任意整理とは?債務整理との違いやメリット・デメリット、よくある質問まとめ
任意整理とは、返済が行き詰まった借金について債権者と交渉し、債務者が支払いを継続できる形に返済計画の変更を図る手続きのことです。
任意整理を行うと利息のカットや過払い金返還請求などを通じて債務額は減額されます。
毎月の返済も支払額を従来より減額した形で、おおよそ3~5年をかけて返済していきます。
当記事では任意整理の特徴やよくある質問とともに、その他の債務整理方法との違いなどを含めて紹介していきます。
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任意整理とは?
任意整理とは、債権者との交渉により利息のカットや、長期の分割返済を認めさせるなどの和解を成立させる手続きです。
大きく分けて4種類ある債務整理の中でも、この任意整理がもっとも使われるケースが多いです。返済は3年~5年かけて分割で行われていきます。
また裁判所が関与しないので、自己破産のように提出種類を用意するような手間もかかりません。
ただ利息のカットや遅延損害金の免除をすることは出来ても原金の減額ができるケースは少なく、ある程度の返済はし続ける必要があります。
債務整理と任意整理の違いとは?
債務整理とは、多額の債務に苦しむ債務者の負担を軽減又は帳消しにして、経済的な更生を図る手続きの全てを指す言葉です。
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任意整理はその債務整理の方法の一種であり、債務者(依頼すれば弁護士や司法書士が代理人になる)が債権者と交渉し借金総額の減額を依頼する手続きです。
任意整理を行うメリット
保証人に迷惑をかけない
借金するとき、誰かに保証人を頼むケースが少なくありません。任意整理以外の債務整理方法である「個人再生」や「自己破産」では「すべての借金を対象にしなければならない」ので、保証人つきの借金も対象になります。
そのため、自己破産や個人再生などをした場合は債権者は保証人へ返済を迫るので、保証人に多大な迷惑をかけてしまいます。
しかし任意整理なら、対象とする債権者を選べます。保証人つきの借金を外して整理し、保証人つきの借金については継続して自分で返済していけば、迷惑をかける心配は不要です。
個人の債権者にも迷惑をかけない
お金に困ると、親戚や友人知人などの一般個人から借金するケースも少なくありません。個人再生や自己破産では必ずすべての債権者を対象にしなければならないので、お世話になった個人にも迷惑をかけてしまいます。
任意整理であれば、対象とする債権者を選べるので、個人の債権者を外せます。これまでとおり、きちんと返済を続ければ人間関係も壊さずに済み、信用も維持できるでしょう。
車のローンがあっても車を残せる
車のローンを返済している方が個人再生や自己破産をすると、車を引き上げられてしまう可能性があります。車のローンには「所有権留保」がついており、ローン返済が滞るとローン会社が車を引き上げて売却できることになっているからです。
任意整理であれば、車のローンを外して整理できるので、車を引き上げられる心配がありません。
必要書類が少ない
任意整理は債権者と直接交渉する手続きです。個人再生や自己破産のように裁判所を利用しないので、手続きが簡単で必要書類も少数です。
債務者に書類集めの労力がかからないのもメリットといえるでしょう。
費用が安いケースが多い
任意整理は、個人再生や自己破産と比べて簡易な手続きなので、専門家にかかる費用も比較的低額です。裁判所に払う費用も発生しません。
官報公告されない
個人再生や自己破産をすると、「官報公告」されます。官報公告とは、政府の発行している「官報」という機関誌に氏名や住所、破産情報や個人再生情報を掲載されることです。
官報はネットなどを使って誰でも読めるので、周囲に知られたくない人は不安を感じるでしょう。
任意整理は官報公告されないので、周囲に知られる可能性が他の債務整理手続きより低くなります。
任意整理を行うデメリット
任意整理には、以下のデメリットもあります。
減額効果が高くはない
任意整理で減らせるのはあくまでも利息、遅延損害金のみです。基本的に元本はそのまま残るので、返済しなければなりません。
個人再生なら元本ごと5分の1~10分の1にまで減額できますし、自己破産なら元本ごと全額免除してもらえます。これらの手続きと比べると、任意整理の減額効果は高いとはいえません。
借金額が高額になっている場合、任意整理では解決できない可能性があります。
借金が高額な場合は個人再生などの別な債務整理の手段を選んだ方が無難でしょう。
相手が同意しないと手続きできない
任意整理は、債権者と直接交渉して解決する手続きです。債権者が利息や遅延損害金のカットに同意しないと成功しません。
相手が強硬な場合には、任意整理できない可能性があります。
返済能力が必要
任意整理したら、その後3~5年にわたって返済していかねばなりません。最低限の収入など、返済能力が必要です。
ただし任意整理における返済能力の要件は、厳しいものではありません。専業主婦で自分の収入のない方でも、夫の収入から返済が可能であれば任意整理できます。
