自己破産すると賃貸契約はどうなる?社宅住まいだとどう違う?

自己破産で賃貸契約どうなる?社宅は?
自己破産をすると賃貸契約にどのような影響があるのでしょうか。
自己破産をすることで賃貸契約が解除されてしまうのではないかと心配をされる方も多いかと思います。

今回の記事では、

  • 自己破産をすると賃貸借契約はどうなるのか
  • 自己破産する際に必要な賃貸物件の場合の資料
  • 自己破産で賃貸契約を解除されるケース
  • 自己破産後に賃貸物件を借りるポイント

について解説していきます。

自己破産すると賃貸契約はどうなる?追い出される?

まず、自己破産をすると借りている自宅の賃貸契約はどうなるのか、結論からお伝えすると、自己破産をしたからといって、自己破産のみが理由で賃貸契約が解除されることはありません。

マンション(アパート)等の賃貸借契約は解除されないのが原則

万一、自己破産をしても、破産者は自らが契約している賃貸物件に住み続けることができます。

実は、以前は、マンション(アパート)等を保有し貸し出す側である賃借人の物件収入を得る権利を保護する目的から、賃貸人が自己破産した場合、賃借人から賃貸人に対して解約を申し入れる権利(賃貸解約権)が認められていました。(民法旧621条)

これが、2004年に破産法改正では、賃借人の権利は賃貸人が家賃支払い未払いになって以降からでも保護可能という判断に基づき、破産の事実を理由とした賃貸人からの賃貸契約解約を認めた民法旧621条の規定は削除されました。この法改正により、賃貸人による、賃借人の破産を理由とする賃貸契約の解除は認められないことになりました。

つまり、現在では自己破産をしても、それだけで賃貸借契約は解除されることはないのが原則です。
仮に契約書の中に「自己破産をしたら契約を解除する」などの文言がある場合でも、法的に有効な契約とは認められません。

社宅や家族・友人宅への居候でもすぐに追い出されることは稀

もし住まいが社宅や家族・友人宅の場合でも、自己破産をしたからといってすぐに追い出されてしまうことは稀です。

マンションやアパートなどの通常の賃貸借契約についても自己破産を理由に解除することが認められていないのです。社宅や家族、友人宅への居候の場合も、自己破産を理由に追い出すことは当然できません。

もちろん社宅に関しては会社との契約、家族や友人については個人間での契約です。どのようなことが契約解除の条件となるかは、それぞれの契約内容によりますが、自己破産した事実だけを理由とした追い出しは法的には認められない行為です。

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自己破産に必要な居住証明、賃貸物件の場合は?

自己破産をする際には、裁判所によって指定される書類を準備しなければなりません。必要書類の中には「居住証明」に関するものがあります。

不動産を所有している場合は、所有不動産の登記簿謄本の用意が必要となります。では、賃貸物件に住んでいる場合に、居住証明はどのように準備すれば良いのでしょうか。

賃貸マンション・アパートの賃貸借契約書が居住証明に

賃貸の場合、賃貸マンションやアパートの「賃貸借契約書」を居住証明として使います。

賃貸借契約書は、賃貸借契約を結んだ際に受け取るもので、マンションやアパートの鍵と一緒に、または契約の後に郵送で送られてくる場合もあります。

万が一賃貸借契約書を紛失してしまった場合には、大家や仲介不動産会社にコピーを発行してもらうことも可能です。

社宅住まいで賃貸借契約書をもらっていない場合

借り上げ社宅の場合、契約は会社と大家が行うものとなります。そのため会社名義の賃貸借契約書は持っていないことが通常です。
もし会社から賃貸借契約書をもらえるのであればコピーをもらい、その契約書によって、住まいが社宅であることを証明することができます。

