特定調停で決定した債務の時効は何年?時効が成立する可能性は?
特定調停後に時効が成立するまでの期間は「10年」です。調停で借金減額と新たな返済方法が決まると、元の借金の時効は失効します。また、時効には中断があるため、時効成立は現実味が薄いと言えます。債務者が返済を行わず時効が進行していても、債権者が裁判上の請求を行えば、時効成立までのカウントはリセットされます。
借金にも時効がある
法律には「時効」という制度が存在します。ニュースや刑事ドラマなどで「犯人が逮捕できるかどうかのタイムリミット」という意味合いで使われることが多いですが、時効は刑事事件に限った制度ではありません。
時効って何?
時効とは、真実の権利関係とは違う事実のまま一定期間が過ぎた場合に、権利関係を事実に一致させる制度です。権利を取得する「取得時効」と権利が消滅する「消滅時効」の二種類があります。
取得時効とは
取得時効とは、一定期間が過ぎることで、ある権利を取得するという制度です。例えば、敷地の境界線があいまいなAさんとBさんがいて、Aさんが越境してBさんの土地を自分の庭として占有していた場合、一定の期間が経過すればAさんが越境部分の所有権を取得します。
消滅時効とは
一方、消滅時効とは、一定期間が過ぎることで、ある権利が消滅するという制度です。例えば、商店を経営するCさんがDさんの会社に納品したのに代金が支払われない場合、督促しないまま一定期間が経過すると、Cさんは代金を支払ってもらう権利を失います。
消滅時効は、商品代金の支払いだけでなく、借金をしている場合にも当てはまります。つまり、時効が成立すれば借金を返済する必要がなくなるのです。続いて、借金の消滅時効について見ていきましょう。
こちらも読まれています借金の消滅時効とは?成立までの期間と援用、更新の考え方 借金返済が苦しくなると、返済を諦めて支払うのを辞めてしまうことがあります。その場合、借金に時効が成立して、一切支払わなく...この記事を読む
借金の時効が成立する期間は?
債務整理を行う人は、貸金業者から借金しているケースが多いでしょう。貸主もしくは借主のどちらか一方が商法上の商人にあたる借金は「商事債権」と呼ばれ、消滅時効は5年となります。反対に、双方が商人でない場合は「民事債権」と呼ばれ、消滅時効は10年です。
5年となる場合
借金の消滅時効が5年で成立するのは、次のようなケースです。
- 消費者金融など、会社として営業している貸金業者からの借金
- 銀行からの借金
- 自分の商売の営業のために作った借金
10年となる場合
一方、借金の消滅時効が10年で成立するのは、次のようなケースです。
- 「個人」の貸金業者からの借金
- 信用金庫からの借金
- 住宅金融支援機構で借りた住宅ローン(フラット35など)
- 保証協会が代位弁済を行った
特定調停の時効
前項で見てきた借金の消滅時効は、債務整理を行う前に該当するものです。では、特定調停によって減額された債務の場合、時効はどうなるのでしょうか。また、一定の期間が経過すれば何もしなくても借金が帳消しとなるのでしょうか。
特定調停を行うと時効はリセットされる
特定調停を行うと、借金の種類が商事債権・民事債権のどちらに当たるか、という区別をしなくなります。残債額や返済計画を変更するだけでなく、時効もリセットされるのです。
特定調停の時効は10年
特定調停では、調停の成立や、調停に代わる裁判所の決定によって、新たな債務額・返済計画が定められます。この債務の時効は「10年」と決まっています。銀行・消費者金融・クレジットカード会社からの借金や、自分の商売の営業のために作った借金であっても、10年です。
元の借金の時効は?
