個人再生開始後にまとまったお金が入ったら繰り上げ返済できる?
個人再生では、繰り上げ返済を禁止する規定は定められていません。ただし、一部の債権者にのみ繰り上げ返済をするような行為は「債権者平等の原則」に反することになります。個人再生開始後に繰り上げ返済をする際には、弁護士などの専門家に相談しながら全ての債権者に対して平等に返済することが不可欠です。
個人再生の手続き開始後に繰り上げ返済することはできる
個人再生の手続を開始後、給与・ボーナスのアップや遺産相続によってまとまったお金が入り、資金に余裕が出てきた際に債務を繰り上げて返済できないかと考える方もいるのではないでしょうか。個人再生の手続開始後に繰り上げ返済をするには、全ての債権者に平等に返済することが必須条件となります。
繰り上げ返済って何?
繰り上げ返済とは、ローンの返済中に余裕資金ができた時などに債務を前倒して返済をすることをいいます。住宅ローンで利用されることの多い返済方法ですが、ここでは個人再生の場合についてみていきましょう。
個人再生の繰り上げ返済は「期間短縮型」
繰り上げ返済とは、毎月の返済に加えて債務額の一部または全部を返済することをいいます。住宅ローンの繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの種類があります。期間短縮型は予定より返済期間を短縮する方法ですが、一方、返済額軽減型は返済期間をそのままにして返済額を軽減する方法です。個人再生の繰り上げ返済では、後者の期間短縮型の返済方法が用いられます。
個人再生の繰上げ返済には利息が軽減できるメリットはない
住宅ローンの場合、期間短縮型の繰り上げ返済を行うと返済期間が短くなるのでその分利息が軽減されます。しかし、個人再生の場合は債務に利息が付くことはないため、返済期間を短縮しても利息が少なくなるメリットを得ることはできません。
個人再生開始後の繰り上げ返済は禁止されていない
法律上、個人再生の手続開始後に繰り上げ返済を禁止する規定はありません。ただし、繰り上げ返済を行う場合には、「債権者平等の原則」に従って全ての債権者に対して平等に返済することが不可欠です。
全ての債権者に平等に返済することが鉄則
個人再生手続開始後の繰り上げ返済は、法律上禁止されていません。ただし、債務整理をする上では、基本的に「債権者平等の原則」が守られるべきであると考えられています。特に個人再生は裁判所を介する手続のため、「債権者平等の原則」が厳格に適用されます。そのため、個人再生の手続開始後に繰り上げ返済を行うのであれば、一部の債権者のみを優遇するのではなく、全ての債権者に平等に返済することが必須条件です。
債権者の同意を得ることが必要
個人再生で圧縮された債務には利息が付かないので、債務の返済が早まることで債権者側に発生するデメリットはありません。そのため、一般的には繰り上げ返済を拒否する債権者はあまりいないと考えられます。ただし、個人再生の手続開始からあまり日が経っていない場合には注意した方が良いでしょう。
返済が不可能な状態だからこそ債務を圧縮して個人再生をしているはずなのに、返済開始後すぐに繰り上げ返済ができるようになれば、本当に借金の圧縮が必要だったのかと疑う債権者もいるかもしれません。そのため、繰り上げ返済のタイミングや債権者との交渉については、弁護士などの専門家に事前によく相談することが大切です。
個人再生の開始後に繰り上げ返済をするとどうなる?
では、個人再生の手続開始後に繰り上げ返済をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。繰り上げ返済をする上で注意した方が良い点と共にみていきましょう。
個人再生開始後に繰り上げ返済をするメリットとは?
繰り上げ返済をして債務の返済期間を短縮できれば、信用情報機関に登録された事故情報の抹消時期を早めることができます。また、「借金を返さなければならない」という精神的負担からも早く解放されることも大きなメリットです。
繰り上げ返済をすれば「ブラックリスト」から消える時期が早まる
個人再生手続きをすると、その後約5~7年の間、信用情報機関に事故情報として登録され、いわゆる「ブラックリストに載る」状態になってしまいます。繰り上げ返済をして返済期間を短縮できれば、ブラックリストから早く登録を抹消してもらうことができ、クレジットカードやローンの新規申し込みも当初の予定より早くできるようになります。
繰り上げ返済をすれば精神的負担から解放される
債務整理手続をしていて何よりも辛いのは、「借金を背負っている」「借金を早く返さねば」という心理的な負担かもしれません。繰り上げ返済をして債務の返済期間を短縮できれば、このような精神的苦痛から早く逃れることができることもメリットのひとつです。
個人再生開始後に繰り上げ返済をする際の注意点
無理のない繰り上げ返済をしよう
個人再生手続がスタートして再生計画案に沿った返済を続けていても、なるべく早く借金返済から逃れたいと思うのが債務者の本音でしょう。しかし、焦って返済することで家計が圧迫されることになれば、生活が今まで以上に辛くなってしまうのではないでしょうか。
生活費を切り詰めすぎない範囲で
一刻も早く債務を完済したいからといって、家計を圧迫してまで繰り上げ返済をすることはおすすめできません。せっかく個人再生手続を利用して債務を大幅に減額できたのですから、生活費がどこまで節約できるのかをしっかり見極めながら、ゆとりをもって返済を続けることが何よりも大切です。
ボーナスや遺産相続によるまとまったお金が入った時に
個人再生の手続開始後に繰り上げ返済をするのであれば、昇給により年収や賞与がアップした時や遺産相続等によって予定外のまとまったお金が入った時、営業成績が上がり思わぬ歩合がもらえた時などが望ましいでしょう。その場合にも、もちろん全ての債権者に対して平等に返済を行うことが鉄則です。
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再生計画開始直後の繰り上げ返済は避けて
繰り上げ弁済をしたくても、再生計画に基づく返済を開始してからまだ日が浅い場合は要注意です。債権者から「債務者は財産隠しをしているのでは?」と疑われたり、退職金や保険の解約金などの財産があることが判明すれば、詐欺再生罪が成立して罰せられることもあります。そうなると、裁判所からは不正な手続きとして個人再生計画が終了させられてしまう可能性も考えられるでしょう。そのため、まとまったお金が手に入っても、しばらくは再生計画通りに返済した方が得策です。
個人再生の手続開始後に繰り上げ返済をするには、「債権者平等の原則」に抵触しないよう全ての債権者に平等に返済することが何よりも大切です。繰上げ返済を実施する適切なタイミングや繰上げ返済債権者との交渉は、個人再生を依頼した弁護士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
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