会社に頼みづらい、自己破産をバレたくない場合

自己破産が理由であるため、賃貸借契約書を会社に頼みづらいケースや、自己破産したことを知られたくないというケースもあるかと思います。

そのような場合には、ご自身で保管している

  • 社宅利用許可証
  • 社宅費天引きの給与明細 等

ご自分が社宅を利用していることが分かる書類を提出することによって居住証明とすることができます。

具体的にどのような資料が必要かは管轄裁判所の運用によるので、指定された資料が揃えられない場合には、その旨を裁判所に報告し、検討してもらうとよいでしょう。

自己破産で賃貸借契約を解除されるケース

自己破産をしたということで、賃貸借契約が解除されるということはないとお伝えしましたが、その他の要件も加わり、賃貸借契約の解除につながるケースもあります。ここでは賃貸借契約が解除されるケースについて解説していきます。

収入に対して高い家賃の物件に入居している場合

収入に対して、家賃の比率があまりにも高いという場合、家賃を支払い続けることが困難であると判断され、賃貸借契約が解除されることがあります。収入と家賃の比率の目安としては、家賃が手取り収入の3分の1程度であることと言われています。

自己破産をするようなケースでは、十分な収入が得られていないことが考えられます。
収入が低いと家賃の支払いが困難であると判断され、契約を解除されてしまうケースもあります。

家賃を滞納していた場合

自己破産をすることで家賃の滞納分は免除の対象となるため、原則として滞納している家賃を支払う必要がなくなります。

しかし、家賃を支払わないと、貸主は「債務不履行」として、借主に対して賃貸借契約の解除を要求することができます。自己破産ではなく、債務不履行が契約の解除の理由となるケースです。

一時的な債務不履行であれば、いきなり契約を解除されることはありませんが、債務不履行が頻繁に行われるケースや、再三催促をしても家賃が支払われないという場合には、債務不履行が契約の解除事由となります。

家主との信頼関係が損なわれた場合

賃貸借契約では信頼関係が損なわれることによっても賃貸借契約が解除されるケースがあります。信頼関係が損なわれるケースとしては、先ほどご紹介した家賃の滞納のほか、以下のようなことが挙げられます。

  • 無断で第三者へ転貸をした
  • 入居者以外の人を住まわせている
  • 騒音や異臭により他の入居者に迷惑をかけている
  • 無断での増改築、使用目的違反、ペット飼育禁止特約違反など、用法遵守義務違反をしている

これらのことが見受けられる場合には、信頼関係が損なわれたという理由で賃貸借契約を解除されることがあります。

自己破産後も賃貸住宅は借りられる?

では自己破産をした後に、賃貸住宅を借りることはできるのでしょうか。こちらも結論からお伝えすると、自己破産をした後でも、賃貸住宅は借りることができます。

マンションやアパートの賃貸契約そのものは可能

自己破産をしてもマンションやアパートの賃貸契約は可能です。しかし、賃貸契約には「審査」がありますので、審査を通らないと賃貸契約をすることはできません。

審査では主に「支払い能力」が重視されます。自己破産をしていたとしても、その後支払い能力が回復し、家賃を支払っていくことが可能であると判断されれば、賃貸借契約をすることができます。

賃貸(家賃)保証会社の審査で落ちるケースも

家賃保証協会を利用して賃貸借契約をする場合には、保証協会による審査も行われます。自己破産をした後に、この保証協会の審査で落ちてしまうというケースもあります。

保証協会の審査も、賃貸借契約と同じように支払い能力が一つの審査基準となりますが、そのほかの審査項目として、「信用情報」があります。

信用情報の中には、自己破産の記録も含まれています。賃貸借契約をしようとする際に、自己破産記録が残っているため、自己破産の情報や家賃滞納の情報が消えるまで、一定期間審査に通りにくくなるケースもあります。

一般的に、自己破産の信用情報は破産手続開始決定から7年ほど残ると言われています。

自己破産後に賃貸物件を借りるポイント

では、自己破産をした後に賃貸物件を借りるためにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは自己破産後に賃貸物件を借りるポイントについて解説していきます。

保証人不要なUR賃貸・公営住宅を利用する

賃貸借契約をするためには保証人が必要となりますが、自己破産をしていると信用が弱く、保証人を準備することが難しいという場合もあります。
また保証協会の審査に通らず、保証協会を利用できないということも考えられます。

