特定調停で取り下げを勧められるケースとは?取り下げを回避する方法は?

特定調停手続きの第一回目は、調停委員との面談

特定調停の調停委員は、債務者に返済の意思が欠如している、または債務を圧縮しても返済は難しいと判断した場合、債務者に特定調停の取り下げを勧めることがあります。自己破産に移行すれば多くの財産を手放すなどのデメリットがあります。取り下げを回避したければ、調停委員に返済の意思や実現可能な返済計画を示せることが重要です。

取り下げを勧められるケース

特定調停が成功すると、利息制限法に従った引き直し計算による借金元本の大幅な圧縮、将来的に利息や遅延損害金の免除等のメリットが期待できます。
しかし、調停委員の判断によっては、申し立ての取り下げが勧められるケースがあります。

特定調停の取り下げとは

特定調停を申し立てたからといって、必ずしも行わないといけないわけではありません。
家事調停では、家事調停手続が終了するまでであれば、申立人は自由に家事調停の申立の取り下げが可能です。そこで裁判所は状況によって申立人に調停の取り下げを勧めることがあります。
特定調停の取り下げとは一体どのような制度なのでしょうか。

特定調停の特徴

特定調停は、いわゆる「借金帳消し」となる自己破産と異なり、債務者の返済を前提とする債務整理手続きです。このため、調停委員が返済の実現可能性が低いと判断すれば、申立人である債務者に「取り下げ」を勧めるケースがあります。

「取下書」とは

申立人が「取下書」を書いて裁判所に提出すれば、特定調停の手続きは終了となります。取り下げは、申立人の意思で行う行為です。しかし、調停委員に取り下げを勧められて強く抵抗しなかったため、そのまま誘導されて取下書を書くことになった、というケースもあります。

取り下げを勧められるケース

債務者である申立人に対して調停委員から取り下げを勧められるケースは、主に2つあります。
一つは返済意思が欠如しているケース、もう一つはたとえ債務を圧縮しても返済が難しいケースです。

返済意思が欠如している

まず、申し立て人に返済の意思が欠如しているケースについて説明しましょう。

もし自己破産ではなく特定調停で返済を続ける道を望むなら、圧縮された債務を返済する強い決意が必要です。申立人に返済の意思がなければ、特定調停を利用すべきではありません。
きちんと計画通りに返済をする意思が申立人にないと判断すれば、調停委員が取り下げを勧める可能性があるのです。

債務を圧縮しても返済が難しい

次に、特定調停で債務を圧縮しても返済が難しいケースも、取り下げを勧められる可能性が高いでしょう。
法定利息で引き直し計算を行っても債務の圧縮幅が小さかったり、月々に返済できる金額が小さく、3〜5年かけても返済しきれない場合です。

自己破産のデメリット

調停委員がこの申立人は返済が難しい」と判断すれば、取り下げと同時に自己破産への移行を勧める場合もあります。自己破産にはどんなデメリットがあるのでしょうか。

自己破産とは

自己破産とは借金の返済が不可能と認められた場合、債務者が最低限生活できる財産以外の財産を提供することで、すべての債務をゼロにする手続きです。

自己破産は借金の返済を免れるメリットはありますが、デメリットも多くあります。では、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

住宅や車などの財産を失う

まず、自己破産ではマイホームやマイカーといった財産を手放す可能性が高くなります。

自己破産は、債務は免除されますが、一定額以上の財産は破産管財人が管理し、換金して債権者への返済に充てられるからです。
一方、特定調停では住宅ローンやマイカーローンを整理対象から外せます。

「債務整理しても財産は守りたい」という方にとっては、自己破産への移行で生じるデメリットは大きいでしょう。

「ブラックリスト」の期間が最も長い

債務整理を行うと信用情報機関に事故情報が登録されます。

事故情報が消えるまでの期間は、クレジットカードやローンの新規申し込み・利用などができません。自己破産後の事故情報の登録期間は、様々な債務整理手続きのなかで最も長い10年です。

もし債務者が自己破産後に住宅を購入したいと考えても、事故情報が消えない10年間は住宅ローンが組めない、といった問題が生じます。

取り下げを回避するには

調停委員に勧められても取り下げたくないという債務者は多いはずです。そこで取り下げを回避するには、調停委員に理解を求める、実現可能な返済計画を提示するといった対策が必要になります。

調停委員に理解を求める

特定調停の交渉を取り仕切るのは調停委員です。取り下げを勧められないためには、まずはきちんと返済する覚悟があることを調停委員に理解してもらう必要があります。
取り下げなくてもよいと分かってもらうためには、借金返済の覚悟や実現可能な返済計画を示すなどの手段があります。

1回目の期日で取り下げ勧告の可能性

特定調停手続きは、通常、期日が2回設定され、債務者は裁判所に出頭します。そのうち第1回目の期日は、債務者と調停委員の面談です。この日が、調停委員から申し立ての取り下げを勧められる最初のタイミングとなります。

借金返済の覚悟を示す

調停委員は、債務者に返済の見込みがない時や、借金返済に対する強い覚悟が感じられない場合は、調停取り下げを勧めます。このため債務者は、毎月の収支等の具体的な借金返済シミュレーションを調停委員に説明できるよう、1回目の期日までに準備しておき、返済の意思表示とすることが大切です。

債務者の一生懸命さや誠意は、調停委員が債権者と交渉する際の動機付けの強さにも関係します。

実現可能な返済計画

調停委員は「借金を返す」という強い意思だけでは認めてくれません。実現可能な返済計画も併せて示す必要があります。

返済計画の説得力を高めるには

実現可能な返済計画とは、根拠に基づき説得力のある計画です。算出した返済額は債務者の家計の実態に即していて確実に返済できることを、収支書を示しながら説明できるとよいでしょう。

また、返済期間中には貯蓄も行うなど、不測の事態があっても返済を続ける考えも示せれば、説得力はより高まります。

2回目の期日に進めない場合も

1回目の調停期日の段階で、返済の意思や調停委員を納得させる返済計画を提示できなければ、2回目の調停期日に進むことができません。取り下げ書を提出せざるを得ず、特定調停の手続きが終了することもあります。

再提出を求められる場合もある

一方、1回目の調停期日で返済計画が実行不可能と認定されても、調停委員が債務者の返済意思を確認して返済計画の再提出を求めることもあります。特定調停による債務整理にこだわるなら、最後まで諦めずに臨みましょう。

特定調停取り下げを勧められたら弁護士に相談を

万が一、取り下げざるを得なくなった場合は、弁護士や司法書士に相談するのがおすすめです。

残された借金額や家計の状況、債務者の希望などを踏まえて、最適な債務整理の方法についてアドバイスがもらえます。

無料相談を実施する事務所も多いのでぜひ利用してみてください。

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