個人再生が失敗(不認可)になる理由って?給与所得者等再生の失敗事由も解説

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個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。どちらも債務者が再生計画案を作成して裁判所に提出するという点では共通しますが、所定の要件を満たさなければ不認可となります。

不認可事由は、両者に共通するものもあれば、それぞれ特有の事由もあるので、その違いを把握しておくことが大切です。

個人再生が失敗(不認可)になるのは、2つの手続きに共通する不許可事由が関係

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類があります。どちらも、債務者が裁判所に再生の申立てをして、基準に従った再生計画を立てた上で裁判所からの認可を受けることが必要です。

小規模個人再生と給与所得者等再生の違いとは?

小規模個人再生と給与所得者等再生の要件は、「負債総額額が5000万円を超えない範囲の人が対象」とのことでは共通していますが、申立ての際に求められる要件にそれそれ違いがあります。

小規模個人再生とは

抱えている借金の総額が5000万円を超えない範囲で、かつコンスタントに収入の得られる見込みがある個人が利用できる制度です。債権者が納得できるような再生計画案を立て、債権者決議を経て再生計画が認可されることになります。

給与所得者等再生とは

負債総額が5000万円を超えない個人という要件は小規模個人再生の場合と同じです。しかし、給与などの定期的な収入を得る見込みがあり、その変動幅が少ない人が対象となる点で、小規模個人再生とは要件が異なります。また、小規模個人再生と違って債権者決議は不要で、裁判所が債権者の意見を聴いて再生計画案を認可します。

共通する個人再生の不許可事由とは?

個人再生による債務整理は、裁判所に再生債務者が提出した再生計画を認可してもらう必要があります。ただ、この再生計画書は提出すれば常に認可されるものではなく、不認可になることもあります。両者に共通する不認可事由は4つあります。

再生手続き又は再生計画に重大な法律違反があり、その不備を補正することができない

個人再生は裁判所を介する手続きなので、法律違反があれば再生計画の認可が認められないのは当たり前のことです。ただし、再生「手続」に法律の規定違反があった場合は、その違反が軽微であれば不認可事由に該当しません。一方、再生「計画」にそのものに法律違反があった場合は、たとえ軽微な法律違反でも不認可事由に該当するので、両者の違いには注意が必要です。

再生計画遂行の見込みがない

「計画遂行の見込みなし」とは、多くの場合「反復した収入を得る見込みがない」とみなされていることを意味します。この場合はいったん再生手続きの申立てを取り下げ、収入を安定させた上で再度申立てをすると再生計画案が認可される可能性が高まります。

再生計画の決議が不正の方法によって成立した

「不正の方法によって成立する」とは、例えば債権者に詐欺・強迫などの違法な手段を使って再生計画に同意させた場合などのことです。また、過去の判例では、債権者決議で議決権者の過半数の同意が得られそうにないからと言って、債権譲渡の手段を使って議決権者の数を水増ししたケースもあります。

再生債権の一部を債務者の関係者に譲渡して債権者に仕立て上げ、その人が同意をすれば議決権者の過半数の同意を得られるという意図で行われたことです。裁判所は、このような行為は信義誠実の原則(信義則)に違反するとしました。

再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反する

これは、たとえば、再生計画による借金返済額が自己破産して債務者の財産を処分して得られる配当を下回っているケースのことを指します。

つまり、再生計画案の借金額が債務者の持つ財産価値より低くなってしまうと、清算価値保障原則に違反しているとして不認可事由となるのです。

なお、給与所得者等再生の場合には債権者決議自体が行われないので、この不許可事由が問題となることはありません。

申立てができる要件を満たさなくなった場合

無意義債権と評価済み債権の合計額が5000万円を超えた、将来にわたって継続的・反復的な収入が得られる見込みがないなど、個人再生の申立要件をそもそも満たせなくなった時点で再生計画案が認可されることはなくなります。

給与所得者等再生が不許可(失敗)になる理由ってどんなこと?

債権者の決議が不要なため再生計画案の認可が得られやすい給与所得者等再生ですが、再生計画案が不認可となる場合もあります。ここでは、小規模個人再生の不認可事由と給与所得者等再生の不認可事由について比較してみましょう。

小規模再生の不認可事由とは?

個人再生のひとつである給与所得者等再生は、小規模個人再生と給与所得者再生に共通する不認可事由の他、小規模再生不認可事由をもクリアする必要があります。以下3つのどれか1つでもあてはまるようであれば、再生計画案に関する裁判所の認可は下りません。

収入要件を充たすことが出来ない

個人再生では、継続して債務の弁済を行う必要があるため、裁判所は再生計画の認可を検討する際に、弁済が最後まで継続して行えるかどうか、つまり、安定した収入が見込めるかを最重要要件として厳しくチェックします。

再生債権総額が5000万円を超える

5000万円を超えても、通常の「民事再生」は利用可能です。この金額には利息や遅延損害金は含まれますが、住宅資金特別条項を利用した場合の住宅ローン債権は含まれません。住宅ローンについて減免される制度はなく。月々支払うべき額を満額支払っていくことになります。

最低弁済基準を下回っている

圧縮(減額)可能な債務金額の最低基準は、負債総額によって法律で決められています。この最低弁済基準額を下回る場合、再生計画は不認可になる可能性は高いでしょう。

給与所得者等再生特有の不許可事由って何?

再生債権総額が5000万円を超える・最低弁済基準を下回るという小規模個人再生の不認可事由は給与所得者等再生の場合も該当します。

しかし、小規模個人再生にはない給与所得者等再生特有の不許可事由が2つあります。

可処分所得要件を充足していない

給与所得者等再生の弁済金額は可処分所得の額によって決定し、その算出額が弁済金額となるケースが多く見受けられます。

また、この弁済額は小規模個人再生で弁済しなければならない最低弁済額より高額なことが必要です。そのため、可処分所得要件との関わりがない小規模再生の方が、返済額という観点で再生債務者には有利と言えるでしょう。

給与などの定期的な収入を得ていないか、収入額の額変動が小さいと見込まれないこと

給与所得者等再生は、債権者が同意をする・しないに関わらず、再生計画案に従って借金の返済をするというものです。借金返済を着実に再生計画案に記載したとおり行うためには、小規模個人再生の場合よりもさらに安定的な収入が求められることになります。

不認可(失敗)にならない個人再生の手続方法を選ぶなら弁護士に相談を

返済すべき借金額という観点からすれば、圧倒的に小規模個人再生のほうが有利ですが、小規模個人再生の場合は債権者の同意を得なければ成立しないという難点もあります。そのため、債権者の同意を得ることが難しい場合は給与所得者等再生を選ぶほうがよいでしょう。どちらを選べばよいのか分からない場合は、弁護士などの専門家に意見を聞くのがおすすめです。

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