そのような場合には、UR賃貸・公共住宅を利用する方法があります。

UR賃貸の一つの特徴として、全物件保証人不要で契約できる、というものがあります。
また、礼金・仲介手数料も不要となっており、初期費用の負担が非常に軽い点はお金に悩む方にとって大きなメリットです。

ただし、実際に申し込む際はUR賃貸・公共住宅それぞれ、所定の審査をパスする必要があります。審査内容は通常の不動産物件の賃貸とほぼ同様ではありますが、特に収入(家賃を支払っていけるかどうか)・本人の信用度(職業・身分照会・人柄など)を中心として審査が行われるのが一般的です。

また物件数に限りもあります。希望エリアにUR賃貸や公営住宅があるか、物件に部屋の空きがあるかを確認しなければなりません。
もし希望する条件に合うUR賃貸・公営住宅があった場合は、優先して利用を検討してみるのも良いでしょう。

社宅を利用する

勤務先に社宅があれば、社宅を利用するというのも一つの手です。

社宅を利用する場合、賃借人は会社となり、契約はオーナーと会社によるものなります。そのため個人の信用調査は行われず、たとえ住人が自己破産したとしても、それを理由として物件借受の審査に落ちる心配はありません。

また、会社からすれば、家賃は給与から天引きして確実に受け取ることができます。そのため、社宅の賃貸については、社員に対してそこまで厳しい審査などは設けていないケースが通常です。

連帯保証人を立てて賃貸借契約を結ぶ

保証会社を利用していると、滞納などがあった場合にもスムーズに対応してもらえます。
しかし自己破産をすると、審査が通らず、保証会社を利用できないというケースがあります。その場合には保証会社を通さず、連帯保証人に依頼するという方法を検討してみるのも良いでしょう。

連帯保証人は、誰でもなれるわけではありませんが、一定の条件を満たす近しい親族であればなることができ、保証会社と同様、借主が家賃を支払えなくなったり修繕費用を支払えなくなったりした場合に、借主に代わってそれらの支払いをしてくれます。

  • 安定した職業があり支払い能力がある
  • 二親等以内の親族
  • 国内に住んでいる

などの条件を満たしている場合、連帯保証人となることができるでしょう。

提出書類には年齢や勤務先、年収などを記入する欄もあり、収入証明を求められるケースもありますが、信頼できる連帯保証人がいることで、貸主としては家賃を回収できないという心配がなくなり、賃貸借契約を結びやすくなります。

連帯保証人に対してもオーナーや管理会社からの審査がありますが、家族や親族に連帯保証人になってくれる人がいれば、検討してみると良いでしょう。

家族名義で賃貸物件を借りる

名義を自分ではなく、同居する他の家族名義で賃貸物件を借りるということも一つの方法です。

基本的に夫婦であれば、契約者の名義を夫と妻のどちらにしても問題はありません。ただし、その場合には配偶者の職業や収入が審査の基準となりますので、配偶者が審査基準を満たしている必要があります。

基本的には世帯でなく契約者個人が審査の対象となりますので、契約者である方の配偶者が自己破産を過去にしていたかどうかは、審査に影響を与えることはないと考えられています。
もちろんこれらの基準は、家主や管理会社の裁量となりますので、それぞれで設けられている審査基準があります。

実家や友人宅に住む

もし実家に住む場所がある、友人宅に住まわせてもらうことが可能であれば、それらの住まいを活用させてもらうのも良いでしょう。

家族や友人のツテを活かすケースであれば、支払い家賃を抑えられることも多いですし、その間に安定した収入を得られる良い職業を見つけることもできるでしょう。

コストを抑えた生活をある程度の期間過ごすことで、信用情報機関の自己破産情報を回復させる効果も期待できます。

まとめ

今回は自己破産をすることによる賃貸借契約への影響について解説しました。自己破産したからといって賃貸借契約が必ず解除されるというわけではありません。
しかし、その他の条件が重なることにより賃貸借契約が解除されてしまうケースもあるので注意しましょう。

自己破産をした後に賃貸借契約をしたいという場合には、今回ご紹介した自己破産後に賃貸物件を借りるポイントを参考にしていただければと思います。

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