夫婦関係の破綻とは?裁判所に認められるケースと認定に必要なポイント

夫婦関係の破綻

夫婦関係の破綻は、単に夫婦仲が悪くなればすぐさま認められるものではありません。

離婚調停や離婚裁判の場で、裁判所から「夫婦関係の破綻」が認められるには、夫婦関係が破綻状態に至った理由、あるいは実際に夫婦生活を継続できなくなっている現状の状況を示す客観的証拠が必要です。夫婦関係の破綻が認められると、その破綻を法定離婚事由として当事者からの離婚請求が認められることになります。そのため、破綻の根拠や経緯についても、一定程度の立証を求められるのです。

この記事では、夫婦関係の破綻の定義からはじめ、裁判所から夫婦関係の破綻が認められるケースと必要なポイントを解説します。また、夫婦関係の破綻まで行かなくても離婚したい場合に取るべき対応についてもあわせて解説します。

夫婦関係の破綻とは

夫婦関係の破綻の定義

夫婦関係の破綻とは「夫婦双方が婚姻関係を継続する意思を失い、夫婦として共同生活を続けることが難しく修復もできない状態」を指します。

夫婦関係の悪化から精神的・経済的・物理的に協力し合うことができず、日常の家庭内での役割やお互いに対する義務を果たせなくなった場合、夫婦関係の破綻と言えるでしょう。

離婚審判や離婚裁判などの中で裁判所から夫婦関係の破綻を認定されると、夫婦双方の意見が分かれていても「夫婦関係の破綻」を理由に離婚することが法的に認められます。

このように法的理由として認められることから、離婚を考えている方にとって、自分たち夫婦が「破綻」状態にあるか否かは、感情の問題とは別のところで重要な意味を持ちます。
現状の夫婦関係が一時的な感情の行き違いではなく、継続的かつ回復の可能性がないと認められるには、夫婦関係の破綻を客観的かつ明確に示す証拠も求められます。

夫婦関係の破綻が認められるケース

夫婦関係の破綻は、どんなケースで認められるのか、見ていきましょう。

DV・モラハラなど暴力や暴言がある場合

夫婦間にDV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ(モラルハラスメント)が発生している場合、夫婦関係の破綻が認められやすい傾向があります。

夫婦関係の破綻には、身体的な暴力だけでなく、精神的暴力(暴言、無視、強い束縛、人格否定)も含まれます。暴力や暴言は人権侵害にあたり、夫婦間の信頼関係を著しく損なう行為として、裁判所が離婚を認める要因となります。

夫婦間での暴力・暴言は家庭内で行われることが多く、当事者に否定されると第三者からは確認を取りづらい点はハードルとなりますが、たとえば以下のような証拠があればDV・モラハラ行為を証明する証拠として利用できます。

  • 暴力による怪我の診断書
  • 有責配偶者からの暴言・暴力の録音・録画
  • 有責配偶者から受けたDV・モラハラを記録した日記

長期間の別居

夫婦が長期間別居状態にある場合、夫婦関係の破綻として認められる可能性があります。

別居期間が長くなるほど「婚姻関係を修復する意思がない」と判断される傾向があります。とはいえ、最低何年あれば夫婦関係の破綻にあたるか、法律上定められた数字はなく、離婚が認められる別居期間はケースバイケースですが、一般的に5年以上の別居があると、破綻状態と認定されるケースが多いと言われています。
ただし、単身赴任や介護等、理由があっての別居状態は、別居期間に含まれないのが通常です。

婚姻期間中の同居期間と別居期間の比較も裁判所がよく利用する判断方法です。たとえば、同居期間が半年程度と極端に短い場合、3年程度の別居でも破綻が認定される場合はあります。

夫婦ともに離婚意思があり、関係修復への意志がない

夫婦双方に離婚の明確な意思があり、夫婦関係を改善・修復する意思が両者にない場合も、夫婦関係の破綻は認められやすくなります。

夫婦どちらにも離婚の合意がある状況はもちろん、どちらかあるいは両者が相手への協力や対話を拒否しており、実質的に夫婦関係が壊れている場合も含まれます。

こうした状況は、夫婦が婚姻を維持する意思を失ったことを明示するものであり、裁判や調停において離婚が認められる根拠となります。

家事・育児放棄など家庭の問題がある

夫婦のどちらかが長期にわたり家事や育児を放棄するなど、家庭内の役割を果たしていない場合、夫婦関係の破綻が認められることがあります。

夫婦が協力して行うべき家庭生活の維持をを意図的に怠ることは、相手方に大きな身体的・精神的負担を与えることになります。特にこうした仮定の放棄が、子どもの健康・福祉・養育に悪影響を与えるおそれがある場合、夫婦関係の破綻はより認められやすくなります。