アルバイトなどで不定期の収入でも利用者はたくさんいるので、「収入がないからできない」と簡単にあきらめないでください。
ブラックリスト状態になる
任意整理をすると、ブラックリスト状態になります。つまり個人信用情報に事故情報が登録され、ローンやクレジットカードを利用できなくなってしまいます。事故情報は任意整理後5年程度、消えません。
ただ任意整理の場合、個人再生や自己破産よりは早めにブラックリスト状態が解消されるケースもよくあります。またブラックリストの期間中でもキャッシュレスペイ、デビットカードや家族カードなどを利用して便利に生活する方法があるので、悲観する必要はないでしょう。
任意整理にかかる時間
任意整理にかかる時間は、およそ3カ月〜6カ月です(借入れ先の数や月々に返済できる金額によって、変わってきます)。
しかし、近年は過払い金返還請求で金融業者の経営が苦しくなっているため、和解交渉で経過利息・将来利息のカットをしぶる金融業者なども出ており、以前より交渉が難航するケースも出てきています。
任意整理手続きの流れ
- まずは弁護士などの専門家に相談をする
- 委任契約をして受任通知を送ってもらう
- 書類を用意する
- 債務の調査をする
- 任意整理案の作成
- 債権者から同意を得たら返済を開始する
任意整理は基本的には上記の流れで進めていくことになります。
詳しくは以下の記事で解説しておりますので、合わせてご覧下さい。
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任意整理にかかる費用
任意整理は、債務者(借り主)個人で行うのが難しい手続きですので弁護士などの専門家に依頼する必要があります。
債務者(借り主)個人では、金融業者との交渉で何を主張すればいいのか、どこで譲歩すればいいのかわからなかったり、そもそも金融業者のほうで個人で行うことを認めてくれなかったりするからです。
任意整理に必要な弁護士費用には、以下の3種類があります。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
相談料の相場
相談料とは、任意整理を依頼する前の法律相談の費用です。相場は1時間5,000円から10,000円程度です。
着手金の相場
着手金とは、弁護士に依頼した際に最初にかかる費用です。結果の成功・不成功に関わらず弁護士に支払う必要があります。
日弁連では、「債権者の数が着手金の金額を定めた時までに債務者から申告されていた数よりも増えた時」などを除き、原則として着手金の追加請求を禁止していますが、上限金額については特段の規制をしていません。
もっとも、多くの弁護士は、債権者(貸金業者等)1社当たり2万円〜4万円程度にしています。
報酬金の相場
報酬金とは、依頼が終了した際に支払う費用です。結果が成功したときに、成功の程度に応じて弁護士に支払います。
報酬金には以下の3種類あります。
報酬金の種類 | 概略 | 日弁連の定義 | 金額 |
---|---|---|---|
解決報酬金 | 和解成立または貸金業者等からの返済請求を免れたことに対する定額の報酬金。 | 和解が成立したこと又は債権者からの請求を事実上免れるに至ったことについての報酬金であって、経済的利益に応じて算定する方式を採らないもの。 | 1社2万円(商工ローン担保付き債権では1社5万円)まで |
減額報酬金 | 借金を減額または免れたことに対する報酬金で、減額できた(免れた)金額に連動して金額が変化するもの。 | 弁護士が受任した時点で債権者が主張していた債務について、それを減額させ、又は免れさせた場合に、その減額され、又は免れた債務の金額を経済的利益として、その経済的利益に応じて算定される報酬金。 | 減額できた金額の10%以内 |
過払金報酬金 | 過払い金を回収できたことに対する報酬金で、回収できた金額に連動して金額が変化するもの。 | 過払金を回収した場合に、その過払金の金額を経済的利益として、その経済的利益に応じて算定される報酬金。 | 過払い金として回収できた金額の20%以内(訴訟の場合は25%以内) |
参照:債務整理事件処理の規律を定める規程」
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/pdf/kaiki/kaiki_no_93_160606.pdf
なお、現在弁護士費用は自由化されているため、依頼する弁護士によってその金額は異なりますが、日本弁護士連合会(日弁連)では「債務整理事件処理の規律を定める規程」および「債務整理事件処理の規律を定める規程施行規則」を設けていますので、着手金・報酬金には一定の規制があります。
弁護士費用は、分割返済OKの場合も
弁護士のなかには、弁護士費用の分割返済を受け付けている弁護士や、着手金ゼロの完全成果報酬型の弁護士、初回法律相談料が無料の弁護士などもいます。
また、法務省が管轄する「日本司法支援センター」(法テラス)には、一定の要件を満たす方の弁護士費用・裁判費用を立て替えてくれる民事法律扶助制度があります。
現在はこのように、経済面で困窮する方も弁護士に相談しやすい環境となっていますので、任意整理でお悩みの場合には弁護士に相談してみるとよいでしょう。
任意整理後の生活への影響とは?
