ブラック」を抜け出すことは簡単で、未払い分を支払えばすぐに縛りが解かれます。
もし、未払いがあれば、他のキャリアであっても当然新規の契約も難しくなってくるので、契約したい場合は、まず未払いの料金をすべて支払ってから再契約するか、保証金を事前に納めてからの契約になる場合もあります。

しかしキャリアによっては、仮に全額未納額を支払っても、一度踏み倒した経験があれば、再契約できない場合もあり注意が必要です。

ブラックリスト

もう一つのブラックとは、俗に言う「ブラックリスト」のことです。
ブラックリストとは、正しくは信用情報機関に事故情報が登録されることを指します。

携帯電話会社は信用情報機関に加盟

携帯電話会社は、株式会社シー・アイ・シー(CIC)や株式会社日本信用情報機(JICC)といった信用情報機関に加盟しています。
携帯・スマホ端末購入で分割払いができる携帯電話会社は、「割賦販売法」に基づき顧客の支払い能力を調べることが義務付けられているからです。

通常、端末の代金は数万円と高額で、分割払いにする消費者も多いです。
先に商品を受け取って毎月少しずつ支払うスタイルは、クレジットカードの買い物と同様の信用販売にあたります。

任意整理と信用情報

任意整理を行うと信用情報機関に事故情報が登録され、5年間保存されます。
信用情報に事故情報が登録されている間はクレジットカードの新規作成や利用ができなくなり、ローンや新たな借り入れも非常に難しくなります。

料金の支払い方法にも注意

携帯電話利用料金をクレジットカードで支払っている場合は、任意整理後に支払い方法を変更する必要があります。
後にご説明しますが、任意整理をすると、クレジットカードは利用できなくなります。そのため、支払い方法をクレジットカードのままにしておくと、任意整理後に決済失敗となり、意図せず携帯電話料金未納となってしまうおそれがあります。

携帯電話料金の未納があると最悪の場合強制解約されるなど、携帯・スマホが今まで通り使用できなくなるため、忘れずに手続きが必要です。

任意整理後の携帯・スマホ

ここまで携帯ブラックとブラックリストについて理解してもらいました。では任意整理が携帯・スマホに与える影響について見ていきます。

影響が出ないこと

「任意整理をして、携帯電話やスマホが使えなくなったらどうしよう……」と不安になるものですが、結論から言うと、携帯電話利用料金の未払いさえなければ、任意整理をしたことが携帯・スマホの利用に直接影響することはほとんどありません。

使い続ける・機種変更

任意整理をすると信用情報機関に事故情報が登録されますが、これは携帯電話会社との回線契約において問題視されることはありません。
携帯電話利用料金を滞納せず支払いつづけてきたなら、携帯・スマホを今まで通り使うことができます。
また機種変更をすることも可能です。つまり、滞りなく支払いを継続している以上、大きな問題はないと考えてよいでしょう。

また、使っているスマートフォンの分割払いの残債が残っている場合も同様に、支払いさえ継続できれば大丈夫です。
携帯会社以外の債務の任意整理を理由に、強制解約や、残債の残る端末の回収などが行われることはありません。

他社にのりかえ

信用情報が傷ついていることは、他社へののりかえで新たに回線契約を結ぶことにも何ら問題は与えません。
未払いがない、もしくは未払いが解消していれば、携帯電話会社は自由に選べます。

問題になるのは、未払いで携帯電話料金を踏み倒した履歴や未払いが解消されていない場合です。

任意整理後の注意点

一方で、気をつけたいのは、機種変更や他社にのりかえる際、新たに「端末の購入契約」が伴うケースです。

端末の購入時に分割払いができなくなる

「ブラックリスト」の項目で述べたように、端末を分割払いで購入することは信用販売にあたります。信用販売の契約を結ぶ際、携帯電話会社は購入者の信用情報を参照します。

任意整理では事故情報が借金の完済から5年間登録されます。この事故情報の登録期間中は、クレジットカードの買い物ができないのと同様に、携帯・スマホ端末を分割払いで購入することはできません。

一括払いなら購入できる

こうした事情から、任意整理後に機種変更やのりかえをするには、端末代金を一括で支払う必要があります。
スマホの端末代金は高額化しており、人気の機種では10万円近いものもあります。場合によっては任意整理後の毎月の借金返済額よりも高額な可能性もあるでしょう。
一括払いという思わぬ出費で経済的な立て直しの足元をすくわれるかもしれません。任意整理後の機種変更・のりかえは慎重に行う必要があります。

