自己破産で滞納した税金は免除されない?税金滞納のリスクと免責になるケース

税金滞納
税金や健康保険料、年金保険料などを滞納すると、国や自治体などから強制徴収(差押え)をされてしまうおそれが高まります。

しかも、これら税金など公的な支払いの負債は自己破産をしても免除されません。

なぜ税金は自己破産をしても免除してもらえないのか、支払えないときにはどうしたら良いのかなど、みていきましょう。

税金は自己破産しても免責されない非免責債権の代表例

自己破産をすると基本的にはすべての負債が免責される

自己破産は、裁判所に申請をして借金を始めとした「ほとんどすべての負債」の支払い義務を免除してもらう手続きです。

たとえば以下のような負債はすべて支払い義務がなくなるので、破産後には一切支払う必要がありません。

  • 借金(借入金)
  • 買掛金
  • リース料
  • 立替金
  • 通信料
  • 携帯電話代
  • 未払いの家賃、地代
  • 奨学金
  • 保証債務

支払わなくても債権者から請求を受けませんし、裁判をされたり強制執行(差押え)されたりする可能性もありません。

このように、ほとんどありとあらゆる負債を免除してもらえるのが自己破産の大きなメリットです。

非免責債権~自己破産しても免責されない債権

しかし中には自己破産をしても免責されない債権があります。
それを「非免責債権」と言います。

非免責債権については、自己破産をしてもそのまま全額が残るので、破産手続き中や破産後に全額支払わねばなりません。

現在支払いに追われているけれど、負債の内訳で非免責債権の多い方は、自己破産をしても状況を改善できない可能性が高いと言えるでしょう。

自己破産でも免除されない非免責債権の種類

非免責債権には、以下のような種類があります。

  • 税金、健康保険料、年金保険料
  • 婚姻費用、養育費、扶養料
  • 故意または重過失で生命身体に向けて加えた不法行為にもとづく損害賠償債権
  • 悪意で加えた不法行為にもとづく損害賠償請求権
  • 従業員に対する給与債権
  • 故意に債権者名簿に載せなかった債権
  • 罰金

税金や健康保険料は非免責債権の典型です。
税金を滞納していて国や自治体から督促が来ている方の場合、自己破産をしても一切の免除を受けられません。

自己破産でも免除されない税金や保険料の種類

自己破産でも免除されない税金や保険料などの公的な債権として、以下のようなものがあります。

免責されない税金や保険料の一覧

  • 所得税
  • 相続税
  • 贈与税
  • 消費税
  • 固定資産税
  • 延滞税
  • 加算税
  • 国民健康保険料、厚生年金保険料
  • 年金保険料
  • 公立の保育園の保育料
  • 下水道使用料

公共料金については、電気代、ガス代、上水道料金は自己破産による免責対象ですが、下水道料金については非免責債権となっているので要注意です。

上記の分類とは異なりますが「刑事罰の罰金」や「交通違反の反則金」も非免責債権なので免責対象になりません。
これを機会に一緒に押さえておきましょう。

税金が免責されない理由とは

自己破産をするとほとんどの負債は免責されるのに、なぜ税金や保険料は免責してもらえないのでしょうか?

それは税金や保険料などの支払いは「国民全員が公平に負担しなければならないもの」だからです。

納税義務は憲法にも定められた国民の基本的な義務であり、借金のある人もない人もすべての人が所得や得た利益に応じて平等に支払いをしています。
それにもかかわらず自己破産で免れることができると、真面目に払っている人と比べて不公平になってしまいます。

税金の免責を認めてしまうと国の根幹が揺らいでしまう

また自己破産で税金を免れるなら、多くの人が税金を不払いにしてどんどん自己破産してしまい、国や自治体の財政が破綻するおそれも高まります。
健康保険や年金制度も機能しなくなってしまうでしょう。

このように税金や保険料等を免責対象にすると国の根幹が揺るがされるので、これらの負債は自己破産による免責の対象外とされているのです。

法人税には免責の概念がない

法人が経営難に陥ると、法人税を滞納してしまうケースもよくあります。法人税も税金なので免責対象にはならないはずですが、法人破産には「免責」という概念がありません。

なぜなら法人が破産すると法人自体が消滅するので、税金支払い義務を含めてすべての支払い義務が同時に消滅するからです。法人が自己破産した後、代表者が法人税を支払う義務もありません。

ただし代表者が法人税の支払いについて「納税保証」していたケースでは、代表者が代わって法人税を支払う必要があります。代表者が自己破産をしても納税保証した分の税金(法人税)は免責されません。

税金滞納しているときに自己破産したらどうなる?

一般的なサラ金やカード、住宅ローンなどの負債を抱えている方が自己破産をして弁護士に破産手続きを依頼すると、債権者からの督促がぴたっと止まります。そのまま無事に免責を受けられたら支払いは一切しなくて済みます。

税金や保険料を滞納している状態で弁護士に自己破産を依頼しても、税金の督促は止まらないのでしょうか?

