再婚したら養育費は減額される?認められるケースと減額されないケース

再婚した場合の養育費
元配偶者が再婚した。あるいは自分が再婚して、新しい家庭に子どもが生まれた。離婚後にこうした変化があったとき、養育費はどうなるのでしょうか。

実は、再婚したというだけでは養育費の金額は変わりません。養育費が減額されるかどうかは、子どもが再婚相手と養子縁組をしたかどうかで決まります。

この記事では、再婚を理由に養育費を減額できるケースとできないケース、実際にどれくらい減るのか、手続きはどう進めるのかを解説します。

再婚による養育費の減額

元夫婦のどちらかが再婚したとしても、それだけで養育費が減ることはありません。
養育費の金額が変わるのは、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合や、支払う側に新しい子どもが生まれた場合など、生活の前提となる事情が大きく変わったときに限られます。

離婚後、元夫婦のどちらかが新しい家庭を築くと、養育費の扱いに疑問が生じます。養育費を支払う側は負担の見直しを考え、受け取る側は打ち切りを心配します。しかし養育費は父母の都合ではなく、子どもが親と同水準の生活を送るために必要な費用として算定されます。再婚という事実そのものは、この算定の土台を動かしません。

再婚しただけでは減額されない

元夫婦のどちらか一方、または双方が再婚しても、養育費の金額は自動的には変わりません。子どもと離れて暮らす親は、再婚後も引き続き養育費を支払います。

養育費の支払義務は、親子関係から生じる扶養義務に根拠があります。民法877条1項は、扶養義務の範囲を次のように定めています。

第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

出典:e-Gov法令検索 民法

離婚によって夫婦は他人に戻りますが、親と子の関係は残ります。再婚して新しい配偶者を得ても、実の子との親子関係が消えるわけではありません。支払う側が再婚しても、受け取る側が再婚しても、扶養義務そのものは存続します。

減額が認められるのは事情の変更があった場合

一度決めた養育費を変えるには、取り決めたときには想定できなかった変化が必要です。裁判所はこれを「事情の変更」と呼び、まずその変化があったかどうかを確認します。

養育費の金額は、父母それぞれの収入・子どもの年齢・子どもの人数をもとに計算します。この計算の土台が大きく変われば、金額を決め直す理由になります。逆に土台が変わっていなければ、再婚したという事実だけでは金額を見直せません。

裁判所は、その変化を取り決めた当時に予想できたかどうかも見ます。養育費を決める調停の時点で再婚相手の妊娠を知っていた場合、その後に子どもが生まれることは、取り決めの当時から見込めた変化にあたります。見込めた変化を織り込んだうえで金額に合意したと評価されれば、減額は認められません。

勝手に減額すると強制執行の対象になる

減額できる理由があると思っても、支払う側の判断だけで振込を止めることはできません。一度取り決めた金額は、正式に変更するまで有効なままです。

勝手に振込を止めた場合や、支払額を一方的に減らした場合、支払う側は差押えを受けます。離婚時の取り決めが「強制執行認諾文言」を入れた公正証書、調停調書、審判書のいずれかであれば、受け取る側は裁判所での話し合いを経ずに、給与や預貯金の差押えを申し立てられます。
また、2026年4月の民法改正により、父母が署名した合意書があれば、公正証書がなくても差押えを申し立てられるようになりました。さらに、支払わなかった期間には遅延損害金が上乗せされます。

正当な理由があっても、手続きを踏まなければ差押えは止まりません。給与を差し押さえられると勤務先に通知が届くため、職場に事情を知られることにもなります。減額を求めるなら、元配偶者との話し合いか、家庭裁判所の調停によって、正式に金額を変更してください。

再婚で養育費の減額が認められるケース

減額が認められる事情には強弱があります。もっとも効果が大きいのは、元配偶者の再婚相手と子どもが養子縁組をしたケースです。以下、減額が認められやすい順に整理します。

元配偶者の再婚相手と子が養子縁組した

子どもが元配偶者の再婚相手と養子縁組をすると、養親が子どもを扶養する第一次的な義務を負います。実親が支払う養育費は、原則としてゼロになります。

再婚と養子縁組は別の手続きです。元配偶者が再婚しただけでは、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係は生まれません。養子縁組の届出を経てはじめて、扶養義務の配置が変わります。この違いが、減額の可否を分ける決定的な要素です。

