特定調停における計算書・上申書とは?閲覧・コピーはいつ行う?
債務者が特定調停を申し立てると、裁判所は債権者に「計算書」の提出を求めます。これは債権者が利息制限法に基づいて残債を再計算したもので、申立人は計算書で正確な債務残高を把握することが可能です。また債権者は「債務整理の必要がない」もしくは「調停に代わる決定を受け入れる」意思を示す「上申書」を提出する場合もあります。
特定調停の流れとは
弁護士などの専門家に依頼せず自力で行う特定調停は、手続き全体の流れや、各ステップでやるべきことを申立人自身がきちんと把握しておくことが重要です。
簡易裁判所に申立てを行う
申し立て
債務者は、債権者の所在地を管轄する簡易裁判所に特定調停を申し立てます。裁判所は、特定調停の申し立てを受けた旨を相手方である債権者に通知します。これを受けて債権者(貸金業者に限る)は取り立てをストップします。
期日の決定
申し立てから2〜3週間経つと、申立人の元には裁判所から調停期日の呼び出し状が届くので、指定された期日に裁判所に出頭します。
調停期日には何をする?
調停期日は平日の日中なので、出頭できるように仕事や用事のスケジュールを調整する必要があります。指定された期日に裁判所に行けないことが事前に分かっていれば、裁判所に連絡して、日程を変更してもらうことが可能です。
調停期日にすること
調停期日は、裁判官1人と調停委員2人で構成される調停委員会で話し合いが行われます。調停期日は通常2回設定されます。1回目は申立人だけが出頭し、調停委員らは申し立て時に提出した書類などを詳しく確認するための質問を行います。2回目の調停期日では債権者も加わって債務の減額や返済方法などを話し合います。
期日までに必要な書類とは
裁判所は債権者には「計算書」と「上申書」の提出を求めます。計算書は第一回目の調停期日までに提出することが義務付けられている一方、上申書の提出は任意です。
調停委員は資料請求の権限がある
このほか、調停委員は特定調停法12条に基づき、特定調停のために必要な場合は、債務者や債権者双方に対して特定調停事件に関する文書の提出を求める権限も有しています。この規定は、特定調停の円滑かつ迅速な手続き進行を可能にするために用意されています。
特定調停に必要な計算書・上申書とは
では、債権者が提出する計算書や上申書とは、どんな書類なのでしょうか。いずれも特定調停における相手方の公式な見解として扱われるので、調停の結論に関わってきます。
計算書で正確な債務残高を確認
特定調停を申し立てた時、債権者ごとの債務残高や、正しい利息が適用された場合の債務残高が把握できていない場合もあります。そこで確認しておきたいのが計算書です。
計算書とは
計算書とは、貸金業者などの債権者が当該申立債務者に関する債務残高を再計算した書類のことです。再計算には、債務者との契約時の利息ではなく、利息制限法に基づく法定利息を用います。つまり、申立人は、計算書を確認すれば法定利息をふまえた正確な債務額がわかるのです。
計算書の提出は義務
計算書は第一回目の調停期日までに提出することが義務付けられています。特定調停では、申し立ての際に債務者に様々な書類の提出が要求される一方、調停委員会は相手方である債権者にも関係文書の提出を請求できるのです。
上申書で「残債ゼロ」が分かることも
上申書とは、簡単に言えば債権者が調停に関して意見を述べる書類のことを言います。債権者が上申書を提出するのは、次のいずれかの場合です。
残債がなくなっている場合
現行の利息制限法に基づき引き直し計算をした結果債務が消滅した場合、特定調停による債務整理の必要がないことを裁判所に申告します。
裁判所に出廷しない旨を伝える場合
裁判所が遠く期日に出廷することが難しいため「特定調停法17条」に基づいた裁判所の決定を受け入れる場合にも提出します。
期日前に計算書や上申書を閲覧・コピーしておこう
申立人は、計算書や上申書を閲覧・コピーすることが可能です。これらの提出書類はどちらも申立人にとって重要な資料なので、必ず確認しておきましょう。
期日前に計算書や上申書を閲覧・コピーしておく必要がある
特定調停では通常2回の期日が設けられますが、交渉の際中に申立人が相手方である債権者と直接会うことはありません。つまり、計算書や上申書は相手方の意向を知る数少ない機会なのです。
調停期日前に閲覧・コピーを入手する方法とは
計算書は裁判所の記録閲覧室に行けば閲覧できます。また、有料ですがコピーをとって持ち帰ることも可能です。しかし、なかには閲覧・コピーに応じていない裁判所もあるようですので、その時は調停委員に相談してみましょう。
注意点
注意したいのは、調停期日の当日に早めに裁判所に行って閲覧しようとしても、調停委員が持ち出している可能性があることです。手間はかかりますが、申し立て人は第一回目の期日までに一度裁判所に足を運ぶ必要があります。
なぜ期日前に閲覧・コピーすることが必要なのか
期日前の平日に裁判所に足を運ぶのは、仕事が忙しい人や、遠方から出向く人にとっては面倒かもしれません。しかし、調停で納得のいく結論を得たいならこの一手間が重要なのです。
閲覧・コピーが必要な理由その1:債務残高の正確な把握
近年、消費者金融業者等の貸金業者に対する法整備や規則運用は厳格化されました。しかし以前は、裁判所が債権者に対して取引履歴や正確な借金残高の提出を求めても、情報の開示に消極的な業者が多く存在していました。この結果、債務者が自分で正確な借金残高を把握できない状態になってしまう事態が多発していたのです。
そこで、裁判所は計算書等の提示を義務化して債務者が入手できる状態に置くこととしたのです。現在では、債権者が不誠実な対応をとる事態は減少していますが、手続きが適切に進んでいるか確認するために、閲覧・コピーは大切です。
閲覧・コピーが必要な理由その2:虚偽や誤りを見逃さない
残念ながら、計算書に虚偽の内容を記載する債務者はゼロとは考えられません。本当は過払い金が発生しており返済する債務がなかったにもかかわらず、債権者が虚偽や誤った計算書を信用し、まだ債務があると信じて和解した債務者も少なからずいるのです。また、悪意はなくとも計算が間違っている場合もあります。損をしないように、閲覧・コピーして内容を精査しておきましょう。
簡易裁判所が遠方であれば、計算書や上申書の確認のために調停期日以外にも裁判所に行く必要があるのは面倒かもしれませんね。特定調停は、費用を抑えて自力で取り組める一方、手間がかかるのは事実です。仕事などが忙しく、債務整理に時間を割けない方は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが早期解決への近道です。
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