養育費の不払いを防ぐ離婚協議書の作り方と公正証書にする方法

養育費の支払いは親の義務です

「離婚協議書で養育費のことを取り交わしたから、もう大丈夫」と考えるのは早計です。現実には、離婚協議書に養育費を明記していても支払いが止まってしまうケースが数多くあります。どうすれば養育費の不払いを防げるのか、書面の作り方と2026年4月施行の改正民法で変わった点を解説します。

離婚協議書を作成して養育費の不払いを防ぐ

口約束や念書ではなく、しっかりとした「離婚協議書」を作成すること

まず、離婚の際に養育費に関しての話がまとまったときは、それを「離婚協議書」としてまとめておく必要があります。口約束で終わらせてしまうと、何の証拠も残らないので、それだけは絶対に避けましょう。

離婚相手から「わたくし○○は、次のことを約束します」という内容を記した念書を、証拠として受け取る人いますが、これはやめた方が賢明です。念書ではお互いの合意があるかどうかが、はっきりわかりません。もしも数年後に夫が心変わりをしたとき、夫側が「妻が受け取るという同意は書かれていない」と言えば、契約は不成立となってしまう可能性があるのです。

“約束を信じる”という甘い幻想は、捨てることが大切

離婚を経験するほとんどの人は、離婚した時点では法律が関与する出来事に出会ったことがなく、法律にいくつもの抜け道があることにも気づいていません。法律に触れる機会がなかったことは、まったくもって幸せなことなのですが、「離婚」という人生の一大事によって、“社会のシビアな現実”があることを知るのも必要でしょう。

まず、「離婚をしても、一度は夫婦としてやっていこうとした人だから、養育費をしっかり払うという彼の約束を信じたい」という甘い考えは、一切捨てましょう。今までは夫婦であっても、これからは他人として生きていく以上、そこで交わされた約束には“法的な拘束力”が必要です。

養育費というのは、10年以上にわたって払い続ける必要のある、非常にスパンの長い支払い義務です。これを持続して払ってもらうということは、払う側にとっても並大抵のことではないでしょう。最初の1~2年は「可愛い子どものためだから」と思っても、3年後にはもしかしたら、離婚相手に新しい人生のパートナーが現れるかもしれません。5年後にはもしかしたら、一緒に暮らす子どもが生まれている場合もあります。そうなったときに、養育費の減額ならまだしも不払いとなってしまったら、そのときに困るのは他でもない自分自身です。

離婚協議書とは、いったいどんなもの?

離婚協議書は、以下のような形式で作成します。

離婚協議書

夫○○○○(昭和○年○月○日生、以下「甲」という)と、妻○○○○(昭和○年○月○日生、以下「乙」という)は、離婚協議をした結果、次条下記の通り契約を締結合意した。

第一条 (協議離婚)
甲と乙は、協議離婚をすることに合意し、離婚届に自署名押印した。

第二条 (親権)
甲乙間の子氏名○○○○(令和○年○月○日生、以下「丙」という)の親権者及び監護権者を乙(または甲)と定め、丙が満18歳に達する日の属する月まで引き取り養育する。

第三条(養育費)
甲(または乙)は乙(または甲)に対し、丙の養育費として令和○年○月○日から丙が満20歳に達する日の属する月まで、毎月○万円ずつ、毎月末日に支払う。

① 前項の養育費の支払いは、次の丙名義の口座に振り込む。
○○銀行○○支店
口座番号 第○○○○○○○○号
口座名義人 氏名 ○○○○

② 上記養育費が、諸物価の事情その他の理由によって不相応となった場合には、乙は甲に対してその増額を要求することができる。

③ 甲は、丙の高等学校・大学(または専門学校)などへの進学の際に発生した費用の一部を負担することを、乙に約束した。乙は、請求書(および受領証)などを提示して、甲に請求するものとする。

第四条(特別の出費)
甲(または乙)は、乙(または甲)が丙の病気および怪我のために特別出費をしたときは、甲(または乙)は乙(または甲)の請求により、その費用を直ちに払うものとする。

(中略)

以上、本協議書が成立したことを証する為本書二通を作成し、甲乙各自署名押印のうえ、各自一通を保有する。

令和  ○年  ○月  ○日
(甲) 住所
氏名          ㊞
(乙) 住所
氏名          ㊞

成年年齢は2022年4月から18歳に引き下げられていますが、養育費の支払終期は当事者の合意で定めるものであり、20歳までとする取り決めも有効です。「成人に達するまで」という書き方は解釈が分かれるため、具体的な年齢と時期で定めておくことが大切です。

離婚協議書は、インターネットの資料などを参考に自力で書くこともできますが、これはよほど法律に詳しい人でない限りおすすめできません。なぜかというと、法律上の約束事を書く場合は、抜けや漏れがあった場合にそれが致命的になってしまう可能性があるからです。

