個人再生中の一括返済。メリットもあるが注意が必要なことも

一括返済

個人再生手続を終え、再生計画に従って弁済をしている途中で急にまとまった資金が入ってくることは決して珍しいことではありません。そのような場合は一括返済が可能ですが、一定のルールに従って行うことが必要です。しかし、弁済を開始してから日が浅い場合は「財産隠し」を疑われることもあるので注意しましょう。

個人再生中の一括返済はできる。しかし注意点も

個人再生では、再生手続きの中で圧縮してもらった借金額を再生計画に則って分割弁済することが原則です。しかし、再生計画を遂行中になんらかの臨時収入が得られることがあります。その場合、思い切って一括で返済してしまうことは可能なのでしょうか?

一括返済のメリットって何?

個人再生手続きで定められた弁済すべき金額を一括で返済することは、債務者・債権者双方にメリットがあります。債務者は早く借金返済から解放されることになりますし、一方債権者にとっても早くお金が返ってくることになるからです。

ばかにならない振込手数料。一括返済すれば削減できる!

再生手続き後、再生計画に基づく弁済は基本的に銀行振込みで行います。多くの銀行では手数料が必要で、1回あたりの振込手数料は少額ですが、それが3年分の36回分ともなるとばかにならない金額になりかねません。弁済が一括でできれば、このような手数料の負担を少しても減らすことができます。

“ブラックリスト”から抜け出せる日が近くなる!?

個人再生を行うと、信用情報機関に「事故情報」として登録されるのが原則です。これを俗に「ブラックリストに載る」と言いますが、借金を早く完済すればその分ブラックリストから外れる時期も早まります。信用情報機関から事故情報が削除されると、クレジットカードやローンの新たな申し込みもできるようになります。

しかし、再生の対象となった金融機関等では「社内ブラック」に登録されている可能性があるので、そこからの借り入れはほぼ不可能と考えたほうがよいでしょう。

貸金業者にとってもメリットあり

一括返済をすると、債務者のみならず貸金業者にとってもメリットがあります。一般的に、貸金業者はお金を長く貸しているほど多くの利息が入ってきますが、再生後の借金額には利息は一切つきません。そのため、債権者は債務者からの返済をいくら長い期間待っていても1円の得にもならないのです。

個人再生の趣旨は何だったのかを思い出そう

一括返済をすることは可能で、債務者・債権者にとってメリットがあることもわかりました。しかし、ここでいったん、個人再生の趣旨について再考してみましょう。個人再生の趣旨はそもそも何だったのでしょうか。

個人再生のそもそもの趣旨とは?

個人再生とは、借金返済の窮地に陥っている人が借金額を大幅に減らしてもらって分割払いの形で債権者に弁済するという趣旨の制度です。債権者は、債務者がお金に困っているからこそ、分割での返済もやむなしと考えています。

しかし、債務者が再生手続を終えてすぐに一括弁済をしたい旨を申し出ると、「一括で弁済できる資金があるのなら、最初から個人再生手続きなどせず、全額弁済してほしい」と考える債権者も出てくるのではないでしょうか。

返済を開始して日が浅い場合は要注意

一括弁済をしたくても、再生計画に基づく返済を開始してからまだ日が浅い場合は要注意です。債権者から「債務者は財産隠しをしているのでは?」と疑われたり、退職金や保険の解約金などがあることが判明すれば詐欺再生罪になることもあります。

また、裁判所からは不正な手続きとして個人再生計画が終了させられてしまう可能性も考えられます。そのため、まとまったお金が手に入っても、再生計画通りに返済した方が得策といえるでしょう。

一括返済するにはまず手続きを依頼した担当弁護士に相談を

一括返済をするにもルールがあり、そのルールに従って返済をしなければなりません。それに、ある条件をクリアすることも必要です。その2つができて初めて、残債を一括返済することができます。

一括返済のルールとは

一括返済できる状況になっても、債務者の独断で再生計画を変更することはできません。再生計画とは異なる弁済の仕方をするのであれば、事前に債権者に連絡を入れましょう。債権者の許可が下りれば、債権者の指示する方法で一括返済を行うのが弁済のルールです。

まずは手続きを依頼した弁護士などに相談を

まずは手続きを担当してもらった弁護士などの専門家に連絡を取り、事情を説明して一括返済をしたい旨を申し出ましょう。弁護士などに事情を理解してもらうことができれば、その弁護士を通じて債権者に連絡します。

「正当な理由」が必要

債権者に一括返済を了承してもらうには、「正当な理由」が必要です。「正当な理由」として認められている主な理由は以下のようなものになります。

  • 転職や昇進などにより収入がアップした
  • 遺産相続があり、親の財産分与を受けた
  • 宝くじが当たった

このように、再生計画遂行開始後に急にまとまった臨時収入があった場合には、一括返済が認められやすいと言えるでしょう。逆を言えば、もし一括でまとまった金額の返済をすることによって生活に何らかの支障が出てくる可能性があるとみなされた場合は、一括返済は認められにくくなります。同じ臨時収入があっても、返済のために今ある収入のすべてを返済に充当したり、給料の前借りをすることで、返済を乗り切るといった行為は認められません。

先にも述べた通り、個人再生はそもそも毎月の返済金額を抑え生活を安定させることで、生活再建を目指すことが趣旨であり、一括返済にはそれなりの理由が求められるのです。

一括返済するときの注意点とは?

すべての債権者に平等に返済すること

一括返済をしてはいけないという決まりは特にありませんが、特定の債権者だけ優先したり優遇したりすることは法律で禁止されています。一括返済をするのであれば、どの債権者にも平等に返済することが必要です。債権者にとっても、債務者から一括返済をしてもらえると早くお金が返ってくることになるので、一括返済を拒否される可能性は低いでしょう。

日常生活に支障をきたすようならNG

一括返済することは、すなわち債務者にとっては「期限の利益」を放棄することです。「期限の利益」とは、借金があってもある一定の期間までは返済をしなくて良い権利のことを指します。

期限の利益を放棄することで、日常生活に支障をきたしてしまっては本末転倒です。一括返済をするのであれば、生活費に影響が及ばないかどうかをよく検討してからにしましょう。

個人再生中の一括返済は、まず弁護士に相談を

一括返済ができる状態になっても、再生計画通りに返済をしたほうが無難な場合もあります。まとまったお金が手に入ったが、時期や家計とのバランスの関係で一括返済して大丈夫なものか判断がつかない場合手続きを依頼した弁護士にまず相談をしてみることをおすすめします。そうすれば、弁護士が再生計画に基づく弁済の開始時期や債務者の家計の状況を見ながら、一括返済できるかどうかを判断してくれるでしょう。

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