任意整理後は、生活にどのような影響があるでしょうか?
クレジットカードへの影響
現在利用中のクレジットカードへの影響
現在利用中のクレジットカードへの影響ですが、任意整理では特定の債権者(貸主)を除外して手続きができるため、手続きから除外したカード会社については、カードを使うことが可能です。
しかし完済後5年間は、契約更新時に契約を更新されない場合があります。カード会社は、契約更新の際に信用情報機関に事故情報を照会するからです。またショッピングローンを利用していて購入物の換価価値が高い場合(貴金属など)は、購入物を引き上げられる可能性もあります。
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新規契約するクレジットカードへの影響
新規契約するクレジットカードへの影響ですが、任意整理をすると完済後5年間は信用情報機関に事故情報が載るため、その間はクレジットカードの新規契約が難しくなります。
自分の事故情報が載っているかどうかは、信用情報機関に本人開示請求をすることで確認できます。
信用情報機関は下記の3つがありますので、気になる場合は問い合わせするとよいでしょう。
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC。銀行系信用情報機関)
https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/ - 株式会社日本信用情報機構(JICC。消費者金融系信用情報機関)
https://www.jicc.co.jp/kaiji/ - 株式会社シー・アイ・シー(CIC。信販系信用情報機関)
https://www.cic.co.jp/mydata/index.html
家族カードへの影響
家族カードとは、クレジットカード契約をしている方(契約者)の家族が利用できるカードのことです。
契約者の持つカードを親カード、家族カードを子カードと言いますが、親カードが任意整理をし利用できなくなった場合、子カードも利用できなくなります。
ただし、任意整理をする方の家族本人が契約しているカードについては特段の影響は出ません。信用情報機関は、契約者ごとに信用情報を管理しているからです。
住宅ローンへの影響
現在返済中の住宅ローンへの影響
現在返済中の住宅ローンへの影響ですが、住宅ローン会社を任意整理の対象にしなければ、従来どおり自宅に住み続けながらローンを返済できます。
住宅ローン会社を任意整理の対象にする場合、土地や建物に住宅ローン会社の抵当権がついていると、土地や建物が差し押さえられ売却されてしまいます。それでもなお住宅ローンが残ってしまった場合、自宅を手放したうえで残債を支払うことになります。
今後利用する住宅ローンへの影響
今後利用する住宅ローンへの影響ですが、任意整理をすると完済後5年間は信用情報機関に事故情報が載るため、その間は新規で住宅ローンを組むことが難しくなります。
車のローンへの影響
現在返済中の車のローンへの影響
現在返済中の車のローンは、オートローン会社を除外して任意整理手続きを行えば、車を手放さずに従来どおり返済できます。
オートローン会社を任意整理の対象にする場合、車の所有者名義がオートローン会社になっていると、オートローン会社は車を引き上げて売却します。それでもオートローンが残った場合には、車が手元にない状態で残ったオートローンを支払い続けることになります。
今後利用する車のローンへの影響
完済後5年間はブラックリストに掲載されているため新たに車のローンを組むことができませんので、その点は注意すべきです。
スマートフォンへの影響
現在利用中のスマートフォンへの影響
現在利用中のスマートフォンは、利用している携帯電話会社を除外して任意整理手続きを行えば、従来と変わりなくスマートフォンを利用できます。
料金滞納があり、携帯電話会社を任意整理の対象にする場合は、強制解約になる可能性があります。
新規契約するスマートフォンへの影響
任意整理をしても携帯電話会社と新規契約することは可能ですが、端末代金の分割購入は、完済後5年間はできません。
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保証人への影響
保証人とは、お金の借り主が借金を返済できなくなった場合に、借り主本人に代わって返済義務を負う人のことです。
借り主本人が任意整理をし借金が減額されても、保証人の返済義務は従来と変わりませんので、保証人をつけている場合には保証人も一緒に任意整理を検討すべきでしょう。
任意整理を行う場合によくある質問
Q1:任意整理中でもキャッシング・カードローンなどでお金は借りられる?
