調停~示談が合意に至らない場合には

調停

示談は交通事故当事者同士の交渉ごとです。代理人となる保険会社や弁護士が関与するケースもよくあります。
ただし長期に渡って合意に至らない場合、裁判所に仲介に入ってもらう「調停」によって解決を目指すべき状況も考えられます。
調停は「裁判まではしたくない」方に選ばれています。

「示談」で合意できなかった場合は「調停」に進む

第三者が仲介することにより、納得できる結果を目指す

交通事故が発生してしたとき、当事者同士で損害賠償についての取り決めを行う方法の順序は、まず「示談」次に「調停」です。
示談や調停などの話し合いではどうしても解決できないときに「裁判(訴訟)」を利用します。

当事者同士、あるいはそれぞれ保険会社や弁護士などの代理人だけで、損害賠償金の金額や支払い方法について合意をする「示談」が最も一般的で、交通事故の約90%は「示談」で損害賠償の合意がなされているといわれています。

しかし「示談」がまとまらない場合には第三者の力を借りなければ解決できません。調停は裁判所に間に入ってもらって話し合い、賠償問題を解決する方法です。

示談交渉には期限があることに注意が必要

民法で定められた損害賠償請求権には、時効があります。

損害賠償請求権の時効については

被害者が損害及び加害者を知った時を起算点として、3年間(人身事故の場合には5年間)これを行使しない時は時効により消滅する

と民法724条、724条の2に規定されています。

交通事故後の示談は、損害賠償に関する交渉

交通事故の当事者同士の示談交渉は、加害者が被害者に対し、事故によって失ってしまったものを金銭で賠償する方法を話し合う損害賠償交渉です。

この場合、民法で規定された損害賠償請求権の時効が適用されますから、時間の経過によって権利が消滅しないよう注意しなければなりません。

また加害者による保険会社への保険金請求も、自賠責保険、任意保険とも同様に3年の期限が定められていますが、任意保険は商品により差がある場合がありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

弁護士を立てない限り、被害者に損害賠償の時効期限の知らせは届かない

一般的に、加害者が保険に入っていれば賠償金を加害者自身が払うケースは稀なので、加害者側は時効をさして気にすることはありません。

一方で被害者の場合、3年または5年で請求権自体が消滅してしまいます。
弁護士を代理人として立てていない場合は誰も知らせてくれないので、必ず期限を確かめておきましょう。

「調停」を行った方が良いのはどのようなタイミング?

交通事故の当事者同士が話し合っても「示談」がまとまらなかったら、次は「調停」に進むケースがあります。

いきなり「裁判」を起こす方法もありますが、長い期間と費用も必要です。調停なら比較的期間も短く、費用も低く抑えられるメリットがあります。

「調停」を行った方が良いシチュエーションは?

どのような時に「調停」へと持ち込んだ方がよいのか、以下に列挙します。

  • 事故当事者同士の示談交渉が決裂または長期化している場合
  • 相手の交渉力が高くて丸め込まれそうな場合
  • 相手に資力がない場合
  • 相手にプレッシャーをかけたい時場合

示談交渉のさらなる長期化を避けたい場合

示談交渉は、さまざまな理由で長期化することがあります。

当事者同士の意見が食い違って平行線が続き、条件面で歩み寄れないときには「調停」に持ち込むことで早期の解決を図れる可能性があります。

示談交渉が長期化すれば、加害者側は事故を起こした当事者としていつまでも責を問われ、新たなスタートが切れなくなりますし、被害者としては受け取れるべき損害賠償金がいつまでも受け取れないことになります。
それよりは調停で解決した方がお互いメリットがあるでしょう。

相手の交渉力が高い場合、第三者の力を借りる

交渉相手の保険会社の代理人が、執拗に不利な条件で示談合意を求めてきた場合や、弁護士を雇って高度な交渉を持ちかけてきた場合、もし自分自身で交渉を行っているならば、「調停」を利用した方がよい場合があります。

「調停」には裁判所の「調停委員」という第三者が加わるため、一方的に示談を進められてしまうことは通常ありません。

ただし「調停」にも多少の知識や対応スキルが必要です。自信がない場合は、弁護士などの専門家に相談するようお勧めします。

相手に資力や損害賠償金支払いの意思がない時、強制執行ができる

「調停」が成立すると「調停調書」が作成されます。これは、裁判による確定判決と同じ効力があり、加害者に対する強制執行力を持ちます。

「示談」では強制的に損害賠償金の支払いを行わせることはできませんが、相手が「調停」とおりに支払いをしないときには「強制執行(差し押さえ)」の申し立てをすることが可能です。

