個人再生で返済が困難なときの対処法「再生計画の変更」「ハードシップ免責」とは?
個人再生で返済が困難になった場合は、「再生計画の変更」で返済期間を2年延長することができます。ただし変更手続きの弁護士費用は当初の手続きと同程度かかり、時間も3か月以上かかります。また「ハードシップ免責」では残債の返済義務が免除されますが、利用条件はハードルが高く、実際に活用する人は一握りです。
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個人再生と返済の遅延・延滞
個人再生は債務整理手続きの一種で、借金の金額が大きい人でも自己破産せずに経済的に立ち直れる制度として2001年からスタートしました。
個人再生の特徴
債務整理手続きは、それぞれ特徴と向いている人が違います。個人再生では以下のようになっています。
個人再生とは
個人再生は、借金額が5000万円未満の人を対象としています。裁判所に提出した再生計画が認められれば、借金が最大で5分の1まで圧縮される、借金減額の効果が高い方法です。返済期間は通常3〜5年です。個人再生の基本の形として「小規模個人再生」があり、このうちサラリーマンなど給与で定期的な収入がある人は、さらに返済額が小さくなる「給与所得者等再生」が利用できます。
個人再生が向いている人
個人再生が向いているのは、借金の金額が比較的大きく、マイホームを手放したくない人です。債務整理には債権者平等の原則がありますが、個人再生では「住宅資金貸付債権に関する特則(住宅ローン特則)」を利用すれば、住宅ローンを整理対象から外すことが認められます。個人再生をしても、銀行や保証会社が抵当権を行使して家を売却してしまうことはありません。
個人再生で返済を延滞・遅延した場合
個人再生では3か月に1回のペースで返済し、3〜5年かけて完済します。この期間中に、もしも勤務先の倒産やリストラで収入が減ったり、家族の病気などで支出が増えて、債務の返済を遅延・延滞した場合はどうなるのでしょう?
再生計画が取り消される可能性
裁判所が認めた再生計画は拘束力が強く、不履行があった場合は計画が取り消される可能性があります。取り消されれば、せっかく減額された借金は元の金額に戻り、手続きにかかった時間や弁護士費用などが全て無駄になります。実際に取り消されるまでには、債権者が裁判所に申し立てて裁判所が決定するという手続きが必要なので、返済が1回遅れただけなら債権者は猶予を与えてくれるかもしれません。しかし、法律上は1回でも遅延・延滞が発生すれば取り消される可能性があるのです。
最悪の場合は自己破産
再生計画が取り消され、これ以上の返済は不可能となった場合は、残された手段は自己破産しかありません。
個人再生で守ることができたマイホームを始め、財産の大半を手放すことになります。さらに、生命保険募集員や警備員など一部の職業に就けなかったり、裁判所の許可なく引っ越しや長期の旅行ができないケースもあるなど、様々な制限がかかります。
また、残債は保証人に一括請求されるので、保証人に迷惑をかけることにもなるのです。
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返済が困難なときの対処法(1) 再生計画の変更
では、個人再生で計画通りの返済が困難なときは、どう対処すればいいのでしょうか?
実は2つの対処法が残されています。
再生計画を変更する
一つ目は、再生計画を変更することです。返済額は同じで返済期間を延長するという変更なら、債権者側も譲歩してくれる確率が高まります。なぜなら、個人再生中の債務者に自己破産された場合は、個人再生で弁済される借金額より大きく下回るからです。
再生計画の変更
再生計画の変更では、返済期間を最大で「2年」延長することが可能です。元の返済計画を5年としていた場合は、変更を加えると最大7年まで延長となります。計画変更の手続きは、まず裁判所に再生計画変更申立書を提出します。続いて書面決議や意見聴取で債権者の主張も検討され、裁判所が決定を出せば決定となります。
計画変更の条件
計画再生が認められるには条件があります。それは「再生債務者に責任を問えない事情があり、再生計画の実行が困難な場合」です。責任を問えない事情とは、計画を決定した時点には予想できず、不可抗力であることを言います。例えば「ボーナスをカットされた」「家族の長期入院で支出が増えた」などがそれに当たります。反対に、「買い物しすぎた」「ギャンブルで浪費した」というような事情では、計画変更は認められません。
再生計画を変更した場合のメリット・デメリット
では、再生計画を変更した場合にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
まずメリットの面では、返済期間が長くなるので毎回の返済額が少なくなります。個人再生では将来利息がカットされているので、返済期間が延びてもトータルの返済額は増えません。
デメリット
一方、デメリット面では、再生計画の変更を弁護士や司法書士に依頼した場合、元の再生手続きと同等の費用がかかるということです。弁護士に依頼した場合の相場は30〜50万円程度です。また、計画変更が裁判所に認められるまで早くても3か月程度かかります。返済が行き詰まってから慌てても手遅れという場合もあるでしょう。
返済が困難なときの対処法(2) ハードシップ免責
二つ目の対処法は、一定の要件をクリアすれば残債務が免責される「ハードシップ免責」を利用することです。
ハードシップ免責を利用する
「ハードシップ免責」の適用を受けるには、かなり高いハードルがあります。しかし活用できれば自己破産を免れることができるので、知っておくと便利です。
ハードシップ免責とは
ハードシップ免責とは、計画通りの返済が著しく困難になった人を対象に残債の支払い義務を免除する制度です。ハードシップ免責の申立は、個人再生計画を申し出た裁判所に対し改めて免責申立書を提出して行われます。裁判所は、条件をクリアしているかを確認し、債権者の意見も聞いてから判断を下します。
ハードシップ免責が利用できる条件
ハードシップ免責を受けるには、いくつかの条件があります。まず、再生計画で定めた債務のうち、すでに「4分の3以上」の返済を終えている必要があります。そして、支払いできない理由が債務者の責任で生じたものでないこと、弁済期間を延長する再生計画書の変更を行っても、返済できる見込みが立たないこと、ハードシップ免責の決定を行う事が、債権者一般の利益に反していないことです。
ハードシップ免責のメリット・デメリット
では、ハードシップ免責を利用した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
メリット
メリットは、借金の問題が解決し、生活再建に専念できるという点です。ハードシップ免責の効果は、いわば自己破産に切り替えた場合と同等です。しかし自己破産のように職業や引っ越しなどの点で制限は受けません。すでに4分の3以上を返し返済が終盤に近づいている債務者を救済する制度なのです。
デメリット
一方デメリットは、条件が厳しいため活用できる人がごく一部に限られているという点です。また、マイホームにも影響が出るため注意が必要です。住宅ローンの残債も免責となりますが、住宅ローンの債権者は債権回収のため抵当権を行使して家を競売にかけます。このため個人再生でせっかく守った家を手放さなければならないのです。
どちらの方法も実現は容易ではない…弁護士に相談を
「再生計画の変更」「ハードシップ免責」という2つの対処法がありますが、どちらも容易に実現できる手段ではありません。やはり最初の再生計画通りの返済を守り通すことが生活再建への一番の近道です。個人再生で失敗したくない方はぜひ弁護士や司法書士などに相談してみてください。
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