離婚後すぐに再婚はできる?再婚禁止期間が廃止された理由

再婚はいつできる

離婚後に再婚したい場合、男性はすぐにでも再婚できることは以前から知られています。それでは女性はどうなのででしょうか?

当記事ではそんな離婚後の再婚について、以前存在した再婚禁止期間についてもご紹介しつつ、子どもの戸籍や養育費との兼ね合いなど気を付けるべき点も詳しく解説していきます。

離婚後すぐに再婚はできる?

まず結論から述べますと、男性であれ女性であれ離婚後、すぐに再婚できます。

再婚禁止期間は令和6年4月1日以降廃止

「再婚後に生まれた子供は前の夫の子?現在の夫の子?」について争われるのを防ぐために、旧民法では女性だけに再婚禁止期間が設けられていましたが、令和6年4月1日以降はその制限が撤廃されました。

再婚禁止期間の撤廃により、男女ともに公平な婚姻制度が実現したと言えるでしょう。

旧民法における再婚禁止期間

旧民法では、女性の場合、再婚禁止期間が規定されていました。

旧民法第733条1項

女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

男性は離婚後すぐに再婚が可能でした。男性なら、かりに離婚した翌日に再婚をしても法律違反にはなりませんが、女性は、離婚してから100日を経過しないと再婚はできないと定められていたのです。

しかし、この再婚禁止期間は令和6年4月1日以降は廃止されています。廃止により、女性の権利が拡大し性別による不平等が解消されたといえます。

「父親が誰か」を明確にするための再婚禁止期間

旧民法において女性だけに再婚禁止期間が設けられた理由は、女性の再婚後に生まれた子どもが「前の夫の子なのか?それとも前の夫の子なのか?」分からなくなるのを防ぐためです。すなわち「父親の特定を容易にするため」です。

例えば、以下のケースを考えてみましょう。

  • Xさん(女性)はYさん(前夫)と離婚。
  • その後すぐにZさん(現夫)さんと再婚
  • その後、Xさんが子どもを出産した

この場合、子どもの父親がYさん(前夫)なのかZさん(現在の夫)なのかが分からなくなるのです。

このようなトラブルを避けるために、女性に再婚禁止期間(100日ルール)を設けて、父親の特定を容易にしようとしたのです。
しかし、後述するとおり、現在ではDNA鑑定技術の発展により、100日ルールの存続意義が薄れたと判断されました。

100日以内の結婚が認められる例外も

旧民法では、この100日ルールには例外が設けられ、以下のケースに該当する場合は離婚後100日以内の再婚も認められていました。

  • 離婚する前から妊娠していた子を出産してから再婚する場合
  • 夫が3年以上生死不明で、それを理由とした離婚判決を経て再婚する場合
  • 夫が失踪を宣告し、それにより婚姻が解消した後に再婚する場合
  • 離婚した夫と再婚する場合
  • 女性が受胎能力のない年齢である場合

これらの例外は、当時の社会状況に配慮したものですが、法改正によりすべての女性が平等に再婚できるようになったため、現在は不要になりました。

再婚禁止期間が廃止された理由

女性の再婚禁止期間が廃止された理由は、嫡出推定制度が見直された点が大きいといえるでしょう。
その他も含め、廃止に至った理由を見ていきましょう。

嫡出推定制度の見直し

旧民法では、離婚してから300日以内に妻が産んだ子については前の夫の子であると定められていました(旧民法第772条2項)。これを嫡出推定といいます。

この嫡出推定制度は、子どもの戸籍に関する問題点を抱えていました。

「嫡出推定」が無戸籍子問題の温床に

「離婚してから300日以内に妻が産んだ子が前の夫の子」と推定されることによって、無戸籍となる子どもが出てきてしまったのです。
なぜなら、離婚した女性が「この子が前の夫の子どもとなることは避けたい」と考えて出生届を出さないことが少なくなかったからです。

母親が出生届を出さなければ、その子どもは無戸籍となります。無戸籍となってしまうと、子どもにとって以下のようなデメリットがあります。

  • 健康保険に加入できない。病院代が全額自己負担となってしまう
  • 義務教育を受けられない可能性がある
  • 銀行口座を開設できない
  • パスポートを取得できない
  • 運転免許証を取得できない …etc

無戸籍となってしまう子どもがいなくなることを1つの目的として、女性の再婚禁止期間が廃止されました。

現在では、離婚した女性が再婚した後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定されることとなっているため、無戸籍となってしまう子どもはいなくなるでしょう。

嫡出否認権を母子にまで拡大

嫡出否認権とは、法律上の父子関係を否定できる権利のことです。
これまでは、この権利を持っていたのは 夫(父親)だけで、母親と子どもは嫡出否認を申し立てることができませんでした。

そのため、母親が「この子の本当の父親は前夫ではない」と確信していたり、子ども自身が「この人(母の前夫)は本当のお父さんじゃない」と思っていたとしても法的に申立てが認められなかったのですが、令和6年4月1日の民法改正によって、 母親と子どもも嫡出否認を申し立てることができるようになりました。

世界的に見ても、嫡出否認の手続きを父親(夫)だけに限定するのは不合理とされていた部分であり、今回の改正によって母親・子どもの権利拡充が進み、男女間・親子間での公平性が改善された形となります。