それなりの費用がかかっても、離婚協議書は弁護士などの法律のプロに相談し、しっかりとした書類を作った方が良いでしょう。

離婚協議書を「公正証書」として残して養育費の不払いを防ぐ

離婚公正証書を作成することで、公に認められた書類となる

離婚協議書を作成したら、それを「公正証書」として残しておくことが大切です。「弁護士に相談してきちんと離婚協議書としてまとめたから、何かあったときはこれを見せればいい」と考えている人も多いのですが、両者の効力は同じではありません。

離婚協議書は当事者を法的に拘束する契約書ですが、支払いが止まったときにそのまま差押えができるわけではなく、原則として改めて訴訟や調停を経る必要があります。これに対し、強制執行を受け入れる旨の文言(執行認諾文言)を入れた離婚公正証書があれば、裁判手続きを経ずに給与や預貯金の差押えに進めます。公証役場で公証人の関与のもとに作成されるため、内容の明確さという点でも有利です。

なお、2026年4月に施行された改正民法により、養育費の債権には先取特権という優先権が付与されました。公正証書などの債務名義がなくても差押えの手続きを申し立てられるようになっています。ただし、金額や支払期間があいまいなままでは手続きが進めにくいことに変わりはなく、書面で具体的に取り決めておく重要性はむしろ高まっています。

離婚公正証書を作成する方法

「離婚公正証書」を作成するには、公証役場で手続きをする必要があります。まずは管轄の公証役場に連絡をし、訪問する日時を予約しましょう。当日は離婚協議書と実印・印鑑証明・戸籍謄本・手数料を持って二人で公証役場を訪ね、公証人に公正証書の作成を依頼します。

公証人と対面しながら離婚協議書を確認し、不備があれば指摘され、疑問点があれば質問があります。こうしてやりとりを重ねた後で公正証書が作成され、二人で1通ずつ保管することになります。

養育費の不払いを防ぐために、離れて暮らす親子の交流をはかる

面会交流の機会をもつことで、子どもへの愛情が継続する

離婚後に、離れて暮らす親子が交流する機会をもつことは、子どものためにも養育費の継続のためにも重要です。会って成長を確かめることができるからこそ、支払いを続ける気持ちにもつながります。ところが日本では、どちらかが子どもを引き取ったときに、離れて暮らす親子の交流がしづらくなるケースが少なくありませんでした。

改正民法は、この点についても規定を整えています。面会交流は法律上「親子交流」という名称になり、直接会うことに加えて手紙や電話、オンライン通話といった多様な交流が含まれることが明確にされました。父母が子どもの利益のために互いに協力する責務も明文化されています。

面会交流の方法は、ケースバイケース

もちろん、離婚をする際にどんな別れ方をしたかというのも、重く考慮する点です。「もう二度と顔も見たくない」という状態で別れた場合は、子どもを会わせたくないと思うのも無理はないでしょう。「会わせたら最後、子どもを連れ去られてしまう」という危険性を感じる場合もあります。また、ギャンブルや暴力などが離婚の理由であれば、会せることが本当に子どものためになるかどうかも疑問です。

面会交流ができるかどうか、またどのように行うかは、ケースバイケースです。

なお、法律上は養育費と面会交流を引き換えにすることは認められません。面会交流を拒まれても養育費の支払義務は残りますし、養育費が支払われないことを理由に面会交流を拒むこともできません。とはいえ、実際には交流が途絶えたまま支払いだけが続く状態は長続きしにくいのも事実です。親同士は離婚をしても、親子の関係だけは良好に保つことが、結果として子どもの利益につながります。

養育費の一括受け取りという選択肢

厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査では、現在も養育費を受けていると答えた母子世帯は3割に届きません。取り決めをしていても、途中で支払いが止まるケースが多いのが実情です。

こうした状況を踏まえ、相手に支払い能力がある場合には、養育費をまとめて受け取る方法が選ばれることがあります。不払いのリスクを避けられるという利点は大きいものの、注意点もあります。まとまった金額を受け取ることで贈与税が課される可能性があること、後から事情が変わっても増額を求めることが難しくなることです。一括での受け取りを検討する場合は、税務面も含めて弁護士に相談してください。

2019年12月に養育費算定表が見直され、多くの年収帯で従来より高い水準が示されるようになりました。さらに2026年4月施行の改正民法により、取り決めがない場合の法定養育費や、養育費債権への先取特権といった仕組みが加わっています。すでに取り決めをしている方も、これから離婚を検討する方も、現在の制度を前提に条件を確認しておくことをおすすめします。

離婚問題に強く評判の良い弁護士事務所を探す

離婚相談

離婚問題でお悩みでしょうか?

  • 離婚後の生活ついて相談したい
  • 慰謝料、養育費を請求したい
  • 一方的に離婚を迫られている