管財事件とは?自己破産が管財事件になるケースとならないケースの違い

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弁護士法人札幌パシフィック法律事務所

佐々木 光嗣弁護士

管財事件

裁判所では、自己破産の申立がなされると、同時廃止事件、管財事件(少額管財事件)のいずれかの方法にて処理します。

この2つの大きな違いは、かかる費用と時間の負担です。

もっとも負担の少ない同時廃止事件として処理されるためにも、管財事件のタイプについて詳しく解説し、どう対策するのが良いかについても解説していきます。

自己破産には2つの処理方法「同時廃止事件」と「管財事件」がある

自己破産には、「同時廃止事件」と「管財事件」という2つの処理方法があり、どちらで処理されるかにより、申立人が負担する費用や解決までにかかる期間が異なります。

また、さらに細かい分類として、管財事件には比較的少額で処理される「少額管財事件」という処理方法もあります。

今回は、この同時廃止事件と管財事件の違いについて解説し、費用負担の多い管財事件になるケース、ならないケースについてご説明します。

自己破産における管財事件とは?

管財事件とは、自己破産の中でも、裁判所が選任した破産管財人が破産者と債権者の間に入って破産手続きを進める形の手続きです。

管財事件となった時点で「破産管財人」の選任は必須となります。
管財事件における破産手続きの処理は破産管財人により進められます。具体的には、申立人の財産を調査したり、必要があれば申立人の保有財産(不動産など)を現金化し、各債権者に均等分配したりと、主にお金の移動や調査などを担当することになります。

破産管財人が必要な分、同時廃止事件より費用負担が大きくなる

この破産管財人は、裁判所から選任された中立の立場の弁護士が担当し(依頼した弁護士による兼任は不可)、事件処理のための報酬額に相当する費用を申立人が予納しなければならないとされています。このため、破産管財人の選任が必要のない同時廃止事件と違って、管財事件の場合はどうしても申立人の費用負担が大きくなってしまうのです。

こうした点からも、自己破産申し立ての際、管財事件は可能な限り避けておきたいところです。

自己破産の管財事件で納める予納金の費用

では、具体的に管財事件として処理されるとどの程度の予納金がかかるのでしょうか?

通常の管財事件の場合、以下の費用がかかることになっています(東京地裁の場合の目安)。

通常管財事件の予納金(東京地裁)
借金総額 予納金
5000万円未満 70万円
5000万円以上 1億円未満 100万円
1億以上 5億円未満 200万円
5億以上 10億未満 300万円
10億以上 50億未満 400万円

※借金総額の増額に応じて、予納金は最大1000万円以上になることも

このように、通常の管財事件として処理されると、最低でも70万円は納めなければなりません。
また、最低基準である5000万円もの借金を抱えるのは法人がほとんどで、個人の方は少ないです。そのため、個人破産の場合は、以下で説明する少額管財事件による処理がメインとなります。

少額管財事件での予納金の費用

少額管財事件の場合、一般的には20万円が予納する最低額となります。

通常管財事件のような借金総額に応じた基準等は特にありません。

ただ、申立人の保有財産次第では、多少の上下がある可能性はあります。というのも、実は裁判所へ納める予納金は、裁判所ごとに若干基準が異なっており、金額が固定されているわけではありません。
一般的には20万円という認識で問題はありませんが、最終的な金額の決定は、各裁判所にて行われていると覚えておきましょう。

自己破産が少額管財事件になるのを回避する方法

では、自己破産の申立を少額管財事件として処理されないためには、どういった点に気を付けるべきでしょう?

実は、少額管財事件と同時廃止事件の境界は紙一重となる場合も多く、対策次第では同時廃止事件として処理される可能性を高めることもできるのです。
同時廃止事件として処理されれば、破産管財人への費用を納める必要がなくなるため、最小限の費用負担で自己破産を終えることができます。

少額管財事件となる4つのタイプ

少額管財事件には、おおまかに4つのタイプがあるといえます。
以下で説明する4つに当てはまらないように事前対策していれば、同時廃止事件として処理される可能性がより一層高まるというわけです。

免責調査タイプ

自己破産には免責不許可事由といって、過剰なギャンブル・ショッピングや偏頗弁済など、免責不許可に相当する事由がある場合、裁判官の判断で免責調査が行われます。
免責調査とは、裁判官が免責許可を判断するにあたって、免責が妥当かどうかを破産管財人に調査させるというものです。

