子どものための経済的支援には、どんなものがある?
離婚をして、これから子どもを一人で育てていかなければならない立場になると、「本当に自分だけで育てていけるのだろうか?」という不安が、常につきまとうでしょう。でも大丈夫!国や地方自治体では、ひとり親の経済的な問題に対応するため、さまざまな支援を行っています。
<生活費の支援>離婚後の生活を支える児童扶養手当
ひとり親家庭のための「児童扶養手当」
離婚によってひとり親家庭となった場合は、地方自治体から支給される「児童扶養手当」を受け取ることができます。この手当は母子家庭だけでなく、父子家庭にも支給されます。対象となるのは、養育者の所得が一定水準以下の世帯で、子どもが18歳になって高校を卒業する年度まで受給することができます。
全額支給の世帯の場合 | 支給額 |
---|---|
1人目 | 43,160円 |
2人目 | +10,190円 |
3人目 | +6,110円 |
児童扶養手当の金額は年々上がっていて、全額支給の世帯で43,160円です。さらに子どもの人数によって、2人目には10,180円、3人目には6,100円が加算されます。たとえば3人の子どもを持つ全額支給の世帯では、43,160円+10,190円+6,100円=59,450円が支給されることになります。(2022年3月時点・以下の金額も同様)
全家庭に支給される「児童手当」
ひとり親家庭に限らず、全家庭を対象とした子どものための手当として、「児童手当」があります。対象となるのは0歳から15歳までの子どもで、中学校修了の年度末まで受けられます。
年齢 | 支給額 |
---|---|
0歳~3歳未満 | 一律15,000円 |
3歳~小学校修了 | 10,000円(第1子・第2子)、15,000円(第3子以降) |
中学生 | 一律10,000円 |
たとえば2歳と4歳の子どもを持つ家庭の場合、15,000円+10,000円=25,000円の児童手当を受け取ることができます。シングルマザーで児童扶養手当の全額支給世帯であれば、児童手当25,000円+児童扶養手当53,350円=78,350円を受け取ることができ、大きな生活の支えとなるでしょう。
<学費の支援>就学支援制度を利用する
小・中学生のための「就学支援制度」
経済的な理由で就学の困難な小学生や中学生に対し、学用品費や通学費・修学旅行費・校外活動費・クラブ活動費・PTA会費・医療費・学校給食費などを援助する「就学支援制度」があります。児童扶養手当を受給していれば、この制度は適用になります。
たとえば小学校1年生の場合、年間約10万円前後が援助されます。詳しくは、お子さんの学校に相談をしてください。
高校生のための「奨学給付金」「就学支援金」
小・中学生だけでなく、高校生に対しても、教科書費・教材費・学用品費・通学用品費・校外活動費・生徒会費・PTA会費・入学用品費などを援助する「奨学給付金」の制度があります。
たとえば第一子が全日制の公立高校に在学する場合は年額59,500円・私立高校に在学する場合は年額67,200円、第二子以降が全日制の公立高校に在学する場合は年額129,700円・私立高校に在学する場合は年額138,000円が支給されます。
また、これは2014年度からできた新しい制度で、市町村民税所得割額が304,200円未満の世帯の高校生には「就学支援金」が支給されます。
支給額は、公立高校の全日制の生徒が月額9,900円、定時制の生徒は月額2,700円、通信制の生徒は月額520円。私立高校の場合は、全日制・定時制・通信制ともに月額9,900円です。また、私立高校の場合には、市町村民税所得割額に応じて、就学支援金が下記のように加算されます。
私立高校生の「就学支援金加算」
私立高校等に通う生徒の世帯には、市町村民税所得割額によって、就学支援金が加算されます。
所得割額 | 就学支援金 |
---|---|
0円(非課税)(年収250万円未満程度)の世帯 | 基本額の2.5倍(全日制の場合24,750円/月) |
0円~51,300円未満(年収250~350万円程度)の世帯 | 基本額の2倍(全日制の場合19,800円/月) |