養親が第一次的な扶養義務者になる

養子縁組が成立すると、子どもは養親の嫡出子としての身分を得ます。

第八百九条 養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。

出典:e-Gov法令検索 民法

養子縁組をすると、子どもと養親は法律上の親子になります。同時に、民法877条1項は親子など直系血族に扶養義務を定めているため、実親も子どもを養う義務自体は継続して負うことになります(普通養子縁組の場合)。

そうなると、実親と養親のどちらが先に負担するのかが問題になりますが、その答えを決めるのは、日々の生活の実態です。

養親は子どもと一緒に暮らし、食費や学費を実際に負担します。そのため実務では、養親と同居親が第一次的な扶養義務者、離れて暮らす実親は第二次的な扶養義務者と扱われます。

実親の支払義務は原則ゼロになる

第二次的な扶養義務者は、第一次的な扶養義務者が扶養できる限り、負担を求められません。子どもの生活は養親と同居親が支え、実親の養育費はいったん消滅すると考えられています。

裁判所も同じ立場を取っています。東京家庭裁判所令和元年12月5日審判(判例時報2480号6頁)は、親権者の再婚相手と子どもが養子縁組をした事案で、子どもの扶養義務を第一次的に負うのは親権者と養親であるから、非親権者が支払うべき養育費は零になると判断しました。
神戸家庭裁判所姫路支部平成12年9月4日審判(家庭裁判月報53巻2号151頁)も、養親家庭に住宅ローンの負担がある事情を考慮したうえで、ローンがなければ十分な扶養能力があると認め、実親の養育費負担を否定しています。

「減額される可能性がある」という水準の話ではなく、免除が原則です。ただし、養親に収入がなく子どもを扶養できない場合には、第二次的な義務者である実親が負担を求められます。

実親の義務は二次的に残り、縁組解消で復活する

養育費の支払いがゼロになっても、実親と子どもの親子関係は残ります。普通養子縁組では、実親との法的な親子関係は終了しません。相続権も存続します。

したがって、実親の扶養義務は消滅したのではなく、後順位に下がった状態にあります。養親が死亡した場合、離縁によって縁組が解消された場合、養親が失職などで扶養能力を失った場合には、実親の養育費支払義務が復活します。

養子縁組を理由に養育費が免除されたケースでも、支払いが将来にわたって完全になくなると考えるのは誤りです。

特別養子縁組の場合

ここまでは普通養子縁組を前提としています。特別養子縁組の場合は実親との親子関係そのものが終了するため、扶養義務も養育費の支払義務も完全になくなり、復活することはありません。

ただし特別養子縁組は、原則として15歳未満の子どもを対象とし、家庭裁判所の審判も必要です。再婚のケースで使われることは、ほとんどありません。

支払う側に新たに子が生まれた

支払う側が再婚し、新しい家庭で子どもが生まれると、扶養する子どもの人数が増えるため、減額が認められる可能性は高くなります。

養育費は、支払う側の収入を扶養家族で分け合って算出するので、子どもが1人だけならその子に大きく配分できますが、新しい家庭に子どもが生まれて2人になれば、同じ収入を2人で分けることになり、元の家庭の子どもに支払う養育費も下がります。

ただし、収入が高い場合は結論が変わります。子どもが増えても従来の金額を無理なく支払えると判断されれば、減額そのものが認められないこともあります。

支払う側が再婚相手の連れ子と養子縁組した

支払う側が再婚相手の連れ子と養子縁組をすると、連れ子に対する扶養義務が新たに発生します。扶養家族の増加として、減額が認められる可能性があります。

ここでも養子縁組があるかどうかで結論が変わります。再婚相手に連れ子がいても、養子縁組をしていなければ、連れ子の扶養義務は実親が負います。同居しているだけでは、法律上の扶養義務は生じません。