A:大手金融業者は新規契約時に信用情報機関で事故情報を確認するため、借り入れは難しいでしょう。
一応借りられる金融機関として違法なヤミ金業者などになりますが、これは絶対にやめてください。ヤミ金は違法な高金利で取り立ても厳しく、借り主の生活が破綻します。
新規借り入れをしたとして、それが任意整理交渉中の金融業者にバレてしまうと、減額交渉に応じてもらえなくなるリスクもあります。
任意整理は、返済が行き詰まったときに行うものです。その手続きが終わらないうちに新たに借り入れをすれば、また返済に行き詰まり苦しい生活に逆戻りしてしまいます。
どうしても新規借り入れをしなければ生活が回らないような場合は、自己破産や個人再生でより借金を減額したり、福祉に頼ったりする方法もありますので、弁護士にご相談ください。
Q2:任意整理しなかったクレジットカードは引き続き利用可能?
A:任意整理しなかったクレジットカードは、引き続き利用可能です。
ただし完済後5年以内の契約更新時などは、カード会社が信用情報機関に事故情報を照会し、更新を断ってくる場合があります。
Q3:家族や結婚相手にバレずに任意整理できる?
A:家族や結婚相手にバレずに任意整理することは可能です。
任意整理は、自己破産や個人再生のように裁判所を介しませんので、任意整理した事実がおおやけになることは通常ありません。
弁護士が相談者と連絡を取る際も、相談者が弁護士に依頼しているとわからないよう自宅電話には荷電しない、封書は弁護士の個人名で送るなどの工夫をします。
ただし注意すべきは、家族や結婚相手が保証人になっている場合です。このような場合には、金融業者から保証人に取り立てが行きます。
Q4:任意整理すると海外旅行に行けなくなる?
A:任意整理をしても海外旅行に行くことは可能です。
自己破産の場合は破産手続開始決定とともに居住制限がかかるケースがあり、引っ越しや旅行ができなくなることがありますが、任意整理ではそのようなきまりはありません。
Q5:任意整理できるのはどんな人?
A:任意整理できるのは、安定した継続収入がある方です。このような方であれば、学生やアルバイトでも任意整理できます。
安定した継続収入がない場合は自己破産など他の手続きもありますので、弁護士に相談するとよいでしょう。
Q6:契約書・取引明細がなくても任意整理できる?
A:手元に契約書・取引明細がなくても任意整理できます。
弁護士が受任すると、金融業者に取引履歴開示請求を行いますので、金融業者のほうから取引履歴を開示してくれます。
Q7:借金の原因がギャンブルや浪費でも、任意整理できる?
A:借金の原因がギャンブルや浪費でも、任意整理はできます。
自己破産の場合、借金の原因がギャンブルや浪費など破産法で定められたものであるときは借金を免除されない場合がありますが、任意整理ではそのようなきまりはありません。
Q8:銀行系カードローンでも任意整理できる?
A:銀行系カードローンでも、任意整理は可能です。
銀行系カードローンは比較的低金利で貸付をしている場合が多いため、引き直し計算で大幅に借金を減額するのは難しいですが、経過利息や将来利息をカットするなど、任意整理のメリットは大きいです。
Q9:任意整理をすると財産を処分されるの?
A:任意整理をしても財産を処分されることはありません。
自己破産や個人再生では、一定以上の財産を処分する必要がありますが、任意整理ではそのようなきまりはありません。
任意整理の特徴やメリット・デメリットまとめ
今回は「債務整理」の4つの種類と、そのうちの「任意整理」と債務整理の違いや特徴を紹介しました。任意整理は比較的デメリットが少ない方法と言えますが、債務整理を検討している場合、どの方法がベストかは人それぞれです。
記事で紹介した通り様々なメリットとデメリットが存在していますので、まずは弁護士や司法書士の無料相談を活用することをオススメします。
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