申し立て期間も1年以内から3年に

また、旧民法では、申し立て期間が「夫が子の出生を知ってから1年以内」でした。これが伸長され「3年」となりました。

元夫・元妻および子どもの生活への影響も大きい嫡出否認をめぐる話し合いには時間がかかるケースも少なくなく、申し立て期間の延長で母子にとっても優しい制度になったといえるでしょう。

DNA鑑定など医学的検査の発達

これまでは、子どもが誰の子かを判断する手段がなかったため、女性の再婚禁止期間を設けることで「子どもの父親は誰か?」というトラルブル防止してきました。

しかし、DNA鑑定などの医学的検査が発達したことで、父子関係を科学的に証明することが可能になりました。
現在のDNA鑑定では99%以上の確率で親子関係を証明できるので、女性に再婚禁止期間を設ける必要がなくなったのです。

女性のみ再婚禁止とされる不合理

DNA鑑定などの発達により親子関係の証明が容易になったので、女性のみに再婚禁止期間を設けることに合理的理由がなくなりました。

以上のような理由から、女性の再婚禁止期間が廃止されたのです。

離婚後すぐの再婚を考える方の注意点

民法が改正されたことにより、女性は離婚後すぐに再婚することが可能となりましたが、以下のように注意すべき点もあります。

前夫との間の子でも法的に再婚夫の子に

現在の民法では、女性の再婚後に生まれた子どもは再婚した夫の子と推定されます。このことにより以下のようなトラブルが生じることがあります。架空事例で解説します。

  • Xさん(女性)は夫Yと離婚したが、その時点で妊娠していた。
  • 離婚後すぐにZさん(男性)と再婚
  • 生まれた子どもが「Zさん(現夫)の子」として戸籍に登録された。

このケースでは、実際の父親はYさん(前夫)です。にもかかわらず、法律上の父親はZさん(再婚相手)になってしまっています。
このような場合、Yさん(前夫)が嫡出否認の申立てをしてくる可能性があります。

子の扱いや養育費を巡り、前夫とトラブルになることも

女性の再婚後に生まれた子どもは再婚した夫の子と【推定される】と定められているとおり、あくまで推定です。
前夫が「私の子どもだ」と主張してDNA鑑定を申立ててくる可能性があります。

逆に、前夫が「私の子ではないのだから養育費を支払わない」と主張してくるケースがあります。
自分の子であることが分かっているにもかかわらず、元妻が再婚したことによって再婚相手の子と推定されることを逆手にとった主張です。

こういう場合に元夫に養育費を支払ってもらうためには、推定を覆すためにDNA鑑定などを行い、前夫と子どもの親子関係を証明する必要があります。

離婚直後の再婚に対する周囲の目

女性が離婚後すぐに再婚することは 法律上は問題ありませんが、職場・友人・親族など周囲の人々の受け止め方を考慮する必要があります。
離婚してすぐに再婚すると、周囲から「こんなに早く再婚するなんて実は不倫関係だったのでは?」「子どもがかわいそう」などと誤解や偏見を持たれるおそれがあります。

子どものことを考えた上での再婚で、ご自身が幸せであれば周囲の意見は関係ないと思いますが、以上のような偏見を持つ方がいることも留意しておきましょう。

引っ越してのリスタートもひとつの方法

再婚後も同じ場所で住み続けると、上記で述べたような偏見や陰口が聞こえてくるおそれがあります。
解決方法として、いっそのこと誰も顔なじみのいない土地で新生活を送るのも検討しましょう。あなたのことを誰も知らない土地なら、まっさらな新たな人生をススタートできるでしょう。

離婚してから再婚までの期間は平均でどのぐらい?

厚生労働省の人口動態調査によると、前婚解消後から再婚までの平均期間(中央値)は下記のとおりです。

  • 夫:約4年6ヶ月(4年未満と5年未満の間)
  • 妻:約5年6ヶ月(5年未満と6年未満の間)

前婚解消後から再婚までの期間(夫)2022年

前婚解消後から再婚までの期間(妻)2022年

比重としては、男性に比べ女性の方が離婚から再婚までに長めの期間のかかる傾向が見られます。こうした傾向は、再婚禁止期間の撤廃を受け、今後、変化が出てくる可能性もあるでしょう。

まとめ

以上のとおり、令和6年4月1日の民法改正により、女性の再婚禁止期間が廃止され、離婚後すぐに再婚が可能になりました。
これは、DNA鑑定などの技術発展などにより、父親の特定を目的とした従来の「嫡出推定制度」が見直されたことにあります。また、無戸籍問題の解消をも1つの目的として実施されました。

しかし、法律が改正されたとはいえ、再婚に伴うトラブルが完全になくなったわけではありません。特に、前夫との間の子どもの戸籍や養育費の問題など、トラブルの種は依然としてあります。

離婚後すぐの再婚をお考えの方はまず弁護士に相談を

離婚後の再婚を考える際には、以上の法律的のリスクなどがあることに留意し、何か不安な点がある場合には事前に弁護士に相談すること をおすすめします。弁護士に相談することで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな再婚生活をスタートさせることができるでしょう。

この記事の監修者
林 孝匡林 孝匡 弁護士

【ムズイ法律を、おもしろく】をモットーに、法律知識をおもしろく届ける情報発信専門の弁護士。

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