自己破産すると引っ越しはできない?制限と入居審査への影響

自己破産すると引っ越しはできない?制限と入居審査への影響

自己破産は、「申立前」「同時廃止の手続き中」「手続き後」であれば自由に引っ越しできますが、「管財事件の手続き中」の場合、引っ越しをする際に裁判所の許可が必要です。許可のない引っ越しは、免責不許可となる可能性があるため厳禁です。弁護士は自己破産による引っ越しへの影響に詳しいため、お悩みの場合はぜひ相談しましょう。

自己破産による引っ越しへの影響

自己破産を検討中の方が、引っ越しをしようと考えた場合「自己破産すると引っ越しできなくなるんじゃないか?」と気掛かりに思われる方も少なくありません。

今回の記事では、自己破産が引っ越しに与える影響について、手続の進捗状況別

  1. 自己破産申立前
  2. 自己破産手続き中(同時廃止)
  3. 自己破産手続き中(管財事件)
  4. 自己破産手続き後

の4パターンに分けて、ご説明します。

自己破産申立前の引っ越し

自己破産を申し立てる前であれば、引っ越しは自由にできます。

債務整理手続きをする前とは、つまり平常時なので制限を受けないのは当然でもありますが、引っ越しする前後の時期に自己破産の申し立てを行おうとしている場合は、注意が必要です。

管轄裁判所が変わる可能性あり

引っ越しによって居住地が都道府県をまたいで移動する場合、自己破産を申し立てる申立先の管轄裁判所が変わることになります。自己破産の申立先は本人の居住地を管轄する裁判所と定められているためです。

管轄裁判所が変わると、申立から破産手続開始決定までの期間が変わるなど、破産手続きの運用面にも変化があります。

また、弁護士に自己破産申立を依頼する場合には、申立先の変更により交通費や日当など弁護士費用が増減する場合があります。
弁護士との対面打ち合わせに差し障りが出る場合がある点も留意しておきましょう。

「浪費」と判断されれば免責不許可となるおそれも

特段の必要性がないにも関わらず過度に高額な家賃の住居に引っ越した場合、裁判所に免責不許可事由の「浪費」と判断される可能性があります。

自己破産の申し立て前後で引っ越しを検討している場合は、あらかじめ弁護士に相談し、引っ越しをしてよいものか、それとも避けた方が良いか、実行の可否を確認しておくと安心です。

注目!

そのお悩み弁護士に相談してみては?

当サイトを見ても疑問が解決しない、状況が異なるので判断が難しいと感じたら弁護士に相談することをおすすめします。
初回相談無料の弁護士も数多く掲載しておりますし、どの弁護士もいきなり料金が発生するということはありません。まずはお気軽にご相談ください。

自己破産手続き中(同時廃止)の引っ越し

自己破産手続きには、

  • 同時廃止
  • 管財事件

の2種類があります。まずは同時廃止の手続き中の場合についてご説明します。

自由に引っ越し可能

本人に財産がなく、免責不許可事由のない同時廃止では、破産手続きは開始と同時に廃止され免責手続きに移行します。
同時廃止が適用されるのは、申立者に財産隠しや本人の逃亡のおそれがないものと判断されることが前提であるため、引っ越しは自由に行えます。

自己破産手続き中(管財事件)の引っ越し

次に管財事件について見ていきましょう。

引っ越しには裁判所の転居許可が必要

本人に財産や免責不許可事由がある管財事件では、裁判所から選任された破産管財人が財産を調査管理し、適宜、換価処分を行って債権者に配当します。

管財事件の場合、財産隠しや本人逃亡のおそれがあるとみなされます。そのため、管財事件での自己破産手続き中に引っ越しするには裁判所に対し転居許可申立を行い許可をもらう必要があります。
まずは破産管財人に引っ越しの意向を伝え同意を得た上で、破産管財人の同意欄を設けた転居許可申立書を作成、管財人に記名押印してもらった申立書を裁判所に提出します。
破産管財人の記名押印のある転居許可申立書に対して、裁判所の認可が下りれば、自己破産手続き中でも引っ越しすることができます。

一方で、転居許可を得ずに勝手に引っ越した場合、免責が不許可になる可能性があります。
自己破産を成功させるためには、破産管財人への断りなく勝手な引っ越しをするのはNGです。

自己破産手続後の引っ越し

では、自己破産の手続きが終了した後だと、引っ越しに影響は出るのでしょうか?