養子縁組をした場合、実子と養子の双方に扶養義務を負うことになり、従来の金額では実子への配分が過大になります。この点が減額の理由として評価されます。

やむを得ない事情で支払う側の収入が減った

病気・ケガ・勤務先の経営悪化によるリストラなど、本人の意思によらない事情で収入が減った場合、減額が認められる可能性があります。

再婚とは直接関係しませんが、再婚による扶養家族の増加と重なると、減額の根拠は強まります。山口家庭裁判所平成4年12月16日審判(家庭裁判月報46巻4号60頁)は、支払う側が再婚し、同時に収入が大きく減った事案で、減額を認めました。実際の減額事例では、収入の減少と再婚後の家族構成の変化が同時に主張されることが多く、裁判所は両方を合わせて判断します。

収入が減る原因は、勤務先の事情に限りません。東京家庭裁判所平成18年6月29日審判(家庭裁判月報59巻1号103頁)は、支払う側が両親から受けていた経済援助が離婚後に打ち切られた事案で、養育費の減額を認めました。取り決め当時の金額が援助の存在を前提に決まっていた場合、その前提が崩れることは事情の変更にあたります。

受け取る側の収入が大幅に増えた

受け取る側が就職や起業によって収入を大きく伸ばした場合、養育費の減額が認められることがあります。

ただし、取り決めの時点で収入の増加が見込まれていた場合には、事情の変更にあたりません。
専業主婦だった監護親が離婚後に就職することは、離婚時に想定できた変化と評価されるためです。予測を超える水準の増加があってはじめて、減額の理由になります。

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再婚しても養育費が減額されないケース

再婚があっても、養育費がそのまま続くケースは数多くあります。減額を求められた側にとっては、受け取れる養育費を守るために知っておきたい内容です。

元配偶者が再婚しても養子縁組をしていない

受け取る側が再婚しても、子どもと再婚相手が養子縁組をしていなければ、養育費は原則としてそのまま続きます。金額を変更する理由がないためです。

再婚相手に子への扶養義務は生じない

婚姻は夫婦の間に効力を及ぼす制度であり、配偶者の子との間に親子関係を作る効果はありません。再婚相手と子どもは、法律上は親子ではなく姻族の関係にとどまります。

扶養義務は直系血族と兄弟姉妹の間に生じます。養子縁組をしていない再婚相手は、この範囲に入りません。子どもを扶養する第一次的な義務者は、引き続き実の父母です。支払う側が減額を求めても、認められないのが原則です。

再婚相手の収入は算定に合算しない

養育費の算定表は、父母それぞれの年収・子どもの年齢・子どもの人数を変数として金額を導きます。再婚相手の年収を書き込む欄はありません。

受け取る側が高収入の相手と再婚しても、その収入を監護親の収入に足し込んで養育費を計算し直すことはできません。同じ理屈は支払う側にも当てはまり、再婚相手に収入があることを理由に養育費の増額を求めることも、原則としてできません。扶養義務を負っていない者の収入は、算定の土台に入らないためです。

生活費を実際に負担している事情は考慮されうる

もっとも、養子縁組がない場合に、再婚後の生活の実態が一切考慮されないわけではありません。養育費の金額は、算定表の数値をそのまま当てはめて決まるものではなく、家庭裁判所が個別の事情を踏まえて判断します。

再婚相手が子どもと同居し、生活費や学費を実質的に負担している場合、その実態が判断要素の一つとして考慮される余地はあります。ただし、扶養義務そのものが再婚相手に生じるわけではないため、養子縁組があるケースのような免除には至りません。

再婚しただけで扶養家族が増えていない

支払う側が再婚しても、再婚相手に十分な収入があり、新たに子どもも生まれていない場合、扶養の負担は実質的に増えていません。減額の理由になりません。

再婚相手が働いていない場合には配偶者の扶養義務が生じますが、それだけで従来の養育費が支払えなくなるとは限りません。裁判所は、支払う側の収入と資産を見たうえで、従来の金額を維持できるかどうかを判断します。

再婚相手が働けるのに働いていない場合は、さらに厳しく見られます。支払う側が自ら収入を減らした場合に、働けば得られたはずの収入(潜在的稼働能力)を前提に養育費を算定するのと同じ考え方です。再婚相手に就労できる年齢と経歴があれば、扶養の必要性は小さいと評価され、減額の理由になりにくくなります。

