離婚後に車や不動産の名義変更をしないと差押えなどのトラブルに
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離婚後に家の名義変更を忘れて大変なことになった、Aさんの事例
離婚時に譲り受けたはずの家を「出て行け」と言われたAさん
Aさんは浮気をした夫から離婚を求められ、「住む家がなければ生活できない」と言ったところ、「家はおまえにあげる。住宅ローンは俺が払う」と言われ、仕方なく条件をのみました。離婚協議書にもその旨は記載したので、Aさんとしてはまったく心配することもなく、そのまま忘れてしまっていたのです。
ところが数ヶ月後、突然元夫からメールがあり、「生活が苦しくて、住宅ローンを払う余裕がない。家は売却したので、すぐに出て行ってほしい」と書かれていました。途方に暮れたAさんは、離婚協議書を持って弁護士に相談しに行ったのです。
名義変更をしないと、勝手に売却されてしまう
「離婚協議書にしっかりと書かれてあるのだから、売却なんてできるはずがないと思うんです!」そう声高に言うAさんに対して、弁護士の言葉はこうでした。「名義変更をしていなかったのですね。残念ながら名義がご主人のままになっている場合、たとえ離婚協議書に書かれていても、ご主人の一存で売却してしまうことは可能です。もし名義が変わっていたら、それはできなかったのですが」。
唖然としたAさんは、その後すぐに元夫に連絡をしましたが、電話をしてもメールを入れても、一向に通じません。会社に電話をかけたところ、「すでに退社している」と言われてしまいました。
「名義変更をするべきだった」と悔やむAさん
どこに行ったのかさえ、わからなくなってしまった元夫。探偵に頼んで居所を突き止めるだけの金銭的な余裕も、Aさんにはありませんでした。Aさんは泣く泣く故郷に帰り、実家の手伝いをしながら細々と暮らすことになりました。「あのときに、名義変更のことを軽く考えていた私が間違っていた。まさかこんなことになるとは」と、心から悔やむAさんでした。
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「登記識別情報」などの書類は、事前にもらっておくこと!
必要書類がそろわないと、名義変更の手続きができない
Aさんのようなことにならないためには、必ず離婚後すぐに、所有権の移転登記を済ませておく必要があります。「登記済証」や「登記識別情報」「印鑑証明書」など、名義人の変更に必要な相手側の書類は、事前に受け取っておきましょう。「後でのんびりやろう」と考えていると、いざ名義変更をしようと思った時点で「いくら言っても相手から書類がもらえない」というようなことにも成りかねません。
不動産の移転登記に必要な書類は、下記の通りです。
- 「所有権移転登記申請書」
- 名義変更する不動産の「登記済証」「登記識別情報」
- 譲渡を証明する「離婚協議書」など
- 現在の所有者の「印鑑証明書」(発行から3ヶ月以内)
- 不動産の贈与を受ける人の「住民票」
- 名義変更する年度の「固定資産評価証明書」
そのほかに本人確認のため、運転免許証ややパスポートなどが必要になります。もしも調停や裁判によって財産分与が決まった場合は、「調停調書正本」「判決正本(確定証明書つき)が必要となります。
移転登記の手続きは、自分で法務局に行くか、司法書士に依頼
移転登記の手続きは、自分自身で法務局に出向いて行うこともできます。オンラインで申請することも可能です。ただしその場合は、「所有権移転登記申請書」などの書類は、自分で書かなくてはなりません。
法務局に書き方を相談することもできますが、万が一間違いがあった場合はとても大変です。もしも書類関係に自信がない場合は、司法書士に依頼をした方が無難でしょう。その際は、司法書士に依頼する旨の「委任状」も必要です。
離婚後に譲り受けたはずの車を売られてしまった、Bさんの事例
ある日突然、愛車が差し押さえに!
Bさんは夫との離婚協議で、車を財産分与として譲り受けることになりました。購入時は400万円ほどしたお気に入りの車だったので、「離婚しても乗ることができてうれしい」と、胸をなでおろすBさんでした。
その車にはローンが残っていましたが、夫が「それは自分が払う」と言ったので、Bさんは安心していました。おおらかな性格のBさんは、元夫からローンを払い続けていると聞いていたので、特に名義変更なども考えていませんでした。
元夫が離婚後、車のローンを滞納していた事実が発覚
ところが数ヶ月後、なんとBさんの車が差し押さえられてしまったのです!あわてて元夫に連絡をしてもつながらず、車は持っていかれてしまいました。「私の車です!」とBさんは必死で抵抗しましたが、「名義はご主人になっていますよ」とひと言。離婚後に職を失って生活に困った夫は、カーローンをずっと滞納してしまっていたのです。
離婚後、自動車の名義変更をする場合は、「委任状」が必要
事前に委任状をもらっておけば安心
自動車の名義変更をするには、管轄の「運輸支局」で行います。基本的には、変更事由が発生してから15日以内に、旧所有者が行うことになっています。相手が行ってくれれば問題ありませんが、離婚後に「何度頼んでも名義変更をしてくれない」というようなことにも成りかねません。
自分で運輸支局に出向いて、名義変更をすることもできますが、その際は「委任状」が必要となります。心配な場合は、あらかじめ委任状をもらっておいた方が良いでしょう。
自動車の名義変更に必要な書類は、以下の通りです。
- 譲渡証明書
- 旧所有者・新所有者の印鑑証明書
- 旧所有者の委任状
- 自動車検査証(車検証)
- 車庫証明書
- 移転登録申請書
- 手数料納付書(自動車検査登録印紙を添付)
- 自動車税・自動車取得税申告書
- 新所有者の印鑑証明書の印鑑
- 戸籍謄本・住民票(車検証の氏名や住所が変わっている場合)
- ナンバープレート交付手数料(自動車登録番号が変更になる場合)
車庫証明は運輸支局ではなく、所轄の警察署に提出をします。そのときには保管場所の所在図や、使用承諾証明書、駐車場の賃貸契約書のコピー、手数料などが必要となります。
いちばん良いのは、離婚時にローン付きの財産分与を受けないこと
家や車に限らず、生命保険や教育保険など、支払いががまだ残っている状態で財産分与を行うことは、基本的にタブーとされています。実際に、住宅ローンの残った家を財産分与して大きなトラブルになったケースや、カーローンが残った車をもらって取られてしまったケース、生命保険の支払いが残っているのに譲り受けて解約となったケースなどは、離婚後のトラブルとして数多く発生しています。
いちばん良いのは、家のローンが残っていれば離婚の時点で売却して、残金を財産分与するなど、ローンや支払いが残っているものをすべて処分してしまうことです。とはいえ、さまざまな事情でそうもいかない場合は、くれぐれも名義変更を忘れないように注意しましょう。
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