自由に引っ越しできるが、審査で問題が出ることも

すでに手続全体が完了しているため、自己破産手続き後であれば引っ越しすることは自由です。
ただし、

  • 家賃保証会社の審査で問題が出る
  • 家賃支払いがクレジットカード指定の物件には引っ越しできない

など、自己破産後の信用情報の状態が影響し、賃貸物件の入居審査や契約に問題が起きる可能性はあります。詳しくは後述します。

自己破産手続き中に引っ越しするとどうなる?

自己破産手続き中に引っ越しをすると、管財事件の場合、一定の間、引っ越しを制限されるケースがあります。

破産手続開始決定が出てから、破産管財人による調査の終結を経て免責許可決定が確定するまで、3〜6ヶ月程度の時間がかかります。
この期間は居住制限を受けるため、引っ越しをする場合には裁判所からの転居許可が必要です。

裁判所の許可なしに引っ越しすると免責許可が下りない可能性

管財事件で手続を進めているにも関わらず、裁判所の許可を得ずに引っ越しを強行した場合、最悪は免責許可が下りなくなる可能性があります。
借金は免責されることなく債権者への返済責任が残り、それまで進めてきた自己破産のすべての準備も水の泡となります。

自己破産手続き中になんらかの事情で引っ越しせざるを得ない場合は、面倒がって黙って引っ越ししてしまうのは絶対にNGです。
自己破産の申立を依頼している弁護士に引っ越ししたい事情を伝え、必ず指示に従って対応するようにしてください。

自己破産による入居審査への影響

引越し先として新たな居住物件を探す際、自己破産しても入居審査に通るか、影響が出ないか不安に思う方は少なくありません。
結論から言うと、自己破産が、賃貸物件の入居審査に直接影響することはありません。
ただし、賃貸契約を行う際、家賃保証会社を利用する場合には注意が必要です。

不動産会社や大家による入居審査には影響はない

賃貸物件への入居申し込み時、自己破産の有無が不動産会社や大家の審査・判断に影響することは基本的にはありません。
貸し主側に「本人に一定の収入があり、家賃支払い能力がある」と判断されれば、入居審査は通る可能性が高いです。

自己破産した事実を賃貸契約時に貸し主へ報告する義務も特にないので、虚偽なく、自分の収入の範囲で継続的に家賃を払えることさえ伝えることができれば、終わった自己破産手続を巡って不動産会社や大家との交渉で揉めることはあまりないでしょう。

家賃保証会社の審査に影響が出る場合も

一方、不動産会社や大家と賃貸契約を結ぶ際、家賃保証会社の利用を求められた場合、自己破産をした事実が家賃保証会社の審査にひっかかる可能性があります。

信販系家賃保証会社のケース

家賃保証会社は、信販会社がなるケースが多々あります。
信販会社は個人信用情報機関の信用情報を確認できるため、自分の信用情報中に自己破産の事故情報が掲載されている期間中は、この自己破産の記録をふまえて保証審査で落とされる可能性があります。

なお、事故情報の掲載期間は、個人信用情報機関がCIC(株式会社シー・アイ・シー)ならば免責決定から5年、JICC(株式会社日本信用情報機構)ならば破産申立から5年です。期間の起算点が違うため注意しましょう。

信販系家賃保証会社の保証審査に落ちた場合は、信販系以外の保証会社の利用もご検討ください。
信販系以外の家賃保証会社(信用系)では、個人信用情報機関の信用情報機関への照会を行いません。
そのため、自己破産自体が保証審査に影響を及ぼすことはありません。

家賃滞納履歴を共有している家賃保証会社のケース

LICC(全国賃貸保証業協会)に加盟している家賃保証会社は、LICCが作る独自のデータベースから家賃滞納履歴を確認できます。つまり、加盟会社間で家賃滞納履歴を共有しているのです。