いつどのようなタイミングで支払いをすることになるのか、みていきましょう。

弁護士に依頼しても督促が止まるとは限らない

税金や保険料などの負債については、自己破産を弁護士に依頼しても督促が止まるとは限りません。

受任通知発送後も、国や自治体などから税金の督促が来る可能性があります。
その理由をみてみましょう。

弁護士に依頼して督促が止まるのは「貸金業法」が根拠

税金や健康保険料の場合、なぜ弁護士に自己破産を依頼しても税金の督促が止まらない可能性があるのでしょうか?

それは自己破産を弁護士に依頼したときに、サラ金などの一般債権者からの督促が止まる理由を考えてみるとわかります。

日本には「貸金業法」という法律があり、それによると「弁護士や司法書士が債務整理に介入した後は、『貸金業者』は債務者に督促や取り立てをしてはならない」と規定されています。
そこで弁護士が受任通知を発送した後は、サラ金やカード会社などは一切債務者に連絡をしてこなくなるのです。

もしも督促を続けたら貸金業法違反となり、金融庁から指導が入って業務停止などの処分を受ける可能性があります。
銀行や信用金庫などの金融機関には貸金業法が直接適用されませんが、上記の貸金業者の取扱いに習って督促を規制しています。

税金や健康保険料には貸金業法が適用されない

しかし税金や健康保険料等に関しては、貸金業法が適用されません。
そこで弁護士が債務整理手続きを開始しても国や自治体が督促を止める必要性も理由もありません。

ただし税金の中には破産手続きによって配当を受けるべきものがあるので、そういったものについては破産手続き中に支払いを要求されることはありません。

自己破産してから税金を支払うタイミング

自己破産をしたとき、滞納している税金はいつ払えば良いのでしょうか?

実は税金の種類によって、支払うタイミングが異なります。税金は以下の3種類に分類されます。

財団債権

財団債権は、そもそも自己破産の手続きの対象になりません。

あらゆる債権の中でももっとも優先され、自己破産手続きとは無関係に随時支払う必要があります。

税金の中で財団債権となるのは、以下のようなものです。

  • 直近1年以内の滞納税
  • 破産手続き開始決定前に発生し、まだ納期限の来ていない税金
  • 上記の税金に対する延滞税

上記の税金については随時支払う必要があります。

優先的破産債権

優先的破産債権とは、破産手続きの対象になり配当を受けるべき債権ですが、その中ではもっとも優先されるものです。
税金で優先的破産債権となるのは、以下のようなものです。

  • 財団債権にならない税金

たとえば1年より前に納期限が到来した税金などです。

劣後的破産債権

破産手続きに参加しますが、一般の債権に劣後して配当を受け取る優先順位の低い債権です。
税金の中でも一部の税金の延滞税や重加算税などは劣後的破産債権となります。

管財事件になった場合、優先的破産債権や劣後的破産債権となる税金については破産手続きが終了するまで破産者が自分で払う必要はありません。
しかし破産後には支払う必要があります。

自己破産したときにいつどの税金を払えば良いのかという判断は複雑で素人の方にはわかりにくくなっています。
自己判断をせずに自己破産を依頼している弁護士や管財人に相談しながら弁済を進めるのが良いでしょう。

税金を支払わないまま放置するとどうなるか

税金の請求・督促が来ても放置して、そのまま払わなかった場合の流れは下記のとおりです。

延滞税が加算される

税金や健康保険料を払わずに放置していると、延滞税が加算されて金額が大きく膨らんでしまいます。

督促状や催告書が届く

税金を滞納すると、役所や税務署などから「督促状」などの書類が届きます。督促状が届いても支払わない場合、「催告書」などのよりインパクトの強い書面が送られてくるケースがあります。

差押予告書が届く

督促状や催告書を受けても支払いをせず放置していると、国や自治体から「差押予告書」「差押予告通知書」などの書類が届きます。そこには滞納税額と滞納税を払うよう要求する内容が記載されており、支払いをしない場合には財産や給料を差し押さえるなどと書かれています。

差押えを受ける

差押予告書や差押予告通知書が届いても支払いをせずに無視していると、本当に財産や給料が差し押さえられます。

差押え対象となるのは、以下のようなものです。

  • 給料
  • 預貯金
  • 株式などの有価証券
  • 投資信託や社債などの債権
  • 不動産
  • ゴルフ会員権など

給料は全額ではありませんが毎月一定額を天引きされますし、預貯金口座は凍結されて中のお金を全額税金支払いに充てられます。
車や不動産などの資産は公売にかけられて第三者に売却されます。

国や自治体が差押えをすることを「強制処分」と言いますが、強制処分には「裁判が不要」です。
一般のサラ金などの負債を滞納した場合には、相手から裁判をされて判決が出ない限り差押えを受けることがありませんが、税金や健康保険料の場合には裁判なしにある日突然差押えられる可能性があります。

税金を払えないときの対処方法

税金や健康保険料が自己破産でも免責されないとしたら、滞納してしまった人はどのように対処すれば良いのでしょうか?