交渉相手に示談合意の意思がない場合、または交渉が困難な時

示談交渉には時効以外に法律的な期限が決められていません。内容や条件に合意したくなければ長引かせることも可能です(ただし時効期間がきたら損害賠償請求権が消滅します)。相手が話し合いに応じない場合もあるでしょう。

「調停」になると裁判官を含む調停委員会が関与するので、双方が裁判所から呼び出されることになり、無理矢理にでも交渉を進めることが可能となります。

また交通事故の相手は選べませんから、面と向かって交渉すると怖い相手もいるでしょう。「調停」の場合、紛争や諍いを避けるため当事者が顔を合わせないよう配慮してもらえます。少なくとも大筋で合意が得られるまでは当事者それぞれが別室で待機し、交互に呼び出されて交渉が進められます。

話し合いは完全非公開なので、周りの目を気にする必要もありません。

「調停」はどのように進められるのか?

「調停」を簡単に言えば、紛争の当事者を裁判所に呼び出して裁判所が間に入り、話し合いによる問題解決を支援する手続きです。
話のまとめ役として、裁判官1人と調停委員2人による「調停委員会」が構成され話し合いを進めます。

裁判所で行われる手続きですが、法廷ではなく多くの場合はテーブルなどを囲んで会議形式で、自由な発言をしながら、事件の解決方法を話し合います。

また「調停」は、あくまでも当事者同士の話し合いでの和解を勧めるもので、裁判のように最終的に裁判官が判決を下すことはありません。納得できなければ無理やり妥協する必要はないのです。

ただしいったん合意した場合、作成された調停調書は、判決と同じ強制力を持ちます。

「調停」の窓口は簡易裁判所

「調停」を申し立てる場合、窓口は原則として相手方の住所を所轄する簡易裁判所です。
但し、当事者双方が合意すれば、任意の簡易裁判所あるいは地方裁判所に申し立てることも可能です。

裁判所の管轄は、裁判所HPで確認できます。

また「調停」は、被害者側だけではなく加害者側からも申し立てができます。

調停申立書を作成する

調停申し立ての際には「調停申立書」を作成しなければなりません。
調停申立書には申立人と相手方の住所・氏名・連絡先、申し立ての趣旨、交通事故の内容や損害額などを記入します。

申立には請求金額に見合った申立手数料が必要となり、収入印紙を申立書に貼付して納付します。

申立書や申立手数料については、裁判所HPにフォームや記載例とともに掲載されていますので、参考にしてください。

「調停」の流れは比較的スムーズ

申立書が受理されると、しばらくして当事者宛に調停日時の連絡があります。日時が決定されれば、相手方にも「調停」への呼出状が送付されます。

どうしても裁判所の決めた日時に都合がつかない場合、連絡して日程調整をお願いしましょう。正当な理由なく欠席した場合には過料が科せられます。
相手方が欠席した場合にもペナルティがあるので、多くの人は調停の呼び出しに応じます。

ただし相手がどうしても出席しない場合、調停は不成立になります。

そうなると一般的には「裁判」で決着をつけるしかなく、弁護士などの専門家に相談する必要性が出てきます。
なおADRを利用する方法もあります。

別の部屋でお互いの言い分を聞く

「調停」期日には原則として当事者が別々に調停室に入り、調停委員に対して自分の主張を述べることになります。

調停委員は事案の内容や当事者がもめている争点などを整理し、調整を行います。解決策を提示してくれるケースも多く、双方ともに合意できれば「調停」は終了し、調停調書が作成されます。

調停調書は確定判決と同じ効果がありますので、債務者が合意内容を履行しない場合には強制執行手続きの申請が可能です。

不調となってしまった場合は、「裁判」へ

調停を進めても双方の合意がどうしても得られない場合、調停は「不調(不成立)」として終了し、次はいよいよ「裁判」となります。

「調停」の手続きは比較的簡単で、法的な専門知識がなくても少し勉強すれば自身でも行うことが可能ですが、「裁判」となるとより高度な法的専門知識と対応スキルが必要となってきます。

また調停でも法律家の支援を受けた方が有利に進められるケースが多数です。「調停」に臨む際にも、スムーズかつ有利な結果を獲得するため、事前に弁護士など専門家に相談、あるいは依頼しましょう。

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