取り決め時に再婚・出産を予測できた

養育費を取り決めた時点で交際相手がいた場合、その後の再婚は予測できた変化と評価されます。取り決めの時点で再婚相手が妊娠していた場合も同様です。

減額を求める側は、取り決めの当時に何を知っていたかを問われます。妊娠を知りながら養育費の金額に合意していれば、その後の出生は取り決めの前提に織り込まれていたことになり、事情の変更にあたりません。逆に、取り決めの後にはじめて再婚や妊娠に至った場合は、予測できなかった変化として審理の対象になります。

自発的な退職・意図的な減収

支払いを避ける目的での退職、経営する会社の役員報酬の意図的な引き下げは、減額の理由になりません。

裁判所は、本人が働こうとすれば得られたはずの収入を潜在的稼働能力として認定し、実際の収入ではなく従前の収入水準を前提に養育費を算定します。転職によって収入が下がったケースでも、転職の必要性が説明できなければ同じ扱いを受けます。

失業していても資力がある

勤務先を退職しても、不動産や株式などの資産があり、そこから養育費を支払える場合には、減額が認められない可能性があります。判断の対象は収入だけでなく、支払能力の全体です。

借金や住宅ローンの負担

借金の返済や住宅ローンの支払いを理由とする減額は、原則として認められません。

子どもへの扶養義務は、親が自分と同じ水準の生活を子どもにも保障する義務(生活保持義務)とされ、他の債務の返済に優先します。返済のために子どもの生活費を削ることは、この義務の考え方に反します。借金の原因が支払う側の判断による支出であればなおさらで、養育費を減らして返済に回すことは認められません。

ただし、住宅ローンについては例外的な扱いを受けることがあります。元配偶者と子どもが住み続けている家のローンを支払う側が負担している場合、その支払いは実質的に子どもの住居費をまかなっています。この事情は、養育費の金額を決める際に考慮される余地があります。

返済で生活が成り立たない場合でも、支払いを止めれば差押えを受けます。債務整理などで返済の負担そのものを見直すか、家庭裁判所に減額調停を申し立てて、収入や資産の状況を裁判所に判断してもらってください。

面会交流に応じてもらえない

子どもに会わせてもらえないことを理由に支払いを止める行為は、減額の根拠になりません。

養育費と面会交流は、別々の権利義務として扱われます。養育費は子どもが親と同水準の生活を送るための費用であり、親が子どもに会えるかどうかとは切り離して判断されます。一方が守られないからといって、もう一方の義務が消えることはありません。

面会交流が実現しない場合は、支払いを止めるのではなく、家庭裁判所に面会交流調停を申し立ててください。

再婚で養育費はどれくらい減額されるか

再婚によって養育費がどれくらい減るかは、受け取る側の再婚相手と子どもが養子縁組をしたかどうかで大きく分かれます。養子縁組があれば、支払う側の養育費はゼロが出発点になります。養子縁組がなく、支払う側の扶養家族が増えただけであれば、養育費はゼロにはならず、月額1万円から2万円程度の減額にとどまるのが一般的です。

算定表をそのまま当てはめられない

裁判所の養育費算定表は、父母の年収・子どもの年齢・子どもの人数から標準的な金額を導く表です。再婚後の減額を計算する場面では、この表をそのまま使えないことがあります。

算定表は、支払う側が扶養するのが対象の子どもだけであることを前提に作られています。再婚によって扶養家族が増えた場合、この前提が崩れます。実務では、増えた扶養家族を計算に組み込んだうえで金額を算出し、取り決め当時の合意内容も踏まえて調整します。

養子縁組がある場合はゼロが基準になる

元配偶者の再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、実親の養育費は原則としてゼロになります。減額の幅を計算するのではなく、支払いが不要になるかどうかを判断する場面です。

例外として支払いが残るのは、養親に扶養能力がないケースです。養親家庭の収入と支出を見たうえで、子どもの最低限の生活を維持できないと判断される場合に限り、実親が不足分を負担します。

扶養家族が増えた場合の考え方

支払う側に新たな子どもが生まれた場合、収入を分け合う相手が増えます。減額の幅は、支払う側と受け取る側それぞれの年収、増えた扶養家族の人数・年齢によって決まります。

裁判所の標準算定方式(令和元年12月改定)にもとづいて試算すると、目安は次のようになります。いずれも支払う側と受け取る側の双方が給与所得者で、元の家庭の子どもは1人(14歳以下)というケースです。