以下で正しい対処方法をご紹介します。

分割納付の相談をする

いきなり給料や預貯金などを差し押さえられると生活に関わるので税金を払えないなら放置してはなりません。
まずは所轄庁に連絡を入れて分割払いの相談をしましょう。

税金は基本的には一括払いしなければならないものですが、事情によっては分割払いをさせてもらえます。
たとえば市町村に払う住民税などは比較的分割払いを認めてもらいやすくなっています。

税金を支払う意思があるのを示すことが重要

税金を分割払いさせてもらうには、本人の生活が逼迫しておりどうしても一括で払えないこと、本人に支払い意思と分割で払える能力があることが必要です。
まずは自分から役所や税務署に連絡をして支払いの意思があることを示しましょう。
手持ちの数千円でも先に支払い、誠意を見せるのも1つの方法です。

税金の分割払いをするときには、「分割で払います」という内容の誓約書を差し入れさせられるケースが多くなっています。
約束をしたら、遅れないように必ず支払いを続けて完納しましょう。

法的に認められる税金猶予の制度を利用する

税金は自己破産による免責対象にはなりませんが、法的な猶予の制度が設けられています。以下でご紹介します。

徴収の猶予

徴収の猶予とは、一定の要件を満たした場合に税金の支払いを待ってもらえる制度です。以下のような条件を満たす場合に適用されます。

  • 納税者が震災や風水害、火災など災害に遭ったり盗難被害に遭ったりして納税が困難となった
  • 納税者本人や生計を一にする親族が病気になったり負傷したりして納税が困難となった
  • 納税者が事業を廃止、休止して納税が困難となった
  • 納税者が事業で著しい損失を受けて納税が困難となった
  • 上記4つに類する状況が発生した
  • 本来の納期限から1年以上経過してから、修正申告などによって納付税額が確定した

災害や事業の行き詰まり、病気やけがなどの一定の事情があれば納税を待ってもらえる可能性があります。
該当するときには担当者へ資料を示しながら積極的に事情を主張しましょう。

換価の猶予

換価の猶予とは、一定条件を満たしたときに納税者の申請または国・自治体側の判断によって分割払いさせてもらえる制度です。適用されるのは以下のようなケースです。

  • 税金を一括払いすると、事業や生活の維持が困難になるおそれがある場合
  • 誠実に税金を払う意思がある場合
  • 納期限から6か月以内に申請した場合

徴収の猶予とは異なり「納期限から6か月以内」という制限があるので、支払いを滞納したら早めに申請する必要があります。

滞納処分の停止

一定の要件を満たす場合、税金の滞納処分が行われず、既に始まっていたら停止されます。それを「滞納処分の停止」といいます。
滞納処分が停止されるのは以下のようなケースです。

  • 差し押さえられたものや差押え予定になるものの価値が低く、差し押さえる経済的なメリットがない場合
  • 差し押さえるべき財産がない場合

たとえば生活保護を受けている方などの場合、財産が一切ないので税金を滞納していても滞納処分(差押え)を受けることはありません。
滞納処分を受けないまま長期間が経過すると次に説明するように、税金が時効消滅する可能性もあります。

税金の時効について

税金には「時効」が適用されるので、税金発生または納期限から一定期間が経過すれば自然に支払い義務がなくなります。
税金の種類やケースによって税金の時効が異なるので、それぞれみていきましょう。

税金を期限までに申告した場合

きちんと期限内に税金を申告した場合、税金の時効期間は基本的に3年となります。

期限内に申告しなかった場合

期限内に申告をしなかった場合には、税金の時効期間は基本的に5年となります。

脱税などの悪質な意図を持っていた場合

税金を期限内に申告した場合でもしなかった場合でも、「脱税しよう」という意図を持っていた場合には時効期間が長くなり「7年」になります。

贈与税の場合

贈与税の時効は他の税金と取扱いが異なり、基本的に6年です。

滞納処分の停止を受けた場合

差し押さえるべき財産がないなどの理由で滞納処分の停止を受けた場合、その状態が3年継続すると税金は時効によって消滅します。

ただし税金の時効は国や自治体が滞納者へ督促状を送るだけで中断するので、成立させるのは困難です。税金を払えない場合、時効成立を待つのではなく所轄庁と話し合いをして分割納付するのが、基本的な解決方法となります。

まとめ

税金を払えないときには専門家に相談を

税金は自己破産しても減免されませんが、税金や健康保険料以外の免責対象になる借金のある方の場合、自己破産で借金を免除してもらうことによって状況が楽になります。それまで借金返済に充てていたお金で税金を払えるようになる可能性も充分にあります。

税金、保険料、罰金などの非免責債権を抱えて困っているなら、弁護士がアドバイスをくれるでしょう。よかったら一度、無料相談を利用してみてはいかがでしょうか?

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