小規模個人再生とは?自営業者以外も手続きすることができるって本当?
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2種類の手続きがあります。自営業者であれば小規模個人再生、給与所得者であればどちらでも選択可能です。
小規模個人再生では再生計画案への決議が必要になりますが、給与所得者等再生に比べ小規模個人再生の方が返済額は少なくなる場合が多いので、給与所得者でも小規模個人再生を行うのが一般的です。
この記事では小規模個人再生の特徴や要件など、その仕組みについて解説します。
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小規模個人再生とは?
小規模個人再生とは、債務者が将来的に継続して収入を得る見込みがあり、再生債権の額が5,000万以下の場合に求めることができる、民事再生手続きの1つです。
元来は小規模の個人事業主を対象と想定して作成された制度なのですが、後述する給与所得者等再生よりもメリットが強い部分もあるため、一般的な給与所得者でも小規模個人再生を利用する人が増えています。
小規模個人再生の要件と最低弁済額
個人再生では、自営業者であれば小規模個人再生の手続きを行います。
給与所得者の場合は、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらかを選択します。
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以下では一般的な個人再生手続きである小規模個人再生について、要件にはどんなものがあるのか、また借金額がどれくらい減額されるのかを見ていきましょう。
2つの段階で要件を満たさなければならない
サラリーマンであれば、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを選べばいいのか迷ってしまいますよね。実際には、給与所得者であってもほとんどの人が小規模個人再生を選択します。しかし誰でもできるわけではなく、手続きの2段階で決められた要件を満たさなければなりません。
小規模個人再生の開始要件
まずは、小規模個人再生手続きの開始を裁判所に認可してもらわなければ始まりません。おもな要件は次のとおりです。
- 債務者が個人であること(法人ではない)
- 債務者が将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
- 借金の総額が5,000万円を超えていないこと(住宅ローンを除く)
サラリーマン、パート従業員、アルバイト、さらに収入の額や時期に変動がある事業者、今は無職でも就職に見込みのある人であれば認可されます。また、必ず毎月一定の収入を得る見込みが要求されるのではなく、数ヶ月に1回など、ある程度継続・反復する収入があれば可能です。ただし、あまりにも変動がある場合は認められない場合もありますので注意してください。
小規模個人再生の再生計画認可要件
次の段階では、返済額や返済期間を定めた「再生計画案」の認可が必要です。おもな要件は次のとおりです。
- 再生計画案に不同意回答をした債権者が、債権者の半数以上または債権総額の2分の1を超えていないこと
- 再生計画遂行の見込みがあること
- 計画弁済総額が最低弁済額を下回っていないこと
小規模個人再生手続では、債務者が再生計画案を作成して裁判所に提出します。この再生計画案に債権者からの同意が得られるかが、小規模個人再生の鍵になります。
小規模個人再生でどれくらい減額できるかは債務総額と財産価値で決まる
小規模個人再生後の返済額は、民事再生法で規定されています。債務総額と財産価値に関わる2つの条件があり、いずれか高い方の返済額を3年間(特別な理由があれば最大5年間)の分割払いにします。
民事再生法が定める最低弁済額以上であること
最低弁済額とは、民事再生法で定められた債務総額に応じて減額できる最低限度の金額です。およその目安は次のとおりです。
100万円未満の人 | 総額全部 |
---|---|
100万円以上500万円以下の人 | 100万円 |
500万円を超え1500万円以下の人 | 総額の5分の1 |
1500万円を超え3000万円以下の人 | 300万円 |
3000万円を超え5000万円以下の人 | 総額の10分の1 |
財産の清算価値以上であること
清算価値とは、具体的には預貯金や生命保険解約返戻金、有価証券、持ち家(住宅ローンを除く)、退職金などを現金に換算した金額のことです。破産をした場合,破産者の財産はすべて清算され債権者に配当されます。
個人再生では、債権者の利益を守るために、破産した場合の配当額以上の返済額でなければならないと定められています(清算価値保障原則)。つまり、債権者に対して「時間はかかりますが、破産するよりも多く返済します」と保証することで、個人再生に同意してもらうのです。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い!どっちを選ぶべき?
小規模個人再生は自営業者のための手続きと思われがちですが、実際は、給与所得者であっても小規模個人再生を行うのが一般的です。その理由について、認可要件と最低弁済額の違いから説明します。
認可要件が異なる
小規模個人再生と給与所得者等再生では、手続き開始要件と再生計画認可要件の2つの段階でそれぞれ違いがあります。簡単に言うと、小規模個人再生の方が開始するのは容易ですが、再生計画の認可でハードルが高くなります。詳しく見ていきましょう。
給与所得者等再生では、給与のような安定した収入が必要
給与所得者等再生では、小規模個人再生の開始要件に加えて「給与等定期的収入があり、かつ、その額の変動が小さいと見込まれる」という項目があります。つまり、収入に波がある自営業者などは給与所得者等再生手続き開始の認可を受けることができません。
給与所得者等再生では、債権者の同意がいらない
給与所得者等再生では、再生計画認可要件に「債権者の再生計画案への同意」が必要ありません。大半の銀行、クレジットカード会社などは再生計画案に反対しませんが、保証会社や政府系の金融機関が反対することはあります。
1/2以上の債権者、または負債総額の1/2以上の債権者が同意しない場合は、小規模個人再生が認可されませんので、給与所得者等再生を検討します。
返済額に大きな差が出る場合がある
認可要件が厳しくなったとしても、できるだけ再生後の返済額を抑えたいと考える人が多いのではないでしょうか。実は、個人再生の9割以上が小規模個人再生で行われる理由もそこにあります。小規模個人再生の方が、給与所得者等再生より返済額が少額になるのです。
給与所得者等再生では、クリアすべき条件が増える
給与所得者等再生では、小規模個人再生の最低限支払わなくてはいけない返済額の条件に、「法定可処分所得の2年分以上」という項目がプラスされます。
つまり、「民法が定める最低弁済額」「財産の清算価値」「可処分所得の2年分」のいずれかでもっとも高額なものが再生後の返済額になります。
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可処分所得の算出方法
法定可処分所得とは、給与所得から税金と必要最低限の生活費を差し引いたものです。
数式で表すと以下のようになります。
可処分所得 = 給与所得 - (税金 + 必要最低限の生活費)
一般的に、「民事再生法に定められた最低弁済額」より「可処分所得の2年分」のほうが高額になる上に、債務者によっては100万円以上も差が出る場合があります。
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まずは小規模個人再生を検討するのがベター
どちらの手続きがよいのかわからないなら、弁護士へ相談を
このように、給与所得者だからといって単純に給与所得者等再生を選択するのは賢い方法ではありません。まずは小規模個人再生が可能かどうかを検討しましょう。
再生計画案に不同意の債権者が、債権者の半数以上または債権総額の2分の1を超えてしまう場合には、給与所得者等再生が適しています。2種類の手続きの違いについて詳しく知りたい人やどちらの手続きを選べばよいのかがわからない人は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
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