支払う側の年収 受け取る側の年収 再婚前 新たに子1人が生まれた後 減額幅
400万円 150万円 約4万円 約2万9千円 約1万1千円
500万円 150万円 約5万1千円 約3万7千円 約1万4千円
600万円 200万円 約5万8千円 約4万2千円 約1万6千円

子どもが1人増えても、養育費が半分になるわけではありません。支払う側の生活費(指数100)と子どもの生活費(14歳以下は指数62)では配分が異なり、新しい子どもが加わっても元の家庭の子どもの取り分がそのまま半減する計算にはならないためです。

減額の幅が大きくなるのは、再婚相手も扶養する場合です。年収600万円のケースで、新たに子どもが生まれ、さらに再婚相手が専業主婦(夫)であれば、養育費は月額約3万3千円まで下がり、減額幅は約2万5千円に広がります。ただし、再婚相手が働ける状態にありながら働いていない場合、この扱いは認められません。

なお、上の金額は算定方式にあてはめた試算です。実際の調停や審判では、取り決め当時の合意内容や学費、住居費の負担といった個別の事情も加味されます。手元のケースでいくらになるかは、資料をそろえたうえで弁護士に確認してください。

養育費減額請求の進め方

養育費の減額を求める手続きは、話し合い・調停・審判の順に進みます。元夫婦ふたりの間で減額への合意ができれば、家庭裁判所を使わなくても金額を変えられます。

当事者間で協議する

まず元配偶者と話し合い、養育費を減額したい理由と希望する金額を具体的に伝えます。感情的な言い分ではなく、収入の変化や扶養家族の増加を裏付ける資料を示すことが前提になります。

養育費の変更に合意ができた場合は、新たな取り決め内容を必ず書面に残すようにしてください。口頭の約束は後々の紛争につながります。

減額後の金額・適用開始月・支払方法を明記した合意書を作成し、双方が保管します。従来の取り決めが公正証書だった場合は、変更内容も公正証書で残しましょう。公正証書があれば、万一支払いが滞ったときに、金額の制限なく差押えへ進めます。

養育費減額調停を申し立てる

協議がまとまらない場合、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てます。申立てには、申立書・戸籍謄本・収入を証明する資料(源泉徴収票、確定申告書など)が必要です。

調停では、調停委員が双方から個別に事情を聴き取ります。養育費の減額を求める側は、取り決め当時と何が変わったのかを問われます。再婚による子どもの養子縁組を理由とする場合は、縁組の事実を示す戸籍謄本が中心的な資料になります。

不成立なら審判に移行する

調停で合意に至らない場合、養育費の減額を求める手続きは自動的に審判へ移行します。裁判官が双方の資料に基づいて金額を決定します。

審判では、裁判官が双方の同意なしに金額を決められます。養育費を減額する理由が認められれば、相手方が反対しても金額は変更されます。逆に、事情の変更が認められなければ、申立ては却下され、従来の金額が維持されます。

減額の効力はいつから発生するか

減額の効力は、調停や審判を申し立てた月から発生するのが原則です。申立てより前の期間にさかのぼって減額されることは、多くありません。

再婚による子どもの養子縁組を理由とする場合も、減額の効力が生じるのは申立て後です。子どもが養子縁組をした月にさかのぼって、実親の養育費が免除されることは基本的にありません。

東京高等裁判所令和2年3月4日決定(令和2年(ラ)第27号)は、すでに支払われて使われた過去の養育費に返還義務を生じさせると、受け取る側に思わぬ損害を与えることになるとして、実親の養育費が免除される時点を、調停の申立時としました。
縁組の時点までさかのぼらせた裁判例(東京高等裁判所平成30年3月19日決定)もありますが、実務では申立時を基準とする判断が主流です。

元配偶者の再婚や子どもの養子縁組を知るのが遅れると、その分だけ、支払わなくてよかったはずの養育費を払い続けることになります。減額を求められる事情が起きたと分かった時点で、速やかに申立てを行ってください。

再婚を機に養育費の支払いを止められたら

元配偶者の再婚を知った支払う側が、何の手続きもしないまま養育費の振込を止めてくることがあります。取り決めた養育費の金額は変更の手続きを経るまで有効なので、受け取る側は未払い分の支払いを請求できます。