新しい時効が適用されると、債務者が債権者と交わした従前の金銭消費貸借契約の効力は失効します。つまり、消滅時効が5年の商事債権も、特定調停を行えば消滅時効は10年となるのです。
時効の援用
仮に、特定調停後に返済を行わず、時効の期間を過ぎたとします。その場合、何もせず放っておいても債権者の債権は消滅しません。債務者が貸主に対して時効成立を主張して初めて時効が完成するのです。
「援用」で時効成立
時効の期間が過ぎて債務免除が正式に認められるためには、「援用」の手続きを行う必要があります。借金の時効の援用とは、債務者が債権者に対し「時効が完成すれば利益を得る」と意思表示することです。
援用を行う方法
援用を行うには、特に決まった方法はありません。しかし証拠を残しておける「内容証明郵便」を利用する方法が一般的です。内容証明郵便は、送り主・宛先・日時・送った内容といった事実を郵便局が公的に証明するサービスです。
送る文書のポイントは、「どの債務について、いつ時効が消滅したか」「この文書で時効を援用する」の2点を明記しておくことです。
特定調停で時効成立を待つべき?
時効制度は「返済が苦しかった債務が、時間さえ過ぎれば逃れられるんだ!」と債務者にとってはおいしい話のように思えるかもしれません。では特定調停を行ったあと、時効成立を待つのは得策なのでしょうか?
特定調停で実際に時効は成立する?
特定調停で新たに決まった債務について、時効成立は現実にあり得るものなのでしょうか。現実的に考えると、時効成立に必要な「催告を受けない」「債権者が中断しない」という状況が続く可能性はかなり低いと考えられます。
時効成立は現実味が薄い
特定調停の返済計画は、調停委員が債務者・債権者双方の意見を聞き、債務者の生活状況や債務者の資産等を考慮して作成されます。自らの都合で特定調停を申し立てた債務者が、合意の内容に従った返済計画を誠実に実行する必要があることは、言うまでもありません。
このうえで時効が成立するためには、最終取引日以降、債務者は債権者から返済の催告を一切受けていないといった事実が必要になります。債権者が銀行・消費者金融・クレジットカード会社などの場合、10年も請求を行わないことは通常考えられません。このため借金の時効が完成することはまず無いと言えます。
時効には「中断」がある
また、時効の中断という仕組みもあります。時効が進んでいる期間に一定の事由が発生すれば、時効期間のカウントがリセットされるのです。
中断事由の一例は、債権者が裁判上の請求を行うことです。債権者が裁判所に提訴した場合、時効は中断され、判決の日から時効期間がリセットされます。
また、債務者が少額でも返済に応じたり、支払いの意志を示した場合も中断となり、時効成立にはその時点からさらに10年の期間が必要です。
夜逃げは無意味
債務者の中には、「夜逃げ」として住所登録を行わずにどこかに潜伏して時効成立を待ち、債務返済から逃れようと考える人もいるかもしれません。しかし債権者が時効を中断させる手続きをとれば、逃げる意味はなくなります。特定調停後の返済に行き詰まっているなら、より現実的な対応策を考える必要があります。
時効成立を狙うデメリット
特定調停後の時効成立は現実味が薄いと言えます。それどころか、時効成立を狙えば、強制執行の可能性や保証人に迷惑がかかるなどのデメリットが考えられます。
強制執行の可能性がある
調停の合意内容が記される調停調書や決定書は「債務名義」にあたります。これは裁判の判決と同等の効力を持ち、債権者は債務名義を根拠に債権回収することが可能です。
もし債務者が時効成立を狙って返済を行わないでいれば、返済期日を2回過ぎた時点で債権者は強制執行が可能となります。
保証人に迷惑をかける
債務者が時効成立を目的に返済をしない場合、債権者は債務者の代わりに保証人に請求を行う可能性があります。残債の一括請求となれば金額が大きく、保証人やその家族の生活を大きく変えてしまう恐れがあります。保証人に迷惑をかけたくなければ、このような行為は行うべきではありません。
最初から時効成立を狙ったり、返済に行き詰まって時効成立を考えるのは早計です。もし特定調停後の返済に行き詰まった場合は、個人再生や自己破産の道も残されています。借金問題解決の近道を知りたいなら、債務整理に強い弁護士・司法書士に相談してみてください。
債務整理に強く評判の良い弁護士事務所を探す
債務整理借金問題に悩んでいませんか?
- 複数の借入先があり、返済しきれない
- 毎月返済しても借金が減らない…
- 家族に知られずに借金を整理したい