犯罪・不法行為を行なった

夫婦のいずれかが犯罪行為や不法行為を行った場合も、夫婦関係の破綻が認定される可能性があります。

犯罪行為は罪を犯した本人だけでなく、その配偶者や家族の社会的信用にも影響します。犯罪行為による逮捕・勾留を原因とする精神的苦痛・経済的問題などを理由に、夫婦関係の破綻が認められるケースもあります。

不就労や過度なギャンブル・浪費などがある

夫婦のどちらかが働かず生活費を稼がない、または稼いだお金を一方的にギャンブルや浪費で使ってしまう場合、家庭には経済的な問題が生じます。

収入状況や家計簿、預金口座の明細などを証拠に、夫婦のどちらかが家計を維持する責任を果たさず、相手に負担を強いていると立証された場合、裁判所は婚姻関係の破綻を判断します。

夫婦関係の破綻が認められるのに必要なポイント

裁判所は、主観的要素と客観的要素のいずれかにあてはまると、夫婦関係の破綻を認定する傾向にあると言われています。

主観的要素:夫婦双方に離婚の意志がある

夫婦双方が離婚したい明確な意思を自覚している場合、主観的要素があると認められます。

たとえば、離婚を認める発言を含む離婚協議の録音やメール・LINE等の文面があれば、離婚意思の存在を示す証拠となります。

離婚を望んでいるのが夫婦の片方だけだった場合でも、もう一方と協議がまとまらず相手との関係修復を拒否していれば、改善が見込めないということで、夫婦関係の破綻と判断されやすくなるでしょう。

客観的要素:別居期間・経済状況など共同生活の実態

夫婦が長期間に渡って別居しており、生活実態がすでに分かれている場合、客観的要素を満たすものとみなされます。

民法は

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
(民法752条)

と定めており、長期間の別居と、それに伴う協力・扶助のない状態が判明すると、「夫婦としての共同生活が実質的に維持されていない」と判断され、夫婦関係の破綻が認定されます。

夫婦関係の破綻を証明する証拠

夫婦関係の破綻を認定するためには、裁判所などに対して明確で具体的な証拠を提出することが不可欠です。

夫婦関係の破綻を示す具体的な証拠としては、たとえば以下のようなものが利用できます。

夫婦関係の破綻を示す証拠(例)
別居先の賃貸契約書 別居開始時期~別居期間を証明する証拠として
公共料金等の支払い記録 別居先で実際に生活していることの証拠として
預金通帳・家計簿・借金の履歴 別居期間中の家計状況の証拠として
DVやモラハラ被害を示す診断書 DV・暴言・暴力などが存在したことの証拠として
相手の暴力で怪我をした部位の写真
暴言・暴力を記録した音声や動画
モラハラ発言を含むメールやLINEのやり取り モラハラ行為の証明として

こうした夫婦間の問題を示す具体的な証拠があることで、裁判所が客観的な立場から夫婦関係が修復不可能と判断する材料となり、結果、離婚を認めてもらいやすくなります。

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夫婦関係の破綻と不貞行為

有責となる「夫婦関係の破綻前」の不貞行為

夫婦のどちらかが、夫婦関係が破綻する前に他の人と不貞行為(浮気・不倫)を行った場合、この不貞行為を行った側が法律上「有責配偶者」となります。

有責配偶者とは、離婚原因を作った責任のある配偶者のことを指します。不貞行為とは、一般的に「配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」を指し、法的には慰謝料請求の根拠になります。

この不貞行為が夫婦関係の破綻原因となった場合、有責配偶者側は相手に対して慰謝料を支払う義務を負います。
また、その場合、有責配偶者側からの離婚請求は原則として認められにくくなります。

破綻後なら罪にはならない

一方、夫婦関係が既に破綻した後に新たな交際や関係が生じた場合、これは法的に「不貞行為」にはあたりません。

法律的には、夫婦関係が実質的に破綻し、修復不可能と判断される状態になった後の行為については、有責性(責任)が問われないことが一般的です。
夫婦関係の破綻が明確に認められた後ならば、交際や関係を離婚原因とされる可能性は極めて低く、慰謝料請求も認められないのが通常です。