回収の進め方は、離婚時にどのような取り決めを残したかで変わります。

公正証書がある場合

強制執行認諾文言のある公正証書がある場合、受け取る側は調停や裁判を経ずに強制執行を申し立てられます。支払う側の給与を差し押さえる場合、手取り額の2分の1まで押さえられます。

差押えの前段階として、受け取る側が家庭裁判所に履行勧告や履行命令を申し出る方法もあります。費用がかからず、裁判所から支払う側に通知が届くだけで支払いが再開されるケースもあります。

公正証書がなく、合意書がある場合

離婚時に公正証書を作っていなくても、父母が署名した合意書があれば、受け取る側は差押えを申し立てられます。2026年4月の民法改正により、養育費に一般先取特権(民法306条3号308条の2)が認められたためです。上限額は、子ども1人あたり月額8万円と定められています(令和7年法務省令第56号)。

改正前は、公正証書・調停調書・審判書といった債務名義がなければ、受け取る側は差押えができませんでした。改正後は、金額や支払期日を特定した合意書があれば、債務名義がなくても、この上限までの部分について差押えを申し立てられます。上限を超える部分を回収するには、従来どおり債務名義が必要です。

この制度は、2026年4月1日より前に離婚した場合にも適用されます。同日以後に支払期限が来る養育費が対象です。

取り決めが口頭のみの場合

離婚時の取り決めが口頭のみで、書面が一切ない場合、受け取る側はすぐに差押えを申し立てられません。先取特権の存在を証明する文書がないためです。

受け取る側はまず家庭裁判所に養育費請求調停を申し立て、支払いを命じる調停調書または審判書を取得します。その後も支払う側が振り込まない場合、受け取る側はこの調停調書等を債務名義として強制執行を申し立てられます。合意書がある場合に比べ時間はかかりますが、養育費回収の道は残ります。

養子縁組を知らずに払い続けた分は取り戻せるか

元配偶者が子どもの養子縁組を知らせず、支払う側が養育費を払い続けていた場合でも、支払済みの金額を取り戻すのは容易ではありません。

養子縁組によって実親の支払義務は原則としてゼロになります。ただし、その免除が始まるのは調停を申し立てた月からとされるのが実務の主流であり、申立てより前に支払った分はさかのぼって取り戻せません。すでに子どもの生活に使われた養育費に返還義務を生じさせると、受け取る側に思わぬ損害を与えるという理由からです。縁組の時点までさかのぼらせた裁判例もありますが、支払う側が縁組を知り得たかどうかが厳しく問われます。

子どもの養子縁組の有無は、戸籍をたどれば確認できます。支払う側は自身の戸籍から子どもの入籍先を追跡できますが、元配偶者の戸籍を直接取り寄せることはできません。弁護士に依頼すれば、職務上請求によって縁組の有無を調査できます。

過去に支払った分を取り戻すより、早く縁組に気づいて申立てを行うことが、負担を減らす現実的な方法です。

まとめ

再婚は、それだけでは養育費を減額する理由になりません。金額が変わるかどうかは、子どもと再婚相手が養子縁組をしたかどうかで決まります。

元配偶者の再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、養親が第一次的な扶養義務者となり、実親の養育費は原則としてゼロになります。養子縁組をしていなければ、その再婚相手に扶養義務は生じないため、養育費はそのまま続き、再婚相手の収入を算定に合算することもできません。

支払う側が再婚した場合は、新しい子の誕生や連れ子との養子縁組があれば、扶養家族の増加として減額が認められる余地があります。一方、自ら収入を減らした場合や借金の負担は、減額の理由になりません。

いずれの場合も、支払いを自分の判断で止めることはできません。養育費の減額を求めるなら協議または調停、受け取れる養育費を守るなら履行勧告や強制執行という手続きがあります。減額の効力は申立てをした月から生じるため、事情が変わったら速やかに動くことが重要です。

再婚と養育費の問題は弁護士に相談を

子どもの養子縁組の有無を確認する戸籍調査、減額後の養育費の適正な金額の算定、調停での主張の組み立ては、いずれも専門的な判断を伴います。養育費の減額を求める側も、受け取る養育費を守る側も、弁護士に相談することで、不利な結果を回避できる可能性は高まります。

養育費の減額について話し合いをする場合、なるべく早い段階で離婚に強い弁護士までご相談ください。

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