51,300円~154,500円未満(年収350~590万円程度)の世帯 | 基本額の 1.5倍(全日制の場合14,850円/月) |
上記が支払われます。
私立高校の学費は、ひとり親世帯にとっては非常に重荷なので、この支援金加算はまさに救世主的な存在です。詳しくはお子さんの学校に相談してください。
<学費の貸付>奨学金制度や教育ローンを利用
大学生・大学院生のための「奨学金制度」
「家計が苦しく、子どもを大学まで入れられない」と悩む人がいますが、けっしてそんなことはありません。日本学生支援機構が行っている「奨学金制度」を利用すれば、子どもが就職してから半年後に返済がスタートするので、子ども自身が無理なく学費を返していくことができます。
日本学生支援機構の奨学金には、無利子の場合と有利子の場合があり、無利子の奨学金が受けられるかどうかは、高校の成績などが判断基準となります。
高校在学中に、学校の方から「予約奨学金の説明会があります」という報告があるので、その時点で奨学金を申し込むと、在学中に奨学金の借与ができるかどうかが決定します。奨学金のことで聞きたいことがあれば、高校に奨学金の担当者がいるので、質問すると良いでしょう。日本学生支援機構に直接訊ねることもできます。
大学の奨学金には、毎月の定額借与以外に「入学時特別増額」というのがあります。入学金や滑り止めの大学への支払いなどが足りない場合には、この増額金でまかなうことができます。
高校生のための「奨学金制度」
高校生の場合は、各都道府県や市町村ごとに無利子の奨学金制度が設けられており、具体的な条件は自治体によってさまざまです。
高校 | 金額 |
---|---|
国公立高校 | 入学一時金5~10万円・月額奨学金15,000円~25,000円 |
私立高校 | 入学一時金10~25万円、月額奨学金2~4万円 |
上記が無利息で貸与されます。募集の時期を見逃さないように注意しましょう。
返済不要の「給付型奨学金」もある
高校や大学の成績が優秀な場合には、返済不要の「給付型奨学金」もあります。
たとえば地方自治体の場合では、横浜市は市内の高校生480人を対象に、月額5,000円の給付型奨学金を支給します(他の奨学金との併用はできません)。
川崎市では、中学3年生が高校に進学する際、国公立高校45,000円・私立高校70,000円を支給。高校進学後の学年資金としては、国公立36,000円~48,000円・私立60,000円~70,000円を支給します。
また、一般企業や財団法人でも、給付型の奨学金を設けているケースがあります。たとえば一般財団法人 スルガ奨学財団では、高校生に月額1万5000円を3年間給付します(他の奨学金との併用はできません)。こうした給付型の奨学金は数多くあり、もし支給対象者となることができれば、学費や学用品費などをまかなううえで大きな力になるでしょう。
「国の教育ローン」も利用できる
100%政府出資で運営されている日本政策金融公庫では、子どもの入学費用や在学資金が足りない人のために、「教育一般貸付(国の教育ローン)」を行っています。借入金額は最高350万円まで。日本学生支援機構の奨学金と併用することもできます。
対象となるのは中学生以上の子どもを持つ人で、母子家庭・父子家庭の場合は通常1.9%の金利が1.5%(2016年時点)になるという利点があります。また、返済期間も通常は15年以内ですが、母子家庭・父子家庭の場合は18年以内に延長できます。
ただし、国の教育ローンを借り入れるときは、連帯保証人を立てる必要があります。また、審査は奨学金とは違った意味で難しく、過去1年以内に公共料金の支払いが滞っていたことがあると、審査に通りにくいといった厳しさもあります。
子どもの教育資金を調達するには、こうしたさまざまな選択肢があります。子育て中は家計のやりくりに四苦八苦することも多いと思いますが、子どもの未来のために、親としてできる限りの努力をしたいですね。
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