任意整理以外の債務整理方法を取った場合

債務整理には、「任意整理」「特定調停」「個人再生」「自己破産」の4種類があります。どの債務整理を行うかによって、スマートフォンや携帯電話を解約されるかどうかが変わってきます。

任意整理・特定調停の場合

「任意整理」あるいは「特定調停」によって債務整理を行う場合には、借金の整理をする債権者を選ぶことが可能です。

そのため、債務整理の手続きからスマートフォンや携帯電話の債務を外してしまえば、所有している携帯やスマホをそのまま継続して利用することができます。

個人再生・自己破産の場合

「個人再生」と「自己破産」の場合には、負っている借金の全てが債務整理の対象です。
そのため、スマートフォンや携帯電話の本体代金を返済中であったり、利用料金の滞納がある場合、それらの支払いは携帯会社に対する債務とみなされ、強制解約される可能性があります。

携帯・スマートフォンの未払いにも「債権者平等の原則」が適用される

破産法によって、「債権者はみな平等で、特定の債権者にだけ優先して返済を行うことは禁止する」ことが定められています。
スマートフォンや携帯電話に滞納料金や本体代金の残債がある場合にも「債権者平等の原則」が適用されます。

「債権者平等の原則」により、個人再生・自己破産の申し立ての際には、携帯電話キャリアの債務も記載しなくてはなりません。この情報は当然、申立人に対する債務を持つ携帯電話キャリアにも伝えられるため、手続きに伴う未納状態が発生すると、強制解約の可能性は高まります。

個人再生や自己破産後に携帯やスマホを所持し続けられる可能性は?

それでは個人再生や自己破産をしたら、使用していたスマートフォンや携帯電話を所持し続けられる可能性は全くないのでしょうか?

携帯・スマホの端末台が支払済の場合

端末費用の支払いが分割払い あるいは 一括払いで完済済みの場合、携帯電話・スマートフォンの端末自体を回収・処分されることはありません。
すでに支払いが済んでいる時点で、端末の購入契約は完了しており、携帯会社との間に端末購入に関連した債務は既に存在しないことになるためです。

携帯・スマホの端末台が未払い・支払い中の場合

逆に、端末費用の分割払いの残債が残っている場合は、携帯会社に対する債務が存在することになります。
端末費用の残債はローン契約にあたるため、支払い契約の強制解約、残債の一括請求や財産処分の対象となる可能性はあります。

少なくも、個人再生・自己破産などの手続き中に、携帯・スマホの端末代だけを支払い続ける行為は偏頗弁済にあたるため、認められません。

生活必需品として残してもらえる可能性も

ただし、スマートフォンや携帯電話などの通信機器は、基本的には生活必需品とみなされます。
個人用の一般的なスマートフォンであれば、冷蔵庫や洗濯機といった家具・家電製品、日常的な事務や仕事で必要なパソコンなどと同じ扱いで、差し押さえの対象外として、手元に残してもらえるのが通常です。

ただし、たとえば以下のような条件の場合、換価処分可能な所有財産として処分される可能性はあるでしょう。

  • 端末の購入金額が非常に高額な高級品である場合
  • 携帯・スマホを複数台を契約し利用している場合

自己破産の場合、所有が認められるのは生活に必要最低限な財産のみ。端末そのものが高級品で換価処分する価値がある場合は、財産処分の対象となります。
また、携帯・スマホを複数契約している場合、個人の連絡用途として複数の契約を保持するのは過剰とみなされ、最も常用する1回線を除き、換価処分の対象とされるケースは考えられます。

まとめ

携帯・スマホの料金は滞納せず支払おう!

携帯・スマホの利用に関しては、任意整理そのものよりも「料金の未払い」が大きく影響します。携帯・スマホは仕事や日常の必需品であるからこそ、任意整理前から利用料金だけは滞納せずに支払っておくべきです。

任意整理後の支払いに不安を感じるなら弁護士に相談を

もし、携帯の支払い以外にも借金の滞納がある場合など、任意整理後の生活設計に不安を感じ里場合は、なるべく速やかに弁護士などの専門家にご相談ください。

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