LICC加盟の家賃保証会社の場合、家賃滞納履歴が原因となって、審査に落ちる場合があります。
なお、家賃滞納履歴の登録期間は5〜10年程度です。

もし、LICCに加盟している家賃保証会社の保証審査に落ちた場合は、LICC非加盟の家賃保証会社の利用もご検討ください。

自己破産後の引っ越しの注意点

以上のように、自己破産も手続完了後であれば引っ越しは自由にできます。
しかし、実際には自己破産の影響を意識しておく必要がある注意点もいくつかあります。
順に見ていきましょう。

家賃がクレジットカード払い指定の物件には引っ越しできない

クレジットカード会社は、個人信用情報機関の信用情報を確認できます。事故情報が載っている期間、自己破産をした人はクレジットカードが利用できなくなります。

そのため、家賃支払いがクレジットカード払いに指定されている物件には、引っ越しできません。口座引き落としなど、クレジットカード払い以外の決済方法を利用できる物件を探しましょう。

連帯保証人の必要な物件はむしろ借りやすい

家賃保証会社を利用せず連帯保証人を必要とする物件は、自己破産による家賃保証審査への影響はなく、自己破産を検討している・手続き中の方にも借りやすい物件です。

安定した収入のある方に連帯保証人になってもらうことで信用が増すため、連帯保証人を不要とする物件よりもむしろ借りやすくなるのです。家族や親族など自分の状況を理解してくれる方の中から、安定収入のある方を探し協力を仰いでみましょう。

家計の収支に見合う物件選びを

生活再建のため、家計の収支に見合う物件選びは大切です。
具体的には、公営住宅やUR住宅を引っ越し先の候補に入れることをオススメします。
公営住宅は低所得者向けの物件なので、家賃を低く抑えられます。都道府県や市町村などの公的機関が設けている物件で、保証人を立てる必要もありません。
また、UR住宅は、礼金や仲介手数料が不要、公営住宅と同様に保証人も不要のため、初期費用を抑えた引っ越しが可能です。

また、月々の家賃以外に、引っ越し費用にも注意しましょう。
自己破産直後となると、手元にまとまったお金がないのもよくあること。
あらかじめ引越会社から取った見積もり金額を元に、引っ越し費用を事前に準備、計画的に引っ越しを進めていくことが重要です。

まとめ

自己破産は、「管財事件の手続き中」の場合には引っ越しに影響が出ます。

自己破産の引っ越しへの影響を理解し、よりよい生活を

自己破産が、「申立前」「同時廃止の手続き中」「手続き後」であれば自由に引っ越しできますが、「管財事件の手続き中」の場合は居住制限を受けるため、引っ越しをする際には裁判所の転居許可が必要です。
許可のない勝手な引っ越しは、免責が不許可となる可能性があるため厳禁です。

自己破産そのものは引っ越し先の入居審査に影響しませんが、「家賃保証会社の保証審査に落ちるケースがある」「家賃支払いがクレジットカード指定の物件には引っ越しできない」といった点が問題となります。
ただし、その場合でも、連帯保証人を必要とする物件や公営住宅、UR住宅など保証人が不要な物件を選ぶことで、引っ越ししやすくなる可能性があります。

いずれにせよ、自己破産手続きの前後で引っ越しする場合は、自己破産が引っ越しへどのような影響を及ぼすか、正しく理解しておくことは、よりよい生活を築く上で非常に重要です。

自己破産する際の引っ越しは弁護士に相談がベスト

そのため、自己破産と前後しての転居を検討されている方は、債務整理に詳しい弁護士に相談することをオススメします。

自己破産の申立前であれば、引っ越しが免責不許可事由である「浪費」にあたらないかアドバイスをくれますし、管財事件の手続き中であれば転居許可申立をサポートしてくれます。引っ越し以外でも自己破産にまつわる法的疑問に、真摯に対応してくれるでしょう。

自己破産による引っ越しへの影響は、一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

債務整理に強く評判の良い弁護士事務所を探す

債務整理

借金問題に悩んでいませんか?

  • 複数の借入先があり、返済しきれない
  • 毎月返済しても借金が減らない
  • 家族に知られずに借金を整理したい