よって、免責不許可事由がある場合、誠実な態度で手続きに臨むだけでなく、裁判所からの指示には必ず従うようにし、いかに免責調査が必要ないことを裁判官に説明できるかが重要となります。
審尋(裁判所にて行われる裁判官との面接)での裁判官とのやり取りは非常に重要です。

なお、自己破産を弁護士に依頼していた場合、審尋に立ち会ってもらえるため、手続きを有利に進めていける利点があります。

清算タイプ

次に、申立人に一定以上の財産がある場合、その財産は破産手続きの中で債権者に均等に分配しなければなりません。この分配処理が、実は破産管財人の業務となっています。

一定以上の財産とは、多くの裁判所にて20万円を超える財産としており、この金額以下であれば、そのままの保有が認められ破産管財人を選任させる必要がなくなります。

20万円を超えるか超えないか、きわどい金額を保有している場合は弁護士費用に充てたり、破産手続き前の引っ越し代など必要経費として費消したりすることで、申立前に財産の調整を行うことである程度は対策可能です。

資産調査タイプ

自己破産の申立後、過払い金の存在が明らかになった場合、当然、返済のために過払金を取り戻すことになります。この際、裁判所が個人の過払金請求を行うことはないため、破産管財人が選任され、本人に代わって過払金請求(法的には不当利得金といいます)を行います。とはいえ、自己破産申立てを専門家に依頼していれば、申立ての前段階で過払金の存在に気付き、請求も併せて行うのが通常の処理です。

よって、弁護士に依頼していれば、過払い金の存在を理由とした少額管財事件は回避できることがあります。このタイプで少額管財事件となるのは、個人が過払金の存在に気付かず、自己破産の申立てをした場合に多くなります。

このように、回収することができる資産の見落としを防ぐため、破産管財人による資産全体の調査を行うというのがこのタイプです。ただ、前の例のように、過払金の調査を尽くしていたとしても、回収した過払金(通常は申立人代理人の弁護士が預かって管理します)の金額が20万円以上になる場合は、清算タイプの対象となることもあります。

その他に調査が必要な場合

上記いずれにも当てはまらないものの、何かしらの調査が必要と裁判官が判断した場合も、破産管財人が選任されることになっています。こちらについては裁判官の判断が色濃く反映されるため、どういった調査が行われるかは一概には言えません。法人の代表者をしていた方や、個人事業を営んでいた方などについて調査の必要性が高いと判断される傾向がありますが、まさにケースバイケースです。
しかし、裁判官が調査を必要と判断する理由は、自己破産の申立書や添付書類に不明瞭な点が多く、調査不十分を理由に破産管財人が選任されるケースがほとんどです。

よって、自己破産へと至る事情をしっかり説明し、収支状況や保有財産がわかるよう疎明書類を提出していればまず心配ありません。弁護士など専門家に自己破産手続きを依頼し、指示された通りに手続きへ臨めば、調査不十分と判断される可能性はほぼないためご安心ください。

自己破産の管財事件を回避するには弁護士が重要

自己破産を少額管財事件として処理されないためには、専門家の存在が非常に重要となっています。特に、本人に代わって手続きを代理で進めていくことのできる弁護士の存在は、手続きを有利に進めるためにも重要な存在です。

弁護士なしで個人での申立ては結果、負担が大きくなる

自ら自己破産申立てをすることで費用を節約したいと考える方も多いかもしれませんが、現実は、明瞭な申立書の作成ができなかったり、添付すべき疎明資料がいくつも不足していたり、裁判所とのやり取りをそつなくこなせないといったケースがほとんどです。

となれば、裁判官は手続きを円滑に進めるためにも破産管財人の存在が必須と判断し、結果として、弁護士に支払う費用負担よりも多くの予納金を納めることになってしまいます。それだけでなく、手続きにも時間がかかってしまいますし、裁判所とのやり取りだけでなく破産管財人とのやり取りもしていかなければなりません。

自己破産は弁護士に依頼しよう

こうした点からも、自己破産は余計な負担を背負い込まないために、弁護士に依頼することを強くおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士法人札幌パシフィック法律事務所

札幌市中央区にある「札幌パシフィック法律事務所」の弁護士、佐々木光嗣です。私はこれまで、前職までの事務所を含めて5,000件以上の債務整理に関する相談実績があります。債務整理に特化した大手事務所での経験もあり、豊富なノウハウを生かして借金問題に悩む方に最適な債務整理の方法をアドバイスしていきます。

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