夫婦関係の破綻のタイミングが大きく影響

このように、離婚前に他の人との不貞行為があった場合、それが夫婦関係の破綻前なのか、破綻後なのか、そのタイミングは以後の離婚協議に大きな影響を及ぼします。

別居した勢いのまま、考えなしに他の人と関係を持つ、恋人を作るような行動は、基本的にはリスクをはらむ行動と心がけるべきでしょう。

その上で、自分が有責配偶者となるのを回避するには「夫婦関係はすでに破綻していた」ことを客観的に証明する必要があります。離婚調停や離婚訴訟の場では、先にも挙げた夫婦関係の破綻を示す具体的な証拠を提示することが非常に重要です。

夫婦関係の破綻がなくても離婚したい場合の対処法

夫婦関係の破綻とまではいかなくても、夫婦双方あるいは片方が婚姻生活に不満を持っており、離婚したいと考えているのであれば、離婚を進めていくことは可能です。

夫婦関係の破綻がなくても離婚したい場合に取るべき方法・注意点を確認していきましょう。

話し合いで離婚の同意を得る(離婚協議)

夫婦間での話し合い(離婚協議)は離婚の最も基本的な方法です。

明確な離婚理由や夫婦関係の破綻がなくても、離婚の意思が双方にあれば、話し合いによる互いの合意によって離婚は成立します。

協議離婚では、財産分与、親権、養育費など、具体的な条件を明確に合意書などで決定しておくことが重要です。

別居する

夫婦間の話し合いが難航した場合や、一方が離婚に消極的な場合、一定期間の別居を選択するのも有効な手段です。

別居は、夫婦による共同生活を一時的に停止することで、距離を置いて夫婦関係のの冷却期間になるとともに、自分の離婚意思の真剣さを相手に理解させる機会となります。

また、別居期間が5年を超えると、裁判所が「長期間の別居」と見なし、夫婦関係の破綻を判断しやすくなる、つまり離婚が認められる可能性が高まります。

別居中の生活費(婚姻費用)は折半に

別居中でも、夫婦の扶助義務は法律上継続します。

別居のためにかかるお金は「婚姻費用」と呼ばれ、生活費、医療費、子どもの養育費などが含まれ、夫婦で共同で負担する義務を負います。

婚姻費用は夫婦双方がそれぞれの収入に応じて適切な割合で負担するのが一般的で、多くの場合、収入が高い側が低い側へ一定の金額を支払う形で調整します。

夫婦の収入差に応じて公平に分担する必要があり、調停の場で裁判所が関与して婚姻費用が決定されるケースもあります。

弁護士に相談する

離婚協議や別居を進めても、離婚がなかなか進まない場合、弁護士への相談をご検討ください。

離婚調停・離婚裁判にも対応可能

弁護士は離婚問題の専門家であり、個々の状況に応じた具体的かつ適切なアドバイスを提供してもらえます。

相手方との離婚交渉から裁判所を介した離婚調停、さらには離婚裁判の手続きまで一貫したサポートを受けられます。

弁護士が代理人として相手方に対応していくので、精神的負担や離婚手続きにかかる負担は大幅に軽減されます。弁護士に相談することで、自分への負担はかけず、かつ依頼者にとって最良の結果を導くための支援を行ってくれるでしょう。

まとめ

夫婦関係の破綻とは、夫婦としての共同生活が実質的に維持できない状態を指し、DVやモラハラ、長期間の別居、家事・育児放棄、犯罪行為、過度な浪費などが典型的な例として挙げられます。

ただし、破綻が明確に認められるかどうかはケースバイケースであり、主観的な意思だけでなく、客観的な証拠も非常に重要です。特に別居期間や経済状況、不貞行為の有無などは裁判所が重視するポイントです。

一方、明確に破綻が認められない状況でも、離婚したいという気持ちを抱える方は少なくありません。その場合でも、離婚協議や別居、さらには弁護士を通じて調停や裁判という選択肢があります。

夫婦関係の破綻の判断が難しい場合や離婚問題で悩んでいる方は、早い段階で弁護士に相談し、専門的なサポートを受けることをお勧めします。

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